2019年07月25日公開
2019年07月25日更新
映画ムーンライトのあらすじ・感想ネタバレ!キャストやラストの結末は?
2017年にアカデミー賞初め、数々の賞を受賞した映画作品「ムーンライト」はもう見ただろうか。ムーンライトは黒人の主人公がLGBTや麻薬中毒の母を持つ苦悩が描かれたあらすじになっており、ラストの結末で自分というものを見つける作品になっている。今回の記事では「ムーンライト」のあらすじをネタバレで紹介。また、キャストや気になる結末もネタバレ、そして実際に映画を見た視聴者の感想も合わせて紹介していく。
目次
ムーンライトとは?
ムーンライトの作品情報
ムーンライトは、2016年にアメリカで公開された作品だ。キャストが全員黒人という点や、LGBTの問題などを見事に表現している作品として話題になった。あらすじのネタバレになってしまうのだが、主人公は麻薬中毒の母、自分がゲイであることからいじめを受けた苦悩などが描かれている。ラストの結末のネタバレになるが、主人公が自分の生き方を受け入れる内容になっており、視聴者からも感動したという感想も多かった。
ムーンライトの作品情報
- 監督&脚本:バリー・ジェンキンス
- 原作:タレル・アルヴィン・マクレイニー
- 製作総指揮:ブラッド・ピット、サラ・エスバーグ
- 音楽:ニコラス・ブリテル
- 撮影:ジェームズ・ラクストン
- 編集:ナット・サンダース、ジョイ・マクミロン
- 製作会社:A24、プランBエンターテインメント
- 製作国:アメリカ合衆国
- 製作費:150万ドル
- 興行収入2,510万ドル(日本では3億5000万円)
ちなみに、ムーンライトと言えば、なんとも言えないポスターに注目が集まっているのだが、実は3人の顔が一つになっている。左のグリーンの部分はシャロンの幼少期時代、真ん中のピンクはシャロンの青年時代、そして右のブルーの部分はシャロンが大人になった時の顔だ。あまりにもうまく繋がっているので、意外と気付いていない人も多いのだが、3人の顔をうまく合わせて1人の顔に仕上げている。
監督はバリー・ジェンキンス
ムーンライトはアカデミー賞など、数多くの賞を受賞した作品で、日本でも一躍有名になった。そんなムーンライトを手がけた人物は、バリー・ジェンキンスという監督である。バリー・ジェンキンスは、監督だけでなく、脚本なども手がけている。37歳という若さで見事アカデミー賞を総なめにする作品を手がけたことから、注目が集まった。そんなバリー・ジェンキンスについて紹介していく。
バリー・ジェンキンスのプロフィール
バリー・ジェンキンスは、アメリカで活躍している映画監督であり脚本家。今はロサンゼルスに住んでおり、ムーンライトで一躍有名になった。バリー・ジェンキンスは12歳の時に父親を亡くしているのだが、実は父親に本当の父親ではなく、母親が別の男との間に作った子供だと言われ、父親に見放されていた。またドラッグ中毒である母親に嫌悪感を示し、母親の元を離れて別の女性に育てられたのも有名な話である。
バリー・ジェンキンスのプロフィール
- 生年月日:1979年11月19日
- 出身校:マイアミ・ノースウェスタン高等学校
- 家族構成:父(他界)、母、兄3人
- 出身地:アメリカ合衆国フロリダ州マイアミ
- 職業:映画監督、脚本家
- デビュー時期:2003年
- 代表作:ムーンライト、ビール・ストリートの恋人たち
バリー・ジェンキンスの経歴
ムーンライトで一躍有名監督になったバリー・ジェンキンスのデビューは2008年。この年に「Medicine for Melancholy」という映画を制作したのだが、予算は限りなく低かったので、完全自主制作としている。この作品は評論家の間ではかなり好評で、監督としての実力を周囲が認めていくのだ。その後も脚本を書くものの、なかなか映画化には至らず、大工の仕事をしながらも映画を作る為に創作活動を行っていく。
