シェイプ・オブ・ウォーターのネタバレあらすじ!ラスト・結末の内容は?

ギレルモ・デル・トロ監督の渾身の異種恋愛映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の第90回アカデミー賞では作品賞など4部門を受賞し、第75回ゴールデングローブ賞でも2部門を受賞した驚異の世界観やあらすじ、ネタバレについて徹底解析。童話の世界のような独特の導入からラストシーンに至る結末でのイライザの選択は?賛否両論の注目の『シェイプ・オブ・ウォーター』のラストシーンについても詳しくあらすじと感想をネタバレを含みつつご紹介します。

シェイプ・オブ・ウォーターのネタバレあらすじ!ラスト・結末の内容は?のイメージ

目次

  1. シェイプ・オブ・ウォーターのあらすじをラストまでネタバレ紹介!
  2. シェイプ・オブ・ウォーターとは?
  3. シェイプ・オブ・ウォーターのあらすじをネタバレ!
  4. シェイプ・オブ・ウォーターの結末の内容は?
  5. シェイプ・オブ・ウォーターの主要キャスト一覧!
  6. シェイプ・オブ・ウォーターの感想や評価を紹介!
  7. シェイプ・オブ・ウォーターのあらすじネタバレまとめ!

シェイプ・オブ・ウォーターのあらすじをラストまでネタバレ紹介!

皆さん、第90回アカデミー賞では作品賞など4部門、第75回ゴールデングローブ賞でも2部門を受賞した話題の異種族恋愛映画『シェイプ・オブ・ウォーター』はご存知ですか?

『パシフィック・リム』(2013)や『パンズ・ラビリンス』(2006)のギレルモ・デル・トロ監督のクリーチャー愛が詰まった『シェイプ・オブ・ウォーター』のあらすじやラストシーンに対する様々な人の意見など、魅力的な世界観をネタバレを含みつつ結末までじっくりご紹介しましょう。

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』オフィシャルサイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

シェイプ・オブ・ウォーターとは?

『シェイプ・オブ・ウォーター』の背景

『シェイプ・オブ・ウォーター』とは、2017年に公開されたギレルモ・デル・トロ監督の恋愛映画です。『大アマゾンの半魚人』(1954)に着想を得た映画で、『シェルブールの雨傘』(1963)のトーン感覚を持ちながら冷戦下の航空宇宙研究センターで清掃員として働いている主人公とその研究施設に送られてきた「不思議な生きもの」の恋をおとぎ話のように描いています。

ギレルモ・デル・トロ監督とは!

『パンズ・ラビリンス』(2006)など多くのモンスターや薄暗い世界と魅力的なキャラクターたちが描く幻想的な世界観を描き続けているメキシコの巨星ギレルモ・デル・トロ監督。

大きな作品は『クロノス』(1993)から始まり当時からマニアに愛され続けた彼ですが、日本のマンガや特撮映画、ロボットアニメに影響を受けており、中でも円谷英二を尊敬しているという大のオタクなのです。

そんないつまでも遊び心を忘れないギレルモ・デル・トロ監督がひとつの「The Others」「アウトサイダー」の賛歌として描き切ったのが『シェイプ・オブ・ウォーター』であり、その深すぎるほどの愛情が溢れる本作はついに『シェイプ・オブ・ウォーター』で叶い、第90回アカデミー賞では作品賞など4部門を受賞し、第75回ゴールデングローブ賞でも2部門を受賞という輝かしい結果を打ち立てています。

『シェイプ・オブ・ウォーター』とギレルモ・デル・トロ監督

そんな彼は本作『シェイプ・オブ・ウォーター』で『大アマゾンの半魚人』や『フランケンシュタイン』で届かなかったモンスターたちの「求めても得られない愛情」を届けてあげるつもりでメガホンをとったと言います。その情熱があったからこその強烈な後読感のある結末とラストシーンをもつ作品に仕上がったのでしょう。

