エベレスト3Dという映画は実話?あらすじや感想・評価をネタバレ紹介!

映画「エベレスト3D」(2015年秋公開)は、1996年に実際に起きた「エベレスト大量遭難」に基づいて製作された、サバイバル・アドベンチャー・ドラマだ。撮影は「地球上で最も危険な場所」エベレストの現地で行われた(一部はイタリア・アルプスのドロミテで行われた)。その映像は、見るものに、エベレストの美しさとともにその場に居合わせているかのような圧倒的な臨場感で迫る。この記事では、映画のあらすじ、メンバーが織り成す人間ドラマ、国内外の感想・評価をたどり、映画「エベレスト3D」の魅力をネタバレ紹介する。

エベレスト3Dという映画は実話?あらすじや感想・評価をネタバレ紹介!のイメージ

目次

  1. エベレスト3Dという映画は実話?あらすじや感想もネタバレ紹介!
  2. エベレスト3Dの映画あらすじをネタバレ!
  3. 映画エベレスト3Dのメインキャストを紹介!
  4. エベレスト3Dという映画は実話だった?
  5. エベレスト3Dの映画を見た人の感想・評価を紹介!
  6. エベレスト3Dという映画は紛れもなく実話だった!

エベレスト3Dという映画は実話?あらすじや感想もネタバレ紹介!

世界最高峰エベレストで1996年に起きた大量遭難事故を「ザ・ディープ」「2ガンズ」などのバルタザール・コルマウクル監督が映画化。脚本はウィリアム・ニコルソン、サイモン・ボーファイ。標高8,000mを超えるデスゾーンで生と死の境に追い込まれた遠征隊のサバイバルを、エベレスト現地で撮影された迫力の3D映像で描く(2015年日本公開)。

キャストには「ターミネーター:新起動 ジェニシス」のジェイソン・クラークをはじめ、ジェイク・ギレンホール、ジョシュ・ブローリン、ジョン・ホークス、ヘレン・ウィルソン、キーラ・ナイトレイなど実力派が顔をそろえる。

バルタザール・コルマウクル監督は、本作品の目的を次のように語っている。「『ザ・ディープ』(2012)は、実話(1984年アイスランドで起きた海難事故)を映画化し、人間と自然の戦い(極寒の海と海中の乗組員)を描いたが、本作品でそのテーマを一段上げて取り組みたかった。ハリウッド作品ではあるが、よく知られた実話であり、ストーリーの変更を余儀なくされることもないので真実を描けると考えた。」

実話映画「エベレスト3D」は映像の美しさや迫力だけでも十分楽しめるが、ご覧になる方により楽しんでいただけるよう、あらすじ(ネタバレ!)、メインキャスト、本作の魅力(実話との関係・現地撮影の様子・キャスト苦労話など)、国内外の感想・評価、記事まとめ、といった内容で順番にご紹介していく。

エベレスト3Dの映画あらすじをネタバレ!

あらすじは、前半・後半の2部構成(ネタバレ注意)

実話映画「エベレスト3D」は、ストーリー後半(頂上アタック)の中で生死を分ける決断と行動が、それぞれの登場人物ごとに行われるが、その伏線はストーリー前半にしっかりと敷かれている。その伏線をあらすじで抑えておくことは、この作品をより深く理解する助けとなる(ネタバレには注意!)。

そのため、あらすじを前半・後半の2つに分け、あらすじの前半を使って、2つの遠征隊リーダーの複雑な関係や顧客の登頂の目的など、ストーリー後半で次々と行われる「決断・行動」の意味を理解する「伏線」を紹介する(ネタバレには注意!)。

この子が生まれる前に戻ってきて(あらすじ前半スタート、ネタバレ!)

ニュージーランドの山岳ガイド会社「アドベンチャー・コンサルタンツ(AC)」を率いるロブ・ホールは、世界最高峰エベレスト(8848m)に顧客8人とともに登る遠征にでかけるため、クライストチャーチ空港から旅立とうとしていた。身重の妻ジャン・ホールは、内心不安を抱えながらも「子供が生まれる前に元気で帰ってきて」と、夫ロブを送り出す。ロブは「必ず帰る」と約束し元気に旅立つ。

アドベンチャー・コンサルタンツ(AC)隊のメンバーが、カトマンズに集結

カトマンズには、エベレスト・ベースキャンプ設営のため先に出発したチーム・マネージャーのヘレン・ウィルトンなどを除き、AC隊の顧客やガイドが一同に集結する。AC隊の顧客はベック・ウェザース(病理学者)、ダグ・ハンセン(郵便局員)、ジョン・クラカワー(山岳コラムニスト)、日本人女性登山家難波康子を始めとする8名である。

