映画ラッキーは俳優・スタントン最後の主演作品!人生と死に向き合う物語を考察

映画ラッキーの主演俳優を務めるのがハリー・ディーン・スタントン。映画ラッキーの主人公は、90歳の老人になるまで一度も結婚したことがなく、家族もいないアパート暮らし、さらに現実主義の頑固なお爺さんとかなり個性的な人物なのです。そんな主人公が人生と向き合う物語は、どうやら主演を務めたスタントンと深く結びつく。そこで、スタントンのプロフィールをはじめ、あらすじのネタバレから物語を考察しています。

映画ラッキーは俳優・スタントン最後の主演作品!人生と死に向き合う物語を考察のイメージ

目次

  1. 映画ラッキーとは?
  2. 映画ラッキーは俳優・スタントン最後の主演作品
  3. 映画ラッキーのあらすじネタバレ考察
  4. 映画ラッキーのテーマ考察
  5. 映画ラッキーに関する感想や評価は?
  6. 映画ラッキーについてまとめ

映画ラッキーとは?

映画ラッキーの作品情報

映画ラッキーの主演を務めるのは、2017年9月に亡くなったハリー・ディーン・スタントンです。名バイプレイヤーとして知られるジョン・キャロル・リンチの初監督作品で、全ての人が経験する人生の終わりについて、長きにわたる友人である彼らを当て書きした脚本は哲学的な示唆に富んでいます。さらに、彼らの素を考えさせるやりとりまでを見ることができる映画となっています。

映画ラッキーの予告編動画

映画ラッキーの主人公は自由気ままで頑固な一匹狼の90歳のお爺さん。90歳になるまでに一度も結婚をしたことがなく、家族もいない。そんなラッキーは毎朝目が覚めるとコーヒーを飲みながらタバコをふかし、身支度をすると馴染みのバーに出かけて常連客たちとお酒を飲む生活。そんな生活を送っていると、ふと自分の人生が終わりに近づいているに気付いた彼は「死」について思いをめぐらします。

そして、街の住人達との交流の中で、飼っていたペットの亀や子供のころに怖かった暗闇、戦禍の中でほほ笑んだ日本人少女など、ラッキーは「それ」を悟っていきます。映画ラッキーは主演のスタントン本人の実体験を元にしたエピソードを盛り込んでおり、また、長きにわたるスタントンの盟友のデビット・リンチ監督もラッキーの友人役で登場しています。

映画『ラッキー』公式サイト

映画ラッキーは俳優・スタントン最後の主演作品

映画ラッキーの主演、ハリー・ディーン・スタントンは90歳の老人を見事に演じています。そんなスタントンとは、どのような人物なのでしょうか。映画ラッキーとの関係性、スタントンのプロフィール、主な出演作からスタントンへの理解を深めていきます。

映画ラッキーの主演俳優・スタントン

映画ラッキーはスタントン最後の主演作品だった

2017年9月、91歳でこの世を去ったハリー・ディーン・スタントンですが、60年もの長い俳優人生の中で100本を超える映画に出演し、主に脇役として作品に深みを与えてきたベテランの俳優でした。そんなスタントンの体験を盛り込んだ映画ラッキーでしたが、実はスタントンの最後の主演作品がラッキーだったのです。誰もが経験する深刻な「死」。その中でも1つの希望を与える作品だからこそ強い説得力を帯びました。

ハリー・ディーン・スタントンのプロフィール

  • 生年月日:1926年7月14日
  • 没年月日:2017年9月15日(91歳没)
  • 出生地:アメリカ合衆国ケンタッキー州
  • 国籍:アメリカ合衆国
  • 職業:俳優
  • デビュー作品:間違えられた男
  • 出演映画数:100本以上

ハリー・ディーン・スタントンの主な出演作

ひょろりと痩せこけた輪郭、そして眉の奥に隠されたつぶらな瞳のスタントンですが、その個性のある風貌と飄々として演技によって、著名な映画監督であるデビッド・リンチやヴィム・ヴェンダースに愛され、カルト的な映画にも出演することがありました。その中でも主演を務めて高い評価を受けた出演作は、カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した「パリ、テキサス」があります。

