ヘルタースケルターの意味とは？映画のタイトルやラストシーン・結末について考察

映画「ヘルタースケルター」は原作岡崎京子による漫画「ヘルタースケルター」が基になっており、ほぼ原作通りに作られているという。漫画「ヘルタースケルター」は祥伝社『FEEL YOUNG』に連載されていた。1996年5月漫画「ヘルタースケルター」の連載終了直後、岡崎京子は自宅近くを夫と散歩中飲酒運転の車にはねられたという。夫は骨折で済んだが、岡崎は意識不明の重体という重大な事故になった。

2003年「ヘルタースケルター」の単行本化の際は療養生活をしながら、原稿のチェックを行っていたという。2004年2月漫画「ヘルタースケルター」で文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞受賞。同年4月、同「ヘルタースケルター」で手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞している。この頃からは大分元気になられた模様。新しい作品は排出できない現在なだけに「ヘルタースケルター」の映画化を楽しみにしていたようだ。

映画「ヘルタースケルター」実写化に際し監督は映画「さくらん」を手掛けた写真家の蜷川実花。蜷川といえば、目の覚めるような極彩色が特徴だが御多分に漏れず映画「ヘルタースケルター」も蜷川ワールド全開だ。息が詰まりそうというコメントもあるが、それこそが映画「ヘルタースケルター」のヘルタースケルターらしさだという声もある。映画「ヘルタースケルター」は映画観客動員初登場第4位を記録、最終興収21.5憶円あげた。

蜷川は「ヘルタースケルター」のメインテーマについて"自分の人生を自分でちゃんと決めて、責任を負って、自分の足で素敵に歩いていきましょうね"っていうことだったりする。と語っている。全身整形して芸能界のトップに君臨するりりこの覚悟を通して、全女性達への応援メッセージを「ヘルタースケルター」という映画を通して発信しているのだろう。

映画「ヘルタースケルター」の主役であるりりこ役には沢尻エリカ。「別に…」騒動以来お騒がせ女優的な扱いの沢尻の５年ぶりの映画出演。監督の蜷川が「ヘルタースケルター」を撮るなら沢尻以外ない。沢尻ありきの「ヘルタースケルター」だと言うほど、沢尻を推していただけあり、沢尻からOKをもらったときはこれで「ヘルタースケルター」が前に進めると思ったそうだ。

沢尻自身「ヘルタースケルター」が久々の仕事だったわけだが、リアルな沢尻とフィクションのりりことリンクしている部分が多々あったようで、それは「ヘルタースケルター」での共演者も語っている。自分を出し切ったか役に入り込みすぎた為か、沢尻は「ヘルタースケルター」クランプアップ後のジャパンプレミアに、体調不良ということで出演をキャンセルしている。詫び状を「ヘルタースケルター」関係者に出している。

そんな、何か一筋縄ではいかない感のある映画「ヘルタースケルター」の、そもそもタイトルになった「ヘルタースケルター」とはどんな意味なのか？またその映画「ヘルタースケルター」のラストについて巷で物議を醸し出していたことについて考察してみようと思う。

まずこの映画のタイトル"ヘルタースケルター"をネット検索してみると当映画「ヘルタースケルター」が筆頭にあがってくる。そしてビートルズの「ヘルタースケルター」という楽曲に続く。他にも曲のタイトルだったり、バンドの名前であったりするのだが、先の二つのタイトルの「ヘルタースケルター」が別物のようであながち別物ではなさそうなところがまた面白い。このタイトルの意味を詳しく紹介しよう。

1968年11月25日ビートルズの「TheBEATLES」というアルバムが発売された。真っ白いジャケットに"TheBEATLES"と小さく印字されたそのアルバムはホワイトアルバムと呼ばれ、何故ファーストアルバムでもないのにタイトルが"TheBEATLES"なのかという疑問も出たというこのアルバムは更に重大ないわくつきのアルバムとなる。そのいわくつきの意味とは…