どうして言葉で説明しないのか。あまりに過酷だから

カトマンズのホテルで、AC隊ガイド・リーダーのロブは、偉人達の伝説に包まれたエベレストで「言葉で表現できない体験を提供する」と皆に約束する。そして言葉で表現できない理由を「あまりに過酷だから」と。重要なのは猛獣エベレストに「登って降りてくること」の1点のみだと強調し、AC隊ガイドがそれを必ずサポートするとベックを始めとする顧客たちに約束する。

エベレストの空の玄関口、ルクラ空港に降り立つ

遠征メンバーを載せカトマンズを飛び立ったヘリは、世界で最も高度な操縦技術が要求される空港の1つと言われるルクラ空港(テンジン・ヒラリー空港)に到着する。空港自体が今回のエベレスト遠征の難しさを予感させる。

無事おりてくるまでが、エベレストのガイド料金だ

ベースキャンプまで徒歩で行くエレベスト街道の途中にあるトゥクラで、自分の隊の若いシェルパ、テンジンが氷河で滑落事故を起こしたと聞き、日頃からシェルパを大事にしてきたロブはとても心を痛める。折しも「どんなに疲れていても眼の前に頂上が見えたら無理しても登る」というベックの言葉に、「エベレストのガイド料金は登頂から無事降りて来るまでを含んでいるんだ」と語気を強めて念押しする。

ニュージーランドの誰かのせいで、エベレストは大混雑だ

ベースキャンプでロブはアメリカの山岳ガイド会社「マウンテン・マッドネス(MM)」を率いるスコット・フィッシャーと再開する。スコットは笑顔だが「ニュージーランドの誰かがガイド付き登山を始めたおかげで大混雑だ」ときついジョークをロブにみまう。二人の間にはジョン・クラカワー(著名な山岳コラムニスト)獲得をめぐり確執が生まれていた。ジョンはAC隊に参加したが、ロブは「ジョン自らが決めたことだ」と説明する。

登頂を阻む最大の敵は酸素の欠乏だ

1ヶ月の高度順応トレーニングを始めるにあたり、AC隊の医師キャロライン・マッケンジーは登頂を阻む最大の敵は「酸素欠乏」で、不足すると命をも左右しかねない脳浮腫や肺気腫をもたらすとメンバーに警告する。ロブは、我々ガイドがしっかりとサポートするので心配はいらないと顧客達を安心させる。

「アイスフォール」は19人が命を落とした危険な難所だ

「トレーニングコース最大の難関はアイスフォールで今までに19人が命を落としている」とロブは皆に注意をよびかける。実際ジョン・クラカワーが足を滑らしクレパスに転落しそうになる。

「ヤスコ大丈夫か」「ええ、なんとか(大丈夫)」

すでに7大陸最高峰のうち6つの登頂を果たしていた難波康子も、今までとは違いエベレストではさすがに苦労する。他のメンバーからも「ヤスコ、大丈夫か」と声をかけられる。

トレーニング・ルートは大混雑

トレーニングはロブやアンディ・ハリス(ハロルド)などガイド達のサポートで順調に進むが「渋滞」という新たな問題が発生する。AC隊をきっかけに起きた世界的な商業登山ブームや、5月の限られた時期のみ登頂可能といったことが原因で、以前に比べてエベレスト登山者が大幅に増えていた。

渋滞はごめんだ。並ぶのに6万5千ドルも払った訳じゃない

やはり問題は現実となる。アイスフォールのクレパスを渡る手前で渋滞が発生したのだ。極寒の中しばらく待たされ身体が冷え切った状態でハシゴを渡ろうとしたベックは、ハシゴを踏み外して宙吊りとなる。ロブに助けられ一命を取り止めるが「並ぶために6万5千ドルも払ったのではない」とロブに怒りをぶちまける。

まさか組もうということか

ロブはベースキャンプ全体をまとめる役割も担っているため事態を憂慮し、混雑緩和のため各隊に登頂日の調整を申し出るが、南アフリカ隊の強硬な反対に会い調整は不調に終わる。事態を憂慮したロブは登頂をめぐり競争関係に有るMM隊のスコットに2つの隊の協力を申し出る。隊のガイドスタイルが違うスコットはためらうものの協力を受け入れる。