映画ラッキーのその他キャスト

ハワード/デヴィッド・リンチ

映画ラッキーでは、盟友のスタントンと俳優として共演まで果たした監督「デヴィット・リンチ」。デヴィット・リンチは低予算映画の「イレイザー」で有名、さらに「カルトの帝王」と呼ばれるほどカルト的な映画の人気を博しました。また、映画製作のほか「Dumbland」などのアニメーションまで手掛けており、映画製作に時間をかけていない間は、予算を必要としてないといった理由で絵を描いたりしています。

個性豊かなデヴィット・リンチは日本語で超現実主義(シュールレアリズム)をこよなく愛しています。また、1950年代のアメリカを愛していることから、作中に当時流行したセットなどの美術、音楽などが使用されています。しかし、「アメリカ映画よりも欧州映画の方がより影響を受けた」と述べており、好きな映画は「ロリータ」や「サンセット大通り」などを挙げています。

ボビー・ローレンス/ロン・リビングストン

ラッキーのボビー・ローレンス役を演じた俳優は「ロン・リビングストン」です。リビングストンは、イェール大学演劇大学院に入学をしたことから、卒業後には地元の劇場などで俳優業のキャリアを積んでいきます。

その後はシカゴに引っ越したことが映画出演のきっかけとなり、1992年にドリー・パートンなどが出演した映画「Straight Talk」で映画俳優のデビューを果たし、「バンド・オブ・ブラザーズ」でダミアンルイスと共演したことから、俳優として有名になりました。その後は出演作「セックス・アンド・ザ・シティ」など有名な作品に起用されています。

フレッド/トム・スケリット

ラッキ-の役フレッドを演じた俳優は「トム・スケリット」です。映画デビューは1962年、劇団での活躍によって果たしました。以来、個性的な脇役として活躍しており、「トップガン」「ポルターガイスト3」「ピケット・フェンス」などに出演。また、主な出演作に「エイリアン」があり、この映画はスタントンと共演をしています。

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映画ラッキーのあらすじネタバレ考察

あらすじネタバレ①ラッキーの日課

ラッキーのあらすじは、アリゾナ州砂漠地帯にある田舎町から始まります。90歳を迎えるラッキーは一度も結婚をせず、妻も子供もいない事からアパートに一人暮らし。いつも通り、朝目を覚まし、歯を磨いて髪を整えます。そして、コップ一杯のミルク、同時にコーヒーを沸かします。その後はヨガをし、下着姿から着替えて出かけます。出かけた先はラッキーの行きつけのバーです。

ラッキーは店に入るといつも通り「You`re notying!」、オーナーのジョーと挨拶をかわします。そこで、クロスワードパズル。ラッキーはカウンター席に座り、砂糖とミルクがたっぷり入ったコーヒーを飲みながら考える時間が好きです。ラッキーは店の常連客と他愛のない話をして店を後にします。それからコンビニに立ち寄り、牛乳やたばこを買うのもラッキーの日課です。

ラッキーは家に帰ると、バーでもやっていたクロスワードパズルを解きます。ラッキーは分からない言葉が出てくると友達に電話を掛けて尋ねたり、電話を繋いだまま辞書を開く。番組の出演者を罵ったりもします。そして夜になると「エレインの店」に向かい、ここで、ラッキーはセロリを突き刺したブラッディ・マリーを飲むのが日課です。そこで、ラッキーは昼間に観たクイズ番組で聞いた「現実主義はモノ」と口にします。

しかし、ラッキーが口にした言葉について常連客が持論を展開。ラッキーは「お前の現実と俺の現実は違う」と哲学的な事を言います。それから時間が経ち、ラッキーの友人ハワードがバーにやってきますが、ハワードは元気がありません。ラッキーが元気がない理由を聞いてみると‘‘ルーズベルト大統領””と名付けていた亀が逃げてしまったというのです。

