2018年11月04日公開
2018年11月04日更新
紙の月は実話のモデルがある?原作小説の元ネタになった横領事件とは?
「紙の月」の原作は実話の事件がモデルとなっているのでしょうか?角田光代の大ベストセラー小説を原作とした映画「紙の月」は、2014年邦画映画賞で最多の29冠を獲得。何と興行収入9億円を突破、超大ヒットを記録した邦画映画として話題となっております。宮沢りえ主演で描いた、2014年を代表するクライムサスペンス映画「紙の月」の原作モデルとなった実話の事件についてまとめていきます。
目次
紙の月は実話映画?モデルとされる話に迫る!
角田光代のベストセラー小説「紙の月」は、宮沢りえ主演で描いたクライムサスペンス映画として話題ですが、「紙の月」の原作モデルとされる巨額横領事件の実話の真相について迫っていきます。
紙の月のあらすじ
バブル崩壊後の1994年。梅澤梨花(宮沢りえ)は、夫の梅澤正文(田辺誠一)と二人暮らし、わかば銀行の契約社員として外回りの営業をしていました。丁寧な仕事ぶりが顧客や上司に評価され、何不自由ない生活を送っているように見えた梨花だったが、自分への関心が薄く、鈍感な夫との間には、空虚感を感じているのでした。
ある日、梨花は銀行の顧客である平林孝三(石橋蓮司)から大口の国債契約を取ります。その際、セクハラされそうになりますが、孫の平林光太(池松壮亮)に助けられるのでした。その後、梨花は大学生の光太と偶然にも再会、光太のアプローチに惹かれるように身体を重ねる関係になっていきます。
そして、光太には消費者金融から150万円の借金があることを知った梨花は、同僚の相川恵子(大島優子)を騙し、平林が申し込んだ定期預金200万円を横領します。借金返済の為に困っていた光太に、その横領した金を貸してしまうのでした。
過去、梨花のカトリック系女子中学生時代、その学校では、“受けるより与える方が幸いである”という教えのもと、「愛の子供プログラム」という募金活動が行われていました。そのお返しに、左頬に火傷痕があるアジアの少年から感謝の手紙を貰っていました。梨花はその募金活動にのめり込んでいき、父の財布から5万円を盗んでまで寄付してしまいました。結局その行為によって、「愛の子供プログラム」は中止となってしまいました。
夫の正文の海外転勤が決まったのだが、仕事を理由に日本に残った梨花は光太と派手な暮らしを続けていました。梨花は光太の為に使う金の為、横領を益々エスカレートさせます。自宅にパソコンとプリンタを購入し、銀行の証書を持ち帰り、証書の偽造や印鑑の複製までしました。そして、光太が若い女といるところを梨花に見られ、ついには別れてしまうのでした。
ベテラン行員の隅より子(小林聡美)は、最初に横領した定期預金の書損処理の証書が無いことに気づきます。梨花が怪しいと読んだより子によって、ついに数々の横領がバレてしまい、次長から支店長にまで報告されてしまったのです。そして、梨花はその場から逃走し、国外へ逃亡してしまうのでした。
紙の月の映画キャストについて
映画「紙の月」梅澤梨花/宮沢りえ
映画「紙の月」で、主人公の梅澤梨花を演じるのは、前作から7年ぶりの映画主演となる宮沢りえさんです。
映画「紙の月」平林光太/池松壮亮
映画「紙の月」で、梨花の不倫相手であり、大学生の平林光太役を演じるのは、俳優の池松壮亮さんです。
映画「紙の月」相川恵子/大島優子
映画「紙の月」で、相川恵子を演じるのは、AKB48卒業後、初めて女優としての本格的な映画出演となる大島優子さんです。
映画「紙の月」梅澤正文/田辺誠一
映画「紙の月」で、主人公である梨花の夫、梅澤正文役を演じるのは、俳優の田辺誠一さんです。
映画「紙の月」平林孝三/石橋蓮司
映画「紙の月」で、梨花の不倫相手で大学生の光太を孫に持つ、平林孝三役を演じるのは、俳優の石橋蓮司さんです。
映画「紙の月」隅より子/小林聡美
映画「紙の月」で、梨花の横領を暴いたベテラン行員の、隅より子役を演じるのは、女優の小林聡美さんです。
紙の月の実話説に迫る!原作の元ネタのモデルとは?
