春の雪のあらすじと映画評価まとめ!三島由紀夫の原作との違いは?

2005年公開の映画「春の雪」。男女の儚い恋物語を妻夫木聡と竹内結子が演じます。三島由紀夫の小説を原作として、大正時代の日本の美しい風景描写も話題となりました。この記事では、春の雪の登場人物やあらすじのネタバレを中心にご説明いたします。また、三島由紀夫の原作と映画版ではどのような違いがあるのか、映画はどのような評価を受けているのか。映画を視聴した方々の感想も交えてご紹介いたしますので、春の雪を知っている人も知らない人も是非ご覧になってください。

春の雪のあらすじと映画評価まとめ!三島由紀夫の原作との違いは?のイメージ

目次

  1. 春の雪のあらすじと映画評価が気になる!
  2. 春の雪の映画キャストを紹介!
  3. 春の雪の映画あらすじをネタバレ!
  4. 春の雪の映画と三島由紀夫の原作との違いとは?
  5. 春の雪の映画を観た感想や評価とは?
  6. 春の雪のあらすじと映画評価まとめ!

春の雪のあらすじと映画評価が気になる!

映画「春の雪」は2005年に公開された、三島由紀夫の小説を原作とする映画です。妻夫木聡と竹内結子により、大正初期における男女の儚い恋物語を描いています。過去にテレビドラマや舞台化される事はありましたが、映画となったのは本作が初めてでした。監督は「GO」や「北の零年」で有名な行定勲で、主題歌は宇多田ヒカルの「Be My Last」です。

花に積もる雪

この記事では、春の雪のあらすじをネタバレで解説いたします。また、映画がどのような評価を受けているかも感想を交えつつ取り扱ってまいります。その他、三島由紀夫の原作である小説と、この映画では展開や登場人物の立ち位置にどのような違いがあるのか?そういった点にも触れておりますので是非お楽しみください!

春の雪の映画キャストを紹介!

映画台本のイラスト

春の雪は、どのような登場人物たちにより描かれる物語なのか。ここからは春の雪に出演する主要な映画キャストをご紹介いたします。

妻夫木聡/松枝清顕

主人公である松枝清顕(まつがえ きよあき)を演じるのは妻夫木聡です。高校生時代から読者モデルとして活躍し、1998年にテレビドラマ「すばらしい日々」で俳優デビューをいたします。2001年、映画「ウォーターボーイズ」で映画初主演。シンクロナイズドスイミング×男子高校生という異色の作品で注目を集めました。

松枝清顕は侯爵家の1人息子として生まれます。幼馴染である聡子に恋心を抱いているものの、それを上手く表現できずにいました。と言うのも、美しくある事をとても好んでいる彼にとって、感情を露わにする事は美しくない行為と思っていたのです。

加えて、清顕は侯爵の家庭で何不自由なく育ち、その家柄から将来も約束されている非常に恵まれた立場であります。しかしながら、その事がかえって彼が屈折した心を持ってしまう人間となる要因にもなっていたのです。聡子は愛している、だが自分の口からそんな事は言えない。聡子への想いを伝えられずに過ぎていく月日、それが春の雪の物語の進展にも大きく影響していく事になります。

竹内結子/綾倉聡子

春の雪のヒロインである綾倉聡子(あやくら さとこ)は竹内結子が演じます。1999年のNHK連続テレビ小説「あすか」や、2001年のテレビドラマ「白い影」などでヒロインを務め認知度を高めていきます。妻夫木聡と竹内結子は、彼女が主演する2002年のテレビドラマ「ランチの女王」でも共演を果たしておりました。

聡子は伯爵家の1人娘であり、伯爵は清顕の家の侯爵より低い爵位となります。つまり、清顕にとって聡子は格下の立場の人間となります。自分とは対等な立場ではない相手に対して恋心を抱いてしまった、清顕はそれを美しいものとは考えていませんでした。結局、自分の気持ちを素直に伝えられない要因の1つとなってしまいます。聡子もまた清顕に対して恋心を秘めており、彼から求婚されるのを日々待っている状況になります。

どちらかが相手に想いを伝えれば通じ合えるはずの2人、しかし仲が進展しないまま時は過ぎ去っていきます。そんな聡子の元にも、縁談話が届き始めます。清顕を想う聡子は、当然その話を断り続けますが、そこに思わぬ縁談が飛び込んでくる事で、清顕と聡子2人の物語が加速していく事になります。

高岡蒼佑/本多繁邦

高岡蒼佑は清顕の親友である本多繁邦(ほんだ しげくに)を演じます。彼の行く末を傍らで見守っていく重要なポジションとなります。1999年に「天国のKiss」で俳優デビュー。翌2000年にはオーディションを勝ち残って映画「バトル・ロワイアル」に出演を果たします。

清顕と聡子、2人とも性格的に心の内をなかなか表に出さないため、結局相手の事をどう思っているのかと、観ている側からでは詳しく分からない場面があります。その問題を本多という役柄が上手く補ってくれます。本多がしばしば説明役としての役割を担い、彼の口から2人の心情を察する事ができます。清顕と聡子の2人とは異なる立場で、春の雪という映画を理解するには欠かせない存在となります。