アメリカカリフォルニア州にて1960年代から1970年代初頭にかけてあるカルト集団が存在した。その名を「マンソン・ファミリー」といいチャールズ・ミルズ・マンソンという男が率いていた。彼は幼い頃からさまざまな犯罪行為により刑務所や矯正施設で人生の半分を過ごしたという。その後ミュージシャンを志し作った曲も数曲レコーディングされており、別のミュージシャンが演奏しているという。

ヒッピーと呼ばれる若い女の子達を麻薬などで洗脳し、主に洞窟などで共同生活させながら各地を転々としながら過ごしていたという。そんな彼女らのグルであったマンソンがビートルズの上記のアルバムを聴いたとき「神の訓示」だと解釈したという。ことに「ヘルタースケルター」に心酔したのだろうか、犯罪後は現場にこのタイトルを書きなぐっていたらしい。彼にとって「ヘルタースケルター」はどんな意味をなしていたのか？

1969年7月25日信徒の女性がミュージシャンのヒンマン宅に押し入り監禁挙句に殺した。翌月8月8日には女優で妊婦だった女性を殺害等、対象が限定されない殺人事件が続いた。マンソン自身は手を汚さず信徒の女性が実行犯だ。一連のマンソン・ファミリーが起こした事件について「マンソン事件」或いは「ヘルタースケルター事件」とも呼ばれるようになった、以後「ヘルタースケルター」という言葉の意味が"悪”の代名詞になった。

ビートルズの「ヘルタースケルター」といえば、ハードロックの先駆けである。とか、ビートルズ史上最も騒がしい曲である等、ヘービーなサウンドとめまいを誘うような曲調が特徴だ。リスペクトしているミュージシャンも多く数々カバーしている。曲もさることながら、そのタイトルにまつわる上記の事件もありある意味人々の脳裏にしっかり刻み込まれた曲のようである。この「ヘルタースケルター」歌詞の意味はしっちゃかめっちゃか。

この映画のタイトル「ヘルタースケルター」とはそもそも英語で"HelterSkelter"で慌てふためいて・混乱している・螺旋状の滑り台などを意味している。螺旋状の滑り台とは日本的な簡素な滑り台というよりは、イギリスの遊園地にあるような螺旋状の滑り台のことを指しているようで装飾が派手でそれだけでめまいのするような滑り台のことのようだ。

上の画像がイギリスの遊園地などにある螺旋状の滑り台。日本のそれとは違ってカラフルで高さもありそうだ。登ってくのは階段なのかエレベーターなのか定かではないが登っていくときの高揚感と逆に滑り降りるときのぐるぐる回転してある意味混乱してしまいそうだ。それこそが、ヘルタースケルターの意味なのだろうか？

さて、この映画のタイトル「ヘルタースケルター」の意味は？となるのだが、単純に混乱しているりりこの生き様を描いているという見方。あるいは芸能界という混沌とした特殊な世界で自分を売り物にし、次々にライバルになり得る人材が現われる。自分の時代を見た瞬間自分の時代が終わる、やがてまた登る日もあるかもしれないことを思えば、この映画のタイトルの意味は、まさに"螺旋状の滑り台"だという見方もある。

先述のビートルズの楽曲「ヘルタースケルター」だが、和訳としては"天辺についたら振り向いて滑り降り、一番下でまた君に会う…"なので、単純に考えて"螺旋状の滑り台"だろう。全体的な曲の意味は、真意のわからない女に振り回される心情を歌っている。因みに映画「ヘルタースケルター」のラスト近くにこの曲「ヘルタースケルター」が使われている。このことからもビートルズの楽曲とこの映画のタイトルの意味はリンクするのだ。

映画「ヘルタースケルター」のキャストは下記で紹介するが、「ヘルタースケルター」の内容もさることながらキャストの濃さに、同じく「ヘルタースケルター」に出演する方でも圧倒されたということだ。

• 沢尻エリカ/りりこ（比留駒春子）は本作の主人公で経歴等全て謎の売れっ子モデルだが、実は元デブ専風俗店勤務。骨格、目玉、爪、髪、耳、性器以外は全て整形している
• 大森南朋/麻田誠は美容クリニックの違法な医療行為を調査している検事。
• 寺島しのぶ/羽田美知子はりりこのマネージャーでりりこに公私共に翻弄されているが「りりこさんは私がいないと駄目なの」と微笑むなど、Ｍッ気がありそうだ。