「俺みたいな平凡な男でもでっかい夢を追えるのだ」と、手伝ってくれた子どもたちに伝えたい

トレーニングを無事終えたAC隊メンバーに対し、山岳コラムニスト、ジョンが「なぜ山に登るのか」と問いかける。「そこに山があるからだ」など皆の普通の反応にダグ・ハンセン(郵便局員)だけが違う反応を示す。「『俺みたいな平凡な男でもでっかい夢を追えるのだ』と手伝ってくれた子ども達に伝えたい」と答える。彼のエベレスト登頂資金集めを手伝ってくれた子ども達に思いを馳せたものだ。ロブは「いい答えだ」とうなずく。

いつか君と俺と「俺たちのサラ」で山に登ろう

登頂を目前にひかえたロブに妻ジャンから「女の子とわかった」とFAXが入り、大きな喜びに包まれたロブはジャンに電話をかける。ロブはジャンに「君と俺と"俺たちのサラ"でいつか山に登ろう」と伝える。ジャンは「ええー、サラ?」とすでに名前まで決めていたロブに驚き喜ぶが、一方では喜びと不安が入り混じった複雑な心境でその夜を過ごす。

この嵐では引き返すべきだ。いやロブが待つなら待つ

ロブ率いるAC隊は登頂目指しベースキャンプを出るが、登頂拠点と成るキャンプ4に入る直前から猛烈な嵐にみまわれる。テントすら吹き飛ばしかねない猛烈な嵐に、同時にキャンプ4に入ったMM隊のガイド、アナトニー・ブクレーエフは「引き上げるべきだ」とスコットに迫る。スコットはすでに体調不良の顧客サポートで体力をかなり消耗していたが、それまでの協力関係を重んじ「ロブが待つと言うなら待つ」と行動をともにする。

嵐は収まった。頂上で会おう(ここからは、あらすじ後半。ネタバレ!)

5/10未明登頂時刻ぎりぎりになって、キャンプ4のあるサウスコル付近はそれまでの嵐が嘘のように静まる。星が顔を覗かしている。「神に愛されているんだ」とロブは喜び「30分後に出発、午後2時に下山」と登頂隊の皆に伝える。いよいよ8848mの頂上目指しロブたちの最終挑戦が始まる。

これでは遅すぎる。もう少し早く歩けないか

晴れたものの強風に一行は悩まされる。バルコニー付近(8410m)でAM4:30、出発からすでに4時間が経過している。早く進みたいが強風に阻まれ思うように進めない。目の不調を訴えるベックに対しロブは「引き返せ」というがベックは「降りない」と言い張る。ロブは条件付きでベックの言い分を認める。

ヒラリーステップに固定ロープがない!

最大の難所ヒラリーステップで、事前に張ってあるはずの新しい固定ロープが何故かないことが判明する。一行は足止めを食い貴重な酸素をどんどん消化してしまう。ガイドのハロルドたちが何とか張り直すがこの時点で予定からすでに1時間以上遅れている。ジョン(山岳コラムニスト)は「酸素が残り少ないので順番を繰り上げてほしい」と頼み、先に登り始める。

世界の頂上だ。やったぞ

AC隊マネージャーのヘレンは、ベースキャンプで顧客の登頂者が一人も出ない事態を心配したが、ジョン・クラカワー(AC隊顧客)、ハロルド(AC隊ガイド)、アナトリー・ブクレーエフ(MM隊ガイド)の3人が真っ先に登頂する。続いて予定より遅れてロブ、難波康子(AC隊顧客)、MM隊メンバーが登頂する。皆は頂上で抱き合い大いに喜ぶ。

スコット・フィッシャー(MM隊リーダー)も、疲労困ぱいしながらもなんとか頂上に到達しロブと喜びを分かち合う。しかし体調が悪くてすぐに下山できずその場に座り込んでしまう。

ダグ、頂上だぞ

ロブがスコットとともに下山するころ、ダグはヒラリーステップをやっと乗越え頂上まで後少しの距離を必死で登っていた。ダグと出会ったロブは予定時刻を大幅に過ぎているので「残念だが引き返せ」というが、ダグは「いやだ。このまま登らせてくれ」と必死に懇願する。「来年はないんだ」というダグの必死の願いにロブはダグと一緒に再び頂上までたどり着く。しかし時刻は午後4時で大幅に予定時刻はすぎていた。

頂上にまだ人が残っているぞ

午後4時ごろ頂上はまだ晴れていたが、ベースキャンプ付近には嵐が近づいていた。別の遠征隊にガイドとして加わっていたAC隊のガイド、ガイ・コターはまだ頂上付近に人が残っているのを見て、ベースキャンプのヘレンに連絡を入れる。その頃、頂上からキャンプ4までの間に、AC隊・MM隊あわせまだ13人が残っていた。

