2018年07月07日公開
2018年07月07日更新
ブレードランナーのあらすじ・結末をネタバレ!傑作SF映画の魅力を徹底紹介
『ブレードランナー』のあらすじをネタバレで紹介します。1982年に公開され、今日では「SF映画の金字塔」とも呼ばれている映画『ブレードランナー』は、その革新的な世界観や哲学的なテーマから、ファンの間で様々な考察が繰り広げられている名作です。この記事では、『ブレードランナー』および続編『ブレードランナー2049』のあらすじ・結末をネタバレで紹介、さらにその魅力を徹底解剖していきます。
目次
ブレードランナーのあらすじ・結末をネタバレ!傑作SF映画と言われる魅力とは?
1982年に公開されたリドリー・スコット監督による映画『ブレードランナー』は、「SF映画の金字塔」とも呼ばれる名作です。この記事では、『ブレードランナー』および続編『ブレードランナー2049』のあらすじと結末をネタバレで紹介するとともに、その魅力を探っていきます。
ブレードランナーとは?
ブレードランナーの基本情報
『ブレードランナー』は、1982年6月に公開されたリドリー・スコット監督による実写映画です。それまでのSF映画にはスペースオペラと呼ばれる「宇宙を舞台にした大冒険」を描く作品が多く、同時期には『スターウォーズ』や『スタートレック』などが流行していました。
そんな中、『ブレードランナー』は「人類による宇宙への移住が始まった架空の近未来」を舞台としており、「酸性雨が降りしきる退廃的なロサンゼルス」の映像の美しさや、その哲学的なテーマから、前述のスペースオペラ作品とは一線を画す「ディストピア的な未来観」が特徴の作品です。
そのテーマの難解さゆえ、公開当時は一部が熱狂するのみに留まっていました。しかし後にじわじわと評価が広がり、今日では「SF映画の金字塔」と目される作品となっています。2017年には、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督により続編となる『ブレードランナー2049』が公開されましたが、こちらも高評価を得ました。
原作は小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
『ブレードランナー』は、SF小説家フィリップ・K・ディックによる『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の映像化作品でもあります。フィリップ・K・ディックはSFファンなら知らぬ人はいないほどの人気作家で、ポール・バーホーベン監督の『トータル・リコール』や、スティーヴン・スピルバーグ監督の『マイノリティ・リポート』など、数々の原作小説が映画化されています。
中でも1968年に刊行された『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は、40年以上も前の作品でありながら、そこで描かれている近未来には大変なリアリティがあります。残念ながらフィリップ・K・ディックは1982年3月、脳梗塞により『ブレードランナー』公開直前に亡くなりましたが、今でもその作品は根強く支持されているSF小説の大家です。
ブレードランナーのあらすじをネタバレ解説!
それではこの項からは、『ブレードランナー』およびその続編『ブレードランナー2049』のあらすじを、ネタバレ込みで紹介します。それぞれの作品に対して、「あらすじネタバレ」と「結末ネタバレ」を分けてお届けしていきます。まずは『ブレードランナー』のあらすじネタバレからです。
ブレードランナーのあらすじネタバレ
時は2019年、地球では環境破壊が進んでおり、人類の宇宙への移住が一般化した近未来が舞台です。地上に残った人々は、酸性雨が降りしきる中、都心部に密集して暮らしていました。物語の主人公・デッカードもその一人です。
デッカードはかつて、ロサンゼルス市警で人造人間「レプリカント」の処分を行う特別捜査官、通称・ブレードランナーとして、その任に就いていました。この時代、遺伝子工学が発達したことにより「レプリカント」と呼ばれる人造人間たちが生み出されていたのです。人類はレプリカントに危険な作業や過酷な労働を行わせることで、宇宙開拓を進めていました。