「映画館は教会」と語る彼の描いた本作は『大アマゾンの半魚人』だけでなく多くの映画や芸術に対する敬愛が感じ取れるものになっています。

Tips:『大アマゾンの半魚人』

1954年に製作されたジャック・アーノルド監督のSF映画。アマゾンの奥地に探索隊のひとりとして同行したケイ・ローレンス(ジュリー・アダムス)が半魚人と出会うお話です。結末に関しては伏せておきますが、『シェイプ・オブ・ウォーター』のきっかけとなった隠れた名作のひとつだと言えます。

おもちゃ箱のように様々な映画や世界観へのオマージュや魅力的な表現を敷き詰めてある『シェイプ・オブ・ウォーター』のあらすじを次章からはネタバレも少し含みつつラストシーンの手前までまずはご紹介致します。

シェイプ・オブ・ウォーターのあらすじをネタバレ!

「あのことについて語るなら、何を話そう?そうだないつの話かって?あれはハンサムな王子の時代が終わりに近づいたころ。場所を教えようか?海には近いけれどほかに何もない田舎町。またはそうだな……彼女について知りたい?声を失った王女のこと。または警告しておこうか?真実と……愛と喪失の物語について。そしてすべてを壊そうとしたモンスターについて」(『シェイプ・オブ・ウォーター』冒頭より)

あらすじ:極秘機関の掃除婦!

物語は幻想的な水中のシーンから開けると、1962年、冷戦下のアメリカのどこか、まだ外が暗いなかバスの椅子にちょこんと座り窓の外を眺める中年の女性を映します。彼女が本作のヒロインであるイライザ・エスポジート(サリー・ホーキンス)です。彼女は「航空宇宙研究センター」に掃除婦として勤めており、今日も決まった時間、決まったルーティーンで出勤をして黙々と仕事をこなすのでした。

そんな彼女には仲のいい同僚がいます。発話障害の彼女に比べると随分とお喋りで朗らかな女性の名前はゼルダ・フラー(オクタヴィア・スペンサー)。夫の愚痴をこぼしつつもイライザの良き理解者として共に掃除をこなします。

良き隣人にして親友の画家ジャイルズもイライザの話をするなら忘れてはいけません。彼は、猫とひとり暮らしをしながらパイ屋の男に想いを寄せている独居老人ですが、イライザのことを支え、彼女の感情の機微を常に表現し返してくれています。そんなささやかながら良き友人たちに支えられつつイライザの日常は描かれていきます。

ネタバレありあらすじ:転機と共にやってきた男

そんなイライザとゼルダの掃除を担当する区域に見慣れない厳つい男性が白衣の人々と共にやってきました。どうやら新しい何かをはじめるらしいのですが、その男性ははリチャード・ストリックランド(マイケル・シャノン)という差別的な人物でした。また研究を担当するロバート・ホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)も何処か特徴的な人物です。

ゼルダやイライザにも刺々しいストリックランドは研究室のある一室に白衣の人々と入り、暫くすると呻き声と共にゼルダとイライザは呼ばれることになります。血の海の掃除を任されるゼルダとイライザ。どうやらストリックランドの指が「何者か」によって切断されたらしく、たまたまその「何者か」を目撃してしまったイライザは一層この部屋への興味を惹かれるのでした。

ネタバレありあらすじ:謎の生物!

なんとか隙をみて研究室内に忍び込むイライザ。その先で目にしたのは大きな生簀と水槽の中にいる魚とも人ともつかない「不思議な生き物」でした。

恐怖するより先に好奇心と何か惹かれるものがあったイライザはストリックランドや職員はもちろんのこと、ゼルダにも内緒でこの「不思議な生き物」に度々会いに行くことにするのです。

はじめは威嚇するように吠え、イライザを遠ざけようとする「不思議な生き物」。しかし、イライザが自分の好物であるゆで卵を差し出すと恐る恐るそれを口に入れ喜ぶように次をねだるようになります。こうして少しづつイライザと「不思議な生き物」の秘密の交流ははじまるのでした。

