君の膵臓をたべたいの通り魔事件の犯人は？桜良の死因が病気でない理由を考察

2017年に公開された映画「君の膵臓をたべたい」は「キミスイ」という略で多くの方々に愛され大ヒットとなりました。「ラスト、きっとこのタイトルに涙する。」という公式のキャッチコピー通りに涙を誘われた方も多いでしょう。膵臓の病気を抱えたヒロイン桜良が前向きに生き主人公との仲を深める中で、桜良は通り魔事件の犯人に殺されるという悲痛な最後をとげてしまいます。

この記事では通り魔事件の犯人について、桜良の死因が病気ではなく通り魔に刺されてしまったというものだった理由について考察していきます。あらすじだけ読んだ方は単なる病気もので主人公は病気が死因であると無意識に思っていたかもしれません。それを覆す作者の意図を探ります。

「君の膵臓をたべたい」の映画は「住野よる」さんによる小説を原作に実写化された作品になります。映画以外にも漫画やアニメなど様々なメディアミックスが広げられている話題の作品です。映画監督は月川翔、脚本は吉田智子、ダブル主演である浜辺美波と北村匠海が活躍しています。

2016年度の「本屋大賞」の第2位を受賞し、その他にも「読書メーター読みたい本ランキング」では1位をとるなど様々な賞を受賞しています。累計発行部数は200万部を突破し一躍話題となった「君の膵臓をたべたい」。実写映画も評判がよく、中でもヒロイン役の浜辺美波もこの作品で高い評価を受けることとなりました。

「君の膵臓をたべたい」の作者である「住野よる」さんは名前のイメージからか女性に間違われやすいようですが、男性の作家です。年齢や経歴などは公に公表しておらず、その理由としては「本が一番前に出るべき」だというもの。ただ、一度ツイッターで年齢を公表されており(※現在該当ツイートは削除)、2015年に26歳だと呟いていたので計算してみると2018年の現在では29歳ということになります。

プロを目指し始めたのが大学生だという住野さんはいくつかの賞に落選しました。しかし「君の膵臓をたべたい」はたったひとりの人にでも読んでほしい、という思いから大手小説投稿サイトである「小説家になろう」に「君の膵臓をたべたい」を投稿します。

それが人気となり、双葉社が声を掛けたことにより書籍化されました。デビュー作にして大変な人気作品となります。「君の膵臓をたべたい」の後に発売された「また、同じ夢を見ていた」もまた高い評価を受けています。

「君の膵臓をたべたい」の監督は、これまでに「となりの怪物くん」や「センセイ君主」にも携わっている映像ディレクター月川翔。1982年、東京生まれ。東京芸術大学大学院映像研究科で黒沢清、北野武教授に師事STARDUST DIRECTORSに所属。映画「グッドカミング～トオルとネコ、たまに猫～」で「Short Shorts Film Festival & Asia 2012」ミュージックShort部門シネマティックアワード・優秀賞を受賞されています。

映画監督以外にもテレビドラマの監督や脚本、またミュージックビデオやCMも手がけています。ミュージックビデオではももいろクローバーZや、HKT48、奥華子などアイドルから実力派シンガーまで多数。元々「君の膵臓をたべたい」の原作が好きだったからこそ、原作にない部分を脚色することで原作ファンや住野よるさんが嫌な思いをしないかとプレッシャーを感じながらも見事に映画ならではの世界観を作り出していました。

「君の膵臓をたべたい」の世界を作り上げる魅力的なキャスト陣、現在と過去の回想の二つを織り交ぜながら進んでいくストーリー。ここでは主人公である「僕」とヒロインである山内桜良、そしてもうひとつの時間軸で描かれる主要人物たちのキャスティングを紹介していきます。

「君の膵臓をたべたい」の主人公である「僕」の役を演じたのは北村匠海。1997年11月3日生まれ、スターダストプロモーション所属。東京都の出身で、現在は俳優・歌手・モデルとマルチに幅広く活躍されています。スターダストプロモーションの男性アーティスト集団「EBiDAN」のメンバーであり、音楽ユニットDISH//のリーダーでもあります。

小学3年生の時にスカウトされたことがきっかけでスターダストプロモーションに所属した後、2008年にはNHK「みんなのうた」で放送された「リスに恋した少年」で歌手デビュー。同年公開された映画「DIVE!!」で初出演。映画「君の膵臓をたべたい」ではその演技に高い評価を受け、報知映画新人賞や日本アカデミー賞では新人俳優賞を受賞。今後の活躍が期待される若手の俳優となります。