デビュー以降、何度か脚本や監督なども担当したものの、バリー・ジェンキンスの中で納得のいくものは出来ておらず、かなり悩む日だったとか。そして8年という月日が流れ、世界から大絶賛されることになるムーンライトの映画を制作。この時も予算はほとんどなかったので、150万ドル(約1億6千万)での制作となったが、興行収入はなんと2510万ドル(約27億円)までになった。まさにアメリカン・ドリームの一人と言える。
ムーンライトのあらすじネタバレ
あらすじネタバレ①出会い
あらすじのネタバレ①は、シャロンが人生で重要になってくる人物との出会いが描かれている。シャロンは同級生からいじめを受けていた。学校の帰りには、追いかけ回されて必死に逃げ、空き家に逃げ込んで避難するほど。いじめっ子たちは窓に石をぶつけたりして「出てこい」と叫んでいるが、シャロンは毎日ひっそりと身を佇ませていたのだ。ある日、その空き家に一人の成人男性がやってくる。彼は飯を食いに行こうと誘った。
声をかけてきたのは、ドラッグの売人をしているフアンだった。シャロンは警戒して動こうとしなかったが、フアンは「お前にひどいことはしない」と言い、ご飯に連れて言ってくれた。シャロンは非常に内気な性格の為、食事の時も一切会話をしようとしない。家まで送りたいけど住所がわからないフアンは自分の家に連れていき、妻のテレサに事情を話す。テレサのおかげでなんとか住所を聞き出し、自宅まで送ることになる。
あらすじネタバレ②フアンとシャロンの母
あらすじネタバレ②は、フアンとシャロンの母との関係が明らかになる。無事家まで送り届けると母親がいた。母は送ってくれたフアンに対して一向にいい顔をしない。実はシャロンの母親はドラッグ中毒者。シャロンは母親がドラッグをしている時はひどい暴言を吐かれたり、愛人がきた時には邪魔者扱いされていた。学校でのいじめに苦しんでいる時も、母親に優しく悩みを聞いてもらうことさえしてもらえなかった。
孤独なシャロンは、次第にフアンとテレサに心を許していく。フアンには泳ぎ方を教えてもらったり、ゲイであることに自信を持てと言ってもらえたり、自分の人生は自分で決めろと常に勇気を与えてくれた。それでも母親はフアンのことをよく思っていない。その理由は、母親がフアン達からドラッグを購入していたからだった。そのことを知ったシャロンは、ショックを受けてフアンの元を去ってしまう。
あらすじネタバレ③ケヴィンとシャロン
シャロンには幼少期から一緒に遊んでいるケヴィンという友達がいた。「オカマ」などと言われていじめを受けている中、ケヴィンだけは「ブラック」と呼び、ずっとシャロンの側にいた。青年になった時もケヴィンとシャロンは同じ学校に通っていた。相変わらずいじめを受けているシャロンだが、ケヴィンはいつも明るく振舞ってくれていた。その頃母親は売春をしており、お客がくるから出て言ってと言われ行くあてもなく歩いていた。
ドラッグをしている母親には、ドラッグを買うお金をせびられ、学校ではいじめられ、フアンも亡くなってしまった今、彼を支えるものは何もない。そんな時、海辺でケヴィンの姿を見つける。二人でドラッグをしながら会話をしていると、お互いに見つめ合い、キスをした。そしてケヴィンの右手がシャロンのズボンの中に入ってくる。シャロンはケヴィンに身を委ねるのだった。しかし、シャロンが幸せを感じた翌日、悲劇がおきる。
シャロンのことをいじめているグループから、シャロンを殴れと指示されたケヴィン。ケヴィンは断ることができず、右手でシャロンを殴ったのだ。シャロンは絶望の目をしながらも何度も立ち上がった。そして翌日、シャロンは堪忍袋の緒が切れており、いじめグループのトップの人物を椅子で思いっきり殴り飛ばした。そうしてシャロンは刑務所に入ることになってしまった。