酸素が足りなくなる。酸素を届けねば

支援のためベースキャンプに戻ってきたガイ・コター(AC隊ガイド)を加え、ヘレンたちは必死の救出を試みる。他の遠征隊も事態を知って支援に駆けつけ救助隊を結成する。しかし、天候の急変で支援隊は思うように動けない。

ダグが動けない

酸素と体力を使い果たしたダグは、ヒラリーステップ(標高8700m)の上でほとんど動けなくなる。ガイは、動けないダグを置いて一人で降りるようにロブにすすめるが、彼はダグを一人置いてはいけないとつっぱねる。ロブは、ダグを何とかヒラリーステップの下まで動かそうとするがその最中に猛烈な嵐に見舞われる。

ロブはダグを何とか下までは降ろし酸素を取りに行こうとした矢先、ダグはカラビナの操作を誤り(?)視界から消えてしまう。ガイからの連絡で、下山途中から引き返し、酸素を持って自分を助けにきてくれたガイドのアンディ・ハリス(ハロルド)も酸素不足のため失ってしまう。

酸素がない。寒さと疲労で動けない。

その頃キャンプ4付近も猛烈な嵐に襲われる。ベック、難波康子ほか下山中の8人は、バルコニー(キャンプ4まで数百メートルの地点)で前が全く見えない猛烈な嵐に遭遇する。酸素を使い果たしたメンバーは、寒さに加え疲労と酸素不足で次々に倒れ動けなくなる。キャンプに帰っていたメンバー(ジョン・クラカワーほか数名)は疲労で動けない。アントニー・ブクレーエフ(MM隊ガイド)は一人救出にむかう。

えっ! ベックが戻ってきた

ベックは、スチュアート・ハッチスン(AC隊医師)により、ヤスコとともに息はあるが助かる見込みがないないと判断され、サウスコルに放置されるが、翌11日に自力で立ち上がりキャンプ4まで自力で戻る。ヤスコは戻ることが叶わなかった。

キャンプ4に戻って酸素を取ってきてくれ

スコットは体力を使い果たし、一緒に下山していたMM隊シェルパ頭、ロプサンに酸素ボンベを持ってくるように頼んだあと、そこで力尽きたかのように動けなくなる。アナトリー・ブクレーエフ(MM隊ガイド)が駆けつけた時にはすでに遅かった。

ロブ動くのよ!

ロブは、力つきたダグと自分を助けに来たハロルドの両方を失い、自分自身も力尽きようとするが、ジャンの必死の呼びかけで何とか最後の力を振り絞り動こうとする。しかし、AC隊のシェルパ頭、アンドルジェたちが酸素を持ちロブの救出に向かうが、嵐で立ち往生し退却を余儀なくされる。

凍傷は私が治してあげる。早く帰ってきて

最後の力を出させるため、ヘレンとガイはロブの妻ジャンに再び衛星電話をつなぎロブと話をさせる。ジャンの声に一度は力が湧いたロブだったが、二度目の今回ばかりはさすがに力が湧いてこなかった。登山家でも有るジャンは現在の状況はわかりすぎるほどわかっていたが「声が元気そう」と元気づける…。

ロブは今もヒマラヤの山々を眺めている

ロブは「ジャンごめん。君とサラに会えそうにない」と謝る。ジャンは、ロブの言葉通り生まれた娘に「サラ」と名付けた。

映画エベレスト3Dのメインキャストを紹介!

ロブ・ホール役/ジェイソン・クラーク

ジェイソン・クラークは1979年7月17日に豪クイーンズランド州ウィントンで生まれた。米TVシリーズ「ブラザーフッド」(2006~2008)で注目を浴びた。映画では「ゼロ・ダーク・サーティ」(2012)、「猿の惑星:新世紀(ライジング)」(2014)や「ターミネーター:新起動 ジェニシス」(2015)といった人気シリーズに出演。最新作は、オスカー女優ヘレン・ミランと共演の「ウィンチェスターハウス」(2018)ほか。

スコット・フィッシャー役/ジェイク・ギレンホール

ジェイク・ゲイリーホールは、米カリフォルニア州ロサンジェルス出身。1999年、初主演映画「遠い空の向こうに」で一躍ハリウッド注目の存在となる。「ブロークバック・マウンテン」(2005)でアカデミー助演男優賞にノミネートされる。ボクサーを演じた「サウスポー」(2015)では21キロ増量するなど、徹底した役づくりにも定評がある。最新作は「ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた」(2018)など。