ネタバレありあらすじ:ティール色の日々

言葉を介さずとも少しづつわかり合っていくなかで「不思議な生き物」に心を惹かれ段々と恋心に近い感情を持ち始めるイライザ。ゆで卵からエスカレートしてゼルダに内緒でレコードを持ち込んだり水槽の前で踊ってみせたりとイライザ自身もこの秘密の交流を楽しみにするようになります。

「不思議な生き物」もまた食料を与え、交流を試みてくれるイライザに懐き自分にはない文明の色形を楽しむようになっていくのです。

動物と人間の絆と言うには人間らしい、不格好ながらロマンティックな交流に胸るシーン構成です。また段々とイライザの感情に沿うように彼女の服装が赤く色付いていくのも印象的でしょう。

ネタバレありあらすじ:崩壊の足音

しかしそんなイライザと「不思議な生き物」の元へ暗い影が忍び寄ります。ホフステトラー博士の研究結果を芳しく思わないホイト元帥(ニック・サーシー)によって「不思議な生き物」の解剖実験が提言されてしまったのです。

偶然その宣告を物陰で聞いてしまったイライザはどうにかして彼を救えないかと思案し、ホフステトラー博士もまた「ある理由」からイライザに「不思議な生き物」を逃がしてくれるように頼むことになります。

ネタバレありあらすじ:The Others

イライザはジャイルズにまず協力を扇ぎ、彼を説得しようとしますが1度目は失敗に終わります。しかし、ジャイルズが失恋し「ゲイである」ことを相手に非難されたことで同じ「The Others(非主流派)」のイライザと「不思議な生き物」のために協力することを考え始めるのでした。また、ゼルダにも真実を打ち明け、彼女も驚き自分やイライザへのリスクを心配しますが、最終的には親友のイライザのために立ち上がってくれるのです。

声の出せないイライザ。ゲイのジャイルズに黒人で女性のゼルダ。人間ではない「不思議な生き物」。そしてネタバレをここは避けますが「ある理由」で「The Others」となっているホフステトラー博士。こうして「The Others」な人々によるストリックランドが目を光らせている研究室からの脱出劇が幕を開けるのです。

ネタバレありあらすじ:大脱走

防犯カメラを逸らしながら、掃除婦であるという特性を活かしてリネンの取り替え容器に「不思議な生き物」を隠して逃走を図るイライザとゼルダ。ジャイルズは車を地下の駐車場に入れ、ホフステトラー博士もまた陰ながら「不思議な生き物」の脱出を支援してくれます。また、ここで「塩水がないと生きていけない」という重要な情報もまたイライザに伝えられるのです。この情報がラストシーンに繋がっていきます。

途中、ストリックランドにあわや失敗するあたりまで追い詰められ、ヒヤヒヤするシーンが多くあるのも大脱走の醍醐味。激しいアクションがあるわけでもないのですが、ストリックランドの指が破傷風のように膿んで彼の精神をより病ませ凶暴にしている点が緊張感に拍車をかけていきます。

ネタバレありあらすじ:シェイプ・オブ・ウォーター

なんとか「不思議な生き物」を逃がし、イライザの家の浴槽に収めることに成功した一行。「不思議な生き物」を雨の日に水嵩が増した川から海へと返すことにし、イライザとジャイルズが身辺の世話をすることにします。そんなある日のことです。なんと、ジャイルズが居眠りをしているうちに「不思議な生き物」は浴室を抜け出してしまうのでした。ジャイルズの飼い猫に威嚇され興奮した「不思議な生き物」。

そのまま猫を殺してしまい、彼自身もそのまま部屋の外へと脱走してしまいます。そんな「不思議な生き物」が行き着いた先は、イライザやジャイルズが住むアパートの1階にある映画館でした。なかでは『砂漠の女王』(1960)が上映されており、驚きと興味で興奮状態が解けておとなしくなった所にイライザがちょうど駆けつけ事なきをえます。

