2018年09月20日公開
2018年09月20日更新
東京家族のあらすじと魅力を考察!出演キャストや東京物語との比較紹介も
『男はつらいよ』シリーズなどで知られる日本映画の巨匠・山田洋二監督が制作した『東京家族』についてあらすじや魅力を考察してまとめました。『東京家族』は小津安二郎監督作品『東京物語』のリメイク作品です。大まかなあらすじは『東京物語』に沿っているものの、時代に合わせた描写やメッセージ性、新しい登場人物の活躍や、東日本大震災後の日本を意識した脚本など、『東京家族』ならではの魅力が詰まった作品です。ここではそんな『東京家族』のあらすじや魅力についての考察をまとめました。
目次
東京家族のあらすじと魅力とは?出演キャストも紹介!
山田洋二監督作品である『東京家族』のあらすじや作品の魅力についてまとめて考察しました。『男はつらいよ』シリーズで知られる山田洋二監督が、同じく日本映画の巨匠と言われる小津安二郎の名作『東京物語』をリメイクするということで、『東京家族』は注目を集めました。日本アカデミー賞では12部門に輝く快挙を成し遂げた『東京家族』。ここではあらすじや作品の魅力などを考察し、紹介していきます。
東京家族とは?
監督や公開年などの基本情報を紹介
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まずは『東京家族』の基本的な情報を紹介します。『東京家族』は2013年1月19日に公開された山田洋二監督による日本映画です。日本での公開後はアジア各国で公開されました。小津安二郎監督による1953年の映画『東京物語』のリメイク作品であると、同時に山田洋二監督の『家族はつらいよ』シリーズとキャストが共有されている作品でもあります。
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山田洋二監督は『男はつらいよ』シリーズを筆頭に、『幸福の黄色いハンカチ』や『学校』シリーズ、『たそがれ清兵衛』や『武士の一分』といった時代劇映画でも知られています。そんな山田洋二が「世界一の映画」と語るのが『東京物語』でした。『東京家族』はリメイク作品であり、続く『家族はつらいよ』でも『東京物語』がテレビに映し出されるという演出が施されています。『家族はつらいよ』はシリーズ化されました。
『東京家族』は『東京物語』を徹底的に真似たと言われるほど、類似点多い作品です。大まかなあらすじから、登場人物の名前なども似通っています。ただし、東日本大震災が起こったことにより脚本は修正されました。そのため、震災以降の日本人の価値観を意識した作風になっており、現代の家族像をリアルに描いた描写やメッセージ性が作品の魅力と考察されています。この点については後程詳しく説明します。
東京家族の出演キャストを紹介!
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あらすじの前に、『東京家族』の豪華なキャストを紹介します。『東京家族』には橋爪功を筆頭に、主役級のキャストが集められました。『東京家族』のキャスト陣は『家族はつらいよ』シリーズにも出演しており、あらすじに繋がりはないものの、深い関連があります。ここで紹介しているキャストは全員、両映画に出演しています。各キャストの代表作などをまとめました。
橋爪功/平山周吉
『東京家族』の主人公である平山周吉のキャストを務めたのは橋爪功です。橋爪功は1941年9月17日に大阪府で生まれました。演劇を始めて知名度を上げた後、「演劇集団 円」を創立します。以降も、舞台に立ち続け、2006年には「演劇集団 円」の代表となりました。多くの舞台に出演していますが、『レインマン』や『ゴドーを待ちながら』などが知られています。
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映画やドラマでも活躍しており、当たり役として特に有名なのが『京都迷宮案内』シリーズです。同シリーズでは10年に渡って主演を務めました。また、2時間サスペンスドラマにもよく出演しています。『東京家族』と同様のキャストが集まった『家族はつらいよ』はシリーズ化され、2018年には『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』でも主演を務めています。
吉行和子/平山とみこ
『東京家族』の周吉の妻・とみこのキャストを務めたのは吉行和子です。吉行和子は1935年8月9日に東京都で生まれました。吉行和子の母はNHK連続テレビ小説『あぐり』のモデルとなった吉行あぐりであることが良く知られています。もともとは役者を目指していたわけでありませんが、『アンネの日記』のアンネ・フランク役に抜擢されたことで主役デビューしました。以降、役者を続けていきます。
