2018年10月16日公開
2018年10月16日更新
それでも僕はやってないが面白い!痴漢冤罪の映画あらすじと衝撃の結末とは?
映画「それでも僕はやってない」は、2007年に公開されました。ある日突然、痴漢犯罪者になってしまった主人公、金子徹平。幸い、母親や友人、力となる弁護士の登場により、裁判という場で現実に立ち向かっていきます。監督は、「Shall we ダンス?」で有名な周防正行監督。地道な調査のもと、この映画が作られることになりました。主人公を演じる加瀬亮、最初はどこか情けないものの少しずつ強くなっていく1人の青年を見事に演じています。「それでも僕はやってない」のあらすじや結末などなど、お楽しみください。
目次
それでも僕はやってないの映画あらすじや結末に迫る!
映画「それでも僕はやってない」は、実際に東京で起きた痴漢冤罪事件を元に描かれた、「冤罪」をテーマにした映画です。もし自分が、ある日突然逮捕され、誰も自分の話を聞かず、自分を信じない人間を相手に戦わなければならないことになったら。「それでも僕はやってない」、と必死に戦う主人公の姿を描くあらすじや、あまりに残酷な「冤罪」という結末について、ご紹介いたします。
それでも僕はやってないの映画作品情報
2007年公開の映画「それでも僕はやってない」。「冤罪」をテーマとした作品として話題になりました。監督は、「Shall we ダンス?」で有名な周防正行監督。「それでも僕はやってない」は、数々の賞レースを総なめにし、注目されました。日本だけでなく海外でも話題になり、ニューヨークやバンクーバーといった、主にアメリカのいくつかの映画祭でも、英題「I Just Didn't Do It」として上映。国連でも上映されています。
それでも僕はやってないの映画登場キャスト
「それでも僕はやってない」の登場人物は、さほど多くはありません。しかし、その1人1人が存在感があり、あらすじではそれぞれ重要な人物を担っています。その人物達を演じるのは、実力派の俳優達。「それでも僕はやってない」の主要な登場人物を演じる俳優を7名、紹介いたします。
加瀬亮/金子徹平役
実は帰国子女の加瀬亮。生後まもなくから7歳まで、父親の仕事の都合でアメリカのワシントン州で過ごします。役者に興味を持ったきっかけは浅野忠信とのことで、同じ事務所に所属してから最初は、浅野忠信の付き人としてスタート。その後映画「五条霊戦記」(2000)でデビューし、主に映画で活躍します。また、クリント・イーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」(2006)を始め、海外映画でも実力を発揮しています。
役所広司/荒川正義役
役所広司は長崎県に生まれ、大学卒業後、上京して千代田区で役所に勤めていました。そのため「役所広司」という芸名に。戦国武将役が似合うことでも有名で、織田信長や宮本武蔵も演じてきました。「それでも僕はやってない」の周防監督が一気に有名になった「Shall we ダンス?」では、主人公を務めています。日本アカデミー賞主演男優賞はもちろんのこと、挙げきれないほど海外での受賞歴も多彩。日本が誇る俳優の1人です。
瀬戸朝香/須藤莉子役
アイドルから出発し、そこから映画、ドラマ、CMと、幅広く活躍する瀬戸朝香。プライベートでは、V6の井ノ原快彦と結婚したことでも話題になりました。現在2児のお母さんです。お母さんである一方、ドラマ「TOKYOエアポート〜東京空港管制保安部〜」(2012)での主任管制官や、ドラマ「きみが心に棲みついた」(2018)でのデザイナー役まで様々な役を見事に演じ分けます。母と女優の2足のわらじをはきこなしています。
山本耕史/斉藤達雄役
山本耕史は年齢=芸歴という生粋の俳優。0歳から乳児モデルを務めていました。改めて(?)のデビューは1986年のドラマなのですが、翌年10歳で出演した舞台は、なんとあの有名な「レ・ミゼラブル」。少年革命家という難しい役どころを演じました。一気に人気を博したのは、NHK大河ドラマ「新選組!」(2004)での土方歳三の役。視聴者からのリクエストで、土方を主人公にしたスペシャルドラマが作られるほどでした。