なお、余談ながらこの映画館はトロントに実在する『Elgin and Winter Garden Theatres(エルジン・アンド・ウィンター・ガーデン・シアター)』という映画館で、トロント国際映画祭ではここで『シェイプ・オブ・ウォーター』が上演されました。『砂漠の女王』が救世主や神などを題材とする映画だという点といい、このシーンはかなり憎い演出が凝らされています。

部屋に戻った「不思議な生き物」は傷付いたジャイルズを癒し謝罪するように手の甲や頭を撫でます。すると、ジャイルズの頭頂に髪が生え傷も癒えていくのでした。彼は思わず「不思議な生き物」を「神」と称します。ギレルモ・デル・トロ監督のインタビューでも「魚はイエス・キリストの象徴なんだ」と語っていることからもわかる通り、奇蹟を起こすことでより一層この物語に童話性を生むのがこのシーンです。

そして信仰にも近い敬愛と愛情が育まれたイライザと「不思議な生き物」はついに浴槽から溢れる水もそのままにロマンチックな時間を過ごすのでした。このシーンは何処となく『タイタニック』(1997)のラストシーンや『大アマゾンの半魚人』などで届かなかった「求めても得られない愛情」が水と共に満たされ通ったような幻想的で蠱惑なシーンになっています。

ネタバレありあらすじ:恋の復讐者

しかしそんな幸せな日々も、雨と共に暗雲が入り込んできます。そう、指が腐敗し「不思議な生き物」が脱走したことで夫婦仲や社会的地位が脅かされ、敗北感を味わったストリックランドが犯人探しをはじめていたのです。また犯人探しをするうちに妻に愛想を尽かされたせいかイライザに心を奪われますが、イライザはストリックランドを拒絶してしまいより行動がエスカレートするのです。

そのなかで白羽が立ち拷問にかけられるホフステトラー博士。博士はあまりの痛みにゼルダの存在を教えてしまい、ゼルダもまた脅されることになります。沈黙するゼルダと怯えて妻の親友であるイライザの存在を口にてしまうゼルダの夫。ここからラストシーンへ一気に滑り落ちるように進んでいきます。ラストシーンのあらすじと結末は次章で詳しくご紹介しましょう。

シェイプ・オブ・ウォーターの結末の内容は?

この章では幻想的なギレルモ・デル・トロ監督ワールドの集大成、賛否両論の巻き起こした『シェイプ・オブ・ウォーター』のラストシーンについて、それぞれのキャラクターの結末に至る選択や行動などをあらすじと共に詳しくご紹介しましょう!未鑑賞の方は本章は結末についての超ネタバレ内容なので読み飛ばすなどして自衛の上ご注意ください。

ラストシーンネタバレあり:ストリックランドの結末

自分が淡い恋心を抱きはじめたイライザが、「不思議な生き物」を脱走させ自分の人生を間接的に破滅させたと知ったストリックランド。彼は銃を持ったまま川辺のイライザと「不思議な生き物」を追いかけ、ちょうど別れを告げようとするふたりの元へと登場します。そして恋人同士のような親密さを感じ取り、激昂。同行していたジャイルズを殴り倒し、ストリックランドは衰弱しきった「不思議な生き物」に向けて発砲してしまいます。

そして、威嚇と抵抗を行う「不思議な生き物」とそれを庇おうとして全く人間である自分をかえりみないイライザの姿に頭に血がのぼり、イライザと「不思議な生き物」に更に発砲。高揚して周りが見えなくなったところを後ろからジャイルズに角材で殴られ、とどめは回復した「不思議な生き物」の爪で切られてしまうのです。おそらく、死亡したのではないかと思われますが彼の結末が語られるのはこのシーンが最後になります。

ラストシーンネタバレあり:ジャイルズの結末

イライザと共に水門まで「不思議な生き物」を連れてくきたジャイルズ。そこへストリックランドが現れ、なんとか食い止めようとしますが、ストリックランドに殴り倒され一時意識を失ってしまいます。目を覚ますと勝ち誇った顔のストリックランドと凶弾に倒れるイライザと「不思議な生き物」が見え、咄嗟に角材でストリックランドを殴打。「不思議な生き物」がイライザを連れて海に変えるのを目撃し神の存在を感じたように見えます。