しかしこの頃のレプリカント「ネクサス6型」は、製造から4年経つと感情を持ち始め、人間の指令を聞かない可能性が出てくるという特徴があったため、人類にとっては危険な存在でもありました。このため、レプリカントは4年経つと安全装置が作動、動作を停止し、廃棄処分となる運命を背負っていたのです。ブレードランナーは、感情を持ち始めて暴走を始めたレプリカントを処分する役目を負っていました。
出典: https://kaumo.jp
そんな中、新天地で奴隷労働に従事させられていた6体のレプリカントが、人間に反逆、スペース・シャトルをジャックし地球に降り立つという事件が発生します。彼らはレプリカントの製造企業であるタイレル社へ押し入り、そのうちの2体がこの時に死亡、残りの4体は地上に潜伏します。
すでにブレードランナーを引退していたデッカードでしたが、この事件を発端にかつての上司に呼び出されます。潜伏したレプリカントの捜査をしていたブレードランナーが負傷し人手不足となったことから、デッカードが再び呼び出されたのでした。デッカードは、残りのレプリカント4体を捜索し殺害するように命じられます。
デッカードは情報を得るためタイレル社に協力を要請し、レプリカント・ネクサス6型の開発者、タイレル博士と面会します。その時デッカードは、タイレルの秘書レイチェルがレプリカントであることに気づきます。レイチェルは、タイレル博士の姪・レイチェルの記憶を植え付けられたレプリカントだったのです。自分の記憶が作られたものだと知ったレイチェルは、動揺して飛び出し、行方知れずとなってしまいます。
デッカードは潜伏中のレプリカントの捜査・処分を進める中で、レイチェルと再開します。タイレル博士のもとを脱走したことでレイチェルも処分対象となってしまっていて、デッカードは彼女の殺害の命も受けていました。しかしデッカードは、彼女を処分しません。彼はレイチェルに惹かれていたのです。未経験の感情にレイチェルは怯えますが、デッカードはそんな彼女にキスをします。
一方その頃、反逆したレプリカントのリーダー・バッティは、タイレル社の本社ビルでタイレル博士と対面することに成功します。バッティは、彼らの地球潜入の目的は自分たちの寿命を伸ばしてもらうことだと語りますが、タイレル博士はそれが技術的に不可能であること告げます。バッティは絶望し、博士の眼を潰して殺害、姿をくらまします。この情報を知ったデッカードは、バッティとの最終対決に突入していくのでした。
ブレードランナー2049のあらすじ
続いて『ブレードランナー2049』のあらすじをネタバレで紹介していきます。『ブレードランナー2049』は、前作『ブレードランナー』の監督であるリドリー・スコットが製作総指揮を務め、新たに『メッセージ』などで知られるドゥニ・ヴィルヌーヴが監督を担当した作品です。
舞台は前作『ブレードランナー』から30年後である2049年のアメリカ・ロサンゼルスです。30年前のネクサス6型以降も開発されていたレプリカントは、ネクサス8型が起こした暴走事件により長らく製造が禁止されていたましたが、ついに人間に服従する「ネクサス9型」が生み出されたことで禁止条例も解かれ、30年前以上に人間と共存するようになっていました。
物語の主人公であるKもその一人です。ロサンゼルス市警の警官として働くKは、自身も「ネクサス9型」のレプリカントでありながら、ブレードランナーとして旧型である「ネクサス8型」のレプリカントを処分する任務についていました。
Kが2022年に地球上で起きた大停電について捜査していたところ、その計画犯の一人がサッパー・モートンという旧型・ネクサス8型のレプリカントであることが判明、Kはサッパーの農場へと向かいます。格闘の末、無事にサッパーを処分することに成功したKですが、彼はサッパーの家で人間の遺骨と思われるものを発見します。
調査の結果、その遺骨の持ち主は、出産による帝王切開が原因で亡くなっていたこと、さらにその頭蓋骨にレプリカントのシリアルナンバーが掘られていたことが判明します。これら2つの事実は、それまで不可能だと思われていた「レプリカントによる出産」の可能性を示唆していました。
Kの上司・ジョシは、この件が外部に漏れて人間社会に混乱を招くこと恐れ、Kに対して関連する証拠を全て抹殺するように命じます。しかし自身もレプリカントであるKは、レプリカントが「人間的な行為」である出産ができるという事実に密かに魅了されていきます。Kは調査を進めるうち、遺骨の持ち主が、かつてブレードランナー・デッカードと恋をして逃亡したレプリカント、レイチェルだと突き止めます。