もたいまさこ/金子豊子役
めがねがトレードマークのもたいまさこ。1970年代から女優としてずっと活躍しています。本作の映画「それでも僕はやってない」の演技で、第31回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得しました。ちなみに「それでも僕はやってない」と同じく2007年公開の、「めがね」という映画にも出演しています。日本の映画にもドラマにも欠かせない、重要なバイ・プレイヤーです。
小日向文世/室山省吾役
一体この人はいい人なのか悪い人なのか…と悩ませるぐらい役柄の幅が広い小日向文世。役所広司の2歳先輩で同世代です。今でこそ活躍する小日向文世ですが、俳優活動を始めた23歳から46歳頃まで、給料を前借りしないと食いつなげないぐらい苦労していたようです。2001年からのドラマ「HERO」で一躍有名に。それ以降の活躍は目覚ましく、今では映画でもドラマでも見かけることの多い、名俳優の1人となりました。
正名(まさな)僕蔵/大森光明役
「それでも僕はやってない」で、話を聞いてくれる、優しい裁判官を演じている正名僕蔵。1992年、劇団「大人計画」に入団し、俳優活動を始めます。同期には阿部サダヲも。1998年にスタートした、ドラマ「ショムニ」で知った人も多いかもしれません。仕事では役立たずだがボーリングはプロ級という個性あふれる役どころでした。その後、小日向文世と同じく、「HERO」で一気に有名になりました。
それでも僕はやってない映画あらすじネタバレ
いよいよ、映画「それでも僕はやってない」のあらすじをご紹介いたします。どれだけ声をあげても、どれだけ真実を述べても自分を信じない人間を相手に、何日も何か月も争い続けなければならない。
しかもその結末は…これはあらすじの最後にネタバレしますのでご注意ください。また、あらすじの前に予告動画も是非ご覧ください。
あっという間に逮捕
ある日、フリーターの金子徹平は、就職面接に向かうため、通勤通学ラッシュで混み合う電車に乗っていました。乗車率は約250%。パンパンで身動きも取れません。しかし、目の前にいた女子中学生に痴漢に間違われ、警察に連行されてしまいます。そのまま取り調べ室へ連れていかれる徹平。突然入ってきた刑事は最初から完全にキレた状態で怒鳴り散らしています。「調子こいて否認なんてしてんじゃねぇぞ」など言いたい放題。
「私は混雑する通勤電車内で、女子中学生のお尻を触り、袖を捕まれました。ほんの出来心だったとはいえ、大変申し訳ないことをしたと思っています。」とそのまま勝手に刑事が喋り出し、記録係が調書を作っていきます。わけがわからないと徹平が帰ろうとすると、「お前はもう一般市民の手で現行犯逮捕されてるんだ」と、刑事によって徹平のその右手に、手錠がかけられます。
徹平はもちろん調書の内容は認めません。それにより帰宅もできず、その警察署内の留置所に拘留されることとなります。既に房にいた男に、「何もやってないんだったら弁護士呼ばないと」とアドバイスされ、その男の助けで徹平は担当職員に「当番弁護士」を呼ぶように頼みました。当番弁護士とは、刑事事件で逮捕された人が警察に頼んで呼んでもらえる弁護士のことです。これにより徹平には最初の弁護士がつきました。
事情は聞いても助けはしない弁護士
そしてやってきたのは、浜田という男性の弁護士。徹平はここで初めて、事件の当日のあらすじを落ち着いて話します。事件の日、徹平は就職面接に行くため電車に乗っていました。その途中、履歴書を持っていたか不安になり、一度途中下車してリュックの中身を確認します。履歴書は家に忘れていました。しかし寝坊もしていて既に時間ギリギリのため、徹平はそのまま再度、パンパンの電車に、駅員に押されながら乗り込みます。
