五日物語 3つの王国と3人の女のあらすじは?残酷なおとぎ話のダークファンタジー

3つのおとぎ話を現代に蘇らせたマッテオ・ガローネ監督によるイタリア映画『五日物語 3つの王国と3人の女』(以降 五日物語)。その映画『五日物語』のおぞましくも魅力あるあらすじやキャスト、元となったおとぎ話について徹底解説!3つの物語の共通点や結びつき方は?美しく残酷な世界の暗喩や読み解き方は?映画『五日物語』がもっと楽しくなる感想や関連作品もご紹介いたします。ネタバレ項目には「ネタバレあり」と記載しますので参考にしてください。

五日物語 3つの王国と3人の女のあらすじは?残酷なおとぎ話のダークファンタジーのイメージ

目次

  1. 五日物語とは?
  2. 五日物語のあらすじネタバレ
  3. 五日物語のラストネタバレ
  4. 五日物語は残酷なおとぎ話?
  5. 五日物語のキャスト
  6. 五日物語に関する感想や評価
  7. 五日物語のあらすじネタバレや感想まとめ

五日物語とは?

おとぎ話の映画化作品は数多くありますが「残酷で蠱惑的なおとぎ話」がモチーフの映画『五日物語』はご存知ですか?マッテオ・ガローネ監督の手によって2016年に公開した本作はそのグロテスクな描写や絵画のような美しい造形から「おとなのためのおとぎ話」とも名高い映画となっています。

今回はそんな映画『五日物語』のあらすじやキャスト、関連作品、感想、そして原作となっている実在するおとぎ話まで、まだ未視聴の方向けにネタバレは最小限にしつつも余すことなくご紹介しましょう!

Tips:予告映像

133分の映画となっている映画『五日物語』は邦題の『五日物語 3つの王国と3人の女』の名前の通り3つのエピソードが並立して少しづつ重なっていく構造になっています。映像美や蠱惑さの伺える予告編のアナウンス通り生々しい表現が随所にみられるのも特徴です。おとぎ話を忠実に再現しつつもその現代から見れば違和感と狂っているという感触がする事柄をどのように調理したのか、監督の腕の見せ所と言えるでしょう。

Tips:マッテオ・ガローネ監督

マッテオ・ガローネ監督は『Terra di mezzo』(1996/日本未公開)でスクリーンデビューを果たして以来、造形美や画作りへの拘りが数々の評価を受けていたイタリアの製作者のひとりです。

日本でその名が轟いたのは2002年の『剥製師』がはじめてで、その後『ゴモラ』(2008)、『リアリティー』(2012)と徐々に海を越えてファンを増やしていっています。

五日物語のあらすじネタバレ

あらすじⅠ:世継ぎが欲しい女王

ロングトレリスの女王は誠実な王と共に幸せに暮らしていましたが、ある悩みがありました。それは「子どもが欲しいのに授かることができないこと」でした。女王はあれこれと方策しますがどれも実らず、そしてついに怪しげな男の言葉に耳を貸すことになります。

あらすじⅠ:子を授かる秘術と代償

それは「怪獣の心臓を食らう」ことでした。女王は王に相談し、王自らこの討伐に討って出ることになりますが、心臓自体は手に入るもののそれには「ある代償」が伴ってしまうのでした。そうして鍋で煮詰めた心臓を女王が食らうと10日のうちに子を授かり彼女の願いは「空の玉座」で叶うのでした。

ネタバレありあらすじⅠ:愛すべき我が子と同じ日に産まれた少年

女王は大変に自分の産んだ子どもを可愛がりますがまたある願いが湧きます。それは「王子と仲良くしている下働きの子ども」ジョナの存在でした。「ある理由」で王子と瓜二つな彼らの仲を身分差ゆえに女王は実権をもって裂こうとします。しかし、本人たちは「2人で即位したい」と望んでおり女王の声は耳に届かないのでした。

超ネタバレありあらすじⅠ:2人だけの旅

女王の手によって命すらも危ういと感じたジョナは王子に「ある言葉」を告げてひとりで旅に出ることにします。王子はその言葉に従って来る日も来る日も身を案じながら、「2人で旅に出たかったのに」と思ってしまうのでした。