あらすじネタバレ④大人になったシャロン
あらすじネタバレ④は、大人になったシャロンについて。悲しい事件から数年が経ち、大人になったシャロンは、なんとドラッグの売人になっていた。あれほど毛嫌いしていたドラッグを売る側の人間に成り下がっていたのだ。身体も鍛えて、ヒョロヒョロだった青年時代とは大違い。アメ車に乗って金のネックレスや金歯を装着して、すっかりフアンのような外見になっていた、ある日、母親から電話があり、会いに行くことになった。
ムーンライトのキャスト・登場人物
アレックス・ヒバート(シャロン幼少期役)
シャロン幼少期のキャストに選ばれたのは、アレックス・ヒバートという子役だ。幼少期のシャロンはほとんど喋らず自分の気持ちを表には出さないおとなしい少年なのだが、アレックス・ヒバートの演技が非常に高く評価されており、ムーンライトの映画の中で最高の演者と称賛している人もいる。アレックス・ヒバートにとってムーンライトは初主演の映画。バリー・ジェンキンスはマイアミ出身の子供を起用することを決めていた。
実際にマイアミ出身の子役を探す為に、制作スタッフで出演者募集のチラシを配ったり貼ったりし、キャストの募集をかけていた様子。何人かオーディションをする中で、アレックス・ヒバートの目に映る「物静かな好奇心と脆弱性」に惹かれて起用したと公式の映画パンフレットに記載されている。アレックス・ヒバートはこの映画を通して一躍その名を轟かせたが、彼なしではムーンライトは完成しなかったという声も多い。
アシュトン・サンダース(シャロン10代役)
シャロン10代(学生時代)のキャストに選ばれたのは、現役大学生のアシュトン・サンダースだ。10代のシャロンはフアンがいなくなって心にぽっかり穴が空いている様子や、自分がゲイであることを認識したり、母親への恐怖心や嫌悪感など様々な感情を表現しているシーンが多い。アシュトン・サンダース自身も俳優を目指していたことで、学生時代にいじめを受けた経験があるようで、見事リアルな演技をしてみせた。
アシュトン・サンダースは、ムーンライトが初主演映画ではあるものの、2015年に「ストレイト・アウタ・コンプトン」という映画の脇役として出演した経験がある。ちなみにムーンライトの裏話になるのだが、アシュトン・サンダースは幼少期のシャロンのキャストであるアレックス・ヒバートや、大人ののシャロンのキャストであるトレバンテ・ローズと顔を合わすことを禁止されていたんだとか。その理由は明かされていない様子。
トレバンテ・ローズ(シャロン大人役)
シャロンが大人になってからのキャストに選ばれたのは、1990年生まれの俳優であり元陸上選手のトレヴァンテ・ローズだ。彼は陸上選手として数々の賞をとっていたのだが、大学を卒業すると俳優活動をスタートする。実は短距離走として活躍していた時に、スカウトされて意識するようになったんだとか。何度が映画などに出演しているものの、アメリカでもあまり知名度は高くなく、日本ではほとんどその名前を聞いたことはない。
「ムーンライト」が初主演映画なのだが、この作品から一気に知名度がアップ。2017年にはBurning Sandsという映画で主演キャストに抜擢され、同年に公開されたSong to Songという作品にもキャストとして選ばれている。ムーンライトでは大人になったシャロンとして、美しい筋肉美を披露している。青年時代はヒョロっとしていたが一気にムキムキになって登場したので驚いた人も多かったが、目の奥の優しさは同じだった。
マハーシャラ・アリ(フアン役)