同時に、レイチェルが出産した事実は、ネクサス9型の製造会社であるウォレス・コーポレーションの代表、ネアンデル・ウォレスにも知られてしまうことになります。彼は社の繁栄のためにレプリカントを繁殖させることを望み、部下のラブにKの追跡を命じるのでした。
出典: https://eiga.com
再びサッパー・モートンの農場を訪れたKは、庭の木に刻まれた「10.16.21」という日付に気づきます。不思議なことに、それはKの子供時代の記憶として植え込まれている馬の玩具に刻まれていた日付と同じでした。さらに、レイチェルの子供がいた可能性を探してサンディエゴにある孤児院を訪れたKは、やはり子供の頃に見た記憶のあるかまどを見つけ、その中から前述の馬の玩具を見つけ出してしまいます。
レプリカントであるKには作り物の記憶が植えつけられているはずでしたが、この馬の玩具の形や刻まれていた日付、隠し場所が自分の記憶通りだったことから、Kは自分の記憶は誰かが持っていた本物の記憶なのではないかと疑うようになります。Kは、レプリカントに植え付けるための記憶を生み出す作家・アナ・ステリン博士のもとを訪ねて、自身の記憶が本物かどうか問いかけます。
アナ・ステリン曰く、人間の記憶をレプリカントに埋め込むことは法律で禁じられているが、Kが持つ記憶は本物だろうとのことでした。このことから、Kは「自分は自分自身の記憶を持つ人間なのではないか」「実はレイチェルの子供なのではないか」という思いにかられるようになります。真相を確かめるべく、Kはかつてレイチェルとともに失踪したブレードランナー・デッカードを探しに向かうのでした。
ブレードランナーの結末をネタバレ解説!
前項ではあらすじをネタバレで紹介しましたが、ここからはついに、『ブレードランナー』および『ブレードランナー2049』の結末を完全ネタバレでお届けします。まずは『ブレードランナー』の結末ネタバレからです。
ブレードランナーの結末ネタバレ①レプリカント反逆事件の結末
潜伏中のレプリカントを1体ずつ処分していくことに成功するデッカードでしたが、最後の1人であり今回のレプリカント反逆のリーダー・バッティとの戦いは、凄惨なものとなりました。レプリカントの中でもひときわ高い戦闘能力をもつバッティにデッカードは追い詰められ、隣のビルへ飛び移って距離を取ろうとした結果、転落寸前になってしまいます。
しかしその瞬間、バッティに設定された時限式の安全装置が作動、バッティは自分に死期が訪れたことを悟ります。バッティは転落しそうになっているデッカードを救い上げ、穏やかに微笑みながらその活動を完全停止します。こうしてこのレプリカント反逆事件は終結を迎えるのでした。
ブレードランナーの結末ネタバレ②デッカードの結末
続いて『ブレードランナー』のデッカードの結末について解説します。実は『ブレードランナー』にはバージョンがいくつかあるのですが、それによりデッカードとその恋人レイチェルが迎える結末も複数あります。
まずは1982年に初めて劇場公開されたバージョンの「オリジナル劇場公開版」と、海外での公開用に編集された「インターナショナル劇場版」の結末です。この2つのバージョンでは、バッティとの死闘後、自宅に戻りレイチェルと再会したデッカードは、レイチェルとともに逃避行に成功し、物語はハッピーエンドを迎えます。
対して、オリジナル版公開前の試写用のバージョンである「ワークプリント版」や、1992年にリドリー・スコット監督自身の編集により新たに公開された「ディレクターズカット版」、そして2007年の「ファイナルカット版」の結末では、デッカードとレイチェルが連れ立ってエレベーターに乗り込むシーンでエンディングを迎えていて、前述のハッピーエンドの逃避行シーンはすべてカットされています。
このため「デッカードたちは本当に逃げ切れたのか?」「ネクサス6型のレプリカントであるレイチェルはあとどれくらい生きられるのか?」「デッカード達は今後どうなっていくのか?」といったことを観客に考えさせるような、不安感の残る結末となっています。
また「ディレクターズ・カット版」および「ファイナルカット版」には、ラストでハッピーエンドの逃避行シーンが無いかわりに、デッカードが見る「ユニコーンの白日夢」のシーンが作中に追加されています。