やっと乗り込んだものの、スーツの上着の裾がドアに挟まってしまった徹平。なんとか取れないかとギュウギュウの電車の中で、ドアに挟まったスーツを振り返りながら右手で格闘します。しかし、右隣にいた女性に軽く睨まれてしまいました。小さく「すみません」と謝り控えめに奮闘してようやく取れたところ、どこからともなく「やめてください」という女性の小さな声が聞こえました。声の主はわからないまま、目的の駅に着きます。
徹平はようやく満員電車から解放され歩き出すのですが、その裾を誰かに掴まれます。その人物は女子中学生で、「痴漢したでしょ」と言ってくるのです。すると偶然乗り合わせたらしき男や駅員も現れ、あれよあれよと徹平は駅員室に連れていかれます。しかしその駅員室に、先ほど電車内で徹平を軽く睨んだ女性が来てくれ、「その人はドアに挟まった上着を引っ張っていただけで、痴漢じゃない」と話してくれます。重要な目撃者です。
しかしその女性の鼻先で駅員はドアをぴしゃりと締め、話も聞かないどころか中にも入れませんでした。徹平はその女性を呼び戻そうとしましたが、見失います。もちろん名前も連絡先もわかりません。浜田弁護士に事件のあらすじを話し、本当にやっていないと訴える徹平。しかし浜田弁護士からは、「本当に無実でも、無罪になる保証はない。示談にすればそれでおしまい」と、痴漢冤罪について初めて衝撃の話をされるのでした。
キツい留置所生活と無茶苦茶な検察官
初めての留置所生活。職員に怒鳴られ続けられ、ふと我に返る徹平は、ひっそりと涙を流します。もちろん厳しいのは取り調べもそうです。刑事だけでなく、検察官からも取り調べを受けます。しかしその途中で「バカ!そんなこと聞いてんじゃねえよ」とか、「うるさーい!!今日の取り調べは終わりだ」と終わりを告げられます。しかも「いつまでも否認して、ただですむと思うなよ。絶対に落としてやるからな」と言われるのです。
全く意味のわからない検察官とのやり取りの翌日は、「勾留(こうりゅう)質問」。最初に裁判官とやり取りする場です。しかしここでも、やはり状況は変わりません。裁判官が読んでいるのはもちろん、刑事が「作った」ものです。徹平は裁判官に対しても、はっきりと「絶対に痴漢なんてしていません。」と話します。するとあっさり、「否認するということですね。あなたを10日間勾留します。」と裁判官に言われました。
達雄と母からの差し入れ
徹平が裁判官に頼み、友人の達雄に裁判所から徹平が留置所にいると連絡を受けます。そして徹平の元に、達雄と徹平の母親から差し入れが。考えた結果母親はひとまず旅行に必要な物を持ってきますが、中身の検査時に、職員に次々と却下されていきます。検査する職員は、タオルやベルトを見ると「殺したいのか」、達雄が差し入れの本に徹平への応援のメッセージを書くと「つまんないことをすんじゃないよ!」と怒鳴ります。
ただでさえ理解できていない状況で、よくわからない理由で怒鳴られ思わず母親が涙を流すと、その職員は「大丈夫だよ、たかが前科一犯なんて、そんなのいっぱいいるんだから」と、徹平を犯罪者と決めつけて無意味な慰めの言葉を投げてきます。母親は「うちの息子は、何もしてません」と言うのが精一杯でした。
徹平の家宅捜索
起訴前に検査の証拠集めのため、徹平の住んでいたアパートの部屋に家宅捜索が入ります。ちなみに立ち会ったのが大家の男なのですが、この大家、警察が来て変なテンションが上がっているのか、「前からちょっと変だなと思ってたんですよ」と話し始めます。捜査員に「どういうこと?」と聞かれると、「いや、ただなんとなく…」といい加減な返し。そんな中、1人の捜査員が、徹平にとって少々不利になるものを発見するのです。
荒川弁護士との出会い
徹平の母親と達雄は、痴漢冤罪の弁護ができる弁護士を探し始めます。ここで初めて、「そもそも刑事事件に対応できる弁護士は少ない」という事実に直面します。そんな中、徹平の母親と達雄が縁あって出会うのは、荒川弁護士。小さな弁護士事務所をしています。その弁護士事務所から早速、留置所の徹平の元に、須藤という1人の女性弁護護士が面会にやってきます。