ラストシーンネタバレあり:イライザの結末

ジャイルズと共に水門まで「不思議な生き物」を連れてくきたイライザを待っていたのは辛い別れ以上の苦しい現実世界でした。自分が良くしてやっていたのに裏切ったなと罵るストリックランド。激昂して向けられる銃とその凶弾で倒れる「不思議な生き物」。全てが空回り絶望したのか、はたまた愛ゆえか「不思議な生き物」を庇うように銃弾を受けてイライザは致命傷を負ってしまいます。

ラストシーンネタバレあり:「不思議な生き物」の結末

大切にしてくれた心優しい人々に見送られ海に変えるはずだった「不思議な生き物」。その背後にストリックランドの魔の手が伸びます。横暴で半魚人という点で「フリークス」とも表現できる自分の身や、イライザやジャイルズなどの「The Others」である人々に敵意を向けるモンスターに、「不思議な生き物」は朦朧としつつも仲間のために必死に抵抗します。

ストリックランドの凶弾に一度は倒れますが、まるでイエス・キリストのように自己回復を行い、ストリックランドを退けた上で動かなくなったイライザを抱いて水の中へと潜っていくのです。この光景を目撃したのはジャイルズのみであり、前章のあらすじでもご紹介した通り、奇蹟を観て生き残ったのも彼のみであることから冒頭の文章はジャイルズのものではないかと推察されます。

ラストシーン超ネタバレあり:『シェイプ・オブ・ウォーター』の結末

そして水の中へと落ちていったイライザは「不思議な生き物」の口付けで再び目を覚ますのです。目の前には愛した「不思議な生き物」と暗いティール色の海が広がるだけで己を虐げるものも己の運命もありません。まるで死後の世界でもあり、あるいは終盤の浴室のシーンの再現のようでもあるこの水の中でふたりは抱き合い2度と浮き上がることはないのでした。

イライザの首の傷が半魚人と同じようなエラに変わり、「ふたりは真の意味で一緒になった」ということを示す詩とナレーションが入りこの『シェイプ・オブ・ウォーター』の結末となるわけです。ここで首の傷が昇華されるのかと驚いた方も多かったのではないでしょうか。このラストシーンは導入部分と呼応し合うつくりでかなり印象的な詩的シーンとなっています。

このラストシーンには2通りのあらすじ解釈があります。ひとつは「『あなたと私は一緒ではない』という別れの言葉を覆してふたりは半魚人として一緒になれた」というハッピーエンドな結末だったとする説。もうひとつは「奇蹟とナレーションはジャイルズの妄想で現実は別れの言葉の通りイライザが死に、ラストシーンは彼の希望的観測である」バッドエンドな結末だったとする説です。

この構造は『パンズラビリンス』にも観られたものであり、観る側によって捉え方も変わるのではないでしょうか?また余談ながら、「不思議な生き物」がクトゥルフ神話という1920年代から続くSF小説群のなかの「深きもの」なのではないかという説もあり、一概には語れない神秘的なラストシーンになっているのです。皆さんの目にどう映るのかは皆さん次第、是非一度『シェイプ・オブ・ウォーター』を実際にご覧になってみて下さい。

Tips:ギレルモ・デル・トロ監督と『クトゥルフ神話』

いきなり登場してなんのことやらと思う方もいるかと思いますが実はギレルモ・デル・トロ監督、この『クトゥルフ神話』とは切っても切れない縁を持つ監督だったりします。彼自体がモンスターを深く愛した結果もあるのでしょうか、彼の作品には(多くのSF映画監督がそうであるように)『クトゥルフ神話』にまつわるオマージュが多くあり、一時期『狂気の山脈にて』を映画化するという話も上がったほどの強烈なファンなのです。