「君の膵臓をたべたい」のもう一人の主人公でありヒロイン山内桜良役を演じているのは浜辺美波さんです。2000年8月29日、石川県出身で東宝芸能に所属しています。元子役という経歴を持った浜辺美波さんは2011年に行われた第7回「東宝シンデレラオーディション」に応募し、ニュージェネレーション賞を受賞したことで芸能界入りしました。同年公開の映画「アリと恋文」主演で女優デビューとなります。

浜辺美波さんは2015年にアニメが原作である「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の実写ドラマにて本間芽衣子役を演じたことで注目されます。「君の膵臓をたべたい」では僕役の北村匠海さんと同じく報知映画賞で新人賞、日本アカデミー賞では新人俳優賞を受賞するなど高く評価されました。

CMなどでも多く起用され、写真集も発売するなど活躍が目立ちます。漫画やアニメ原作の作品に出演されることも多く、「賭ケグルイ」では主人公蛇喰夢子を演じ、君の膵臓をたべたいとはまた違った表情が見れます。

映画「君の膵臓をたべたい」では原作小説とは違い、12年後の世界が描かれており主人公僕の現在の姿を演じるのが小栗旬。1982年12月26日東京都出身、トライストーン・エンタテイメント所属。父親が舞台監督であり、妻はモデルの山田優さんです。数々のドラマや映画に出演され、CMなどでも活躍する人気の高い俳優である小栗旬さんは、僕役の北村匠海さんの憧れの存在でもあります。

小学校6年生の時に内田有紀さんに憧れてオーディションに応募し合格したのちに、エキストラとして活躍。ドラマ「GTO」にて連続ドラマに出演を果たしてからは、「花より男子2 リターンズ」の花沢類役でブレイクし更に人気に火をつける作品となったのが「花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜」の佐野泉役。

現在では映画・ドラマ・ラジオ・テレビのバラエティ番組などにも出演し、絶対的な人気を誇っている。2018年には大河ドラマ「西郷どん」にて坂本竜馬役でも活躍。

12年後の世界での山内桜良の親友を演じるのは北川景子。1986年8月22日、兵庫県神戸市出身でありスターダストプロモーション所属。明治大学商学部卒業。元総理大臣の孫であるDAIGOさんと結婚したことでも話題になった女優です。元々は雑誌「Seventeen」にてモデルをされており、2003年テレビドラマ「美少女戦士セーラームーン」の火野レイ（セーラーマーズ）役で女優デビューを果たします。

17歳の時に地元神戸でスカウトされたことをきっかけに、雑誌「Seventeen」のオーディションを受け合格しモデルデビュー。女優業に挑戦してからはテレビドラマ「ブザービート」や「謎解きはディナーのあとで」など人気作品に出演し、女優としての道を着々と歩んでいきます。

「中居正広のミになる図書館」（テレビ朝日）で、「5万人が本気で選んだ最も美人だと思う女性芸能人ランキング」ではほぼ全世代で1位に選出されるなど綺麗な顔立ちも人気の要因の一つです。

物語は現在の僕から始まります。母校で教師をしている僕(小栗旬)は高校の図書館が老朽化で取り壊される事を理由に、男子生徒と友に本の整理をすることになりました。高校生の時の僕もまた図書委員をしており、本の整理をする中である記憶を思い出すことになります。それがヒロインである山内桜良との出会い、そして彼女と過ごした日々のことであり、物語の時間軸は高校生の時の回想へと移っていきます。

盲腸の手術後の経過観察で病院の待合室にいた僕は一冊の本を拾います。それは桜良が膵臓の病気を患ってから書き始めた「共病文庫」という名の闘病日記でした。桜良は明るい性格でクラスの人気者であり、内気で暗い性格の僕とは真逆のタイプの人間です。桜良は本を拾って秘密を知ったからには責任をとって、と共病文庫に記していた「死ぬまでにしたい事」を僕としていくことになります。

桜良の死ぬまでにしたい事に付き合うことになった僕は初めは戸惑いながらも徐々にその関係を深めていきます。ホルモンやラーメンを食べる、スイーツパラダイスに誘ったり、突然泊まりの旅行へと僕を連れ出していったりと振り回しますが、二人の関係は友達以上恋人未満のような微妙な関係を続けていきます。

