思い出のマーニーが百合映画と言われる理由は?二人の関係・画像を考察

『思い出のマーニー』はとある二人の女の子の物語であり、見ようによっては女の子同士の恋愛を描いた「百合映画」だと公開当時からネットでは話題になっていました。主要人物が女の子二人である物語は他にも多くありますが、思い出のマーニーはなぜ百合映画だと言われているのでしょうか?ネタバレも含め、映画のストーリーと絡めつつ主人公杏奈の心境の変化や二人の関係性について考察します。

思い出のマーニーが百合映画と言われる理由は?二人の関係・画像を考察のイメージ

目次

  1. 思い出のマーニーは百合映画?そう言われる理由や二人の関係も考察!
  2. 思い出のマーニーとは?
  3. 思い出のマーニーが百合映画と言われる理由は?
  4. ラストで明かされる思い出のマーニーの杏奈とマーニーの関係とは?
  5. 思い出のマーニーの杏奈とマーニーのイラスト・画像4選!
  6. 思い出のマーニーは百合映画ではない素晴らしい映画だった!

思い出のマーニーは百合映画?そう言われる理由や二人の関係も考察!

ここで言う「百合」とは、花の名前ではなく「女性の同性愛」やそのジャンル・作品のことです。女性同士の恋愛(ガールズラブ)を指すことも多くありますが、女性同士の精神的なつながりであったり、友達以上恋人未満とも言える親密な関係も含みます。ガールズラブと比較した場合、百合は後者の意味合いが強く、より広義的な女性同士の関係を示します。

『思い出のマーニー』では杏奈とマーニーがただ仲を深めていくだけでなく、作中での二人のスキンシップや素直な愛情表現など「百合」らしい表現が多くあります。ネットでも話題になっていたあのシーンや、杏奈とマーニーのあの会話など、作中のシーンや画像などをピックアップしながら、『思い出のマーニー』が百合映画と言われる理由となる二人の関係を紐解いていきます。

スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

思い出のマーニーとは?

思い出のマーニーとは、2014年7月に公開されたスタジオジブリ制作、米林宏昌監督による長編アニメーション映画です。原作はイギリスの作家、ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学作品(原題:When Marnie Was There)です。

主人公の杏奈は夏休みの間、北海道の田舎で暮らすことになります。トラウマから自分に心を閉ざした杏奈は、湿っ地屋敷と呼ばれる古びた屋敷で、「思い出のマーニー」のタイトルにもあります金髪青眼のマーニーという少女と出会います。マーニーと打ち解けていくうち、杏奈の身には次々と不思議なことが起こるというお話です。

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思い出のマーニーが百合映画と言われる理由は?

このようにジブリ初のWヒロインである思い出のマーニーですが、ただ女の子二人の物語だというだけで百合と噂されていたわけではありません。思い出のマーニーの中に散りばめられた百合要素について細かく見てみましょう。

(1)実際に起用されたキャッチコピーが百合

作中の考察をする前に、まずは映画のキャッチコピーについて考えてみましょう。キャッチコピーには『思い出のマーニー』に込められた思いや背景が色濃く出ています。予告などで用いられた画像から公開前に伝えたかった作品の魅力と「百合らしさ」とは何でしょうか。

キャッチコピーは「あなたのことが大すき。」予告のポスターの時点でここまでハッキリと「好意」を言葉にしています。ポスターにはマーニーだけが描かれており、おそらくマーニーの正面にいるのは杏奈でしょう。マーニーが杏奈に向けて言った言葉か、杏奈からマーニーへの言葉か、もしくはその両方なのでしょうか。実際に思い出のマーニーを見た後は、このたった一言の「大すき」に込められた意味の深さと理由を実感できます。

思い出のマーニーの予告編でも出てくる他のキャッチコピーとして「あの入り江で、わたしはあなたを待っている。永久に――」というフレーズもあります。ラストを知った上で、マーニーはずっと湿っ地屋敷で杏奈を待っていたかと思うと、胸が締め付けられるような思いになります。足繁く杏奈が湿っ地屋敷へ通うのと同じく、マーニーも杏奈のことを待っていたのです。

(2)キャッチコピー候補はさらに百合

実際には使われなかった思い出のマーニーのキャッチコピー候補の中には「ふたりだけの禁じられたあそび」「ふたりだけのいけないこと」というフレーズもあったようです。実際のコピーより妖しい雰囲気が感じられます。『思い出のマーニー』の物語の舞台のメインは「ふたりだけ」の世界であり、誰にも言ってはいけない秘密の関係であることが物語の鍵だと考えられます。

(3)マーニーから杏奈へのスキンシップの多さが百合

思い出のマーニーはとにかく距離が近い!杏奈とマーニーがハグしたり、触れ合ったりする場面が非常に多いです。ボーイッシュな見た目に反して内気な杏奈に対して、一見大人しそうなお嬢様であるマーニーは積極的にスキンシップをとります。それぞれの見た目と中身のギャップ、さらにお互いの対照的な性格は、この二人の関係がただの友人の一人ではなく、特別な相手だったのではないかと思ってしまうのが「百合」の理由の一つでしょう。