あらすじネタバレ②倒れるラッキー

ここで映画ラッキーのあらすじは大きく展開していきます。翌朝、ラッキーはいつものようにコーヒーを淹れるのですが、コーヒーのデジタル時計の光の点滅を見ているうちにラッキーは倒れてしまうのです。ラッキーは体が心配になり、病院で診察を受けることに…。しかし、親しいニードラー医師の診断結果は体に異常はなく、原因は加齢だと言われます。

そこで、ニードラー医師の「長生きするとだんだん古くなる」という言葉とともに、ラッキーはヘルパーを雇う事を勧められるのです。頑固なラッキーはもちろん拒否します。それ以来、ラッキーの長年のルーティン生活が狂うことに…。ラッキーはいつものダイナーに普段よりも遅い時間に行きますが、お気に入りのカウンター席は空いていないので、仕方なしにソファー席へ座ります。

そこで、店主のジョーはラッキーがいつもの時間に来なかったことを心配し、ラッキーに理由を尋ねるとラッキーが「倒れた」と答えます。店内にいた全員が驚き、ラッキーへ心配そうな顔を向けてきています。ラッキーは「死」を意識し始めていたのです。そして、飼っていたペットの亀や子供のころに怖かった暗闇、イタズラ心からマネシツグミを撃ったことを思い出し、友人に電話を掛けて打ち明けるように…。

その後は苛立ちを募らせながらエレインの店に行くと、またもやいつもと違う展開。ハワードと弁護士のロビーが同席し、ハワードは終活をしていました。そこで、なんとラッキーと同じ独身の彼は、逃げ出した亀‘‘ルーズベルト大統„に遺産を相続させたいと相談していたのです。ロビーは独身者のラッキーに孤独ではないかと尋ねますが、「孤独は一人暮らしと同じではない」とすかさず反論します。

さらに続けて、「人はみんな産まれる時も死ぬ時も一人だ」と言います。それから、亀に遺産を相続させる詐欺だと言い、「表に出ろ」と宣戦布告。そこで、ポーリーが喧嘩の仲裁をします。それからしばらく時間が経つと、ポーリーは一人で路地裏へと進んでいき、ラッキーも後をついていくと「NEXT」と書かれた扉を発見。さらに進んでいくと夢から覚めます(どこから夢なのか不明)。

そして、ラッキーがサボテンに水やりをしていると、ロレッタがいつものようにダイナーに現れないことを心配して訪ねてきます。しかし、ラッキーはそっけなく対応。一緒にテレビを観ることになり時間が過ぎていきます。ここであらすじは大きな展開となり、ロレッタが帰ろうとするのですが、ラッキーがハグをして「怖いんだ」と初めて心の内を明かしたのです。

あらすじネタバレ③ボビーとの再会

次にあらすじが大きく展開を見せるのはボビーとの再会からです。ラッキーと再会したボビーは雑談を交わそうとしますが、「つまらん雑談よりは気まずい沈黙の方がマシ」と冷たく突き放すのです。そこで、ボビーは予測できない将来に備えて、終活をしているというのです。というのも、車に乗せている娘とともに交通事故に遭いそうになり、死に直面した体験をしたからです。

ボビーは「家族に迷惑をかけたくない」と言いますが、そんなボビーに対して「君は死んだままじゃないか」とラッキーは言葉をかけます。そこで、何かを分かち合った2人はコーヒーを乾杯するのです。またある日、ダイナーで退役海兵隊員のフレッドと出会います。打ち解けあった二人は戦争体験を語り合います。フレッドの戦争体験では、戦場で遭遇した日本人少女の美しい笑顔を見たことを忘れられないと米兵に打ち明けます。

そこで、米兵は「日本人は仏教徒だから、死に直面して悟りを開いた」と解釈。そこで、フレッドは「彼女こそ勲章をもらうべきだ」とラッキーに語るのです。その後のラッキーは、ビビの息子ファンの誕生日パーティーに参加します。

あらすじネタバレ④真実

パーティーがあった夜、エレインの店で飲んでいましたが、そこにハワードがやってきます。ハワードは亀の”ルーズベルト大統領””の捜索をやめたことをラッキーに話し、「彼は用事があって出ていったのに、それを阻止してしまっていた」というのです。そして明るく縁があればまた会えるというハワード。そんなハワードにラッキーは穏やかな眼差しを向けます。

