2018年10月23日公開
2018年10月23日更新
ぐるりのこと。はどんな夫婦映画?あらすじ・感想やラストの結末までネタバレ
映画『ぐるりのこと。』は、ある夫婦の10年間を描いた物語です。リリー・フランキーさん、木村多江さんともに初主演映画となった『ぐるりのこと。』は橋口亮輔監督による映画で、穏やかであたたかい感動の結末に涙したという感想が多く見られます。そんな『ぐるりのこと。』は、いったいどんなあらすじなのでしょうか?そしてこの映画をラストの結末まで見た人はどのような感想を残しているのでしょうか?今回は『ぐるりのこと。』のあらすじとラストの結末、そして映画を観た人の感想を詳しくまとめました!
目次
ぐるりのこと。のあらすじ結末が気になる!
映画『ぐるりのこと。』は、「希望を失ってしまった妻とそれを見守る夫」という一組の夫婦の再生の物語です。どこにでもいる普通の夫婦に襲い掛かった悲劇は妻の心を壊し、夫婦の関係も悪化させてしまいます。そんな「翔子」と「カナオ」の二人は、物語の中でどのような10年間を過ごしたのでしょうか?今回はあらすじとラストの結末、そして映画を観た人の感想をまとめて紹介していきます!
ぐるりのこと。の作品情報
『ぐるりのこと。』とは?
『ぐるりのこと。』は橋口亮輔監督による映画で、2008年に公開されました。一風変わったタイトルの『ぐるりのこと。』ですが、この「ぐるり」は、「人々の身の回りで」起こる色々な出来事のことを表しているそうです。リリー・フランキーさん、木村多江さんの二人が主演を務め、他にも寺島進さんや柄本明さん、倍賞美津子さんなどの名バイプレーヤーが勢ぞろいしており、その名演も見どころの一つです。
ぐるりのこと。では、とある夫婦の10年間が優しく静かに、ときにはコミカルに描かれています。苦しみを一緒に乗り越え、決して離れない夫婦の絆を通じて「誰かとつながって生きること」の意味を教えられるこの作品。キャッチフレーズは"めんどうくさいけど、いとおしい。いろいろあるけど、一緒にいたい。"です。
ぐるりのこと。の監督は橋口亮輔さん
橋口亮輔さんは長崎県生まれの映画監督・脚本家です。劇場公開作品が大ヒットし、海外の映画祭でもグランプリを受賞するなど国内外で絶賛され躍進を続けています。ぐるりのこと。は、カンヌ国際映画祭で高く評価された『ハッシュ!』から6年ぶりの作品となりました。うつ病を経験したことがあり、完治後はその経験を活かしてこの作品を手がけました。
ぐるりのこと。の主な出演キャスト一覧
佐藤翔子/木村多江
明るく朗らかな女性で、夫との夜の夫婦生活の日をあらかじめ決めてカレンダーにマークしておくほどしっかりした性格でもあります。出版社で働いており、赤ん坊も授かってプライベートと仕事どちらも充実した日々を過ごしていましたが、ある悲しい出来事がきっかけとなり鬱になってしまいます。
木村多江さんは東京都出身の女優で、『花とアリス』や『大奥』などの映画に出演している他、多くのテレビドラマでも活躍しています。演じた役にちなんで「薄幸な女性の役が日本一似合う」などと称され、加えてその演技力も評価され女優としての地位を確立しています。
佐藤カナオ/リリー・フランキー
翔子の夫で、しっかり者の翔子とは対照的にマイペースな性格です。若い女性と知り合うと嬉々として話しかけるなど、女性関係にもルーズな面があります。翔子とは学生時代に知り合い、付き合ってからそのまま結婚しました。美大で日本画を専攻していたことから、先輩に依頼され法廷画家の仕事を始めました。