この弁護士、当たり前と言えば当たり前ですが痴漢を嫌っており、徹平のことも正直信じていません。弁護士事務所に戻った須藤は、上司であり、徹平の主任弁護士である荒川に「やりたくない」と訴えます。しかし荒川は、「痴漢冤罪事件には、日本の刑事裁判の問題点がはっきりと表れている。依頼人が犯人だと確信したらやめていい」と須藤を説得します。
荒川弁護士との面会
後日、今度は荒川が主任弁護士として徹平と面会します。刑事の取り調べについて、絶対に安易に調書にサインしないことや、内容をノートにメモするよう、荒川はアドバイスします。その荒川から初めて、徹平は「人質司法」という言葉を聞かされます。本人が否認する限り勾留し、自白をせまる手法のこと。これに屈せずに頑張れと荒川に励まされますが、同時に無罪を勝ち取れる確率は3%、という厳しい現実も教わるのでした。
徹平の起訴
刑事の滅茶苦茶な自白強要や、全くプライバシーのない留置所生活に耐えながら、また検察官からの取り調べがやってきます。しかし、その取り調べが、刑事からの取り調べ含め最後となります。「起訴」されてしまったからです。なんの確たる証拠もないまま、被害者の言い分だけで、徹平は裁判にかけられることになるのです。また、その場で検察官から「裁判したって、無罪はないよ」と告げられるのでした。
佐田との出会い
一方、母親と達雄が、ある力強い味方を見つけます。佐田満、という人物です。この人も、徹平と同じく痴漢冤罪で逮捕され、今まさに裁判で戦っている人物でした。裁判に向けてどう準備したらいいのか、どんな証拠を得ればいいのかなど、経験に基づき教えてくれます。佐田の協力で、事件の日に駅員室の前で、徹平が痴漢でないことを言ってくれた目撃者の女性を探すことになりました。
いよいよ裁判開始
とうとう、第1回公判が始まります。裁判長は大森光明、東京地方裁判所裁判長を務めています。人権派で評判の裁判長です。傍聴席では徹平の母親や達雄、佐田が見守ります。最初の裁判では、検察側からの「こういうことをしましたか?」という確認に対し、被告人は違うなら違うで否定。より詳細にどこの部分には同意していて、どこの部分には同意してないか、という確認が裁判長も交えてされます。これで最初の裁判は終わりです。
第2回目公判。第2回からは、証人喚問も始まります。今回は、徹平を取り調べたあのキレ刑事が検察側の証人として呼ばれました。そしていかにずさんな取り調べだったか、明らかになります。その刑事が徹平に対し言い放った「痴漢を認めれば出してやる」という言葉に関しては「言ってない」。痴漢として逮捕した人間に対し、手に被害者の下着の繊維が残っていないか調べる簡単な検査はしておらず「うっかりしてました」。
徹平が必死に訴えた、「ドアに挟まっていた上着を取ろうとしていた」という話は、「そのような言い分は聞いておりません」。もちろん調書にも残っていません。裁判という場で平然と嘘を並べる刑事に、徹平の主任弁護士である荒川もイラつき、徹平の目にも怒りの涙が滲みます。
女子中学生の証言
第3回公判。今回の証人は、痴漢被害に遭った女子中学生です。法廷に入る通路から証人の席まで全て、裁判官や検察の人間以外には見えないように、ついたてが立てられます。この女子中学生の証言がなんとも曖昧。「痴漢されている最中に一度犯人の右手を掴んだものの、振りほどかれ見失った。なんとかその手を目で追っていくと、その先に同じような色の服の人が立っていた」と言います。その人とは偶然真後ろにいた徹平のこと。
また、電車の中で徹平の左にいた、やたらと押して来る男について徹平から話を聞いていた荒川弁護士は、女子中学生にその人が触った可能性はあるか尋ねます。女子中学生から見て左斜め後ろにいた男のことです。すると『(誰か忘れたけど)刑事さんが、「左斜め後ろの人は触れない、そういう実験をした」と言っていた』と言うのです。これを受け、荒川弁護士は、その「実験の報告書」を証拠として開示するよう、裁判長に求めます。
