シッコのあらすじと結末は?マイケル・ムーアのドキュメンタリー映画?

映画『シッコ』(2007年公開)はアメリカの医療制度にスポットを当てた洋画。監督はマイケル・ムーア。保険に加入していながら保険金が下りずに満足な治療が受けられない一般人の苦悩と、その裏で莫大な利益を上げる保険会社の内情を、皮肉たっぷり、ブラックなユーモアたっぷりに描く医療エンターテイメント。楽しみながらアメリカやフランス、イギリス、キューバなど各国の医療制度についてのウンチクも得られる。原題は”SICKO"。この記事では『シッコ』のあらすじを紹介し、結末もネタバレする。

シッコのあらすじと結末は?マイケル・ムーアのドキュメンタリー映画?のイメージ

目次

  1. シッコのあらすじと結末をネタバレ!マイケル・ムーアの名作映画?
  2. シッコとは?監督のマイケル・ムーアも紹介
  3. シッコはドキュメンタリー映画!あらすじをネタバレ!
  4. シッコの結末をネタバレ!
  5. 『シッコ』の内容は正確?映画には批判が殺到
  6. 『シッコ』のネタバレ情報まとめ

シッコのあらすじと結末をネタバレ!マイケル・ムーアの名作映画?

アメリカの医療保険制度を題材にしたドキュメンタリー<洋画>

『シッコ』はアメリカの医療保険制度にスポットを当てたドキュメンタリー映画だ。こう書くとお堅い内容を想像しがちだが、ブラックなユーモアを交え、アメリカらしいエンターテイメント性の高い作品に仕上がっており、洋画ファンの評価は上々だ。監督は突撃取材の手法で知られるマイケル・ムーア。2007年に公開された。ここではあらすじをネタバレ満載で紹介し、結末もネタバレ!

シッコとは?監督のマイケル・ムーアも紹介

シッコのあらすじは?

『シッコ』は、健康保険に加入しているにもかからず、保険金が下りずに病気やケガの治療が受けられないフツーのアメリカ人の苦悩を描き、保険金の支払いを節約することで高い利益を上げている保険会社の裏側を暴露する。保険会社が結託する政治家や製薬会社の裏側など、楽しみながら知識を得られる洋画である。

保険証を持って病院へ行きある程度お金を払えば病気やケガを治してもらえる日本人から見れば、お金がないと病気や怪我が治せないという話は信じがたい。しかし、『シッコ』ではこうした患者のエピソードがいくつも語られる。例えば、9.11事件で活躍した救助士の中にさえ、後遺症に苦しみながら補償を受けられない人がいるのだ。この記事ではこうしたエピソードのあらすじを紹介する。

監督のマイケル・ムーアは社会派の名監督

『シッコ』の監督はマイケル・ムーア。映画の中では自身が語り手として登場する。洋画ファンには社会派の映画監督として知られる。ジャーナリスト、政治活動家でもある。映画監督としてのデビュー作品は『ロジャー&ミー』で、マイケル・ムーアの地元フリント市でゼネラルモーターズ社による大量解雇を題材にして高評価を得た。

『ロジャー&ミー』で、当時のGM社の社長ロジャー・スミスに突撃取材をして人々の度肝を抜き、以後、この取材の手法を続け、突撃取材が彼のスタイルとして定着しているが、『シッコ』ではこの方法は取っていない。実は、『シッコ』はマイケル・ムーアが突撃取材を行わなかった唯一のドキュメンタリー映画だ。

政治活動家でもあるマイケル・ムーアは2004年にジョージ・W・ブッシュ大統領を批判した映画『華氏911』を、2008年にはドナルド・トランプ大統領を批判した『華氏119』を製作した。そのほかの作品は『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(2016年)、『すべての政府は嘘をつく』(2017年)など。日本で公開される洋画はアメリカ礼賛の作品が多い中、社会派ムーアらしいラインナップとなっている。

「シッコsicko」とは?

この映画の題名「シッコ」は英語で"sicko"。英英辞典によると「人が嫌がることをして喜ぶ人」とある。それと病気("sick")を掛けた皮肉な題名だ。マイケル・ムーアは誰を皮肉っているのか?「シッコ」とは誰のことなのか?それはこの映画を見ていくにつれ、次第に明らかになる。…が、この記事では結末とともにネタバレする。

シッコはドキュメンタリー映画!あらすじをネタバレ!