日本には銀行女性行員による犯行の、3大巨額横領詐欺事件が実話として存在します。そのいづれの事件も、女が男に貢ぐ為の金欲しさによる犯行でした。まるでこれらの事件は、「紙の月」の原作モデルの実話であるかのようです。それぞれの事件を振り返り「紙の月」の実話説に迫っていきます。
滋賀銀行9億円横領事件の実話モデル
日本人女性の犯罪史上空前の巨額着服事件の実話が存在します。それは、滋賀銀行9億円横領事件と言われる、まるで「紙の月」の原作モデルであるかのような実話であり、銀行女性行員が起した巨額横領事件の衝撃的な実話をご存知でしょうか?
1973年(昭和48年)10月21日、滋賀銀行山科支店の女性行員である奥村彰子(当時42歳)が、9億円にも及ぶ巨額横領の容疑で逮捕されました。奥村は、1973年2月までの6年間で、およそ1300回にわたって9億円もの金を着服し、そのほとんどの金を10歳年下の元タクシー運転手である山県元次(当時32歳)に貢いでいたのです。
1965年の春、滋賀銀行の北野支店に勤務していた奥村(当時35歳)は、タクシー運転手の山県(当時25歳)と出会います。その後、山科支店の勤務となった奥村は、帰宅途中のバスで山県と偶然再会し、二人は付き合うようになりました。奥村にとって、山県は魅力的な男であったのだろう、始めは少額のギャンブル資金を援助していたが、その額は次第にエスカレート、ついには自分や家族の貯金を切り崩すほどになっていたのです。
そしてついに奥村は、最初の犯行を犯します。自分に好意を抱いていた顧客の定期預金100万円を、偽造証書で解約、その金を山県に貸してしまいます。山県は借りた金をギャンブルに注ぎ込むも、返す素ぶりは無く金の要求は続き、奥村は更に犯行を重ねてしまいます。顧客の預金証書を偽造したり、印鑑偽造、架空名義による預金引き出しと、犯行も大胆になっていったのでした。
1973年2月、奥村は山科支店から東山支店に移動する事になり、億を超す巨額金を横領していたことが発覚してしまいます。同時に奥村と山県は姿を消し、2月19日、全国に指名手配されました。10月15日、山県は下関で逮捕され、奥村の所在も供述してしまいます。10月21日、ついに滋賀県警は偽名を使って大阪のアパートに潜伏していた奥村を逮捕するのでした。
足利銀行2億円詐欺横領事件の実話モデル
またしても女性銀行員による巨額横領事件の実話が発生しました。それは、足利銀行2億円詐欺横領事件と言われます。こちらも「紙の月」の原作モデルであるかのような実話の事件で、銀行女性行員が起した巨額横領事件の衝撃的な実話をご存知でしょうか?