あらすじⅡ:美しい歌声のドーラ

一方、ストロングクリフ国の王は大変な女好きであり、そうであるがゆえに妃を決め兼ねていました。そんななかで城下から聴こえる美しい歌声を耳にし、さぞ美しい女性がいるのだろうと思って繰り出すのです。しかし、その声の主はヨボヨボの老婆ドーラだったのでした。扉越しに求愛する王に対して、ドーラとその妹インマは困惑し、どうにか取り繕おうと方策します。

ネタバレありあらすじⅡ:美しさの秘術と代償

その嘘と方策もあってか、王に即座に殺されるのだけは避けることが出来ました。しかし、「あるきっかけ」で自分が老婆であることを気付かれてしまいます。逆上した王に窓から突き落とされたドーラは奇跡的に生還し城外の森で魔女に出会うのでした。そうして魔女の慈悲で美しさを取り戻したドーラは晴れて妃になりますが、「ある代償」を支払うことになるのです。

あらすじⅢ:ノミを可愛がる王

そのまた一方、ハイヒルズという国の王は自室で見つけたノミを密かに可愛がっている変わり者でした。そしてそんな王にはひとり娘のヴァイオレット姫がおり、彼女は「自分も愛されて恋をしてみたい」という願いを父王に訴えます。しかし、ノミが専らの寵愛の対象になってしまっていた王は聞く耳を持たずノミが巨大になるまで育て続けていたのでした。

あらすじⅢ:愛されたい姫と王の奇策と代償

ノミが死んでしまうと必然娘の声は聞こえてきます。父王はそんな娘の声に「ある条件に見合う男を姫の婿にする」と宣言を出します。その結果、お見合いでもなく、許婚でもなく、山に住むオーガが婚礼の相手に選ばれてしまい、結果として父王は娘とノミ両方ともを失って古城に取り残されてしまうのでした。

五日物語のラストネタバレ

この章では端的にではありますが、映画『五日物語』の結末についてあらすじを紹介していきます。観ていない方向けの情報量ですがネタバレが含まれるため、ご自身の目的に合わせながら飛ばし見してみてください。

ネタバレあり結末Ⅰ:2人だけの旅の末路

王子は「ある兆し」をきっかけにジョナを案じて王妃の言いつけを破ってジョナを追って旅に出ます。王妃は悲嘆しどうにかして取り戻せるようにと方策し、またあの怪しい男…ネクロマンサーに頼ることになるのです。そうして巡り合ったジョナと王子の2人は危機を脱して2人で生きていこうと誓い合いますが、その目の前に魔物が姿を現し2人を捕まえようとします。

王子とジョナの2人は、2人で生き残ることを願い必死に抵抗をしました。「その代償として」魔物は死に、2人は無事に「空の玉座」に戻ることになるのです。

ネタバレあり結末Ⅱ:愛する者に送ってしまった言葉

美しさを得て王妃の座についたドーラ。インマは戴冠式に忍び込み、ドーラに祝福の言葉を送りながら「私も一緒にいたい」と願います。しかし、ドーラからすればインマを妹だと認めると王に魔法の正体がバレるため手酷くインマを罵りそして「ある嘘」をついて追い返してしまうのです。

インマは自分の願いを叶えるために「ドーラに言われた通りの代償」を支払います。しかし、愛する人から慈悲もなく送られたその言葉はインマを美女に変えることはなく、寧ろ呪いとして彼女たちの仲を割いてしまうことになるのでした。

ネタバレあり結末Ⅲ:愛す人々は全て失せ

一方で険しい山の奥で想像とはかけ離れた愛のカケラもない生活を送るヴァイオレット姫はどうにかして逃げ出したいと願っていました。そこに心優しい旅芸人の家族が助けてくれることになりました。しかし、その逃亡劇も長くは続きません。なんとオーガが追ってきて彼なりの愛情を裏切った「代償として」旅芸人の家族を皆殺しにしてしまうのです。絶望し恐怖したヴァイオレット姫は「ある決断」をし、それを実行します。