• 桃井かおり/多田寛子はりりこの事務所社長でりりこをスカウトし、りりこという超売れっ子モデルを作りあげた張本人、りりこからは「ママ」と呼ばれている
• 水原希子/吉川こずえはりりこの後輩モデルでライバル。天然の美人で性格も自然体。
• 新井浩文/沢鍋錦二はりりこのメイク担当のゲイ。通称きんちゃん。リリコが整形美人であることは知らずにいたが、りりこに整形の後遺症が出てからはりりこの力になる。

• 窪塚洋介/南部貴男はりりこの恋人で南部デパートの御曹司。りりこだけだよと言いながらも政治家の娘の婚約者がいる。
• 原田美枝子/和智久子はりりこが通う美容クリニックの院長先生。非合法な美容整形をしていて拒絶反応を薬などでおさえるがいずれ肉体が崩壊していく可能性もあるという。後遺症に悩む女性達は精神まで侵されていき自殺者が出るようになる。

• 綾野剛/奥村伸一はりりこのマネージャー羽田の恋人だが、りりこの異様な精神状態の餌食となり犯罪までおかしてしまう。
• 哀川翔/浜口幹男はりりこの枕営業の相手
• 原田美枝子/和智久子はりりこの通う美容整形クリニックの院長先生

超売れっ子モデルのりりこはある秘密を持っていた。経歴を一切明かさない、完璧な美貌はどのメディアにも引っ張りだこだったが、次第に心身のバランスを崩していく。何故なら、彼女は髪と目玉と耳と爪、そして性器以外は全て整形している整形美人だった。その整形には違法な人体からの胎盤等が使われており、副作用や後遺症が著しい。頭痛、アザ等が顕著なとこで、その痛みを止めるために服薬、注射を余儀なくされていた。

りりこには南部デパートの御曹司の恋人がいる。「りりこを一番愛している」といいつつ、彼には政治家の娘が婚約者として存在している。りりこの思いとは裏腹に彼の結婚話は着々と進んでいく。意味のない結婚だと、南部の話を信じていたりりこは自分と南部の結婚を耽々と狙っていた。そんな南部と政治家の娘の結婚が公になると、それを受け入れ難いりりこは次第に常軌を逸していく。

日々、副作用とストレスに苦しめられるりりこだったが、薬と気力でそれを乗り越えていく。りりこのマネージャーの羽田はりりこに心酔していて「自分が居ないとりりこさんはダメなの」とほくそ笑む。羽田はいくらりりこに意味のない理不尽なことをされても耐え、挙句自分の目の前で自分の恋人まで寝取られる。羽田は、「舐めて」とりりこの性器を舐めるように促されても決してりりこを見捨てることはない。

りりこの同じ事務所の後輩モデルである吉川こずえは天然の美人で性格もりりことは真逆。肩ひじ張らず、売れなくてもいいし仕事辞めてもなんてことない。という性格。必死でモデルの仕事にしがみついているりりこの鼻につくようになる。マネージャーの羽田はそんなりりこのためにこずえにナイフを向けるが、あまりにもこずえが飄々とし「刺してもいいわよ」と言ってのけたので羽田はひるんでしまう。

りりこは本名を比留駒春子。元はデブで見栄えしない娘がデブ専の風俗で働いていたところを「完璧な骨格だ」と現事務所社長に見いだされる。美容整形クリニックで全身整形し世の中に「見たいものを見せてあげる」と、見せ物としての自分を作りあげた。同クリニックでの術後ノイローゼをおこし自殺者が出る中で検事の麻田はりりこの整形に気づき接触をしてくる。

違法行為を行っている美容クリニックの犯罪をあばくため、りりこの証言が欲しかったのだ。麻田はりりこの整形前の資料をりりこ本人に渡すが、情報漏洩だとの声も内輪からあがる。しかし、それには意味があったのだ。薬の過剰摂取や過度のストレス等でりりこは完全に崩壊していく。その様を見て麻田は「ヘルタースケルターだ」とつぶやく。