詳細は後述しますが、このユニコーンのシーンにより、「実はデッカートもレプリカントなのではないか?」といった考察が可能になっています。レイチェルとの結末も含め、こういった想像の余地を残した結末こそ、リドリー・スコットが描きたかったものではないかと言われています。
ブレードランナー2049の結末ネタバレ
続いて『ブレードランナー2049』の結末をネタバレで解説します。「自分は実はレプリカントではなくレイチェルの子供なのではないか?」という思いにかられたKは、廃墟と化したラスベガスでかつてのブレードランナー、リック・デッカードを見つけ出します。
デッカードによると、レイチェルが生んだのは「娘」だということでした。デッカードはレイチェルの安全のため、妊娠中の彼女をレプリカント解放運動の活動家に預け自分は別行動をとっていたそうで、そのため未だに自分の子供に会ったことはないのだと語ります。
そんな中、ウォレスの命でKを追跡していたラブが姿を現します。Kはラブの部下レプリカントの攻撃により重傷を負いますが、そこにレプリカント解放運動のリーダー・フレイサたちが乱入してきます。Kはフレイサたちに救出されますが、デッカードはラブに拉致されてしまいました。レプリカント解放運動の隠れ家に連れてこられたKは、そこで真実を知ることになります。
フレイサ曰く、レイチェルが生んだ子供はやはり女の子で、実は記憶の創造者アナ・ステリン博士であるというのです。「自分は本当は人間なのでは?」と思っていたKは、その事実にひどくショックを受けます。そんなKに対しフレイサは、ウォレスたちににこれ以上の秘密がバレてアナ・ステリンが危険にさらされることの無いよう、デッカードを殺害するように言います。
一方その頃ウォレスは、デッカードに対して子供の正体を暴露するように迫っていました。新しく作り上げたレイチェルによる誘惑も仕掛けますが、デッカードが一切口を破ろうとしないことから、ウォレスはをオフィスに移送し拷問にかけるよう、ラブに命令します。しかしラブがデッカードを移送しているところに、Kが襲撃を仕掛けます。
死闘の中、Kは致命傷を負いますが、なんとかラブを倒すことに成功します。そしてKは、デッカードと娘のアナ・ステリンをウォレスや解放運動のレプリカントたちから守るために、デッカードが死んだように偽装することにしたのでした。デッカードが死んだとなれば、ウォレスはレイチェルの子供を追う手がかりを失い、娘であるアナ・ステリン博士が追われることもなくなるからです。
その後Kは、自らの重傷を隠したまま、デッカードをアナ・ステリンがいる施設に連れていきます。デッカードは躊躇しますが、Kは彼の背中を押し、娘に会いに行くように送り出すのでした。デッカードがいなくなった刹那、Kは階段の上に仰向けに倒れこみます。最期に「人間らしく」人間を助けたことに一抹の満足を覚えたのか、Kはかすかな微笑みを見せるのでした。以上が『ブレードランナー2049』の結末です。
ブレードランナーのキャスト一覧
リック・デッカート:ハリソン・フォード
続いて、『ブレードランナー』に出演したキャストを紹介していきます。『ブレードランナー』の主人公デッカートを演じたのは、ハリソン・フォードです。1942年7月13日生まれのアメリカ合衆国出身で、『スターウォーズ』シリーズのハン・ソロや、『インディ・ジョーンズ』シリーズの主人公など、様々な人気キャラクターを演じてきました。続編『ブレードランナー2049』にも出演しています。
レイチェル:ショーン・ヤング
『ブレードランナー』でタイレル社長の秘書・レイチェルを演じたのは、ショーン・ヤングです。1959年11月20日生まれのアメリカ合衆国出身で、モデルとしても活躍していた美貌の持ち主です。『ブレードランナー』以降も、ケヴィン・コスナーと共演した『追い詰められて』、ニコラス・ケイジとの『アパッチ』、マット・ディモンとの『死の接吻』など、様々な作品でヒロイン役を務めています。
ロイ・バッティ:ルドガー・ハウアー
『ブレードランナー』でレプリカント反逆事件のリーダー・バッティを演じたのが、ルドガー・ハウアーです。1944年1月23日生まれのオランダ出身で、アメリカ映画『ナイトホークス』で見せた冷酷なテロリスト役の演技が注目され、本作に抜擢されました。『シン・シティ』や『バットマン・ビギンズ』などにも出演しています。
エルドン・タイレル:ジョー・ターケル
