ブルーベルベット(映画)のあらすじは?デヴィッド・リンチ監督の世界観を解説

ブルーベルベットは1986年に「カルトの帝王」と呼ばれる「ロッキー・ホラー・ショー」や「イレイザーヘッド」のデヴィット・リンチ監督が満を持して作成したミステリー映画だ。ある青年が戻ってきた田舎町で、彼は切り取られた耳を拾う。のどかで平和な街の裏には一体どんな闇が潜んでいるのか。全米映画批評家協会賞で作品賞他4部門を受賞した。ブルーベルベットの成功でデヴィット・リンチ監督は再び転機を迎えたという。倒錯していて暴力的で、不思議な作品と評されるこの映画をネタバレを含めてあらすじを解説していく。

ブルーベルベット(映画)のあらすじは?デヴィッド・リンチ監督の世界観を解説のイメージ

目次

  1. ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ!デヴィット・リンチ監督も紹介!
  2. ブルーベルベットのデヴィット・リンチ監督とは?
  3. ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!
  4. ブルーベルベットの映画結末をネタバレ解説!
  5. ブルーベルベットの映画を見た人の感想を紹介!
  6. ブルーベルベットの映画あらすじまとめ!

ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ!デヴィット・リンチ監督も紹介!

ブルーベルベットはデヴィット・リンチ監督が再起をかけて作った映画である。前作「Dune」が失敗し、資金が少なかったため、俳優さんへの報酬は安いものであった。しかし、デヴィッド・リンチの映画に出られるならと、俳優さんからの文句は一つもなかったという。中でも、薬物中毒とアルコール中毒の治療直後であったデニス・ホッパーは、マネージャーには反対されたが本人はブルーベルベットの出演を喜んだ。

ある平和に見える街で、切り落とされた耳を拾った青年ジェフリーが、街に潜む闇を好奇心から調べようとするのがあらすじのきっかけだ。そこには青年が予想だにできなかった性と暴力の世界が広がっていた。表面だけを見れば、理想的なものに見えても、裏には何か蠢く闇のようなものがある、と一連の事件を通して知っていくのだった。そんな快作ブルーベルベットを、監督の紹介、あらすじ解説などを踏まえて紹介していく。

ブルーベルベットのデヴィット・リンチ監督とは?

デヴィット・リンチ監督は監督の肩書き以外にも、脚本家、ミュージシャン、プロデューサー、俳優などの肩書きを持つ、マルチな才能を持つ人物だ。「ロッキー・ホラー・ショー」でホラー演劇というべきものを作り出し、「イレイザーヘッド」を深夜に上映するなど、アンダーグラウンドな手法で映画の楽しみ方を広げてきた一人だ。

2006年第63回ヴェネツィア国際映画祭で栄誉金獅子賞を獲得。優れた作品を作り出す人として認められた。X-JAPANのミュージックビデオを作成したこともあり、ジョージアのCMを製作したこともある。意外に日本と馴染み深い監督である。

ブルーベルベットのデヴィット・リンチ監督の独自の作風とは?

デヴィット・リンチの作風として、一瞬奇妙で不思議で手を出したくないような映像の中にも、美しさがあると評されることが多い。彼の興味は「フランシスコ・ベーコンの奇妙な絵画」「シュルレアリズム」「フィラデルフィアの街並み」「治安の悪さ」といった、抽象的な物を中心にしていた。作品の世界観には基本的に2つの世界が工作している描写があり、人物にも2面性がある。そして「難解さ」というのも彼の作風にあげられる。

夢と現実が両極端に隣り合うことが作品の中で多く、今作でも、イザベラ・ロッセリーニ演じる歌手の女性は暴力を受けている被害者のはずなのに、なぜか暴力に対し性的興奮を覚えてしまったり、真面目なはずの好青年が平気で家宅侵入して覗きをしていたり。一瞬「ん?」と思う描写で、興味を引かせる手腕に富んでいる。

リンチの世界観に貢献しているアラン・スプレット

アラン・スプレットとは何者なのか。それは、デヴィット・リンチとコンビを組んで映画の音楽を作り出した天才と言われている。本人は95年にガンによって死去しているが、デヴィットとは確か信頼で結ばれていたようだ。彼は約63日間スタジオにこもって、独自の効果音や音楽を作り上げ、映画に息吹を与えた。三作目から「ブルーベルベット」までの音楽を担当、監督を支えた人物だ。

ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!