ベック・ウェザース役/ジョシュ・ブローリン

アメリカ/ロサンゼルス出身、1968年2月12日生まれ。1985年の大ヒット作「グーニーズ」で映画デビューし、人気TVシリーズ「ヤングライダーズ」(1989~1992)にレギュラー出演。第43代米大統領ジョージ・W・ブッシュの伝記映画「ブッシュ」(08)では主演を務め、「ミルク」(2008)でアカデミー助演男優賞に初ノミネートを果たす。最新作は「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」(2018)
 

ダグ・ハンセン役/ジョン・ホークス

アメリカ/ミネソタ州出身 1959年9月11日生まれ。劇団を立ち上げる。80年代中頃から映画に出演し、カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)受賞作「君とボクの虹色の世界」(2005)で主演を務める。2010年のサンダンス映画祭グランプリ作品「Winter's Bone」でアカデミー助演男優賞にノミネートされた。最新作はスリー・ビルボード(2018)。
 

ヘレン・ウィルトン役/エミリー・ワトソン

イギリス/ロンドン出身 1967年1月14日生まれ。スクリーンデビュー作の「奇跡の海」(1996)でアカデミー主演女優賞にノミネート。伝記映画「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」(1998)では、難病に冒されたチェリストを演じアカデミー主演女優賞候補に。最新作は「リトル・ボーイ 小さなボクと戦争」
(2018)「追想」(2018)。

ジャン・ホール役/キーラ・ナイトレイ

イギリス/ロンドン出身 1985年3月22日生まれ。1999年「スター・ウォーズ エピソード1 」で、パドメ・アミダラの影武者役。2003年には「パイレーツ・オブ・カリビアン」のヒロイン役エリザベスに大抜てき。「プライドと偏見」(2005)で主人公エリザベス・ベネットを演じアカデミー主演女優賞とゴールデングローブ賞の最優秀主演女優賞にノミネートされる。最新作は「くるみ割り人形と秘密の王国」(2018)。

ガイ・コター役/サム・ワーシントン

オーストラリア/パース出身 1976年8月2日生まれ。2000年にオーストラリア映画「Bootmen」で映画デビュー。2007年、ジェームズ・キャメロン監督直々の指名でSF超大作「アバター」の主演に抜擢され、一躍ハリウッドスターの仲間入りを果たす。他に「ターミネーター4」(2009)、「タイタンの戦い」(2010)など。最新作は「ザ・ボディガード」(2017)

難波康子役/森尚子

愛知県名古屋市出身。父親の仕事の関係で4歳の時に家族で渡米し12歳で英ロンドンに移住。17歳の時にミュージカル「ミス・サイゴン」の主役に抜てきされ、日本人女優で初めてウエスト・エンドの舞台で主演を務める。テレビ映画「ジョン・レノンの魂 アーティストへの脱皮 苦悩の時代」(2010)ではオノ・ヨーコを演じる。本作「エベレスト3D」(2015)では7大陸制覇をねらう登山家・難波康子を演じた。

監督/バルタザール・コルマウクル

アイスランド/レイキャビク出身 1966年2月27日生まれ。2000年、映画監督デビュー作「101 Reykjavik(原題)」では製作・脚本・出演も務め、トロント国際映画祭のディスカバリー賞を受賞。2012「ザ・ディープ」(2012)「2ガンズ」(2013)と本作「エベレスト3D」(2015)は、ぎりぎりの局面を展開するという共通の要素を持つ。

吹替版は豪華声優陣

吹替版は、ジェイソン・クラーク演じる、ツアー参加者の命を預かる隊長のロブ役に、海外ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のキーファー・サザーランド演じるジャック・バウアー役でおなじみの小山力也を当てるなど豪華な顔ぶれ。写真は、上段左より、小山力也、山寺宏一、堀内賢雄、杉田智和、弓場沙織、下段左より、佐々木優子、森田順平、青山穣、森尚子、石丸謙二郎。

エベレスト3Dという映画は実話だった?

エベレスト3D映画化のもととなった「1996年エベレスト大量遭難」とは(ネタバレ!)

「1996年エベレスト大量遭難」は、ロブ・ホール率いるニュージーランドの山岳ガイド会社「アドベンチャー・コンサルタンツ」及びスコット・フィッシャー率いるアメリカの山岳ガイド会社「マウンテン・マッドネス」の2隊が、エベレスト登頂を試みた1996年5月10日にガイドを含む5名、その後別さらに別ルートで3名合計8名の死者が出た遭難を指す。遭難の経緯や結果について詳しく知りたい方は下記リンクWikipediaを参照願いたい。