『ブレードランナー』でレプリカントの生みの親であるエルドン・タイレル博士を演じたのが、ジョー・ターケルです。1927年7月15日生まれのアメリカ合衆国出身で、他にスタンリー・キューブリック監督による『シャイニング』などを含め、数多くの作品に出演しました。1998年以降、俳優業を事実上引退しています。
カブ:エドワード・ジェームズ・オルモス
『ブレードランナー』でいつもデッカードの側にいる、折り紙が趣味の警察官カブを演じたのが、エドワード・ジェームズ・オルモスです。1947年2月24日生まれのアメリカ合衆国出身で、エミー賞受賞歴やアカデミー賞ノミネート歴を持つ名優です。そのほかの代表作として、テレビドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』のマーティン・キャステロ警部役などが挙げられます。
K:ライアン・ゴズリング
『ブレードランナー2049』の主人公Kを演じたのは、ライアン・ゴズリングです。1980年11月12日生まれのカナダ出身で、2004年の『きみに読む物語』で注目を集めて以降、様々な作品に出演しています。2016年の『ラ・ラ・ランド』でゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞、アカデミー賞にノミネートされたほか、様々な作品で複数回の受賞歴・ノミネート歴があります。
ブレードランナーのユニコーンの意味とは?
ブレードランナーのユニコーンとは?
結末の解説で前述したように、リドリー・スコット監督自身が編集した1992年の「ディレクターズ・カット版」には、それ以前のバージョンには無い、デッカードが見る「ユニコーンの白昼夢」のシーンが追加されました。それ以前にもユニコーンの折り紙は作中で登場していたのですが、この「ユニコーンの白昼夢」のシーンが追加されたことにより、「デッカードもレプリカントである」という解釈が可能になりました。
ディレクターズカット以前でも、逃避行に出かける前のシーンで、デッカードが玄関先でユニコーンの折り紙を拾いますが、これは折り紙が得意なデッカードの友人カブがそこにいたということを意味するだけでした。カブは居所を突き止めていながらもレイチェルを見逃してやり、あくまで「見つけたぞ」と警告するためにユニコーンの折り紙を残していったものと考えられています。
それに対してディレクターズ・カット版以降では「ユニコーンの白昼夢」のシーンが挿入がされたことで、カブの折り紙の意味を解釈する幅が大きく広がりました。作中で、ユニコーンはデッカードの夢の中に登場するだけで、他の人間がデッカードが見る「ユニコーンの白昼夢」について知る機会はありません。しかしカブはなぜか「ユニコーンの折り紙」を残していきます。
このことから、「デッカードがレプリカントであり、その記憶は外部から植えつけられたものだった」という可能性が示唆されるのです。つまり、カブはデッカードが実はレプリカントであること知っていて、かつ彼に植え付けられた記憶の内容も知っていたからこそ、「お前の思考は全て分かっているし、常に監視ししているぞ」というメッセージを暗に込めてユニコーンの折り紙を残したのではないか、と言われているのです。
この「デッカードはレプリカントなのか?」という命題の答えは今も謎のままであり、ファンの間では熱い議論が交わされています。リドリー・スコット監督は「ユニコーンの夢」を追加することで、より観客が想像できる余地を広げたと言えます。
ブレードランナー2049のユニコーンとは?
『ブレードランナー2049』には、前作と異なりユニコーン自体は登場しません。しかし、その概念を、人とレプリカントのあいだに産まれた奇跡の子であるアナ・ステリンが暗喩しているのではとする意見があります。
そもそもユニコーンは、神話にある大洪水の際、ノアの方舟に乗らなかった生物とされています。この大洪水を『ブレードランナー2049』の世界で起きた大停電として見ると、大洪水の前に生きていた伝説の生き物ユニコーンと、大停電の前に人とレプリカントのあいだに産まれた奇跡の子アナ・ステリンが同一であると見ることができます。
実際、アナ・ステリンは自身の記憶を持たず、出生に関するデータも全て大停電により失われています。それはまるで現代から姿を消してしまったユニコーンのようでもあります。このことから、前作で考察のキーとなったユニコーンを続編でも暗に示すことで、前作とのつながりを示しているのではと言われています。
ブレードランナーが傑作SF映画と言われた魅力とは?