医療保険に入っても保険金が下りない?

では、あらすじを紹介しよう。男性が足のケガを自分で縫合しているショッキングな場面からこの映画は始まる。男性は失業中で医療保険に入るお金がなく病院で治療が受けられない。アメリカに5000万人いるといわれる保険未加入者の一人だ。仕事中に工作機械で手の指を2本切断し、1本しか直せなかった人も登場する。

しかし、『シッコ』ではこのような無保険の人々は脇役である。マイケル・ムーア監督はスクリーンで、この映画の主人公は医療保険に加入しているのに保険金が下りずに満足な治療が受けられない人たちだと語る。

保険会社とのトラブル体験をインターネットで募集!

『シッコ』を製作するにあたり、監督のマイケル・ムーアはインターネット上で、民間の保険会社に加入している人たちに呼びかけ保険会社との間で起こったトラブルの体験談を募った。すると、25,000件以上の回答があった。『シッコ』はこの回答者たちへの取材を元に製作された。

保険金が下りずに苦しむ人々を取材

さて、ここからがメインのストーリーだ。そのあらすじを紹介する。まず登場するのは中年夫婦。それぞれが心臓病とガンを患い、高額の医療費の自己負担分を払うために破産して自宅を売却し、20代の子供の家にやっかいになっている。次に証言するのは交通事故に遭った女性。事故の後、救急車で病院へ搬送された。後に保険会社に搬送費用を申請したが、救急車の利用には事前に保険会社の許可が必要だと却下された。

保険金の支払いをケチる保険会社

アメリカでは保険に加入していても実際に保険金を受け取ることが難しい。なぜか?それは保険会社が自社の利益を上げることに血道をあげ、加入者に支払う医療費を極力抑えようとするからだ。『シッコ』は、治療のために保険金を申請するが、保険会社から何やかやと難癖をつけられ保険金を受け取れない人々の悲劇の物語である。

高い医療費を払うためには保険に入るしかない

何とも非人間的な保険会社であるが、それでも、アメリカ人は民間の保険会社に加入せざるをえない。アメリカの医療技術は世界トップクラスであり、そのために医療費も高額となる。したがって、適切な治療を受けるには医療保険に加入することが不可欠なのだ。アメリカには日本のような国民皆保険がないため民間の保険会社と契約するしかない。そのため、保険に入れない患者、自己負担分が払えない患者には悲惨な結末が待っている。

実は、アメリカ国内ではかつてより、日本や他国のような国民皆保険を導入すべく政治的な駆け引きが行われている。そして、『シッコ』が公開されたのちの話だが、オバマ大統領時代に「オバマケア」と呼ばれる、皆保険に近いシステムが採用された。しかしながら、対応できる医療機関が少ないなど問題も残っている。

保険会社の社員が内情を暴露!

ムーアが取材した中には保険会社の元社員もいた。映画には3人の元社員が登場する。彼らによると、保険会社は保険金の支払いを拒否し自社の利益確保に全力を尽くす。保険の契約の段階で既往症(持病)を聞き出し契約を拒否。契約者が医療費を申請する際は持病を見つけて申請を却下。理由になる持病がなければ書類の不備を見つけて却下する。どの会社も方針は同じだ。

まるで事件捜査のように保険金の申請者を調べ上げる!

中でも強烈なのが3人目の男性の仕事内容だ。保険の契約者が支払い審査をクリアして保険会社が保険金を払う段階になった時、この男性のチームが登場。契約者の過去5年間に渡る病歴を、事件捜査さながらに徹底的に調査し小さな既往症を見つけるなどして保険金の支払いを阻止する。場合によっては契約を打ち切ったり掛け金を吊り上げたりすることもあるという。

医師も議会で内部告発

現役の医師が内部告発する映像もある。保険会社で保険金の申請を判断する「審査医」と呼ばれる医者だ。この審査医は、患者の治療費用の申請を却下すれば、自社の利益を確保したという理由で評価が上がり、昇進、昇給されたと証言する。また、保険金の支払いを却下したことで、亡くなった患者もいると懺悔した。

保険会社が金で仕切るアメリカの医療制度

契約者への保険金支払いをケチることで莫大な利益を上げている保険会社は、製薬会社と政治家をも抱きこみ、国による国民皆保険への法整備を金の力で阻止しているとムーアは語る。