釈放されても続く裁判
この後、徹平は保釈となり、久しぶりに外に出ます。保釈金は200万円。母親が払ったようです。雨の中、4か月ぶりに警察署を出た徹平。初めて自分がどこにいたのかを知り、「こんなとこにいたのかよ」とつぶやきます。保釈はされても、裁判は続きます。
第3回公判の時に荒川弁護士が請求した「実験の報告書」について、検察から回答が来ました。その回答とは「不見当」。見当たらない、ということです。そもそもそんな報告書がないのか、出したくないのか、紛失なのかはわかりません。更に、裁判長が変更され、室山という裁判長になります。大森裁判長とは、「全くタイプの違う」裁判長です。段々と、徹平達にとって裁判の雲行きが怪しくなってきます。
公判は進み第5回。この公判で荒川弁護士は、「実験結果の報告書が不見当なら、あの刑事を再度証人喚問してほしい」と室山裁判長に請求します。しかし、「女子中学生が、どの刑事にその実験のことを言われたのかも覚えてないなら、その刑事を呼んでも仕方ない」と一蹴。大森弁護士との違いが浮き彫りになります。
再現ビデオの作成
荒川弁護士の提案で事件の再現ビデオを作成することになり、徹平達の他に、自身も作成経験のある佐田や、協力者が集まります。その作成の結果わかったことは、徹平が女子中学生のお尻を触ってその右手を掴まれたとしても、自分の背後の電車のドアが邪魔になって、手が抜けないことがわかります。また、徹平を左から押していた男なら右手を捕まれてもひっこめる余裕があり、手を掴まれても逃げられる、ということもわかりました。
室山裁判長からの執拗な追及
第6回公判。徹平自身が証言する被告人質問となります。荒川弁護士からの質問に答えていく徹平。駅員室に来てくれた女性についても、「痴漢はしていない、と言ってくれた」とはっきり言います。しかしこの後検察から、「少々不利なもの」を提出されてしまいます。そのものとは、徹平のアパートの家宅捜索で見つかった、部屋にあったアダルトビデオです。検察側は徹平にタイトルを音読させようとしたり、嫌がらせをしてきます。
これについて室山裁判長から特に言葉は発しません。しかし、この後執拗に「女子中学生がいるとわかってて乗ったんじゃないのか、なぜ背中側から乗らなかったのか」と徹平に猛攻を仕掛けます。徹平が半泣きになりながら「就職面接に遅れそうで必死だったし、誰が前にいるかはいちいち見ていなかった」と何度言っても、水掛け論のようなやり取りになります。
第7回公判で、あの再現ビデオが証拠として提出されます。そのビデオを何も言わず観る裁判長。なんのコメントもなく、ビデオが終わった途端に時間の公判の話になります。新たに必要な資料の提出を請求する須藤と荒川。しかし、室山裁判長からは、「弁護側のためになど何もするものか」という気概を感じるほど、全ての請求を却下されます。必ず徹平を有罪にしようとしているかのようでした。
目撃者の女性発見
中立性に疑問を感じる裁判長の裁判が進む中、とうとうあの「目撃者の女性」が見つかります。第9回公判で証言してもらえることになります。その女性の証言は、徹平が当初より訴えていた内容とぴったりとハマります。そして、審理として最後である第11回目公判。検察側、弁護側が、それぞれの立場からの意見のまとめを述べます。裁かれる本人である徹平も、涙をこらえて最後に言葉を述べました。
まさかの判決
判決を言い渡される日を迎える夜、寝付けない徹平に、母親は「大丈夫だよ。無罪に決まってる。」と声をかけます。そしていよいよ判決の日。判決を聞いて、徹平の友人である達雄は傍聴席で「嘘だ」と叫び、そのまま飛び出してしまいます。泣き崩れる母。裁判長が理由を述べる際、「被告人は座ってください」と促しますが、徹平は「立って聞きます」と、震える声で答えます。そして「控訴」を決意する徹平でした。
それでも僕はやってないの結末は?