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1955年に『由起子』で映画デビューしました。1978年に大島渚監督の『愛の亡霊』で主演を務め、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞しています。テレビドラマでも活躍し、『3年B組金八先生』シリーズ には長年に渡って出演しました。同じく『ナースのお仕事』シリーズへの出演などでも知られています。
西村雅彦/平山幸一
『東京家族』の周吉の長男・幸一のキャストを務めたのは西村雅彦です。西村雅彦でクレジットされていますが、2017年に西村まさ彦という芸名に変えています。1960年12月12日に富山県で生まれました。西村まさ彦は三谷幸喜が率いる東京サンシャインボーイズに入団後、『古畑任三郎』シリーズの今泉慎太郎役が良く知られています。コミカルなキャラクターでしたが、シリアスでも存在感のある俳優として知られるようになります。
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三谷幸喜の脚本作品には『振り返れば奴がいる』や、『王様のレストラン』、『真田丸』といった作品にも出演しています。一方、草彅剛と共演したドラマ『TEAM』シリーズでは厳格な刑事役を演じました。舞台への出演を継続しています。ジブリアニメ『もののけ姫』や『風立ちぬ』では声優を務めている他、ラジオドラマやバラエティ番組への出演など、幅広く活躍しています。
夏川結衣/平山文子
『東京家族』の幸一の妻・文子のキャストを務めたのは夏川結衣です。夏川結衣は1968年6月1日に熊本県で生まれました。芸能活動はモデルとしてスタートしました。女優としてデビューしたのは1992年のドラマ『愛という名のもとに』でした。1994年の映画『夜がまた来る』では主演を務めました。
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他の出演作には、2006年のドラマ『結婚できない男』や、2009年のドラマ『任侠ヘルパー』などが知られています。映画では2008年の是枝裕和監督作品『歩いても 歩いても』や、2010年の『孤高のメス』での演技が高く評価されました。また、声優としてジブリアニメ『ゲド戦記』で王妃役を務めたこともあります。
中嶋朋子/金井滋子
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『東京家族』の周吉の長女・滋子のキャストを務めたのは中嶋朋子です。中嶋朋子は1971年6月5日に東京都で生まれました。子役としてキャリアをスタートさせた中嶋朋子は、『北の国から』シリーズの黒板蛍役でよく知られています。『北の国から』完結後も女優として活躍しており、近年は舞台女優として多くの作品に出演しています。
林家正蔵 /金井庫造
『東京家族』の滋子の夫・金井庫造のキャストを務めたのは林家正蔵です。林家正蔵は本名・海老名泰孝。1962年12月1日に東京都で生まれました。林家三平と海老名香葉子の長男として知られ、9代目林家正蔵を襲名するまでは林家こぶ平という名でした。姉はシンガーソングライターの泰葉で、弟は笑点のメンバーとして活躍している林家三平です。
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噺家として活動する傍ら、マルチタレントとして多くのバラエティ番組に出演しています。また、声優としてのキャリアもあり、『タッチ』の松平孝太郎役や、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の寺井洋一役を務めました。
妻夫木聡/平山昌次
『東京家族』の周吉の次男・昌次のキャストを務めたのは妻夫木聡です。妻夫木聡は1980年12月13日に福岡県で生まれました。高校生の頃から読者モデルを務めて人気を博します。『スタアオーディション』というオーディション体験型ゲームでグランプリを取り、ホリプロに所属します。1998年のドラマ『すばらしい日々』で俳優デビューしました。
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2000年のドラマ『池袋ウエストゲートパーク』への出演で知名度を上げました。初主演となった2001年の映画『ウォーターボーイズ』での演技は高く評価されます。以降、映画『ジョゼと虎と魚たち』や、月9ドラマ『スローダンス』などに出演。2009年のNHK大河ドラマ『天地人』では主演を務めました。2010年の『悪人』では俳優としての評価をさらに高めます。近年の出演作には2017年の映画『愚行録』などがあります。