体も心も蝕まれていくりりこはついに仕事中に失神し、休養を余儀なくされる。そんな中、羽田はりりこの整形前の姿を知るところとなり、りりこを救うためにその情報をマスコミにリークする。クリニックの件が表沙汰になり、世間からもりりこバッシングが始まると、事務所社長はシナリオを用意し記者会見を設定したが、りりこはある決意をしていた。

「私を殺すのだ」そう決意してマスコミの前に立ったりりこは右手に持ったナイフを躊躇なく右目に突き刺す。皆の記憶に残る方法でトップモデルりりこを抹殺したのだ。りりこの思惑通り、りりこは伝説になった。りりこの写真集復刻版が出るなか、時代は次のスター吉川こずえの時代へ。

ある日、こずえは仕事終わりでスタッフと怪しげな店に入る。見世物小屋のようなその店にはかつてりりこのマネージャーだった羽田が働いていた。店のスタッフのような羽田に引き込まれるようにしてついていった先には、煌びやかに飾られた部屋、そして煌びやかな眼帯と煌びやかなドレスをまとったりりこが居た。

映画「ヘルタースケルター」のあらすじは前述した通りだが、この映画のラストシーンが巷で話題になった。怪しげな店の見せ物になっていたりりこと、そこに現れるこずえ。そのこずえに対してだろうか、ニッコリといえるほどの笑顔を向けるりりこの顔で映画はラストとなるわけだが、この笑顔になにか意味があるのか否か、ということだ。

りりこが芸能界のトップから場末の見せ物に落ちている。しかし、死んではいない。ここでこうして奇妙な妖艶な姿で人々の記憶に残り続けるという自負をこずえに見せたのだという見方。または、こずえにも「ここまで堕ちて来い。いや、むしろあなたもここに落ち始めた。」という意味の笑顔だという見方。或いはもうすでに整形の後遺症で表情筋が動かなくなっている。等々見方は色々だ。

「ヘルタースケルター」のラストは物語自体がラストか否かにも両論あるそうで、原作者の体調によりこの物語は未だに完成を見ない。という見方が大方なのだが、否。これでラストが完結なのだ。あとは読者の想像に全て委ねている。という見方もある。さてどちらにしても比留駒春子がりりこに転身してからの壮絶な生き様。またそれを取り巻く世の中の、あるいは人々の気持ちの移り身の速さに、りりことは逆の意味での生き様をみる。

さて、いかがだってしょうか？映画「ヘルタースケルター」について、或いは別の「ヘルタースケルター」について色々調べたわけだが、マンソン事件といい「ヘルタースケルター」という言葉自体何か妙に混乱させる力があるのだろうか？それともマンソン事件以来「ヘルタースケルター」にある意味特別な意味ができたのだろうか？

映画「ヘルタースケルター」の蜷川監督は、「ヘルタースケルター」の試写後かなにかで渋谷の街に出た時に、あまりにも映画「の世界とリンクしていて、妙に納得してしまった。というような内容の発言をしている。まさに混沌としていて「ヘルタースケルター」感があったことは想像できる。

しかし蜷川監督が求めた「ヘルタースケルター」はただ、慌てふためいて混乱しているという意味の「ヘルタースケルター」ではなく、ビートルズの楽曲の「ヘルタースケルター」の和訳にあるしっちゃかめっちゃかというだけの意味でもなく、りりこの人生を「ヘルタースケルター」という滑り台に例えつつ女性達への応援歌にしているということからも、ビートルズの「ヘルタースケルター」とは似て非なり。というところだろう。

注目された作品であった映画「ヘルタースケルター」だけに、賛否両論のあるこちらの作品。色々な「ヘルタースケルター」を知ることで、こんなにも深い意味があるのかと「ヘルタースケルター」について考えた今回。そんな色々な「へルタースケルター」を心に留めながら映画「ヘルタースケルター」を再度、または初めて見てみるとまた面白いかもしれない。是非お試しあれ。