1975年(昭和50年)7月20日、足利銀行栃木支店の貸付係である大竹章子(当時23歳)は、架空の預金証書を使い、2億1000万円を不正に引き出していたことが発覚、詐欺および横領容疑で逮捕されました。またその金は、石村こと阿部誠行(当時25歳)に全て貢いでいたのだったのです。
昭和48年夏、大竹は友人と東北を旅行した際、「国際秘密警察員の石村」と名乗る男(阿部)と知り合います。大竹は、"世界中を駆け回り国家のために活動している" 阿部に興味と憧れを抱来ますが、大竹はそれを逆手に利用されてしまいます。大竹に結婚話で近づき、「国際秘密警察を抜けるため」の借金を要求する。これに対して大竹は自分の預金や家族から借金した金を阿部に渡してしまうのでした。
阿部による要求金額はエスカレートし、大竹は銀行の金に手をつけてしまいます。融資調査役の検印を白地の手形・伝票(複写分含む)に密かに捺し、現金化する手口を繰り返していきました。一方の阿部は、大竹から貢がせた2億1000万円で、競馬情報会社やクラブを経営し愛人と派手な生活を送っていたのでした。
本店の監査人が抜き打ちで栃木支店の帳簿を監査したところ、次々と不審な担保貸付けの伝票が出てきます。これによって大竹の横領が発覚して、逮捕となります。阿部は愛人と逃亡するも逮捕されます。逮捕された大竹は、阿部に関して本名・住所・職業など一切知らず、捜査段階で東京・世田谷に住居する自称・会社社長の阿部であることを初めて知るのでした。
三和銀行オンライン詐欺事件の実話モデル
3大巨額横領詐欺事件の最後も、銀行女性行員による詐欺横領事件の実話です。それは、三和銀行オンライン詐欺事件と言われ、こちらも「紙の月」の原作モデルであるかのような実話の事件であり、銀行女性行員が起した巨額横領事件の衝撃的な実話について迫っていきます。
1981年(昭和56年)3月25日、三和銀行(当時)大阪茨木支店において1億8,000万円の架空入金が発覚しました。オンラインによる入金操作をしたのは預貯金係の伊藤素子(当時32歳)、恋人である南敏之(当時35歳)と共謀の上、架空口座に振替入金があったように見せかけて金を騙し取っていました。その後、伊藤は1億8,000万円のうち、現金5,000万円を引き出しフィリピンのマニラへ逃亡したのでした。
当時ワイドショーをはじめとするマスコミは、「美人銀行員のカネと男」などと一斉にこの事件を大きく取り上げました。伊藤は、ある男との不倫関係を12年間にも及び続けていたのだが、そんな伊藤の前に旅行代理店を経営する南敏之が現れます。伊藤にも妻子がいたのだが、煮え切らない男より魅力を感じ、直ぐに南に夢中になってしまうのでした。
実は南は、旅行代理店の経営に行き詰まり金策に走り回っている状況で、伊藤からも借金を重ねるようになります。そして伊藤の預金がゼロに近づく頃、ついに南は銀行のオンライン詐欺を伊藤に持ちかけます。しかし伊藤はそれを頑なに断りますが、預金も無くなり、この男に捨てられたら、と感じたことで犯行を決意するのでした。
そして犯行当日、出社した伊藤はオンラインを不正に操作し、事前に開設しておいた4つの架空口座に計1億8,000万円を入金します。その後、現金5,000万円を引き出し、南に5,000万円を渡し、伊藤はその内の500万円だけを持ってフィリピンのマニラへと逃亡するのでした。しかし、南はフィリピンには行かず、犯行当日もアリバイ工作をしていました。その後、伊藤はマニラで、南は日本で逮捕されるのでした。
紙の月のラストシーンについて考察
映画「紙の月」は、追いつめられた梨花が椅子で銀行の窓ガラスを割ってその場から逃げ出します。そしてその後のラストシーンには様々な解釈があります。
梨花は海外へ逃亡
東南アジア風の海外に逃亡した梨花は、かつて「愛の子供プログラム」で自分が救った少年に出会います。少年は立派に成長して大人になっており、その彼から青いりんごを貰った梨花はそれを一口し、街中に消えるのでした。ここで、映画は終了しエンドロールとなります。