蒼井優/間宮紀子
『東京家族』の昌次の婚約者・間宮紀子のキャストを務めたのは蒼井優です。蒼井優は1985年8月17日に福岡県で生まれました。1999年のミュージカル『アニー』への出演をきっかけに芸能活動をスタートさせます。2000年にはおはガールとして朝の子供向け情報番組『おはスタ』に出演していました。2001年には岩井俊二監督の映画『リリイ・シュシュのすべて』に出演し、以降活躍の幅を広げていきます。
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2006年の映画『フラガール』では非常に高い評価を受けます。他にも『花とアリス』や大河ドラマ『龍馬伝』、映画『るろうに剣心』シリーズなど多くの作品に出演し、演じる役柄の幅広さや、ストイックな役作りが評判です。また、声優としての経験もあり、『鉄コン筋クリート』で初挑戦後、木村拓哉が主役の声優を務めた『REDLINE』などに出演。多くのCM出演や、ナレーターを務めることもあります。
小林稔侍/沼田三平
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『東京家族』で周吉の旧友・沼田三平のキャストを務めたのは小林稔侍です。小林稔侍は1941年2月7日に和歌山県で生まれました。任侠映画や刑事ドラマに多く出演し、俳優としてのキャリアを積みました。『学校III』に出演してからは山田洋二監督作品の常連俳優となりました。2018年の映画『星めぐりの町』では芸歴56年にして映画初主演を務めました。
風吹ジュン/かよ
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『東京家族』で沼田の行きつけの居酒屋の女主人・かよのキャストを務めたのは風吹ジュンです。風吹ジュンは1952年5月12日に富山県で生まれました。十代の頃はアルバイト生活をしていましたが、クラブで働いている頃にスカウトされて女優になりました。以降、多くのテレビや映画で活躍し、代表作にはドラマ『はみだし刑事情熱系』などがあります。
東京家族のあらすじを考察!
ここからは『東京家族』のあらすじについて結末まで詳しく紹介します。『東京家族』の簡単なあらすじは「広島から老夫婦が息子たちを頼って上京します。忙しくて老夫婦の相手をする人がいません。上京中に妻が亡くなり、故郷で葬儀をします。その後、残された夫は一人で暮らすことを選ぶ」というものです。『東京物語』と大まかなあらすじは同じになっています。
東京に来た平山周吉夫妻
72歳の平山周吉は妻・とみこと共に広島から東京まで新幹線でやってきます。ふたりを迎えるために開業医である息子・幸一の家では準備が進められていました。しかし、周吉夫妻を迎えに行った次男の昌次はふたりの姿を見つけることができません。周吉夫妻は品川駅で降りていましたが、昌次は東京駅にいました。長女・滋子がとみこに電話します。待ちきれない周吉はタクシーで行くと言いました。
周吉夫妻は無事に幸一の家に到着します。ふたりは大きくなった孫たちの姿を見て驚きました。中学生の孫・実は弁当を持って塾に出かけます。そこで、遅れて来た昌次と会いました。家に上がった昌次を滋子が呆れた様子で迎えます。もうひとりの孫・勇は昌次に懐いています。食卓を囲む一同。思い出話に花を咲かせていました。周吉は友人の訃報を聞いて東京にいる間にお悔みに行くと言います。
東京観光に行くふたり
日曜日。周吉夫妻は幸一に連れられて出かける準備をしていました。しかし、急患の連絡があり、幸一は患者の元に向かいます。機嫌を損ねた孫・勇をとみこは近くの公園に連れ出しました。その後、滋子の家に身を寄せた周吉夫妻。しかし、土砂降りの雨でどこにも出かけていません。滋子の夫・庫造は周吉を温泉へと誘いました。
翌日、滋子に頼まれた昌次は周吉夫妻を観光に連れて行きました。鰻屋に入り、周吉は昌次の仕事について尋ねました。舞台美術の仕事をしている昌次は仕事の説明をしますが、周吉は将来のことを心配して昌次に厳しく接します。そんな周吉のことが昌次は苦手でした。仕事の電話に出た昌次を「わしの話を聞かない」と言う周吉でしたが、鰻の半分を昌次にやると言うのでした。
ふたりだけの東京
多忙な幸一と滋子はお金を出し合って、周吉夫妻のために高級ホテルを用意することを決めます。しかし、話し相手もおらず、することもない夫妻はただ空を見てぼんやり過ごしました。食事はホテルのレストランで済ませますが慣れない料理にふたりは戸惑います。夜になり、ライトアップされた観覧車を窓から眺めます。二人は若いころに観た『第三の男』を懐かしみました。枕とベッドが合わず、ふたりはよく眠れません。