さらに注目していただきたいのが画像の杏奈の表情です。こちらの画像ではマーニーが杏奈の肩を抱いています。杏奈は浴衣なのでこの時点ではほとんど初対面で、人付き合いが苦手な杏奈はもちろんスキンシップ自体に慣れていないこともありますが、先ほどの信子たちとのやり取りとはまた違った反応です。すでにマーニーに対する信頼や特別感を抱いているように見えます。

こちらの画像は思い出のマーニーでのお互いに質問をし合うシーン。二人のこの会話で、マーニーという少女の人物像と、杏奈が持つ自分や周りに対する考え方が明らかとなります。杏奈は頼子が自分を厄介払いするためにこちらへ寄越したと思い込んでしまっていました。

湖が満潮の時にしか現れないマーニー。このシーンではマーニー自らがボートを漕いで杏奈を迎えにきます。後ろから抱きかかえるような形でボートを漕ぐシーンはまさにデートそのもの。

(4)ダンスパーティーでの杏奈の嫉妬

『思い出のマーニー』が百合映画だと言われた一番の理由と言っても過言ではない、マーニーのお屋敷(湿っ地屋敷)で開かれたダンスパーティーに誘われ、こっそり杏奈も参加するシーンです。マーニーと杏奈のダンスシーンはみているこちらも照れ臭いようなドキドキが詰まった場面でした。

ここで百合における最大のタブー、男性キャラの介入が発生します。この男性、和彦はマーニーの幼馴染であり後に結婚相手となります。和彦と踊っているマーニーを見た杏奈が嫉妬し、それに気付いたマーニーが「私たちも踊りましょ。」と提案します。この杏奈の嫉妬が非常にこの作品の百合らしさを生み出す最大の理由だと考えられます。

(5)物語に度々出てくる花の意味

花売りに扮してパーティーに紛れ込む杏奈。舞踏会というシチュエーションがどこか現代らしくはない場面です。思い出のマーニーを見るうちにところどころ違和感を感じさせられる部分も出てきて、マーニーの正体について考えさせられます。ここで杏奈が持っている紫色の花にも実はちゃんと理由があります。

以前マーニーが杏奈にプレゼントしたのもこの花でした。ムシャリンドウという花で、リンドウの花言葉は「あなたの悲しみに寄り添う」だそうです。杏奈が抱える葛藤に対して寄り添いたいというマーニーの思いが込められています。

(6)悩みの共有と直接的愛情表現

マーニーに連れられお屋敷の近くできのこや花を摘みながら、杏奈が自らの悩みをマーニーにぶつけます。肉親が相次いでなくなったこと、叔母が役所からお金をもらっているため本当に愛されているかどうか不安なこと。マーニーに対する羨望も含めて初めて自分の気持ちを吐露します。杏奈の思いを聞いたマーニーもまた、自らの境遇について杏奈に話します。

画像にあるように、きのこを狩るマーニーとその知識の豊富さを賞賛する杏奈。マーニーがきのこに詳しいのは父親の教えだと知った杏奈は、父親を亡くしたコンプレックスを刺激された反動で悩みを吐き出したのでしょう。信子に対して「太っちょ豚!」と言い放った時と状況はよく似ています。杏奈が思う「普通の」生活を送ることができているであろうマーニーに対して、無意識下で羨ましく感じていたのかもしれません。

マーニーは杏奈の叔母に対する悩みを、「でもその(お金をもらっている)ことと、叔母様があなたを愛しているかは別よ。」と窘めたあと、静かに杏奈を抱きしめて「泣いてもいいよ杏奈。」「私はあなたを愛しているわ。」「今まで会ったどんな女の子よりも、私はあなたが好き。」と口にします。友情も恋愛感情も超えた深い愛を抱いていたことがわかります。

また、マーニー自身も実は辛い境遇で育っていたことを告白します。その事実を聞いた杏奈も先ほどのマーニーのセリフをなぞらえて「かわいそうなマーニー。」「私もマーニーのことが一番好きだよ。」「今まで会った誰よりも。」杏奈のマーニーへの愛情はある種、特別な感情であったのではないかと考えられます。

ラストで明かされる思い出のマーニーの杏奈とマーニーの関係とは?

思い出のマーニーは少しミステリー要素も含んでおり、終盤ではマーニーの正体について杏奈が探っていくことになります。マーニーとは誰で、杏奈とマーニーとは実際にはどういう関係なのでしょうか?