リリー・フランキーさんは俳優業だけではなく、イラストレーター・小説家・ミュージシャンなど多種多才な顔をもつマルチタレントです。俳優としては『凶悪』『そして父になる』『万引き家族』などの話題作に多数出演し、数多くの映画賞を受賞しています。
吉田波子/倍賞千恵子
翔子の母親で、いつまで経ってもだらしがないカナオとの夫婦生活を心配しています。夫が家を出たため女でひとつで翔子を育て上げました。
倍賞美津子さんは長年女優として活動しており、『復讐するは我にあり』『楢山節考』などの映画に出演しています。女の情念を表したその独自の演技で国内の映画賞を多数受賞し、女優として確固たる地位を築いています。
安田邦正/柄本明
カナオの仕事の関係者で、ベテランの報道担当です。裁判傍聴に不慣れで右往左往するカナオに手短に仕事のやり方を説明するなど、ぶっきらぼうな性格をしています。「カレー好き」の一面もあり、作中ではたびたび同僚にお手製カレーを食べさせるシーンがあります。
俳優として映画やテレビドラマに出演している他、コメディアンとしてバラエティ番組に出演することもある柄本明さん。シリアスな演技だけではなく、親しみのあるコメディタッチな演技も幅広い年代から愛されています。
ぐるりのこと。のあらすじをネタバレ解説!
ここからは、ぐるりのこと。のあらすじをネタバレ紹介していきます。翔子とカナオという夫婦はどんな困難に見舞われ、そしてどのようにそれを乗り越えてきたのでしょうか?そして二人を取り巻く人々との関係はどうなっていくのか、ぜひあらすじをご覧ください。
ぐるりのこと。のあらすじ①/第一子を妊娠
1993年7月。小さな出版社に勤める「翔子」と靴の修理屋で働くマイペースな夫「カナオ」は、翔子の「計画どおり」妊娠した、待望の第一子の誕生を控えていました。夫婦の部屋のカレンダーには所々に「バツ印」がついています。これは翔子があらかじめ決めてある夜の夫婦生活の日。ある夜、バツ印のついた日であるにもかかわらずカナオが遅く帰宅し、翔子は女性関係にだらしないカナオの浮気を疑います。
出典: https://eiga.com
しかし実は、カナオは大学時代の「夏目」先輩と呑んでいて、テレビ局に勤務している夏目から法廷画家の仕事に誘われその相談をしていたのです。それでも印のついた約束の日なのに、とすねて寝室に行ってしまう翔子に「色気がない」とぼやきながらカナオも寝室に向かいます。時には喧嘩もしますが、仲の良い「どこにでもいる」この夫婦は、穏やかに暮らしていました。
クセの強い同僚たちと出会いながらもうまく付き合い、カナオは法廷画家の仕事を始めました。初めて担当したのは業務上過失致死の事件。慣れない仕事に戸惑いつつ、徐々に仕事に馴染んでいきます。そんな中、翔子の家族たちと食事に行くカナオ。頼りないカナオの姿に、翔子の家族たちは不安を感じています。翔子の兄は口が悪いものの、本人なりに翔子のことを心配しているようです。
ぐるりのこと。のあらすじ②/夫婦が失ったもの
1994年、2月。夫婦が暮らす部屋に置かれているのは、子供の位牌と飴玉でした。流産したことがきっかけとなり、生真面目な翔子はだんだんと心を病んでいってしまいます。さらに翌年、翔子は再び新しい命を授かりますが、一人目の子供への罪悪感から自暴自棄となり、カナオに相談せず一人で中絶を決断してしまいました。
カナオはそんな翔子を静かに見守りながら、絵画教室で絵の描き方を教えるかたわら法廷画家の仕事を続けます。仕事で幼女殺害事件など凶悪事件の公判を傍聴するカナオ。社会不安と重なるように、翔子のうつ状態も深刻化していきます。そして、ある日子供に関する書籍のサイン会で仕事をしていた翔子は、耐え切れず泣き崩れてしまうのでした。