広島に帰りたくなった周吉たちは、知人のお悔みを済ませて帰ろうと言います。しかし、とみこの体調はよくありません。予定よりも早くホテルでの宿泊を切り上げ、滋子の家に帰るふたり。しかし、商店街の用事がある滋子は、「今夜はうちに居てもらっては困る」とふたりを追い出します。周吉は旧友の沼田の元を訪ねることにし、とみこは昌次のアパートに身を寄せることにしました。
それぞれの夜
昌次のアパートで食事を振舞うとみこ。意外と部屋が片付いていることに驚くとみこでしたが、それは昌次には恋人の間宮紀子がいるからでした。ちょうど訪ねて来た紀子を昌次は紹介します。紀子ととみこはすぐに打ち解けました。一方周吉は沼田と一緒に居酒屋にいました。沼田に勧められて周吉は酒を飲みます。すっかり出来上がったふたりの様子を見て他の客は店を出ていきました。周吉も相当な量を手じゃくで飲みます。
酔った沼田は「周吉が一番幸せ」と言います。しかし、周吉は子供たちが出て行ってしまった寂しさを吐露しました。周吉は世を憂いてさらに酒を要求します。そのまま酔いつぶれて居酒屋で寝てしまいました。一方、紀子が去った後、とみこは昌次からふたりの馴れ初めを聞きます。ふたりは福島県へ震災復興のボランティアに行っていた時に知り合いました。
とみこの死
翌朝、とみこが部屋の掃除をしていると紀子が訪ねてきました。とみこは昌次のために用意してきたお金を紀子に預けます。昌次には内緒にしておくように言われた紀子は笑顔でお金を受け取りました。一方、二日酔いの周吉は幸一の元に身を寄せていました。昨晩、泥酔した周吉は沼田に宿泊を断られ、滋子の家に行きましたが、そこでも迷惑を掛けていました。幸一と話していると上機嫌のとみこが帰ってきます。
とみこは「東京に出てきて本当に良かった」と言って2階に上がります。そこでとみこは倒れました。幸一が診察し、すぐに救急車を呼びました。とみこが倒れたことは滋子や昌次にも伝えられます。家族一同集まりますが、昌次はまたも遅れています。孫たちは先に家に帰りました。幸一は周吉と滋子にとみこは「明け方まで持つか持たないか」と告げます。滋子は泣き出し、周吉も悲しみに暮れます。
遅れて病院に到着した昌次は紀子と会いました。昌次は紀子を連れて病室に入ります。危篤状態のとみこを見て昌次は動揺します。滋子に紀子のことを尋ねられた昌次は、昨晩とみこと話したことを家族に伝えました。悲しみのあまり、昌次は病室を飛び出して泣きます。深夜、滋子からの電話でとみこの死を知った滋子の夫・庫造は驚きました。
島での葬儀
とみこの死後、幸一や滋子は葬儀の話を進めます。火葬は東京で済ませ、遺灰は故郷に持ち帰りました。島には紀子も同行します。しかし幸一の気難しさを感じて紀子は昌次に愚痴を言いました。翌日、島でとみこの葬儀が執り行われました。幸一に酒を勧められましたが、周吉は断ります。周吉はホテルで泊まった翌朝、とみこの様子がおかしかったことを話しました。
なぜ早く幸一に言わなかったのかと滋子は言いますが、幸一はそれが原因じゃないと言います。滋子は今更後悔してもしょうがないと言い、形見分けの話を始めました。昌次は怒ります。四十九日でその話はしようと幸一が場をおさめました。そして、周吉の暮らしについての話題になります。幸一は一緒に暮らすことを提案しましたが、周吉は東京には二度と行かないと言いました。
東京家族のあらすじの結末
周吉は親戚や知り合い、そして役場を頼って何とかすると言いきりました。そこへ紀子が帰ってきます。天候が悪くなったため、幸一や滋子たちはその日のうちに東京に帰ることにしました。昌次はもうしばらく残るように言われて島で過ごします。しかし、数日後、昌次と紀子も東京へ帰ることにしました。紀子は別れを周吉に告げると、周吉は紀子を呼び止めました。
周吉は「あんたはいい人だねぇ」と紀子に告げます。とみこが倒れる前に上機嫌だったのは紀子に会ったからだと気付いたからでした。とみこの形見の時計を紀子に渡します。周吉は昌次が女々しくて情けない男だと思っていたが、それは母親似の優しさと気付いたと言いました。「昌次のことをよろしくお願いします」と周吉に頭を下げられ、紀子は涙を流しました。
帰りのフェリーで紀子は形見の時計を昌次に見せ、周吉が語った言葉を告げました。昌次は驚きますが、紀子が「本当に言った」と言うので、「へぇ。あの親父がねぇ」とつぶやきました。ひとりになった周吉を、近所の中学生・ユキが訪ねます。「東京の者は忙しいけぇの」と言う周吉の世話を焼き、犬の散歩に出かけました。瀬戸内海の穏やかな風景が映し出されて物語は幕を閉じます。
東京家族の魅力とは?