「それでも僕はやってない」のあらすじをご覧いただきました。何も犯罪など侵してないのに刑事や検事には人格を否定され、数百万という保釈金を払わなければ生活が取り戻せず、しかもそこからは長い長い裁判という戦い。作中ではその裁判は終わりませんでした。あらすじで薄くご紹介したので結末に関しては気づかれていると思いますが、その非情な結末の内容を詳細にご説明いたします。
執行猶予付きの有罪判決
映画で描かれた裁判は、1番最初の第一審ということになります。その一審で徹平にくだされた判決は「有罪」。内容は「懲役3月(げつ)、執行猶予3年」です。執行猶予とは、その期間に何も犯罪を犯さず過ごせば、懲役は受けなくていい、という猶予の時間です。つまり徹平は、裁判の結末で「3年間犯罪を犯さなければ、3か月の刑務所暮らしはしなくていいし、裁判後にはすぐ社会復帰できる」という判決をくだされました。
こう聞くと「冤罪だし、それに黙っていれば社会にバレない?」と思ってしまいますが、あくまで「有罪」です。徹平に「前科」がつきます。有罪の理由は、簡単に言うと「被害者の言っていることが正しい。再現ビデオに意味はない。目撃者はずっと見てたわけではないんだから証言に意味はない」と、片っ端から全てを否定したものでした。ちなみに徹平に有罪判決が下る前に、協力してくれた佐田にも有罪判決が下されています。
徹平の成長
物語の結末で徹平は「控訴」を決意しますが、これは徹平にとって、第二審への新たなスタートです。徹平は、この裁判の終わりまでは、何となくどこか頼りなさげな、話す語尾も「~でぇ、」と言うのが多くちょっと抜けてる感じです。しかし最後の「控訴します」という言葉が、この映画の徹平の言葉の中で、1番はっきりと言われています。こんなことを通して成長するのも皮肉なものですが、結末では徹平の成長が感じられます。
それでも僕はやってないが表現したのは冤罪の怖さだけではない
「それでも僕はやってない」では、「冤罪」そのものの恐怖が描かれているだけでなく、冤罪が生まれる原因となっている「人質司法」の恐怖も描かれています。日本の、身柄を拘束して行われる取り調べ手法の問題点で、冤罪の温床とも言われています。本当の事を言っているのに「本当の事を言え!」と言われ続ける状況になったら、本当の事ではなく「言ったらこの状況が終わる言葉」を言いたくなるのも無理はありません。
それでも僕はやってないの主人公のモデルは存在する?
「それでも僕はやってない」の主人公、金子徹平には何人かモデルがいるとされています。その1人である小泉和樹さんも、冤罪被害に遭いました。小泉さんは2000年に、京浜急行の電車内で女子高生のスカートの中に手を入れ陰部を触った、という容疑で逮捕されました。そして懲役1年6か月という判決を受け、刑務所でその間を過ごします。出所後、10年以上という時間はかかりましたが、2015年に再審請求を決意しました。
小林さんに有罪判決を下した最初の裁判でも、「それでも僕はやってない」の徹平が食らったように、被害者の証言が曖昧でも優先されていたようです。再審が決まり、小林さんも新たな証拠物として、再現ビデオを作っています。このビデオを撮影したのが周防正行監督です。周防監督は小林さんの再審が決まった際の会見にも同席し、被害者の証言の不自然さを指摘して、「小泉さんはやってないと信じている」と話しました。
それでも僕はやってないを観た感想は?