このように保険会社が仕切るアメリカの医療制度の充実度は世界の番付によると37位で先進国中最下位だ。

各国の医療制度とアメリカを比較ーカナダ・英国・フランス

アメリカの医療制度をぶった切るマイケル・ムーアは、さらに他の国の医療制度と比較することで追い討ちをかける。『シッコ』に比較対象する国として登場するのはカナダ、英国、フランスだ。各国の医療事情についてのウンチクを得られるのもこの洋画の醍醐味だ。

国民皆保険のカナダ

ここではアメリカと各国との医療費を比較した部分のあらすじを紹介する。アメリカの隣国、カナダはメディケアと呼ばれる国民皆保険を採用しており、医療費は基本的に無料。移民は資格取得までに3ヶ月かかる。そこで知恵を絞ったのが、子宮頸がんを患っているアメリカ人女性。知人を頼り内縁の妻ということにして、カナダで診察を受ける。違法だがギリギリ合法だと開き直る。

ムーアが取材を依頼したカナダ人の老夫婦は、取材のため一日アメリカに行くだけでもカナダの保険に入ると主張する。万が一、アメリカでケガをしたり病気になった場合は高額の治療費がかかるからだ。彼らの知人はアメリカでゴルフ中に怪我をし、病院で2万4000ドルかかると言われてそのままカナダに戻った。カナダでは無料で治してもらえるからだ。

英国の医療は国営ですべて無料

英国はNHS(国民保険サービス)と呼ばれる国営の健保制度を採用しており、医療費は国が持つ。ムーアは英国の病院を訪れ、入院もお産もERの利用もすべて無料だと観客に紹介する。会計窓口があるが、患者の支払いのための窓口ではなく、病院までの交通費を払い戻してくれる窓口だという。

英国の医師の給料は国から支払われ、アメリカのように医師が保険金に関わることはない。また、患者を禁煙させることに成功したり、コレステロール値を下げるなど実績を挙げると昇給される。当たり前といえば当たり前だが、アメリカではその当たり前なことが行われていないとムーアは暗に示す。

ムーアが英国人の意思に、受診を希望する患者に治療費がないからと審査を断ったり、入院費用が払えない患者を病院から追い出したりすることがあるかとたずねると、医師は強く否定した。英国では「退院できるかどうかは患者の体の容態で決まる。入院費用が払えるか払えないかではない」と病院のスタッフもムーアに語る。

恵まれすぎ?フランスの場合

フランスも医療費が無料だという。登場するのはアメリカで10年以上暮らしたフランス人の若い男性。アメリカ在住時に腫瘍が見つかったが医療保険に加入しておらずフランスへ帰国した。フランスでは税金を払ったことがなく社会保障番号もなかったが治療は受けられた。担当の医者は彼が有給休暇を取れるように、職場宛ての診断書まで書いてくれたと喜ぶ。

ムーアはフランスに住むアメリカ人たちを集め、レストランで座談会を開く。そのだれもがフランスの医療制度に満足しており、ある女性は自分があまりにも恵まれすぎていて、アメリカにいる自分の両親のことを考えると胸が痛むと話した。

シッコの結末をネタバレ!

9.11の「英雄」=ボランティア救助士たちの悲劇

2001年に起きた同時多発テロ、いわゆる「9.11」では多数のボランティアが「グランド・ゼロ」と呼ばれる世界貿易ビルの倒壊現場に駆けつけ、救出作業や遺体の処理にあたり「英雄」と呼ばれた。その英雄たちの中に、今も後遺症に苦しみながら十分な治療が受けられない人たちがいる。『シッコ』のクライマックスはこの救助士たちの物語である。

過酷な救出現場で作業したことにより、呼吸器障害やストレス性の病気などを患っているが、正式に派遣された救命士ではなかったために補償が受けられないのだ。この「英雄」たちのためにマイケル・ムーアが人肌脱ぐ。その結末は?

救助士たちをグアンタナモ基地へ!