ぐるりのこと。のあらすじ③/夫婦の間にうまれたもの
1997年、10月。仕事を辞めた翔子は心療内科に通うようになりました。カナオもだんだんと仕事に身が入らなくなっています。そしてある日実家に帰省した翔子は、兄嫁の「雅子」から「精神科に通っている者が身内にいると、息子の進学に悪い影響が出る」と邪険にされ、追い打ちをかけられてしまうのです。
引きこもりがちになり、もうどこに気持ちをぶつけていいのか分からなくなってしまった翔子。そしてある台風の夜。カナオが帰宅すると、翔子は風雨が吹き込むのも構わず部屋の中でびしょ濡れになっていました。翔子はとうとう気持ちを抑えきれずに、中絶したことをカナオに告白します。子供を失ったことは残念だ、と話すカナオに、翔子は「私が死んだら悲しい?」と問いかけます。
カナオを殴りつけ、泣きながら「なぜ自分と一緒にいるのか」と問う翔子に、カナオは「好きだから」と答えます。そして取り乱す翔子を優しく抱きしめるカナオ。「ちゃんとしたかったのにできなかった」と言う翔子に、カナオは「ちゃんとできなくてもいい。お前のそばにいたい」と言って寄り添いました。二人はやっとお互いの気持ちをぶつけあうことができたのです。
ぐるりのこと。のラストの結末をネタバレ解説!
ここまで、ぐるりのこと。のあらすじを紹介してきました。一度は心が離れてしまったかのように思えた二人ですが、台風の夜から、二人の固まっていた時間がまた動き出しました。この後二人はいったいどうなるのでしょうか?それでは、ぐるりのこと。のラストの結末をネタバレ紹介しますので、ご覧ください。
ぐるりのこと。のラスト結末①/自分を取り戻し始めた翔子
翌年、お寺に行くようになり、笑顔が増え以前のように精神的な落ち着きも取り戻し始めた翔子。学生時代カナオとともに日本画を学んでいた翔子は、ある日寺の住職から本堂の「天井画」の作成を依頼されました。翔子は久しぶりに自ら筆をとり画材を選ぶと、カナオの絵画教室に参加したり、鳥や花、風景画などの本を読んだりと作業に熱中していくようになります。
外にも出かけられるようになりだんだんと平穏な生活に戻っていったある日、翔子は自分たち家族を置いて家を出て行った父が末期ガンであることを知りました。兄から「様子を見てきてほしい」と頼まれた翔子は気が進みませんでしたが、カナオに「自分も名古屋の裁判所で仕事があるから待ち合わせして一緒に行こう」と誘い出されます。
ぐるりのこと。のラストの結末②「夫婦」になった二人
名古屋で待ち合わせた二人はそこで他人の派手な結婚式を見かけ、ふざけて金屏風の前に並び写真を撮ります。そして対面する翔子の父親。とても元気そうで、翔子はそんな笑顔の父親の似顔絵を描いて持ち帰りました。帰って翔子がそのことを母に報告すると、実は父を裏切ったのは母・波子のほうだったということを聞かされます。翔子が描いた似顔絵によって夫と再会した母の姿を見て、翔子は両親の確執が和らいだことを感じました。
2001年7月。翔子の渾身の力作、本堂の天井画が完成します。二人並んで寝ころび手をつないで、幸せそうにその天井画を眺める翔子とカナオ。そして、新たに夫婦として歩み始めた二人を象徴するかのように、名古屋の結婚式場の金屏風前で撮った写真が飾られます。ラストシーンは、裁判の仕事が終わったカナオがビルの窓から見下ろす街。「人、人、人。」というカナオのつぶやきで映画は幕を閉じます。
ぐるりのこと。を見た人の感想を紹介!