そこで、ラッキーが店内でタバコを吸おうとするあらすじから真実へ…。タバコを吸おうとするラッキーに対してエレインに怒られるのです。実は、毎日通っていた「イブの楽園」も禁煙を破ったから出禁にされていました。そのことをエレインは「ルールを破ったから追い出されたのだ」と叱責。しかし、ラッキーは「追い出されたのではなく、自分で出ていった」と主張するのです。

さらに続けて、「俺は真実にこだわる。いつか人間もタバコも何もかも真っ暗な空へ行って無だけになる」と語ります。哲学的なラッキーの言葉に店内は静まり返ります。そこで「無ならどうする」と常連客が質問し、しばらく考えたラッキーは「ほほ笑むのさ」と答えるのでした。それからのあらすじは、イブの楽園の前を通ることになります。入口は「Closed」の札。

そこで、ラッキーは背の高いサボテンだらけの道を歩くことになり、立ち止まったままいつものように火をつけサボテンを見上げます。そして、目線を戻して一点を見つめ、ほほ笑んだ後その場をあとにします。ラッキーの姿が小さくなったころ、ハワードの亀”ルーズベルト大統領””が現れる場面で、物語は幕を閉じます。

映画ラッキーのテーマ考察

考察①「死」の恐怖との向き合い方

ネタバレから伝わる誰もが直面する「死」。いづれ自分は死んでしまう…これは決して避けることが出来ない事実です。そんな死を対象にした映画ラッキーの特徴は、宗教への信仰心がない現実主義を描いたこと。ネタバレあらすじの真実とは、死ねば意識はなくなり、全てがただの「無」となることをラッキーは主張しています。何をしてもいつかは死が訪れるという恐怖に対し、精神の均衡を保つ方法と言えばラッキーが言う「ほほ笑むのさ」。

いくら考えても解決しようのない問題を「棚上げ」するのです。あらすじの中で多く死を考えさせられるシーンがありましたが、「死ぬことは死ぬときになってから考えよう」と決めることによって、この問題から多くの人は目を逸らします。しかし、最終的には誰もがこの問題に向き合う必要がある。映画ラッキーはまさに、その時が来た人間の人生を描く作品で、果たしてラッキーの言う真実は心の平安へたどり着くことが出来るのでしょうか。

考察②人生と映画が交錯する?

映画ラッキーは「死」に直面するスタントンのために作られた映画だと言えます。映画にはスタントンの盟友デヴィット・リンチが出演し、親しく言葉を交わす映画シーンやオーナーとのやり取りが真実味を帯びている理由は、スタントンの私生活の部分にまで立ち入っているからです。

映画ラッキーに関する感想や評価は?

主演を務めたスタントンには圧倒的な説得力を感じ、あらすじネタバレ中のパーティー会場では、ラッキーがたったひとり生と切り離されたと想像したようです。映画ラッキーは息をのむほど人生について考えるきっかけになるといえるでしょう。

映画の主演を務めた不幸な役が似合うスタントン。あらすじネタバレ中では、大きな展開は見られなかったものの、「幸せな気分」にさせてくれる映画のようです。特にスタントンが好きな方は、主演を務めたスタントンの遺作「映画ラッキー」は観るべきでしょう。

決して面白い映画だとは言えませんが、ネタバレあらすじだけ見ても哲学的な奥深さを感じさせる映画です。さらに、スタントンの実体験やデヴィット・リンチの現実との交錯によって命を吹き込んだ映画だといえるでしょう。

映画ラッキーについてまとめ

映画ラッキーは主演を務めたスタントンの遺作。そんな映画はスタントンとデヴィット・リンチの現実交錯によって、「死」と「希望」をより深く考えさせられる機会を与えてくれます。

多くの人が直面する死に対して、どのように向き合うかは映画のラッキーのように現実主義、理想主義と人生の過程の中で様々ですが、なかなか生と死に向き合う機会はそう多くはありません。あらすじがネタバレしましたが、命を吹き込んだ映画は何度観ても人生についての深い考察と感動を提供するはず。是非この機会にご覧ください!

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