平和な田舎町に戻った青年:ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!

とても平和そうな街ランバートンの、ある家の主人が水撒き中に倒れてしまう。その芝生の下の地中では真っ黒い甲虫がお互いを食べ合っているのであった。ランバートンでは「WOOD局」というラジオが流れており、9時半になると木を切り倒す音で時間を知らせてくれる。まさにその時間、若きジェフリー・ボーモント青年が野原を横切っていた。父親が倒れたので、大学を休んで戻ってきたのだった。

身体中器具だらけになってしまった父を見て、一瞬息を飲むジェフリーであった。重症な父親を見てその腹いせか、帰りの野原でオンボロ倉庫を的に石を投げるジェフリー。

草の上にあった人間の片耳:ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!

2発の石が外れたところで、彼は妙なものが落ちていることに気づく。それは、カビが生え、アリのたかる人間の左耳だった。とんでもない落し物を拾ったジェフリーは、金物屋だった父の知人のウィリアム刑事に耳を届けたのだった。「野原を通ったら、耳を見つけました。」と袋に入れた耳を渡すジェフリー。検死官は最近耳のない死体は見ていない、持ち主は生きてるかもしれない、と話すのだった。耳はハサミで切られたものであった。

その後野原の捜索を行う警察だったが、残念ながらそれ以外の手がかりを見つけることはできなかった。しかし、どうしても耳のことが気になるジェフリーは、その夜ウィリアム刑事の元へ状況を聞きにいくのだった。

サンディとの出会い:ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!

ウィリアム刑事は「大変なものを見つけてくれた。」と前置きすると、捜査をするので周りには黙っていてほしい、解決したら全部話すから、と念押しするのだった。家を後にした後「耳を拾ったの?」と声をかけたのは、刑事の娘のサンディであった。同じ大学のだったジェフリーとサンディは意気投合し、サンディからある歌手の名前を父の口から聞いたこと、その歌手が住んでいるのが近くのアパートだということを聞く。

興味のあったジェフリーは「この世は不思議な世界だ」といった後、サンディにその場所を聞き、刑事がすでに張り込んでいるリンカーン通りのアパートを見にいくのだった。どうやら7階にその歌手は住んでいるようであった。

侵入作戦:ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!

金物屋の主人を代理しているジェフリーは、従業員のダブルエドから害虫駆除の用品を借りる。そしてサンディにあの歌手の部屋に忍び込むことを提案し、少し手を借りたいと相談するのだった。作戦はジェフリーが害虫駆除業者のふりをして部屋に入り、サンディがすぐにその部屋を訪問する。その間に窓の鍵を開けておく作戦だ。彼らは好奇心から作戦を実行することにしたのであった。

例のディープリバー・アパートへ到着した2人は、作戦通りジェフリーが「ドロシー・ヴァレンズ」の部屋の中に入った。そして業者のふりをしながらサンディを待ったが、入ってきたのは黄色いジャケットをきた小太りの男であった。作戦の失敗を察知したジェフリーは、近くにあった玄関の合鍵を盗むと、部屋の外に出るのだった。男に先を越されたサンディがすぐに駆けつけたが、男は反対側から出たらしく、鉢合せなかったらしい。

ジェフリーはその夜に侵入することを決める。サンディを誘い、ドロシーのいる「スロークラブ」に食事に行き、彼女が出演したところを見計らって侵入するのだ。彼らは作戦通りにドロシーのアパートに到着するが、サンディは実行に反対。彼女は残ってドロシーが帰ってきたらクラクションで合図をする役を担当する。部屋の中ではジェフリーがトイレの水を流した瞬間と合図が重なり、ドロシーの到着に気づくことができなかった。

ドロシーとフランク、そして巻き込まれたジェフリー:ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!