出典: https://ciatr.jp
主人公シャロンの父親のような存在として登場するフアンのキャストに選ばれたのは、1974年生まれの俳優であるマハーシャラ・アリだ。彼は2001年にデビューしてから、数多くのドラマのキャストとして抜擢されている。しかし映画界に進出したのは2008年と遅め。マハーシャラ・アリの演技はムーンライトで非常に高く評価されており、映画で一番優れた演技をしていたという感想も多い。特に目だけの演技に注目が集まった。
言葉を介さずとも目だけで優しさを表現するなど、演技力の高さに驚いた人も多い。ムーンライトは幼少期しか登場していないにも関わらず、その存在感は圧倒的なものだった。実際にマハーシャラ・アリは、アカデミー賞で最優秀助演男優賞に輝き、また第82回ニューヨーク映画批評家協会賞・助演男優賞も受賞している。ドラッグの売人という設定にも関わらず、フアンの温かさを感じたのは、演技力の高さのおかげという感想もある。
ジャネール・モネイ(テレサ役)
フアンの彼女役として登場するテレサ。テレサはシャロンの育ての母のような存在でもある重要な人物だ。そんなテレサのキャストに抜擢されたのは、歌手であり、女優や作曲家、モデルとしても活躍しているジャネール・モネイだ。音楽ジャンルで言うと、ソウル、R&B、ファンク、ポップと幅広い。歌手として非常に人気が高く、自身が手がけたアルバムがグラミー賞にノミネートされた経験もあるほどの実力者である。
ムーンライトに出演することで、女優としての才能も世間に知らしめたジャネール・モネイだが、彼女自身自分の恋愛関係などについては一切公言していない。自分自身のことを、男性、女性どちらであっても惹きつけられるような女性でいたいと話しており、LGBTQコミュニティを支持することも公言している。ムーンライトの役柄も、LGBTQで悩んでいる少年のよき理解者であることから、ぴったりなキャストという感想もある。
ナオミ・ハリス(ポーラ役)
ムーンライトで主人公の母親であるポーラのキャストに選ばれたのは、ナオミ・ハリスだ。ナオミ・ハリスは、1976年生まれのイギリスの女優。2002年に公開された映画「28日後…」のセリーナのキャストに抜擢されたことで一躍有名になり、ムーンライト以外に、パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズでティア・ダルマのキャストに選ばれたり、007「スカイフォール」と「スペクター」でイヴのキャストに選ばれている。
ムーンライトの撮影の際には、ナオミ・ハリスが超多忙だった為、なんと撮影は2日のみで終わらせたのだとか。映画界でも引っ張りだこのナオミ・ハリスだが、ムーンライトでも絶妙な演技を見せている。あらすじと結末ラストのネタバレになるが、LGBTの子供を持つ母親の葛藤や、ドラッグに翻弄される様子、しかし、絶対に変わらない息子への愛情など、簡単には説明できない精神状態を囲碁と演じているという感想も多い。
アンドレ・ホランド(ケヴィン役)
出典: https://eiga.com
ムーンライトで主人公シャロンの意中の人であるケヴィンのキャストに選ばれたのは、 1979年生まれのアメリカ俳優であるアンドレ・ホランドだ。アンドレ・ホランドと言えば、2013年に公開された「42~世界を変えた男~」という映画で、ウェンデル・スミスのキャストに抜擢されたことで一躍有名になっている。また、2014年に公開された「グローリー/明日への行進」という映画やドラマ「The Knick/ザ・ニックにも出演。