及川光博/洞院宮治典王殿下

ミッチーこと及川光博。彼は宮家の子息である洞院宮治典王殿下(とういんのみや はるのりおう でんか)を演じます。俳優、ミュージシャンと幅広く活躍しており、2011年には女優の檀れいと結婚をいたしました。

春の雪の物語において、聡子に縁談を申し入れた人物こそ、この洞院宮治典王殿下になります。かつて「王子」を自称して自身をプロデュースしていた及川光博にとってこの上ない役柄と言えるでしょう。清顕と聡子の家柄にも立場の違いがありましたが、宮家は格そのものが違います。つまり彼からの求婚は、聡子にとって断るという選択肢が最初からないものであったのです。

洞院宮治典王殿下と聡子との縁談は、周囲から横やりを入れられるものではなく、清顕の立場でも当然どうしようもできない状況です。清顕からすれば時すでに遅しのこの状況、彼らが映画の中でどのような展開を繰り広げていくのか、詳しいあらすじはこの後の項目でご説明いたします。

春の雪の映画あらすじをネタバレ!

ここまでは主要な登場人物をご紹介いたしましたが、次はいよいよ春の雪がどのような物語かに移ります。あらすじをネタバレでご紹介してまいります。

舞台は大正時代の日本、清顕と聡子は幼い頃から仲の良い幼馴染同士でした。いつしか清顕は聡子に恋心を抱くようになり、聡子もまた清顕を密かに想うようになっていきます。しかし清顕にとって聡子は自分より身分の低い家柄であり、年上の存在でもあります。清顕はそんな想いを表に出す事はせず、聡子は清顕が想いを伝えてくれる事を待ち続け、2人の仲が進展しないまま日々が過ぎていきます。

そんな2人に大きな転機が訪れます。聡子に洞院宮治典王との縁談が持ち上がります。伯爵家である聡子の家は貧窮している状態であり、立場的にも断り難い縁談です。このままでは2人は遠く離れてしまう…聡子は清顕に何度も手紙を出す事で、彼の気持ちを確かめようとします。しかし清顕は手紙をちゃんと読もうとはせず、素っ気ない態度をとり続けます。それに聡子は失望してしまい、洞院宮治典王との縁談を受け入れる事になります。

聡子が縁談を受け入れた事で、清顕は自分が聡子を愛していたという事をようやく自覚します。お互いの想いを確認した2人、許されざる逢瀬だと知りながらも聡子は清顕の元へ向かいます。激しく愛し合う2人でしたが、やがて聡子は子を宿す事になってしまいます。当然2人の秘密は知れ渡る所となり、聡子の妊娠も中絶という形で内密に処理される結果となります。そして聡子は、深い悲しみの果てに出家する事を決意します。

清顕は聡子が出家した寺に赴きますが、門前払いとなってしまい彼女に会う事ができません。なおも清顕は食い下がりますが、聡子もまた清顕の一目会いたいという要望を拒絶し続けます。清顕はただひたすらに聡子を待ちますが、外には降りしきる春の雪。そんな状況に居続けた事が祟り、清顕はそのまま眠りにつきます。20歳という若さ、清顕は聡子を想いながら亡くなるという悲しい結末で、春の雪という映画の幕は閉じるのでした。

春の雪の映画と三島由紀夫の原作との違いとは?

原稿用紙

映画の春の雪に関してあらすじをご紹介いたしましたが、三島由紀夫が書いた原作となる小説の春の雪とはどのような違いがあるのでしょうか。映画版と三島由紀夫の原作版、その違いを幾つかのポイントからご説明いたします。

「春の雪」は長編小説の一部

三島由紀夫の作品に「春の雪」という小説は厳密な意味では存在しません。三島由紀夫が執筆した「豊饒の海(ほうじょうのうみ)」という長編小説、その物語における第1巻が「春の雪」という題名の作品なのです。ちなみにその後は第2巻・奔馬、第3巻・第三巻・暁の寺、第四巻・天人五衰と続きます。

豊饒の海は輪廻をテーマとした壮大な物語です。作中の時代に関しても、明治末期から昭和までとかなり長い時を紡いでおります。その中でも春の雪は、三島由紀夫が描いた壮大な物語における、男女の恋から始まる幕開けの場面を描写している作品という事になります。勿論、三島由紀夫版「春の雪」においても、男女の恋とは清顕と聡子を指しています。

百人一首の歌

映画の春の雪で印象に残るものの、三島由紀夫の原作には存在しない…。その象徴が百人一首を用いた描写になります。春の雪の冒頭、清顕と聡子がまだ幼い頃の場面で、幾つかの歌が聡子により読み上げられます。

百人一首

中でも聡子が好きな歌として読み上げられるのが、崇徳院の「瀬を早み岩にせかるる瀧川の われても末にあはむとぞ思ふ」という歌になります。この歌には、急流が岩によって分かれてしまっても再び1つに合わさるように、愛する人と離れ離れになってもまた巡り合える…といった意味が込められています。