クトゥルフ神話とは、パルプ・マガジンにハワード・フィリップス・ラヴクラフトが投稿していた小説を元にした架空の神話体系で、『シェイプ・オブ・ウォーター』に登場した「不思議な生き物」に類する多くのモンスターと神々や宇宙的恐怖について狂気的に描かれているアメリカを中心にマニアックなファンの多い作品群です。日本でも『ウルトラマン』シリーズなどで度々その片鱗を見せることがあります。

『クトゥルフ神話』とギレルモ・デル・トロ監督の世界観の結びつきの一部を味わうのであれば彼のデザインをまとめた本『ギレルモ・デル・トロ 創作ノート 驚異の部屋』(2014)などはお勧めできる書籍になります。まるで魔道書のような監督のアイデアスケッチが今度どのように膨らむのかも期待が高まるポイントでしょう。

シェイプ・オブ・ウォーターの主要キャスト一覧!

サリー・ホーキンス:イライザ役

今作では終始手話と仕草のみで感情表現を行うなど魅力的な演技を見せてくれたのは『ハッピー・ゴー・ラッキー』(2008)で第58回ベルリン国際映画祭銀熊賞や第66回ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞したサリー・ホーキンスです。

実はギレルモ・デル・トロ監督も大好物の2014年の『GODZILLA ゴジラ』でヴィヴィアン・グレアム博士を演じた彼女は本作でもその器用な表現を遺憾無く発揮しています。ヴィヴィアン・グレアム博士は2019年公開予定の続編でも出演しますのでそちらもご期待ください。

マイケル・シャノン:ストリックランド役

そんなイライザに横恋慕を抱いてしまったストリックランド役を演じるのは数々の話題作で印象的な顔立ちと演技で作品を盛り上げているマイケル・シャノン。

1993年に出演したビル・マーレイ主演の『恋はデジャ・ブ』で映画デビューを果たしたあと『チェーン・リアクション』(1996)や『バニラ・スカイ』(2001)、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(2008)など多くの作品で悪役を演じたり頼れる人物を演じたりと縁の下の力持ちの面を大いに見せています。

リチャード・ジェンキンス:ジャイルズ役

ゲイの老画家という少々特殊な役柄を演じ切ったのは2008年に『扉をたたく人』でナショナル・ボード・オブ・レビュー主演男優賞を受賞し、アカデミー主演男優賞にノミネートされたリチャード・ジェンキンスです。『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017)と『シェイプ・オブ・ウォーター』併せてモンスター充な1年を経たリチャード・ジェンキンスは今後どのような映画に登場するのか期待が高まります。

オクタヴィア・スペンサー:ゼルダ・フラー役

陽気なトークとイライザへの親友としての深い愛情と慈悲を持ってスクリーンを闊歩したのは2011年の『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』でアカデミー助演女優賞などを受賞したオクタヴィア・レノラ・スペンサーです。実は『スパイダーマン』(2002)、『バッドサンタ』(2003)、『ハロウィンII』(2009)などドタバタ緊張感の走る画面でもしっかりその個性を活かしているのが彼女でもあります。

マイケル・スタールバーグ:ロバート・ホフステトラー博士役

『シェイプ・オブ・ウォーター』では物語の橋渡しのような難しいポジションにも関わらず堂々の演技を見せたのはコーエン兄弟のコメディ映画『シリアスマン』(2009)でもおなじみのマイケル・スタールバーグ。

なんと『シェイプ・オブ・ウォーター』をはじめ2017年に出演した『君の名前で僕を呼んで』と『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の全てでアカデミー賞ノミネートを果たすなどこれからの活躍にかなり期待が高まる男優でもあります。

ダグ・ジョーンズ:不思議な生きもの(彼)役

ギレルモ・デル・トロ作品には欠かせないモンスターを人離れした不気味でもある仕草で演じ切ったのは監督とは黄金コンビでもあるダグ・ジョーンズその人です。『ヘルボーイ』(2004~)シリーズでもヘルボーイの親友の半魚人捜査官エイブ・サピエンとしてスクリーンで魅力的な演技を見せています。

『パンズ・ラビリンス』(2006)でもパンとペイルマンの2役を担当したモンスターの第一人者な彼ですが、なんと『シェイプ・オブ・ウォーター』のスーツと特殊メイクには毎回3時間ものセッティング時間がかかったそうです。それをして、『パンズ・ラビリンス』の方が大変だったと語る胆力実に凄まじい作品への愛情が感じられます。

今後とも多くの不気味で魅力的なモンスターを世に送り出していってほしいものです。勿論すのままのダグ・ジョーンズも。

シェイプ・オブ・ウォーターの感想や評価を紹介!