あらすじのネタバレになるが、ケヴィンは密かにシャロンに想いを寄せていた。彼はLGBTであるものの、普通に彼女作ったり、女性とも楽しんでいた。シャロンのことが心から離れず、ずっと気にかけていたのだが、彼は自分の手でシャロンを傷つけることになってしまう。大人になったケヴィンをアンドレ・ホランドが演じているのだが、再開できた喜びと、あの時の罪悪感、そして未だ抱いている恋心を絶妙に表現している。
ムーンライトのラストの結末
ラストの結末①母の愛
結末ラストのネタバレその①は、シャロンの母親からの愛情だ。母親はシャロンのことを心から愛してはいたものの、どうしてもLGBTである息子への嫌悪感も拭いきれず、罪悪感と葛藤していた。ドラッグ中毒にもなり、シャロンにひどいことを言ってしまったりもしていたが、ラストでは更生施設できちんと正気を取り戻していた。そして、自分の過去の行いについて心の底から謝る。また、愛しているとまっすぐ目を見て言うのだ。
シャロンにとって、母親は特別な存在であった。母親のことを愛しているものの、一番辛い時に助けてくれるどころか、トラウマになってしまうようなひどいことを言われてしまっていたからだ。しかし、母のまっすぐな謝罪を受け、母親を許すことにする。また、自分が売人であることを心配する母の温かかさにも胸が打たれ、シャロンは自然と涙を流していた。普通の母親と息子としてのやりとりが初めて交わされた瞬間だった。
ラストの結末②大人になった2人
結末ラストのネタバレその②は、大人になったシャロンとケヴィンの再会について。母親からの連絡のあと、実はケヴィンからも電話がきたのだ。ケヴィンも刑務所に入っており、そこで料理の技術を身につけ、シェフとしてレストランで働いていたのだ。ケヴィンは会いにきて欲しいと伝え、シャロンは、ケヴィンの働いているレストランへと向かう。特に行く日程などは約束していなかったが、ケヴィンはすぐシャロンだと気付いた。
ケヴィンはシャロンに食べさせたい料理があると言い、料理を振る舞う。二人は思い出話に花を咲かせ、現在の状況も話すことになる。ケヴィンは同級生と結婚して子供も設けていた。しかし、離婚してしまい、今は独り身だと言う。シャロンが売人になっていることを知ると、険しい表情になる。なぜドラッグに対して嫌悪感を持っているシャロンがドラッグの売人になっているのかが、どうしても理解できなかったのだ。
ラストの結末③シャロンの告白
相変わらず無口なシャロンだが、どうして自分をに連絡をしたのかと質問する。するとケヴィンは「この前この曲が流れたんだ」と言い、ある音楽をミュージックボックスでかけ始める。その音楽は、バーバラ・ルイスの「ハロー・ストレンジャー」だったのだが、それは二人にとって思い出の音楽だったのだ。実は二人が海辺で初めてキスをした時に流れていた音楽こそ、この「ハロー・ストレンジャー」だったのだ。
レストランが閉店し、ケヴィンを車で送ってあげることにしたシャロン。二人一緒に車に乗っていると、あの時の記憶が舞い戻る。そしてケヴィンの家に到着した。シャロンは夜も遅いので、ケヴィンの家に泊まることになり、玄関までの道を歩く。そして、思い出の海へと繋がる小道を見つけ、ふとその時のことを思い出していた。玄関につくと、シャロンは「あの日以来誰にも触れられていない」とケヴィンへの想いを伝えるのだった。
ラストの結末④通じ合う想い
自分以外の人に触れさせていないというシャロンの言葉に、驚きながらも、喜びの感情を浮かべるケヴィン。その日二人は、あの海辺の時と同じように、言葉を介さず寄り添っていた。初めてシャロンにふれた右手、そしてシャロンの人生をめちゃくちゃにした右手、ケヴィンはその右手で優しくシャロンの頭を撫でていた。ようやく二人の想いは通じ合ったのだ。
ムーンライトはアカデミー賞受賞作
アカデミー賞では3部門受賞