これまでのSFとは違った世界観
ここからは、なぜ『ブレードランナー』が「傑作SF」「SF映画の金字塔」と呼ばれるようになったのかの理由に迫るべく、その魅力を解説していきます。『ブレードランナー』魅力として第一に上げられるのが、これまでのSFとは違った世界観であるという点です。
冒頭で触れたように、『ブレードランナー』が公開される前はスペースオペラがSF映画の主流であり、またSF映画で描かれる近未来は、発達した技術を使って、人々が便利な生活を享受しているという、クリーンな世界観が当たり前でした。
しかし、同じく近未来を扱った『ブレードランナー』で描かれる都市は、退廃して酸性雨が降り注ぐ上に、雑多な町並みを持つ異様な雰囲気でした。今でこそ珍しくないですが、当時の映像作品としては画期的な世界観を提示した作品でした。
卓越した映像表現
前述の混沌とした世界観を、優れた映像表現で作り出すことに成功している点も魅力の一つです。舞台設定は近未来のロサンゼルスですが、その中では様々な言語が飛び交い、ネオンサインがギラギラと煌めく不思議な街並みとなっています。
これはリドリー・スコット監督が日本を訪れた際、新宿・歌舞伎町の街並みに驚いたことがあり、そこからイメージを膨らませて作り上げたそうですが、押井守監督の映画『攻殻機動隊』にも似たような都市が登場するなど、影響が見て取れます。前項の退廃した世界観とともに、そのビジュアルは「ブレードランナー以降のSF作品はブレードランナーの影響を逃れられない」とも言われているほど、後世に影響を与えるものでした。
レプリカントたちが示す哲学的なテーマ
『ブレードランナー』シリーズでは、常にレプリカントたちがその宿命と戦っています。『ブレードランナー』のレプリカント・ネクサス6型は、感情を持つことを許されず、4年間という期限付きの命しか与えられません。彼らの「もっと生きたい」「自身が思う通りの人生を生きたい」という望みは叶わず、処分されてしまう宿命にあります。そんな絶望の中にありながら、最期にバッティはデッカードを救う結末を選びました。
『ブレードランナー2049』でのレプリカント・ネクサス9型は、明確な期限こそ持たないものの、人間社会の中にありながら「人間ではないこと」に多少の疎外感を感じる描写があります。そんな中でKもまた、デッカードを救うために、自分を犠牲にしてでも彼を守り抜くという結末を選びました。
『ブレードランナー』および『ブレードランナー2049』が示した「人間らしさとは何か」「作られた存在ながらも見た目は人間と変わらず、かつ人間と同じ感情を持った時、それは人間と何が違うのか」といった哲学的な問いかけは、今も色褪せることのない命題です。
様々な解釈ができる奥深さ
その哲学的なテーマや、フィルムノワールを思わせる暗さを基調とした画作りゆえ、公開当時はさほど人気が高かったわけでもなく、興行成績としても成功とは呼べないものでした。しかし、その革新性や難解さは、「見るたびに新しい発見がある」という面白さにつながり、今日ではSF映画の金字塔と呼ばれるようになっています。
実際『ブレードランナー』については、これまで紹介してきた「デッカードはレプリカントなのか?」「人間らしさとは何か?」といったテーマについてや、結末までのシーン1つ1つの意味・意図、作中のミスや矛盾点などに至るまで、様々な考察がなされています。多くの考察や想像の余地があるという奥深さが、今でも人々を惹きつけて離さない魅力の一つと言えます。
ブレードランナーのあらすじ・結末をネタバレしてみた
以上、『ブレードランナー』および続編『ブレードランナー2049』のあらすじと結末のネタバレ、キャストやその魅力を紹介しました。一作目の『ブレードランナー』は公開から30年以上経っていますが、いまだに色褪せないSF映画の傑作です。多少難解な部分もありますが、そのせいで見ないままになってしまうのは勿体ない作品と言えます。ぜひこの記事を参考に、その奥深い世界観を楽しんでみてください。