『東京家族』の魅力についての考察をまとめて紹介します。『東京家族』は日本アカデミー賞に12部門輝いた作品です。古い映画のリメイクでありながら高く評価された魅力はどこにあるのでしょうか?豪華なキャストや、時代を反映したあらすじのリメイク作品であることなど、ここでは『東京家族』という映画作品の魅力について詳しい考察をまとめました。
山田洋二が描くリアルな家族像
『東京家族』は『男はつらいよ』シリーズで知られる巨匠・山田洋二の監督作品です。元となったのは小津安二郎の『東京物語』ですが、長年に渡って時代ごとの家族を描いてきた山田洋二ならではのリアリティのある家族像が魅力と考察されています。例えば、とみこの死後に形見分けの話をする長女のセリフや、孫たちが無条件に可愛い存在とは描かれていないといった描写は、山田洋二らしさが現れていると考察されています。
豪華なキャスト
『東京家族』の魅力のひとつに豪華なキャストが挙げられています。『東京家族』は第37回日本アカデミー賞で12部門に輝く快挙を成し遂げました。主演男優賞の橋爪功、優秀主演女優賞の吉行和子、優秀助演男優賞の妻夫木聡、優秀助演女優賞の蒼井優といったキャストが高く評価されています。また、賞は受賞していないものの、西村まさ彦、中嶋朋子、夏川結衣の演技も評価されており、『家族はつらいよ』にも起用されています。
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各キャストの魅力を詳しく考察していきます。まずは主演の橋爪功です。橋爪功が演じた周吉は、不器用な古い日本の父親像を演じています。寡黙な性格をしていますが、妻や子供たちを愛する優しい性格です。初めは気難しさを感じた紀子もラストでは「感じのいい人」と表現していました。ベテラン俳優である橋爪功はリアリティのある日本の父親像を表現したと考察されています。
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続いて吉行和子について考察します。吉行和子が演じたとみこは、旦那を立てる古き日本の良き妻として描かれています。息子の昌次が甘えられる相手でありつつ、無気力な孫を嘆く一面もありました。旦那の事をよく気遣っているように、人を見る目があり、紀子ともすぐに仲良くなります。そんな良い母親を演じた吉行和子は、意外にも家事が苦手で子供もいません。違和感なく母親を表現する演技力が魅力であると考察されています。
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続いて、妻夫木聡について考察します。妻夫木聡が演じた昌次は舞台美術に関わる仕事をしています。周吉に将来を心配される一方、被災地にボランティア行くなど他人を気遣う優しさがあり、最終的には周吉も昌次の取柄を認めました。『東京物語』では昌次の役柄は戦死した扱いでした。『東京家族』では重要な人物であり、『東京物語』との違いが明確な人物を、妻夫木聡が巧みに演じたと考察されています。
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そして、蒼井優について考察します。蒼井優が演じた紀子は昌次の婚約者です。とみこはすぐに紀子の事を信頼し、周吉も紀子の優しさを褒めていました。しかし、紀子も昌次に愚痴を言うことがあり、決して聖人のような人物ではなく、普通の若い女性です。蒼井優の演技は紀子の優しさやリアリティを上手く表現していると考察されており、『東京家族』の最後では周吉の本心を聞く重要な登場人物でした。
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このように『東京家族』の豪華なキャストと、それぞれが演じた役割は『東京家族』という映画の魅力と考えられています。一方、制作の過程で、主要キャストが大幅に変更されたことも知られています。もともとは主演夫妻は菅原文太と市原悦子の予定であり、長女役は室井滋でした。東日本大震災が発生したことにより、脚本が大幅に変更され、それにともないキャストのスケジュールの都合などで変更になったのです。
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『東京家族』の成功によって『家族はつらいよ』シリーズが生まれています。シリーズ成功の影には紆余曲折を経て制作された『東京家族』と、変更後のキャストの演技が魅力的であり、高い評価を得たからと考察されていました。