アカデミー賞と言えば世界三大映画祭よりも歴史が古く、全世界から注目される為、映画界で誰もが受賞を憧れている。基本的には翌年の映画から優れた作品に賞を与えるので、2016年に公開されたムーンライトは、2017年にノミネートされた。しかし本命は、史上最多の14部門にノミネートされたミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」。アメリカらしい作風であることと、とにかくノミネート数の多さから受賞確実と言われていた。
実際2017年のアカデミー賞受賞作品で発表されたのは「ラ・ラ・ランド」だった。ムーンライト制作スタッフ一同悔しい思いをするのだが、なんとスタッフが間違った紙を渡していたことが判明し、すぐに訂正される。前代未聞の事で会場が一気にざわついたのだが、訂正後、アカデミー賞受賞作品で発表されたのは「ムーンライト」だったのだ。アメリカらしい楽しいミュージカルとは対照的なムーンライト受賞に、歓喜の声が響いた。
全ての賞レースでノミネート
アカデミー賞は、前年度に白人しか受賞していない事や、審査員に白人しかいないことなどが問題になっていたこともあり、キャストが黒人だけで作られた「ムーンライト」の受賞は非常に大きな意味を持っていた。アカデミー賞では3部門で受賞されたが、全てのショーレースで見てみると、なんと242部門にノミネートされ、189部門で受賞をするという圧倒的な強さを見せつけた。この数字はラ・ラ・ランドを上回る数字となっている。
「ムーンライト」はあらすじや結末ラストの内容だけでなく、キャスト陣の演技力の高さにも注目が集まっていた。特に注目されていたのは、序盤しか登場しないフアンだ。フアンは麻薬の売人でありながら、温かい心を持っている人物。そこまでセリフは多くないのだが、絶妙な目の動きや口の動き、動き方や声の掛け方、笑い方などで見事彼の持つ温かさを表現している。言葉を発さずとも温かさを表現できるとして称賛された。
ムーンライトの受賞実績
ムーンライト受賞歴一覧
- アカデミー賞:作品賞
- アカデミー賞:助演男優賞(マハーシャラ・アリ)
- アカデミー賞:脚色賞受賞
- ゴールデン・グローブ賞:ドラマ部門作品賞受賞
- オースティン映画批評家協会賞:監督賞
- オースティン映画批評家協会賞:作品賞
- シカゴ国際映画祭:観客賞(長編物語映画)
- シカゴ映画批評家協会賞:監督賞
- シカゴ映画批評家協会賞:作品賞
- ダラス・フォートワース映画批評家協会賞:監督賞
ムーンライト受賞歴一覧(続き)
- ダラス・フォートワース映画批評家協会賞:作品賞
- ゴッサム・インディペンデント映画賞:脚本賞
- ゴッサム・インディペンデント映画賞:長編映画賞
- インディペンデント・スピリット賞:監督賞
- インディペンデント・スピリット賞:作品賞
- インディペンデント・スピリット賞:脚本賞
- インディペンデント・スピリット賞:ロバート・アルトマン賞
- ロサンゼルス映画批評家協会賞:監督賞
- ロサンゼルス映画批評家協会賞:作品賞
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞:監督賞
ムーンライト受賞歴一覧(続き)
- 全米映画批評家協会賞:監督賞
- 全米映画批評家協会賞:作品賞
- ニューヨーク映画批評家協会賞:監督賞
- サンフランシスコ映画批評家協会賞:監督賞
- サンフランシスコ映画批評家協会賞:オリジナル脚本賞
- サンフランシスコ映画批評家協会賞:作品賞
- 全米脚本家組合賞:オリジナル脚本賞
アカデミー賞/ゴールデングローブ賞ノミネート
- アカデミー賞:監督賞(バリー・ジェンキンス)
- アカデミー賞:助演女優賞(ナオミ・ハリス)
- アカデミー賞:編集賞(ナット・サンダース、ジョイ・マクミロン)。