AC隊8名の顧客で登頂できたのは、ジョン・クラカワー(山岳コラムニスト)、ダグ・ハンセン(郵便局員、写真中央右向き)、難波康子(女性登山家)3名のみ。ただしキャンプ4へ帰還できたのはジョンのみで、他2名は下山途中に遭難し帰還できず。顧客残り5名は登頂を断念し下山。ガイド3名は登頂を果たすが、リーダーのロブ・ホールとアンディ・ハリス(ハロルド)の2名は遭難し帰還できずという痛ましい結果となった。

ロブ・ホールとは

ロブ・ホールは、友人ゲイリー・ボールと共同で企画した「世界7大陸の最高峰を7ヶ月間で制覇する」といういわゆる「セブンサミッツ」の成功で一躍有名に成るが、常にスポンサーを探し続けなければならないという呪縛から逃れるため、山への挑戦に新しいスタイルを考え出した。「資金はあるが世界の高峰に登る技量・経験を有しない層」を新しい顧客とし、そのガイドとなることにしたのである。

アドベンチャー・コンサルタンツ社とは

当時、それまでの専門登山家による個人的チャレンジではなく、プロのガイド会社が一定の料金で登頂希望者を公募し、専門の登山家でなくても世界の名峰への登頂を可能にするという点が、高額で有ってもそれなりに負担が可能な層に人気を呼び、徐々にブームとなりつつ合った。その先鞭をつけたのが、ロブ・ホール率いるアドベンチャー・コンサルタンツ社(ニュージーランド)である。

アドベンチャー・コンサルタンツ社その後

1996年のエベレストで、サブガイドの立場でロブ・ホール救出にあたるも願いが叶わなかったガイ・コターは、アドベンチャー・コンサルタンツ社を買い取る形でロブ・ホールの意思を継いでいる。本作では、アドバイザーもつとめている。

After Rob Hall was lost in the tragic events on Everest in 1996, Guy purchased Adventure Consultants from Rob's wife Jan becoming Director and CEO. 

 

1996年エベレストでの痛ましい出来事でロブ・ホールを失ったあと、ガイ・コターはロブ夫人ジャンから「アドベンチャー・コンサルタンツ社」を買い取り最高責任者に就任いたしました。※日本語訳は筆者によるもの

難波康子とロブ・ホールの出会い

女性登山家難波康子は、1984年南米最高峰「アコンカグア」に登頂を果たしている。その登頂のガイドが、ヨーロッパ三大北壁冬季単独登頂で世界的に知られた登山家・長谷川恒男だった。その長谷川は1992年に遭難死してしまい、この後彼女が1993年南極大陸最高峰「ヴィンソン・マッシフ」登頂時にガイドとして頼ったのがアドベンチャー・コンサルタンツ社のロブ・ホールだった。

エベレスト大量遭難を記述したドキュメント(ネタバレ!)

この遭難に関するドキュメントは、当時の新聞や雑誌などにも記事が存在するが、この遠征に加わり生き残った当事者3人の書籍が詳しく、遠征隊のなかの立ち位置(顧客とガイド)の違いから見解の相違はあるものの、当時の状況を知ることができる(ネタバレ注意)。ただし真実については亡くなった著者もいるため真偽の程が定かでない事柄もある。

『空へ 悪夢のエベレスト』(原題:INTO THIN AIR)は、アメリカの山岳メディア「アウトサイド」紙のコラムニスト(当時)であった著者が、帰国5週間後にアウトサイド9月号に発表した記事を元に書き直した改訂版である。改訂版は、初稿への遺族・友人からの反論・異論に対する回答や『デス・ゾーン』によるアナトリー・ブクレーエフの反論へのコメントを含んでいる。事実経過・人間関係・背景がかなり詳細に書かれている。

「生還」(原題 LEFT FOR DEAD)は「奇跡の生還」を果たしたベック・ウェザース著。「空へ」と同じ顧客の観点だが、エベレスト登頂に関する内容は3分の1ほどで、それ以外は「山に入れ込んだ原因」「山が原因で発生した家族との疎遠関係がこの遭難を契機に修復できたこと」などが記されており「体の一部を失ったが更に大切なものを手にいれた」という伝記的内容。バルタザール監督は「映画の原素材のひとつ」と述べている。

『デスゾーン』(原題 THE CLIMB)は「空へ」のなかで著者ジョン・クラカワからガイドとしての行動を批判されたアナトリー・ブクレーエフが、いわば「空へ」の反論書として出した著書。「空へ」とは事実関係や行動規範に対する考え方で対立点が多い。1997年、ブクレーエフはダビドA ソゥレス記念賞をアメリカン・アルペン・クラブから受賞した。ただ同年冬のアンナプルナ(ネパール)に登頂中、雪崩に押し流され死亡する。

実話映画「エベレスト3D」の原素材はどこから得たのか。映画とこの災害を記述した著書との関係は?