加瀬亮さんの演技がいい...。やっていないことで罰せられることの怖さ。
— ウェイン38 (@gKNIBNOoTMeHKzY) October 13, 2018
冤罪と戦う人、罪を押し付ける人、応援してくれる人、断定する人、決めつける人、
証言してくれる人、弁護してくれる人、被害にあった人、いろんな人が出てく映画。
それでもボクはやってない・予告編 https://t.co/XCzS8N8OeJ
「それでも僕はやってない」の主人公金子徹平は、フリーターから脱却しようと就職面接に向かっている途中、冤罪被害に巻き込まれました。人生の新しいスタートを切ろうとしていたのに、物語の結末では「第二審」という、全然違う方向へのスタートを切ってしまいます。本来は自分と縁のないはずの留置所、裁判という場で必死に戦う徹平を表現した加瀬亮の演技が称賛されました。
このあと12時からフジテレビ(地上波)で『それでもボクはやってない』が放送。今の刑事裁判の実状をリアルに描くこの作品、できるだけ多くの人に見てもらいたい映画だなぁ。誇張っていうより、ほぼまんまの現実なので。誰の身に起きてもおかしくない、私たちの社会の現実。
— 弁護士南川麻由子 (@lawyerMAYUZO) October 27, 2012
「それでも僕はやってない」のあらすじのリアルさを裏打ちしているのが、地道な取材。周防監督は、いつもは1年ほど取材をするとその取材対象の輪郭が掴めてくるそうですが、「それでも僕はやってない」のあらすじを書くまでには、倍の2年かかったようです。しかもそこから撮影にクランクインするまで3年半。「こんなに長く取材したことなかったし。こんなに深みにはまることもなかった。」とインタビューで語っています。
日本映画を変える、歴史的名作。『それでもボクはやってない』周防正行監督インタビュー
「それでも僕はやってない」はあくまで映画ですが、周防監督自身「全部確認してました。撮影に入ってからも弁護士さんに立ち会ってもらって…」と語るぐらい、かなりあらすじは現実に忠実に作られたようです。
三軒茶屋で友達が痴漢と間違われて足止めされてるらしい。初動対応も間違えたっぽい。推定無罪なんてこの国では嘘っぱちだと何度言ったら…最低限「それでもボクはやってない」くらいは見とけと…誰か頼もしい法曹関係者、三軒茶屋にはよ!…orz
— 高橋優亮 たかはしゆうすけ (@v_takahashi) November 12, 2012
ないのが1番ですが、いざという時、徹平のような結末にならないために、逮捕されてから裁判で判決が下されるまでの流れや、他にも裁判にまつわる具体的なことをあらすじから知り、予備知識を得ておきたい作品です。
映画「それでもボクはやってない」の決め台詞「裁判とは真実を追求する場所ではなく、集められた証拠で有罪無罪をとりあえず判断する場所」を改めて実感。 #リーガルハイ
— itmofnw (@itmofnw) December 18, 2013
作品の結末で、徹平は「心のどこかで、裁判官ならわかってくれると信じていた。本当にやっていないのだから、有罪になるはずがない、そう思っていた」と語ります。しかし、裁判の結末は無常にも「とりあえず」有罪。1つの「冤罪」が生まれてしまいました。この結末により、徹平は「真実をただ1人の人間である自分が、裁判官を裁くことができる」、と控訴を決意するのです。
非人道的な検察の取調べや冤罪が問題になっている今こそ見たい(再度)見たい映画。「それでもボクはやってない」
— 土佐の酔鯨(Tell it like it is.) (@tosasuigei) March 1, 2010
あらすじの中で徹平は、刑事や検察から、本当に無茶苦茶な、「非人道的」な取り調べを受けます。裁判での結果だけでなく、その取り調べも冤罪という結末を生み出した、といっても過言ではありません。刑事役の大森南朋、検事役の北見敏之がとことん徹平の精神を削る取り調べを行っているのですが、映画ならではの演出、ではありません。現実問題として、取り調べの「全面可視化」が今叫ばれています。
それでも僕はやってないのあらすじや結末まとめ
映画「それでも僕はやってない」をご紹介しました。「冤罪」をテーマにしたあらすじ、結末、はいかがでしたでしょうか。普通に生きている限り縁のないものと思っていた「冤罪」。それを身近なものに感じざるを得ない作品です。痴漢に間違われ、留置所生活や取り調べ、裁判を乗り越えたと思ったのに、結末では有罪。この「冤罪」という結末には、誰もスッキリすることはないでしょう。それが周防監督の狙いでもあります。