ドロシーの帰宅の瞬間、ジェフリーは衣装ダンスの中に隠れて様子を伺った。急にかかってきた電話をドロシーが取ると、どうやらフランクという男に、息子のドニーと夫のドンが「メドー通り」に監禁されているようだった。しかし、彼は物音を立ててしまい、ドロシーに気づかれてしまう。包丁で脅しながら彼に詰め寄るドロシー。そして、彼の服を脱がし、右手に包丁を構えながら彼の股間を愛撫するのだった。

しかし、ソファーに移動しようとした瞬間、ドアがノックされフランクと呼ばれるオールバックの男が入ってきた。ジェフリーはクローゼットに隠れ覗き見をしていた。フランクはドロシーに自分を「パパ」と呼ばせ、部屋を暗くした。そして彼女脅して足を開かせ、吸引機で麻薬を吸った。すると、先ほどまで高圧的だった男が、急に「ママ」と甘えだし、「何を見ているんだ」と彼女を殴るのであった。

「ブルーベルベット生地」を口に含み、彼はそれを口に含みながら暴力的な性行為に及んだ。そして「生きていろ、ゴッホのために」と言い残すとそのまま部屋を去っていった。どうやら耳を切られたのは夫のドンらしい。彼らを監禁しているフランクは、ドロシーを脅して弄んでいたのだった。ジェフリーはすぐに彼女を介抱するが、今度はドロシーがジェフリーを求め、「ぶって」と懇願するのだった。

サンディへの報告:ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!

ジェフリーはサンディに「この世は不思議だ」と切り出し、昨夜起きたこと、フランクが危険な男である事を伝える。サンディは刑事である父に言うよう進めるが、証拠がなくサンディにも迷惑がかかるため、言えなかった。彼女は夢の話をし、「暗闇が続くのも愛の象徴コマドリが来るまでよ」と慰めた。その後、ジェフリーはドロシーの部屋に行き、逢瀬を重ねたのだった。

彼はフランクを尾行し、根城を突き止めた。そして、次の日サンディに報告する際、行動を起こしたことを告げる。黄色い服の男がフランクの家にきている事、そして、ワニ皮のカバンの男とも会っていた事。そして、麻薬売人の殺害現場を見ていた事を伝えた。サンディがこれ以上の調査を止めると、彼は「僕は今謎の真っ只中にいるんだ」と返し、責任を感じる彼女を安心させるのだった。

闇に踏み込んでいくジェフリー:ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!

ジェフリーはドロシーと逢瀬を重ねていた。抱くたびに「ぶって」と言う彼女に合わせているうち、ジェフリーは自分が獣になったように感じるのだった。部屋を出ようとした2人はフランクに見つかってしまう。ジェフリーはナイフで脅され、車でとあるゲイバーに連れていかれてしまう。

なんとそこには監禁されたドロシーの家族がいたのだ。そこで、ジェフリーはフランクからゴードンという名を聞く。それはあの黄色い服の男であった。

告白:ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!

そして、近くの空き地に連れていかれたジェフリーはフランクたちにリンチされ、「女に構えば殺す」と脅される。暴力の世界に翻弄されたジェフリーは、手に負えないと思い、ウィリアム刑事に相談しに警察署へ向かった。しかし、相談のために入った部屋にはあの黄色い男、ゴードンが座っていたのだ。その夜、刑事の家に直接訪れたジェフリーは全てを打ち明けた。そして、これ以上深入りしないと約束するのであった。

事件を警察に任せ、ジェフリーとサンディはパーティに行くことに。そこでついに2人は気持ちを伝え、キスをする。しかし、帰り道に裸で全身傷だらけのドロシーが歩いてきたのだ。

サンディの家で介抱するうちに、2人が逢瀬を重ねていたことを知ったサンディは、感情を爆発させる。ドロシーはそのまま意識が途切れ入院することに。後日、サンディは泣きながらジェフリーを許すのだった。

あとは警察の仕事:ブルーベルベットの映画あらすじをネタバレ解説!