ネタバレあり結末:そして物語は進みだす

なんとか無事に生き残ったヴァイオレット姫はハイヒルズに戻りますが、そこにいたのは衰弱しきった父王でした。本当に欲しかった温かみがここにあったことを悟りつつも、父王の遺言でヴァイオレット姫は王の座を継ぐことになります。

そしてロングトレリスの若い王とその従者、ストロングクリフの新しい王夫妻を迎えて戴冠式を行うのでした。宴では道化たちが火を吹き美しい舞を踊ります。しかし、その席でひとつ解かれてしまう魔法があったのです。それは若さが欲しいと願ったドーラでした。手に皺が急速に戻りつつあることを自覚したドーラが宴を走り去るところで映画『五日物語』は幕を閉じるのです。

五日物語は残酷なおとぎ話?

映画『五日物語』は冒頭でもご紹介した通り、実在するおとぎ話が原作になっています。それはルネサンス期に描かれた『ペンタメローネ(Pentamerone)』という物語です。「Pentamerone」とはイタリア語で「五日物語」という意味であり、まさに映画のように主要な五日間に起きた民話をまとめているのです。

グリム童話など、元版はとてもグロテスクで生々しいと言われるおとぎ話は多く存在しますが、『ペンタメローネ』はよりダイレクトにシニカルに独特な風情で描かれていることもあり「おとなのおとぎ話」と呼ばれることがあるのです。また、映画にまとめるにあたって中でも「女性の欲望」にフォーカスした物語を3つ選んだことで「女性のおとぎ話」とも映画版は称されることもあります。

日本語版は絶版されているため手に入れるのが困難ですが、図書館を利用したり、英語版のKindleで読んでみるなどして気になる方は原作も読んでみるとより楽しめるでしょう。

Tips:実在するおとぎ話と映画

おとぎ話を映画にする例は古今東西幅広く見られます。例えば、ディズニー映画でお馴染みの『白雪姫』や『シンデレラ』は古典的なおとぎ話ですし、日本でも『かぐや姫』が映画化されたり、アニメ映画だけでなく実写映画でも様々なアレンジをかけて多くの童話が映画化されています。

また、「おとぎ話"風"」という分野としては『レディホーク』(1985)や『ネバーエンディング・ストーリー』(1984)、『イントゥ・ザ・ウッズ』(2014)など人気のジャンルとしてたくさんの映画が存在し人々の心を魅了しているのです。

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五日物語のキャスト

キャスト:サルマ・ハエック/ロングトレリスの女王

子どもを求め、子どもからの愛を求めて怪しい言葉にも縋る女王を演じたのはメキシコ人女優のサルマ・ハエックです。

代表作に『デスペラード』(1995)のヒロインであるカロリーナや『フリーダ』(2002)のメインキャストであるフリーダをもつサルマは、「強い女性」というイメージが強く、『五日物語』においても非常に強靭で意見を曲げない女王を演じきっています。

キャスト:ジョン・C・ライリー/ロングトレリスの王

そんな強靭な女王を支える誠実な王を演じたのは1989年の『カジュアリティーズ』でスクリーンデビューしたジョン・C・ライリーです。『シカゴ』(2002)では歌う姿を見せるなど舞台役者としての顔も強く持つライリーは『シン・レッド・ライン』(1998)や『アビエイター』(2004)『ダレン・シャン』(2009)など1989年からほぼ毎年のように映画に出演しているベテランキャストでもあります。

また、『シュガー・ラッシュ』(2012~)シリーズでは主役のラルフの声優を勤めるなどマルチな面を見せているのです。

キャスト:バンサン・カッセル/ストロングクリフの王

女性に溺れ、女性を惹きつける放蕩な王を演じたのはフランス出身の色男俳優バンサン・カッセルです。

『憎しみ』(1995)で注目を集めて以来、フランス映画を中心にハリウッド映画にも多く出演し、『ジャンヌ・ダルク』(1999)のジル・ド・レイ伯や『シュレック』(2001)のロビンフッド、『ブラック・スワン』(2010)のトーマスなどニヒルな役柄を多く獲得しています。また『オーシャンズ』(2004〜)シリーズのフランソワ役でも有名です。