時代を反映したリメイク
『東京家族』は前述のように小津安二郎の『東京物語』のリメイク作品です。山田洋二監督が「世界一の映画」と考えているのが『東京物語』でした。その『東京物語』のテーマをそのままに、東日本大震災や日本の未来への憂いを、あらすじに反映したリメイク作品に仕上がっていると考察されています。
『東京家族』では東日本大震災に関する描写がいくつか盛り込まれています。周吉が訪ねた旧友の妻の母が震災の被害で亡くなっています。また、『東京物語』では戦死したことになっていた次男・昌次は震災ボランティアで紀子と知り合ったという設定になっています。『東京家族』の中では周吉が日本の未来を憂うセリフもありました。こうした設定や描写は東日本大震災直後の世相を反映していると考察されています。
また、とみこの葬儀後、周吉がひとりで島に残ったことも、地域の助け合いなどを頼って生きるというメッセージ性があると考察されています。『東京家族』のラストシーンでは近所の中学生が少しも嫌な顔をせず、周吉の面倒を見ることが示されていました。役所も頼ると言っていることから、近所付き合いや自治体の協力への肯定的な描かれ方がされていると考察されています。
東京家族と東京物語を比較紹介!
前述しているように『東京家族』は『東京物語』のリメイク作品です。山田洋二監督が徹底的に真似したと語るように、大まかなあらすじから、登場人物の名前はもちろん、セリフの言い方や場面の見せ方まで小津安二郎の真似をしたと言われています。その一方、『東京物語』とは明確に違う部分もありました。ここでは『東京家族』と『東京物語』のふたつを比較し、その違いについて考察しています。
世の中に対する受け止め方の違い
『東京家族』では、日本の将来や若者への批判的な受け止め方が描かれていると考察されています。例えば、とみこは孫と公園に行った時、子供の内から将来を諦めている様子を見て嘆きました。また、ホテルの重要業員たちは、周吉ととみこが綺麗に部屋を使ったことに対し、最近の若い人はめちゃくちゃにすると愚痴をこぼしています。さらに、沼田と一緒に酔いつぶれた周吉はこの国はどこで間違ったのかと口にしました。
こうした『東京家族』の描写に対して、『東京物語』には社会批判的なセリフはあまりないと言われています。『東京物語』でも家族のすれ違いからばらばらに暮らしていく様が描かれていましたが、ただそのことを受け入れるような描かれ方であると考察されています。
登場人物の違い
『東京家族』と『東京物語』で大きく違う点は、次男・昌次の存在です。『東京物語』では戦死していましたが、『東京家族』では両親の観光案内するなど接点が多くありました。紀子が周吉に感謝されるという部分は同じですが、最終的に周吉と昌次のわだかまりが少しやわらぐというのは『東京家族』オリジナルのあらすじです。
また、『東京物語』には次女の京子という人物がいました。この人物は『東京家族』には出てきません。『東京物語』では京子がいたことにより、周吉の今後も問題無かったのですが、『東京家族』では独り身です。そのため、地域コミュニティとの関りが重要となるラストシーンになりました。
東京家族のロケ地や舞台を紹介!
『東京家族』の故郷のロケ地に選ばれたのは広島県豊田郡大崎上島町です。『東京物語』では尾道が舞台でしたが、未開発な風景の残る大崎上島町を山田洋二監督は選んだようです。周吉たちの住む家として撮影されたのは大崎上島町に実在する築100年の古民家だそうです。
とみこの遺灰を持ち帰った周吉を島民が迎える場面は木江天満港で撮影されました。そして、とみこの葬儀で使われたのは圓妙寺というお寺です。また、きのえ温泉ホテル清風館には山田洋二監督を筆頭に、キャスト陣のサイン色紙が飾られています。
東京家族のあらすじと魅力まとめ!
『東京家族』のあらすじや魅力についての考察をまとめました。『東京家族』は60年前の映画のリメイク作品でありながら、現代日本の家族について描かれた作品でした。日本アカデミー賞で称賛を受け、『家族はつらいよ』シリーズへと繋がっていきます。『東京家族』との違いを楽しめるとも言われているので、興味がある方は『東京家族』はもちろん、関連作品もぜひご覧ください。