梨花が通っていたカトリック系女子校時代の教えで、“受けるより与える方が幸いである”という言葉があります。このラストシーンで梨花が以前寄付していた少年を登場させる事で、これまでの"与える"立場から、"受ける"立場に逆転したことを表現していると考えられます。
映画では、梨花は契約社員になった初の給料で、夫の正文に安価なペアウォッチをプレゼントします。しかし夫の正文は、今度ゴルフで使うと言いい、全く嬉しそうではありませんでした。その時の梨花の表情はがっかりしているようでした。その後、夫は海外みやげで高級ブランドの腕時計を梨花に買ってきます。それを受け取った梨花は嬉しそうではありませんでした。
梨花は自分よりも貧しい人に "お金" という善意を与えることで、自己満足を得ていました。そして、梨花は貧しいと感じた光太にお金を貢ぐことによって、自己満足を得ていました。そのラストでは梨花の、逆転した立場を描くことで善意とは何であるかを考えさせられているように感じます。
映画「紙の月」では、吉田大八監督があえて様々な解釈が生まれるようなラストにしています。これは監督自身の狙いでもあり、見る人によって様々な解釈を与えるようにした作品としたからです。
原作小説では、梨花は逮捕される可能性があるけど国境を超えるか、山奥で静かに暮らすと迷っていましたが国境を超えタイに行くことを決意します。そこでタイの警察にパスポートを見せるところで終わりました。原作小説でも逮捕されたかどうかは明確にはなっていません。こちらも読み手に様々な解釈を与えているようです。
紙の月の映画を見た感想は?
「紙の月」(2014)を観た。女性行員の横領事件。お金がすごく欲しいだけでは共感できないかも。宮沢りえさんはとてもきれいで細かった。世が世なら、夏目雅子さんも適役。エスカレートして行く後先考えないあの感じはリアルにコワい。バリーンは良しとしよう(てかあの大学生にはときめかないじゃろ…
— 森ん (@morin08227) October 20, 2018
実際に原作モデルとなる実話の事件もあるが、「お金がすごく欲しいだけでは共感できないかも。」という言葉の通り、一般には金が欲しいだけでここまでの横領は出来ることではない。宮沢りえさんの美貌も映画の見所の一つのようです。
映画「紙の月」観た。録画が途中までしか録れてなくてiTunesでレンタルして全部観た。これは以前原作も読んだし、この小説の元となったと言われる「三和銀行オンライン詐欺事件」のノンフィクションも読んだ。おもろかった。巨額のお金欲しいと思うけど全て捨てて横領出来るのか?無理。パンピーだな
— ミチオ (@michio84) May 18, 2018
紙の月の原作モデルとされる「三和銀行オンライン詐欺事件」という実話の事件も話題であり、ノンフィクションならではのサスペンスに面白味があるようです。
#紙の月 八日目の蝉以来の角田光代作品。女性銀行員による多額横領事件を複数の目線で描く。ありもしない本当の自分を探してもがく苦しさと儚さが痛いほど伝わる。映画の主役が宮沢りえってのが見事にハマってると思う。 https://t.co/OzLo9JZwLz
— テデスコ (@teedesuko) August 26, 2018
原作著者である角田光代のクライムサスペンス作品に、その主演として宮沢りえの演技が見事にハマっていると話題のようです。
映画『紙の月』を観ました。いやあ、悪い、悪い女だ。銀行のお金を着服する銀行員の話なんですけど、どのような手口で実行したのか(how)よりも、なぜしたのか(why)の描写が面白かった。過去にあった実在の事件を参考にした物語だそうです。
— 松岡厚志 / HI MOJIMOJI (@513MHz) April 9, 2017
ここでも、原作モデルとなった実話の事件がある事で、横領に至るまでの背景描写がリアルである紙の月が面白いと話題となっております。
紙の月はモデルとされる実話があった!
映画「紙の月」には、その原作モデルとなるような実際の横領事件による実話がありました。男の為に犯行を犯す女性行員の背景を描写し、リアルな犯罪サスペンス映画のラストは、見る側に様々な解釈を持たせました。紙の月は偽物だから壊したっていいという考えと、お金では自由になれないという現実を考えさせられた映画でした。