手をつなぐ

まさに春の雪のあらすじを象徴するような歌であるとともに、清顕と聡子の結末を思うと少し切ない。そのような感想を抱いてしまいます。オリジナル要素として良い演出だ、という評価の声も上がるほどなので、百人一首を知っている方からすると一層楽しめる映画だと言えます。

本多という男の存在

映画の春の雪では清顕の親友というポジションだった本多。三島由紀夫の「豊饒の海」では、全四巻の全てに登場する、映画以上に重要な役割を与えられています。「豊饒の海」でも清顕は同様に亡くなりますが、その後二巻以降に登場する人物たちが、清顕の転生した姿なのではないか?と思われる描写がなされます。

樹木

本多はその運命的な輪廻の行く末を見守っていく存在として、豊饒の海という物語は紡がれていきます。本多無くして豊饒の海は成立しない。原作ではそのくらい重要な登場人物となっているのです。

春の雪の映画を観た感想や評価とは?

評価

春の雪の映画はどのよう感想や評価を受けているのか。印象的なものを幾つかご紹介いたします。

美しい世界観を崩しかねない役者の見せ方

映画作品の批評を数多く取り扱っている「超映画批評」でも春の雪を取り上げていますが、以下のようなコメントが書かれていました。

作品の重要なポイントである濡れ場がまるっきりダメ。ほかはまあまあ良いのだが、何度も出てくるこうした場面になると、とたんにやる気のなさがプンプン漂ってくる。(中略)妻夫木は一人裸になってがんばっているのに、なぜ横の竹内だけしっかり着物を着ているのか。これでは監督も演出のしようがないではないか。そこまで物語に没頭していても、この瞬間観客は「人気女優 竹内結子」を否応無しに意識させられる。

男女の恋となれば濡れ場がつきもの。包み隠さず全てを描写する必要はありませんが、これは流石に…という評価になります。どのような経緯があって竹内結子だけ着衣を崩せなかったかは定かではありませんが、物語の外にある背景を気にしてしまうと、途端に物語に没入できなくなる事もあります。

妻夫木聡が気になってしまう

竹内結子に対する厳しい評価がある反面、妻夫木聡の評価に関しても辛口な感想がtwitterで見受けられました。

決して演技が下手なわけではありませんが、思い入れのある小説が映像化される際には、自分が思い描くキャラクターのイメージと違っていると、それだけで評価が厳しくなってしまう事があります。

観る人全てが納得するキャスティングもなかなかに難しいものがありますが、主役である妻夫木聡もその一例となる評価になってしまったようです。

清顕は面倒くさい男

小説を映像化する際、登場人物の心情がちゃんと描写されているかは気になるポイントになります。春の雪においても、清顕は聡子にとても複雑な想いを抱いておりますが、それが外からは非常に捉えにくくなっています。そんな一面に触れている感想がありました。

ひとつ気になったこと。それは、「原作を読んでいない人にとって、この松枝清顕という人物は、どういう風にとらえられたのだろう?」ということ。ひょっとしたら、ただのクソガキ、ハナタレ小僧。そんな風にしか、映らなかったのではないだろうか?
しかし、原作を読んだ方はおわかりだと思いますが、ことはそんなに単純ではない。この男、ものすごく屈折していて、面倒くさい男なのだ。
清顕という男。彼は、美しいもの、あるいは美しくあることを好む。彼にとって、感情を表に出すというのはとても醜い行為なので、彼は常に冷静でクールでいようとする。また、他人から支配されることも好まない。

清顕にとっての美徳でありこだわりとなる部分が、結果的には聡子との距離を縮められずに時を過ごしてしまう要因となるわけですが、だからこそ人間味あふれるキャラクターとして際立っているのかもしれません。

美しい風景描写

キャストについては賛否両論あるものの、大正時代の日本を描写した風景や世界観には好意的な感想が多く見受けられておりました。

こちらは「春の雪」の感想でこの作品は日本の美しい所が良く描写されているという感想です。

こちらの感想も春の雪の映像美を称賛している感想で、その映像美の美しさから過去の読書体験を思い出したという感想です。

物語の冒頭から大正の日本が美しく表現されて心を動かされます。そして清顕が命を落とすクライマックスでさえ、そこにあるのは春の雪という美しい風景。映像美にとことんこだわっている作品というでは、一見の価値がある映画と言えます。

春の雪のあらすじと映画評価まとめ!

ここまで春の雪のあらすじと、映画の評価をまとめてまいりました。お互いに相手を想っているのに、その想いが通じ合う事のなかった清顕と聡子。あらすじでもご紹介しましたが、ようやく相思相愛となった時には、既に破滅的な未来が待っていますが、それでも2人は愛する事をやめられなかった。悲しくも儚い純愛を描いた映画である春の雪。

キャスティングに厳しい評価がある一方、切ない恋愛劇や、かつての日本に存在した大正時代の美しい風景が際立つ映画でもあります。三島由紀夫の原作である豊饒の海を読んだ事のない人でも楽しめる映画となっていますので、この記事を読んで春の雪に興味を持った人は、是非一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。

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