(1)マーニーと出会う前の杏奈

杏奈は実の両親と祖父母を幼少期に亡くし、祖母の葬儀で親戚一同からたらい回しにされたこともあり「自分はいらない子だ」と思っていました。そのため、里親の頼子が自分に関する養育費を自治体から支給されていると知った際もショックを受け、元々の内気な性格に拍車がかかっている状態。持病の喘息の療養という名目で、夏休みの間だけ親戚のいる田舎町にやってきました。

身内が相次いで亡くなった孤独さと、葬儀での一件、さらに年齢(12歳)も相まって、トラウマと自己肯定感の低さと反抗期でかなりこじらせている様子です。人との付き合い方が下手で、学校でも孤立しているようです。

画像は親戚宅の近所に住む信子らと一緒に七夕祭に参加したシーン。社交性のない杏奈とは対照的に馴れ馴れしく接してくる信子に対し、杏奈は内心いら立ちを覚えます。立て続けにコンプレックスを刺激されたために信子に対して「太っちょ豚!」と暴言を吐くという過激な一面を見せる場面も。我に帰るも、信子に核心を突かれた杏奈は逃げるようにその場を去ります。

(2)マーニーとの出会い

湿っ地屋敷のある入り江へと逃げ込んだ杏奈は、マーニーと出会います。長い間誰も住んでいないはずの湿っ地屋敷に住んでいるという不思議な少女でしたが、なぜか自然と杏奈は打ち解けることができます。

物語としては、杏奈が初めて湿っ地屋敷を見た日の夜、夢の中に少女が出てきます。再び湿っ地屋敷に訪れて出会ったマーニーは、夢に出てきた少女とそっくりだったのです。物語全体を通して、マーニーの正体とは一体何なのか、そして杏奈との関係が重要なポイントとなります。ちなみに幼少期の杏奈の回想シーンではマーニーそっくりの人形を抱えていますが、こちらはミスリードのようです。

(3)マーニーの正体

上述の出来事の辺りでは湿っ地屋敷が改装され新たな住人がやってきます。その一家の娘、彩香(さやか)と杏奈が出会い、マーニーについての手がかりをいくつか見つけます。マーニーと心を交わした杏奈でしたが、マーニーとの時間は不可解な現象が多く、自身では自らが作り出した幻想だと考えていました。しかしこの手がかりによってマーニーが実在した人物であることが明らかになります。

マーニーによると、幼い頃父親にきのこについて教わったと言っていましたが、それはずっと小さい頃の話で、基本的に両親はあまり家におらず、ばあやとねえやと暮らしていました。厳しいばあやにはいじめられ、ねえや達には無理やり薄暗いサイロ(農作物や家畜用の飼料を備蓄する場所)へ連れて行かれたこともあったようにあまり家族に愛された過去ではなかったようです。

先ほどのダンスパーティでの画像にもいた、幼馴染の和彦と結婚します。しかし娘を授かるも先に先立たれ、マーニー自身も体を壊したため娘は全寮制の学校へ通わせざるを得なくなります。その結果、娘はマーニーを恨んだまま交通事故で娘の夫と共に亡くなってしまいます。残された娘の子供を引き取るも、今度はマーニー自身がわずか一年でこの世を去ってしまいます。

その残された孫娘が杏奈だったのです。マーニーと杏奈は実の祖母と孫娘の関係でした。作中でははっきりと言及されている訳ではありませんが、おそらく一緒に暮らしていた一年のうちに祖母のマーニーが話した昔話を追体験したのが、湿っ地屋敷でのマーニーとの体験だったのでしょう。マーニーが杏奈に対して見せた深い愛情の理由は、マーニーが祖母として杏奈を愛していたからでした。

思い出のマーニーの杏奈とマーニーのイラスト・画像4選!

思い出のマーニーを代表するこの画像では恋人つなぎで背中合わせの二人が描かれており、百合をテーマとした作品ではよくある構図ですが、二人の表情が晴れやかでないことが分かります。後述しますが、悩みを抱えた出会うはずのない二人が出会い、打ち解けていく様子は明るくもどこかほの暗さがあり、女性同士の精神的つながりや信頼関係のある「百合らしさ」の一部なのでしょう。

注目していただきたいのが杏奈のこの表情です。思い出のマーニーでは、マーニーと一緒にいる時に杏奈が高頻度で頬を染めています。特にこの画像のシーンでは、知らない人との関わる照れ臭さではなく、誇らしいような嬉しいようなポジティブな感情が見えます。また、対するマーニーはというと、杏奈のように頬を染める訳ではないですが、また違った愛情の眼差しを杏奈に向けているように見えます。

最後はマーニーが杏奈に「さぁ、私たちも踊りましょ。」と提案し、ダンスを踊り始めるこのシーンです。嫉妬した杏奈の表情に気付き、杏奈の手をとるマーニーの表情に注目です。杏奈が嫉妬した理由も何もかもわかっていたのでしょうか。

対する杏奈は慌てたり、苦笑いしたりと非常に表情豊かな所にも注目です。普段はあまり感情を表に出さない杏奈の表情をここまで引き出せたのは、マーニーの才能であり、彼女の孫娘への愛でしょう。

思い出のマーニーは百合映画ではない素晴らしい映画だった!

『思い出のマーニー』が百合映画だと言われる理由は、杏奈とマーニーがお互いに対して深く特別な感情を持った関係であるという部分だと考えられます。しかし物語の詳細を知れば知るほど、思い出のマーニーは百合映画という言葉で済ませてしまうには勿体無いほど素晴らしい映画です。

マーニーは祖母として杏奈を深く愛しており、積極的に愛情表現をします。対する杏奈は友情を超えた特別な感情をマーニーに抱き、悩みと向き合うことで人としての成長を遂げます。彼女たちの愛情と思いを素直にぶつけられる『思い出のマーニー』は非常にいい作品でした。

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