- ゴールデン・グローブ賞:監督賞(バリー・ジェンキンス)
- ゴールデン・グローブ賞:助演男優賞(マハーシャラ・アリ)
- ゴールデン・グローブ賞:助演女優賞(ナオミ・ハリス)
- ゴールデン・グローブ賞:脚本賞(バリー・ジェンキンス)
- ゴールデン・グローブ賞:作曲賞(ニコラス・ブリテル)
ムーンライトは実話がベース
LGBTへの差別問題が描かれた作品
見事アカデミー賞を受賞した映画「ムーンライト」は、あらすじのネタバレになるが、LGBTの差別問題がメインのテーマとなっている。受賞するハリウッドの作品は、必ずと言っていいほど、社会問題などがあらすじに組み込まれているのだが、LGBTの問題は、今アメリカでも非常に重要視されている差別問題なのだ。LGBTの存在が知れ渡ってきた現在でも、学校でのいじめや差別があったり、家庭でも親子関係にヒビが入ってしまう。
あらすじのネタバレになるが、実際母親は「愛している」と言いながらも、心の奥底では嫌悪感を拭い切れておらず、ゲイであろう息子を心から可愛がることができない描写が多々描かれている。ドラッグをしている時の母親は、何度もシャロンに酷い言葉を浴びせ、ドラッグが抜けると優しい母になる。シャロン本人もドラッグをしている時に放つ母親の言葉こそが、心の底で本当に思っている事なのも本能的にわかってしまっている。
結末ラストでは、主人公が自分を受け入れ、そして母親も彼を受け入れ深い愛を感じることができるようになっている。LGBTへの理解が進んでいるアメリカでも、LGBTに対して冷たい声も多く、生きづらい世の中にな変わりはない。この作品を見れば、頭ごなしに「気持ち悪い」などと思う感情がなくなったという感想も多く寄せられており、この作品のおかげでよりLGBTの理解が深まったという感想も上がっている。
監督と脚本の実話から作られた
ムーンライトのあらすじから結末ラストまで見た人は、そのリアルさにびっくりしたという感想も多いのだが、驚くほどリアルなのは、実は監督のバリー・ジェンキンズと、共同脚本の一人タレル・アルバン・マクレイニーの実話を元に作られた作品だからである。LGBT問題に関しては、想像では計り知れないほどの苦悩があるので、実話を元に制作されたということであれば、このリアルさも納得だという感想も多い。
あらすじから結末ラストまで、全てがノンフィクションというわけではない。あくまでもあらすじから結末ラストまでの内容はフィクションであり、バリー・ジェンキンズとタレル・アルバン・マクレイニーの実体験を参考として盛り込んでいるのだ。でも実際にいじめがあったり、母親との苦悩などは二人が体験していることであり、ムーンライトを見た人ならば、どれだけ辛い思いをしてきたかがよくわかるだろう。
両者の共通事項とは?
バリー・ジェンキンズとタレル・アルバン・マクレイニーは、LGBTであること以外にも意外な共通点がある。まず、二人共マイアミにある貧しい地域となる「リバティー・シティ」で生まれ育っている。偶然にも小学校が一緒ということ、そして母親が二人共にドラッグ中毒だったようで、母親がエイズに感染しまったというところも同じなのだ。あらすじのネタバレになるが、主人公の母親もドラッグ中毒で、且つ売春婦をしていた。
バリー・ジェンキンズの父親は、自分の子供ではなかったと言いバリー・ジェンキンズと母親を残して家を出ており、常に愛人が家に来ていたのだとか。幼少期のストーリーのリアルさは、バリー・ジェンキンズが実際に体験していた内容だったことがわかる。結末ラストで、母親が主人公のことを受け入れて深い愛で包まれ、そしてずっと好きだった相手にも素直に自分の気持ちを言えたことで救われた気分になったという感想も多い。
シャロンとフアンのモデルは?