バルタザール・コルマウクル監督/実話という点に関し「エベレスト災害に関する様々な書籍と当時の各種録音記録に基づいている。当初は、生き残った登山家ベック・ウェザース氏の"Left for Dead"(邦題:生還)を参考にした。ジョン・クラカワー氏の"Into Thin Air"(邦題:空へ)は原資料として使っていない。」「より公平に全体を見ようとした。」(2015年9月のエンターテインメント・ウィークリーとのインタビュー)

2015.9.25/ジョン・クラカワー氏/確かに実話だが「エベレスト3D制作に関して意見を聞かれていない。映画の中で自分の役を演じたマイケル・ケリー氏とは、撮影中会うこともなくまた映画のセットにも招かれていない」(ロス・アンゼルス・タイムズとのインタビュー)。バルタザール・コルマウクル監督は「撮影には災害時現地にいたガイ・コター氏を含め4人のアドバイザーに意見を求めた」とロス・アンゼルス・タイムズに返答。

映画「エベレスト3D」はどのように撮影されたのか

実話映画「エベレスト3D」は実際に現地エベレストのベースキャンプで撮影された。ルクラからは実際にトレッキングして現地入りしている。ヘリが飛べないような高所シーンはイタリア・アルプスのドロミテで撮影。連日-30℃の極寒と雪崩に悩まされる。クレパスを渡る危険なシーンなど一部グリーンバック合成はあるが、美しい映像美とリアル感満点の映像と成っている。特に3D映像は自分が現地にいるかのような臨場感をもたらす。

ロブが最終的にとどまることになるヒラリーステップのシーン。バルタザール・コルマウクル監督(左)とロブ・ホール役のジェイソン・クラーク(右)。急斜面でのリアルな演出。

ルクラからエレベストのベースキャンプまでのトレッキング時の撮影。場所はドゥードウ川にかかるとてつもない吊橋。キャストもスタッフも全員トレッキングで現地入り。

サルバトーレ映像監督(左)とバルタザール監督(右)。監督、映像ディレクターなど撮影スタッフたちも極寒の山岳現場で指揮を取った

ヘリで器材を毎日空輸し、高所・急斜面での現地撮影に臨む。キャスト・スタッフたちも、キャンプと高所に有る撮影現場との間をヘリで数知れず往復した。

エレベストでの映像第2ユニット、シェルパの動きをとらえる。キャストが登場しないシーン撮影にも多くのシェルパやスタッフが動員された。

映画「エベレスト3D」の俳優陣やスタッフは撮影にどのように臨んだのか

製作者のディビッド・ブリーシャーズは語る。「ルクラからベースキャンプまでトレッキングに2週間。その間、5tにもなる器材を運んでくれるのはシェルパ。彼ら抜きに撮影はありえない。我々の撮影に来てくれたのはクンブと呼ばれる農村部からきたシェルパ。伝統と歴史をもつ彼らに敬意をあらわし、山岳以外での撮影にも彼らを招待した。」

ジェイソン・クラーク(ロブ・ホール役)やジェイク・ギレンホール(スコット・フィッシャー役)は、酸素の薄い高所での撮影の苦労を語る。「自分の荷物はすべて自分で運んだし移動もヘリ以外はすべて歩きだった」、「高所での体調維持も大変だった」と。

スコット・フィシャーを演じたジェイク・ギレンホールは、役作りのため実際に撮影前にスコットの子供にあってその人間像をつかんだ、とメイキングビデオのインタビューで答えている。('Jake Gyllenhaal On-Set Everest Interview' YouTube chennel 'Film and TV Now')

森尚子さん(難波康子役)/高度順応のトレーニングで気圧を落とすタンクに入った。難波さんの人柄については、事故時の登山のガイド役で映画「エベレスト3D」のアドバイザー、ガイ・コター氏に話を聞いたり、難波さんの日記やご主人宛てのファクスを読んだ。スタミナをつけるため、大きなバックパックに30キロを優に超えるダンベルを入れて坂や山・丘を長時間歩いた。実際にルクラからエベレストまでトレッキングした。

エベレスト3Dの映画を見た人の感想・評価を紹介!