心が温かくなるようなラストとなったぐるりのこと。ですが、映画を観た人はどんな感想をコメントしているのでしょうか?ぐるりのこと。は結末以外にも見どころや心を打つシーンがたくさんあります。それらについての感想をまとめてみましたので、ご覧ください。
リリー・フランキーが素敵
カナオに対する感想です。いつもマイペースでぼんやりした印象のカナオは、あまり感情を表に出しません。その態度が翔子を不安にさせる一方、翔子を責めず苦しみを受け止めたことで回復に向かうことができたという一面もあります。
傍観者なのか?といえばそんなことはないらしい。
逃げ出したいのだろうか?という言動はたまにみられる。
カナオは逃げない。
しっかり受け止める。
夫婦や家族の間には楽しいことばかりではなく、すれ違ったりぶつかり合うこともあります。リリー・フランキーさんは、そこから逃げずに向き合ったカナオを飄々と演じ切りました。
リアルな裁判のシーン
ぐるりのこと。で特徴的なのは、翔子とカナオの二人を中心として起こる人間ドラマの演出に、リアリティのある裁判傍聴のシーンがオーバーラップしていることです。
【感想】ぐるりのこと。
— ちひろ🍳 (@chihiromix) May 24, 2010
夫婦の10年間。ひとの内面をあんなに生臭く描けるものなのかと震えた。中盤まで傷口開きっぱなしのような痛みに苦しくて見てるのしんどくなったけど、再生する強さと夫婦の愛情に救われた。裁判の傍聴シーンが人間模様の表現としてうまく色が出ているんだろうなぁ。
幼女誘拐殺人事件、児童殺傷事件、地下鉄の毒ガス事件など、誰もがモデルになった事件を思い浮かべられるほどの90年代の大きなニュースが、カナオが傍聴する裁判で取り上げられています。
「ぐるりのこと。」感想 法廷画家の夫は事件の裁判を通して、その妻はとある困難に直面して、夫婦の絆とは何かと問うような人間ドラマだった。事件の裁判での様子も、夫婦の周りの関係からも、良くも悪くも人間には縁というのが存在するのかなと感じた。
— kei (@4ga2_CAT) April 19, 2010
被害者と加害者が一堂に集まる裁判所という場所で、泣き崩れ、叫ぶ人々の様子をカナオは淡々と見つめ、描き続けます。ぐるりのこと。では単に二人だけの問題にフォーカスするのではなく、こういった登場人物たちの「身の回りで」起こるやりきれない出来事も踏まえて、「夫婦」という関係がどういったものかを描き出している、という感想です。
夫婦の絆の物語
「夫婦」「家族」という形に限らず、身近にいる人が(もしくは自分自身が)一人では抱えきれないほどの困難に見舞われたときどうするか?ということを考えさせられるという感想です。
夫婦はどんな選択をするのか。つらい出来事から立ち直るため、人は何を必要とするのか。何気ない会話が心に染み入る良質なドラマ。やや重い題材だが、映画ならではの見ごたえある人間模様を味わいたい人におすすめだ。
こういったとき、「夫婦」である翔子とカナオの二人ですら、お互い理解しあえないこともありました。ただ、理解しあえないことから「目を背けなかった」結果、また手をつないで絵を眺める関係に戻れたのです。
ぐるりのこと。は、自分や大切な人が困難に見舞われたとき、愛情の本質が見えてくるということを教えてくれる映画です。カナオは一見頼りのない男性に見えますが優しく静かに翔子に寄り添い支え続け、翔子も自分を受け止めてくれたカナオに応えます。こうした夫婦の姿を通して、自分の周りの人間との関わり方を見つめなおすこともできるかもしれません。
ぐるりのこと。を是非ご覧あれ!
ぐるりのこと。についてあらすじやラストの結末、そして映画を観た人の感想をまとめてご紹介しましたが、いかがでしたか?辛い出来事によって希望を失ってしまった登場人物が人との関わり合いの中で再生する姿を、丁寧にあたたかく描いたこの作品。人生の糧となる素晴らしい映画ですので、ひとりでじっくり、或いは大切な人と、ぐるりのこと。をぜひご覧ください。