ムーンライトの映画のあらすじや結末ラストに関しては、バリー・ジェンキンズとタレル・アルバン・マクレイニーの実話を元に作られた作品なのだが、実は出てくる登場人物のモデルもちゃんといるようだ。まず主人公のシャロンは、タレル・アルバン・マクレイニーが主人公となっており、タレル・アルバン・マクレイニーが過ごした幼少期から学生時代はまさに彼そのもの。その頃は人と会話するのも億劫だったんだとか。
そしてムーンライトに欠かせない人物フアンは、タレル・アルバン・マクレイニーにとても優しく接してくれていた叔父がモデルだと話している。また映画の中でフアンは死んでしまうのだが、理由は明かされていない。ちなみに優しくしてくれていた叔父は、タレル・アルバン・マクレイニーが6歳の時に銃撃戦に巻き込まれて死亡している。またテレサはバリー・ジェンキンズの育ての母をモデルにしていると発表している。
ムーンライトに関する感想や評価は?
"ムーンライト"見ました。主人公の成長を3つのあだ名に分けて記録する斬新な作りとなっていた。見ていて不思議に思った、ムーンライトの意味とフアンの途中からの存在がYouTubeの町山さんの映画塾で理解できた。考えれば考えるほど深い、アカデミー賞ノミネート作品。 pic.twitter.com/frtvef5d69
— エイドリアン@映画垢 (@Z0Ys6) January 17, 2019
アカデミー賞を見事獲得した作品ということで興味を持ってムーンライトを見た人も多い。あらすじのネタバレになるが、幼少期、青年期、大人と3つの展開を、主人公のあだ名に分けて記録している。考えれば考えるほど深いという感想も多い。
大切な人の前で鎧を着るか…
— ぽこ (@bdEVMVOE3rFMZnr) July 19, 2019
大切な人の前でグリルを取るか(歯)
映画「ムーンライト」観た
ドラッグや虐めやLGBTを
扱いながらも派手な銃撃戦も
ないのに
主人公の心から血が流れ
涙が伝い
それを優しく月が照らす。
「ブルーライト」はスマホから発せられる青く見える光りの
事ですにゃー( ΦωΦ )。 pic.twitter.com/rsYM3kOGQV
ムーンライトのあらすじネタバレになるが、LGBTに悩む主主人公の辛さがよくわかるという声も多い。派手な銃撃戦もないのに、主人公の心から血が流れているのがわかるという感想もある。
去年か一昨年にみたムーンライトって映画主人公がダブルマイノリティかつ家庭環境悪いし身近なロールモデルが優しくしてくれた売人の兄ちゃんしかいないから大人になったら見た目も職業も同じ様な生活送っててな…
— Oh!火マサマー🌺(夏限定) (@ohimasummer) July 19, 2019
ムーンライトのあらすじネタバレになるが、売人のお兄さんしか親身になってくれる人がおらず、売人になってしまったのではという感想もあった。
ムーンライト観ました。事前に想像していたとおり、重たい映画でした。麻薬とゲイ。感想は、うーん…まとまらないですね。リアルだったら大変な話ですが、そんな中でも人との繋がりが救いになるのかなと。そんな感じ。
— サワハト (@sawahato) July 14, 2019
ムーンライトのあらすじネタバレになるが、ドラッグ、いじめ、LGBTで悩む主人公が描かれており、人との繋がりが救いになるという感想もあった。
ムーンライトのあらすじ・感想ネタバレまとめ
「ムーンライトのあらすじ・感想・結末ラストネタバレまとめ」はいかがだっただろうか。社会問題になっているLGBT問題を真っ向から取り上げ、さらに監督や共同脚本家の実体験を元にしているという徹底っぷりに驚く声も多かったのだが、LGBTの人たちが抱える苦悩に触れることができたという感想の多い作品だ。まだまだ理解が追いついていないLGBT問題だが、同じ人間として彼らの個性を認めてあげたいという感想も多い。
日本でもLGBTの人々がいじめにあっていたり、周囲から白い目で見られることが多いのだが、今一度社会全体で理解を深めていかなければいけないという感想も多くあがった。ムーンライトは、あらすじから結末ラストまで、ネタバレしていても楽しめる作品になっており、また映像も非常に美しいと評判が高いので、まだムーンライトを見たことがない人は、ぜひ一度ご覧あれ。