国内の感想・評価(ネタバレ)

国内は、プロとしての登山家の評価が特に高い。また映像美や迫力がすごいとの感想が非常に多い。一方、前半部分で張った伏線が遭難という事態の進展においつかず、何故そんな決断をするのかわかりにくい、という声があることも事実。そこは、あらすじ部分の前半を使って後半への伏線を書いたつもりなので、注目点として読んでいただくのもいいかと考える(ネタバレ注意)。他に経営者などいわゆるプロからの感想も紹介する。

2016.3.6映画.com記事/野口健氏感想/このエベレスト3Dの試写会を観た日は朝方まで寝られなかった。エベレストで何人もの死を目にしてきたが、その時、僕が見たそのものが映画の中で描かれていた。自分の中で封印してきた記憶の扉が開かれてしまったような。それだけリアルだ。エベレストを体感してみたい皆さんにはお勧め。

「テキストに登場した登山隊では判断を100%リーダーに委ねたが、そうすべきなのか、それとも他の副官や登山者にも意思決定にかかわらせるべきか」という問いに参加者の考えるリーダー像が割れ議論は白熱していきました。リーダーとして完全に自己判断に委ねるべきという意見もあれば、みんなの意見に耳を傾けられるほうがいいという意見もありました。

(中略)完璧な仕組みはなく、できるだけ完全な仕組みを作る努力をリーダーはするべきであり、最終決断はリーダーがするべきだが、周りの人の意見を聞いて議論を起こすべきであり、周りの人の意見を聞くには、リーダーの人間力と胆力がとても大事だと力説されたのが印象的でした。

※この感想は、新浪剛史氏による2016.11.12 KIP Forum “リーダーシップについて(ハーバードビジネススクールでのケーススタディをもとに)”への出席者レポートから引用

国外の感想・評価(ネタバレ)

海外も登山家からの評価が高く、また映像美や迫力についての評価も圧倒的に高い。しかし、実話なのにストリーが映像負けしている、映像が見事に際立った映画だがキャラクターは目立たない、といった感想も一部に見受けられる。この辺は国内と似ているようだ。

IMDb.comの評価は、7.1/10で総じて高い。国内と同様、映像自体を評価する意見が多いが、実話としてみた場合考えさせるような感想もある。'No good guys, no bad guys, just the facts as they are known'(いいやつも悪いやつもない。まさしく彼らが知っている数だけの真実がそこにある)。

セブンサミッツ(世界7大陸制覇)の女性登山家で、ニューヨーク・タイムズの著名コラムニストであるアリソン・レヴィン氏は、2015年09月11日フォーチュン紙への寄稿で「エベレスト3Dはエベレスト登山の詳細を、きちんと余すところなく捉えた新しい映画だ。」と実話映画として高く評価し、また「真のリーダシップとはどうあるべきかを学ぶことができる。」と感想を述べている

2015.09.24/登山家・製作者ディビッド・ブリーシャーズ(写真右)/彼は次の様な感想を述べた。「映画自体はエモーショナルでコンピュータ処理も素晴らしい。しかし実話映画として観て常に頭に浮かぶのは『ロブの技量からみて、何故あんな遅い時間での登頂を自ら許してしまったのか』ということ。それがどうしても腑に落ちない」。(写真左:Ang Phula Sherpa/シェルパ、アン・ドルジェ役、写真中:ベック・ウェザース本人)

エベレスト3Dという映画は紛れもなく実話だった!

実話を題材にした映画「エベレスト3D」の見方、見え方

「エベレスト3D」は現在ブルーレイ・DVD・レンタル(アマゾン)で視聴が可能。実話映画なので、できれば前に挙げた著作3作のうちどれかを合わせて読むことをおすすめする。ビデオを観る前でも観た後でもかまわない(事前に観る場合はネタバレに注意)。映画の背景や登場人物のキャラクターがよくわかり、この人はここでなぜこういう行動をするのかのヒントが得られる。

この映画は、観る人が何を期待するか、観る人の立場が何であるかで大きくその感想・評価は分かれる。実話を元にした映画であるだけになおさらだ。プロの登山家であれば「登頂可否判断」、経営者・ビジネスパースンであれば「リーダーシップ」「組織の安全や危機管理」、主婦であれば「夫婦の有りかた」などにその主な関心が向くだろう。その結果それぞれの立場で感想・評価も自ずと違ってくる。「答えはひとつではない」のだ。

「エベレスト3D」をより楽しむために

NHKグレートサミッツ取材班による世界初のフルハイビジョンカメラ撮影のドキュメント「世界最高峰エベレストを撮る」(Amazon)。撮影は、エベレスト3D撮影の3年前2011年。FHDによる映像美が素晴らしいが「エベレスト3D」に登場する、アイスフォール、キャンプ、サウスコル、ヒラリーステップなどの位置関係がとても良くわかる。NHKオンデマンドでは、2018年12月28日までならそのダイジェスト版を観る事ができる。

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