「テロより怖い、医療制度」のキャッチフレーズで日本公開された洋画『シッコ』。この映画にはアメリカで逮捕されたテロリストの意外な医療事情が判明する。

ネタバレすれば、なんと、この凶悪犯たちに対して高度な医療が無料で施されている収容施設があるというのだ。何と、この収容所のテロリスト一人にかかる経費は90万ドルで普通の囚人の数十倍と言われている。

このボランティア救助士たちをボートに乗せ、ムーア監督はキューバにある米海軍のグアンタナモ基地に向かう。この基地には、テロリストの中でも特に危険なテロリストたちを収容する施設があり、そこではテロリストたちのために24時間、高度な診療を無料で施しているのだ。

救助士たちを乗せたボートが基地に近づくと、ムーアはボート上から拡声器を使い、「9.11の英雄たちにもテロリストと同じような治療を受けさせてくれ!」と叫ぶ。しかし、監視塔の衛兵からの応答はなく、退去を促すサイレンだけが響いてきた。しかし、救助士たちの物語はこれが結末ではない。

キューバの病院へ行ってみた―救助士たちの物語の結末

さて、9.11の英雄たちはどうなったか?引き続きネタバレする。ムーア監督は彼らをキューバの街へと案内した。キューバは共産主義国家で、かつてアメリカの安全を脅かした国、アメリカ人が持つ一般的なキューバのイメージだが、そんな国にも国民皆保険がある。

社会主義の国だから当然、医療費は無料だ。9.11のボランティア救助士たちは無料で治療が受けられると聞き、半信半疑のうちに検査、治療を受ける。

治療を受けたあと、救助士たちは医師たちに感謝しながらキューバを後にする。帰国の前に、キューバの消防士たちが、彼らを9.11の英雄として向かえ敬意を示した。映画中のエピソードとしてはハッピーな結末として描いてはいるが、彼らの闘病生活はこれからも続く。それを考えると、実はシビアな結末ともいえる。

『シッコ』の内容は正確?映画には批判が殺到

さて、ここからしばらくの間、ネタバレやあらすじから少し離れる。アメリカの医療業界の闇に切り込み多くのアメリカ人の共感を呼んだ映画『シッコ』だが、批判も浴びた。『シッコ』では、アメリカの医療制度に比べて他の国はまるでパラダイスであるかのような描写だか、どの国の制度もパーフェクトではなく問題はある、というものだ。

例えば、『シッコ』で紹介された国々では医療費が完全に無料ではないという批判だ。カナダでは医療費が完全に無料であったが、制度の改定により医療費が伸び続け、眼科や歯科などでは30%の自己負担が必要となっている。また、国土が広いため病院へのアクセスが悪く、待ち時間も長い。心電図やCTスキャンなどの専門的な検査を受けるには何ヶ月も待たなければならないのが普通だ。

また、イギリスは医療システムが国営であるため、国民は指定された診療所や病院へ行かなければならず、それ以外の診療機関では受け付けてもらえないというデメリットがある。

そして、フランスでは医療費が無料だと作品中では謳われているが、すべての医療費がタダというわけではない。確かに出産や高額の医療費がかかるガンなどについては無料だが、通常、一般的な病気で医者にかかる場合は一部が自己負担となる。

キューバはどうか?社会主義国ゆえ誰でも無料で診療が受けられ、乳幼児死亡率なども先進国並みに低い。ただし、理念は正しく実践されているが、医療物資が足りずに理想に現実が伴わないというのが実情だ。医師不足も指摘されている。外貨獲得のために、海外へ出て医療に従事する医師が多いのだ。映画中に出てくる病院は外国人向けの特殊な病院だという指摘もある。

『シッコ』のネタバレ情報まとめ

「シッコ(sicko)」とは保険会社のことか、結託している医師や政治家か。いずれにせよ、アメリカの医療保険制度がアメリカ国民のために機能しているとはいえない事実を訴えたのがこの映画だ。監督マイケル・ムーアは「私たち」でなく「私」を重視する、アメリカの行き過ぎた個人主義がこの歪んだ制度の根底にあると、この映画の最後に締めくくる。

今回はシッコのあらすじ(ネタバレ満載!)や関連情報などを紹介したがいかがだっただろうか?アメリカ製の洋画としてはハードなテーマだが、スクリーン上に姿を現すマイケル・ムーアのまるっこい見てくれと、随所に散りばめられたユーモアのおかげで軽いテイストに仕上がっている。肩を張らず、シンプルにエンタメとして楽しめる洋画だ。洋画ファンはもちろん、洋画をあまり見ない人でも楽しめるので是非ご覧あれ。

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