キャスト:ステイシー・マーティン/若いドーラ

運命のいたずらで若返ったことで人生が一転したドーラを演じたのはファッションモデルとしても有名なステイシー・マーティンです。2013年の『ニンフォマニアック』でスクリーンデビューを果たし、『シークレット・オブ・モンスター』(2015)や『ハイ・ライズ』(2016)など徐々にファン層を広げていっている期待の女優さんです。

キャスト:シャーリー・ヘンダーソン/インマ

ただただ姉といっしょに暮らしたいと願い続けた老婆インマを堂々と演じたのはシャーリー・ヘンダーソンです。『ハリー・ポッター』(2002)シリーズの「嘆きのマートル」など若い役柄を多く演じているシャーリーですが『五日物語』では老婆を演じるという意外性のあるキャスティングをこなしています。

キャスト:トビー・ジョーンズ/ハイヒルズの王

ノミと娘を寵愛する王を演じたのはトビー・ジョーンズです。ホラー映画やサスペンス映画でお馴染みのトビー・ジョーンズは、1992年の『オルランド』以来、『ジャンヌ・ダルク』の判事や『ハリー・ポッター』シリーズのドビーなどファンタジー方面でも様々な役を演じきっています。

キャスト:ヴァイオレット王女/ベベ・ケイヴ

衝撃的なシーンを物ともせずに堂々とヴァイオレット王女を演じたのは映画『五日物語』がデビュー作という期待の新星ベベ・ケイヴです。これからの活躍が期待されています。

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五日物語に関する感想や評価

感想:独特で耽美な造形

映画『五日物語』の魅力を語る上で外せないのはやはりその造形美だという感想はとても多いです。特に現実には存在し得ない生き物の写し込み方は独特だと言われているのです。

「絵画を観ているようだ」とも称される『五日物語』はグロテスクで生々しいなかに潜む美しさを惜しみなく湛えているのです。

Tips:GUCCIと五日物語

ミステリアスで独特な造形美をもっている映画『五日物語』に魅了されたのは個人だけに限りません。2018年にはファッション界をリードするブランド「GUCCI」がファッションショーで『五日物語』をフューチャーした作品を発表し人々を魅了しました。

感想:どんな映画にも似てない奇妙な作品

17世紀の民話を現代の映像美で作ろうとする際に陥りがちなCGによるカバリングを極力廃した『五日物語』ならではのこだわりが評価されている感想も多く見られます。

特に、映画そのものの感想とともに感嘆の声が上がっているのはその「実在する城」の数々で、ロケ地として使われた城の美しさや風土の豊かさを賛美する感想も多いのです。

ネタバレあり感想:願いには必ず壮絶な最期が待つ物語

「子どもを身籠りたい」「永遠に若く美しくありたい」「誰かに愛されたい」人間の持つ根源的な願いを映画『五日物語』の登場人物たちも抱き願いを叶えるために様々な行いをします。

普遍性のあるはずの願いを叶えようとしたその先に待っている壮絶な最期が、印象的で好きだという感想は後を絶ちません。

おまけ感想:五日物語といっしょに観たい映画たち

この方のおすすめの観点は「女性の狂気」。「若くありたい」「愛されたい」「美しくなりたい」そういった誰しもが少なからず持っている欲求をおぞましくも美しく映した映画はやはり根強い人気があるようです。

「美しさに取り憑かれた女性」というテーマ性においてはニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ネオン・デーモン』も負けてはいません。実際にそういった共通項を見出して企画立てをしているシアターも存在する強烈なテーマ性を持っているのです。

こちらの方は、「赤の女王」をテーマに4本の作品をおすすめしています。中世〜近世モチーフの女王の姿は独特な神秘性があると同時に映画ファンをも魅了する強烈な色彩として記憶されているのです。

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五日物語のあらすじネタバレや感想まとめ

映画『五日物語』の紹介はいかがでしたか?これをきっかけに生々しくも美しく鮮烈なイタリア映画の世界やダークファンタジー映画巡りをしてみると楽しいかもしれません。

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