もう鑑賞済みの皆さんの目にはどう映っているのでしょうか?この章ではそんなマニアックで情熱的な世界観をもつ『シェイプ・オブ・ウォーター』の感想や評価をネタバレも含みつつご紹介します。

ネタバレあり:好評の感想

好評もまた「神々しい!」というオカルティックな魅力に取り憑かれた意見から「ただただ面白い」「疲れた時にチャージするために観たい」など様々な層にいろんな反響を及ぼしているようです。またギレルモ・デル・トロ監督が縦横無尽に描きたい内容を撮った上でアカデミー賞をとり、世に知られるようになったこのサクセスストーリーそのものに感動を覚え喝采を贈る人々も多くみられました。

宗教的な象徴を多く含むなかでアウトサイダーへの賛歌を細やかに盛り込み結末のまとめかたなど童話としてわかりやすく見せるという荒技をこなしているだけあって、言葉にそのものズバリというのは逆に難しいのかもしれません。

また、アウトサイダーだという自覚のある層にとても救いのあるように感じられているものまた共感を生んでいると推察することもできるでしょう。

ネタバレあり:不評の感想

あまりに童話的に描ききりすぎた生で「ファンタジーに傾向しすぎてついていけない」「難しい」「感情移入できない」などの意見も多く散見されました。またアカデミー賞を受賞した後に鑑賞し、「肩透かしにあった」というパターンも見えるなど有名になったからこその壁も見受けられています。

ちょっとよくわからんかった。
次第に増していくファンタジー感にちょっと戸惑った。
最後の喉切り裂くシーンの佇まいは、ほぼ仮面ライダー。

ツイッター上でも概ねは高評価であるものの、「刺さらない層にはとことん刺さらない」「好みはかなり分かれる」という印象を受ける意見は見受けられました。

「ポリティカル・コレクトネス」「LGBT」「アウトサイダー」など社会的風潮を上手く舵をとったという意見と媚びすぎたという意見が出るなど、「狙いすぎ」という点で反発を受けるケースもあったようです。一方で『シェイプ・オブ・ウォーター』では逆にこのポリコレ違反を上手く使ったという意見もありました。

※「ポリティカル・コレクトネス」とは政治的・社会的に公正・公平・中立的で、なおかつ差別・偏見が含まれていない言葉や用語のことで、『シェイプ・オブ・ウォーター』でいうところのストリックランドが白人の権威的な男性であるのに対し障害をもつイライザや黒人女性のゼルダが終始強く出られないなど、不平等な状態が存在しないことや不平等である点を無闇に強調しないことを指します。

シェイプ・オブ・ウォーターのあらすじネタバレまとめ!

皆さん、不思議で奥深い『シェイプ・オブ・ウォーター』のあらすじやキャストの紹介、世界観の補足解説はいかがでしたか?エログロは含まれるものの、熱狂的な人気をもつ『シェイプ・オブ・ウォーター』を体感するには結末部分ももちろんですが全編通して直に観るのが一番ではありますし、これを機に鑑賞に踏み切ってみてはいかがでしょうか?

『パシフィック・リム』『シェイプ・オブ・ウォーター』ときて、次なるギレルモ・デル・トロ監督の作品がいったい何を映し出すのか、とても期待と注目が高まっています。1年の休業ののちに20世紀フォックスのリメイク版「ミクロの決死圏」のメガホンをとるとのことですので、楽しみに待つ間にデル・トロ監督作品映画巡りというのも悪くないのかもしれません。

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