ジェフリーはその電話でドロシーの家に警察を派遣するように依頼、自身も向かうことに。そこでジェフリーは驚くべきものを目の当たりにする。部屋には2人の男がいた。一人は黄色い服を着て立っており、もう一人は、椅子に座り、口にブルーベルベットを詰め込まれ、眉間を打たれて死んでいた。その男には片耳がなかった。黄色い服の男は生きているように見えるが微動だにしない。

側頭部にどうやら穴があいており、頭蓋の中が見えているのだ。ゴードンであった。ジャケットには無線機が見え、それが鳴るとゴードンの手が人形のように動くのだ。それを見たジェフリーは「あとは警察の仕事だ」とつぶやいた。しかし、部屋を出たジェフリーはヘビ皮のカバンの男と鉢合わせてしまう。ヘビ皮の男はフランクの変装だったのだ。彼はフランクを寝室に誘導し、衣装ダンスに隠れるのだった。

ブルーベルベットの映画結末をネタバレ解説!

一瞬の隙をついて黄色い男の上着から銃を抜いたジェフリーは、衣装ダンスを開けたフランクを撃ち抜いた。直後にウィリアム刑事とサンディが到着し、「全て終わったよ」と告げるのだった。

その後、ドロシーは息子と再び生活することになり、回復した父とサンディと暮らすジェフリーにはコマドリが舞い降りる。コマドリは黒い甲虫をくわえているのだった。

ブルーベルベットの映画を見た人の感想を紹介!

デヴィット・リンチ監督の仕掛けによるブルーベルベットは、様々な解釈や感想を呼んだ。今でも表現されているものがどういうものなのか、議論を読んでいるのだ。ここではそんな感想をいくつか紹介していく。

カイル・マクラクランのジェフリー青年も純朴ながら突拍子も無い行動を見せる良いキャラクターだが、やはり、デニス・ホッパーの強烈な「危ない奴」っぷりに人気があるようだ。

こちらもデニス・ホッパー関連。映画の中でこれだけ「くそったれ」を使うキャラクターは、なかなかいない。彼はデヴィット・リンチの映画に出られるなら、と彼に直接「私はフランクだ」と電話を掛けた逸話がある。

全体の物語を通して、「不気味さ」が際立つブルーベルベット。そんな世界観も美しい日常を表現するためのものだったのかもしれない。この辺りもデヴィッド・リンチ監督の手腕なのだろう。

「不思議と引き込まれる映画だった」

何気ない日常風景の中に潜む異様な「違和感」。その画を観ているだけで引きずりこまれるんです!〜中略〜魅力的で美しい不快感というのを表現するのに長けています。また、登場人物の立ち振る舞い、台詞および不可解な演出も魅力的です。そして、ほとんどの映画が難解です。〜中略〜2回目以降は「こういう意味だったのか!」「この話とこの話は繋がっていたんだ」と観るたびに発見があります。

「キャストの迫真の演技に魅せられた」

この間亡くなったデニス・ホッパーが、本気で怖いです。怖いお兄さんに連れられて、もっと怖いオカマのお兄さんのアジト的な場所に行くシーンがあるんですが、ホラー映画に匹敵する心拍数の凄さでした。

ジュラシックパーク等でお馴染みのローラ・ダーンが出演してました。〜中略〜本作の後半、彼女が泣くシーン………凄いですよこれは、〜中略〜体張ってるというか……デヴィット・リンチ監督はこの女優をどう思ってるんだろう、さっきも言った泣くシーンといい、終盤、主役が命の危機って時に「ジェフリーッ!!」って叫びながらマンションの横を猛進するシーンといい、〜中略〜本当に女優としては凄いんですよ。

ブルーベルベットの映画あらすじまとめ!

いかがだっただろうか。ブルーベルベットはデヴィット・リンチ監督らしい作品として、彼の入門編とまで言われた作品だ。何と言っても俳優さんの演技もだが、映像からの情報がものすごい量なのだ。ミステリーとしての事件はよくあるものなのに、「奇妙に見えながら美しさもある映像作り」がプラスされることで、とても楽しめる映像作品になっている。キャラクターも濃く、飽きない映画となっている。

2面性のある世界を作り出したブルーベルベットだが、それは冒頭の闇で蠢く甲虫と、ラストシーンの黒い甲虫を食べる愛の象徴コマドリに集約されている。愛の象徴は蠢く甲虫を食べて生きている。それを「いやだわ」というジェフリーの叔母に対し、笑顔で返す彼が印象的であった。つまり青年は、闇を知りつつ飲み込み、愛を得て幸せになったのだ。「闇と愛は捕食関係にある」という解釈は、いささか行き過ぎだろうか。

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