そのうち桜良は僕のことを「仲良しくん」と呼んだりして、親友恭子やクラスメイトに波紋を広げながらも物語は進んでいくのです。

紆余曲折を経ながらも僕は桜良と仲良くなり、桜良の人間性や明るさに惹かれていき尊敬の念を抱きます。桜良が検査入院から戻り一時退院した後の待ち合わせで、彼らにとっての特別な言葉「君の膵臓をたべたい」とメールで伝えたものの…桜良は待ち合わせ場所にたどり着く前に通り魔の犯人に殺されてしまうという結末が待っていました。

死因が病死ではなく殺人によるものになってしまったのです。僕は待ち合わせにこない桜良を不思議に思いつつも長い時間待ち合わせ場所のスイーツパラダイスにて待っていました。帰り道にビルの大きな液晶モニターではニュースが流れており、そこで始めて桜良が通り魔に刺されてしまうというショッキングな真実を知ることになります。通り魔事件の犯人とは一体誰なのでしょうか？

通り魔事件の犯人として一部で元彼との考察や憶測もあるようですが、元彼であるクラス委員長は犯人ではありません。ではなぜ犯人という噂があるのか。これに関しましては桜良の元彼である委員長が「しつこい人間」であること(桜良の話から)、また桜良の家の周りをうろついた挙句に僕を殴るという悪い面があったからだと思われます。勘違いされやすい人間性のせいで犯人だという話が流れていました。

桜良を死へと至らしめた通り魔事件の犯人とは誰なのか？それは「どこの誰かも知らない犯人」なんです。原作でも映画でも役名すらなく、名前さえわからない人間が通り魔の犯人でした。犯人はその後逮捕されたとのニュースがありましたが、少なくとも名前などは一切でていません。もちろん桜良も犯人の名前を知ることはなく、元彼が通り魔事件の犯人でもありませんでした。

では通り魔に関しての伏線はあったのかどうか。通り魔事件については桜良と僕が図書室で話しているときにも新聞に書いてありましたし、作中のテレビニュースなどでも流れていました。それ以外の詳細な部分は原作でも映画でも描かれてはおらず、視聴者は桜良の病気に目がいっている為に死因が病気ではないとは思ってもいなかったでしょう。

通り魔はなぜ桜良を殺したのか、それは「通り魔」だからに過ぎません。たまたまあの待ち合わせの日に運悪く通り魔事件の犯人と出くわしてしまったことが桜良の運命を決めてしまったのです。通り魔という名の通りに犯人はただ道端で会った桜良を殺したんだと思います。もちろん彼女の病気などを知るはずもなく、桜良を殺さなければならない理由はありません。偶然居合わせてしまったことが理由です。

本来なら病気が死因になるだろうと思われていた桜良。例外なく僕も死因は病気になると疑いもしませんでした。しかしそんな僕の思いにも関わらず死因は突然の通り魔事件によるものになってしまったのです。なぜ桜良の死因は病気ではなかったのか？なぜ通り魔に殺されるという悲痛なものだったのか考察していきます。

まず僕は桜良が死んだあとにこんな事を考えていました。「残り少ない彼女の命だけは世界が甘やかしてくれると信じきっていたんだ。世界は差別をしないんだ」この言葉から、いつどんなことが起きて死ぬかはわからない。明日病気で死ぬかもしれないし、刺されて死ぬかもしれない。だからこそ「今を大切に生きるべき」というメッセージだと考えられます。

病気で自分の余命が少ないとわかっていた桜良は懸命に「今」を大事に生きていました。僕も桜良と交流することで少しずつ人と関わることの大切さを知っていきます。病気で死ぬまでは彼女が生きていられる、と信じて疑わなかった僕は現実の儚さを思い知らされるのです。現在軸の僕は桜良の遺書を見つけた後に、教師を退職する事をやめ「今」を大切に頑張ることとなりました。

この記事では映画「君の膵臓をたべたい」の通り魔事件の犯人、そして桜良の死因が病気ではなかったことについてまとめました。いかがだったでしょうか？予想を覆される結末に驚いた方も多かったのではないでしょうか。膵臓の病気が死因ではなく、通り魔事件が死の理由になったのには「今を大切に」という思いがこめられていました。

通り魔事件の犯人は元彼とも噂されていましたが実際にはどこの誰かもわからない人間でした。病気であろうとなかろうと、人間はいつどのようにして死ぬのかはわからない。当たり前とはいえ、病気が前面にでているだけになかなか想像のできない結末だったと思います。他の病気を題材にした映画とは一味違った「君の膵臓をたべたい」、見返してみるとまた考えが深まるかもしれません。