十二人の怒れる男(映画)のあらすじを解説!脚本や演出の感想・考察まとめ

陪審員制度を取り上げた「十二人の怒れる男」という映画があるのはご存知でしょうか。「十二人の怒れる男」は、陪審員の話し合いという難しい内容をシンプルな脚本と構図でわかりやすくしています。「十二人の怒れる男」は法廷サスペンス映画の先駆けとしてその後の映画界に多大な影響を会立てています。「十二人の怒れる男」のあらすじのネタバレ解説とリメイクされた作品、感想のまとめを一気にネタバレ解説します。

十二人の怒れる男(映画)のあらすじを解説!脚本や演出の感想・考察まとめのイメージ

目次

  1. 映画十二人の怒れる男(1957)のあらすじを解説!脚本や演出の感想や考察もあわせて紹介
  2. 映画十二人の怒れる男(1957)とは?
  3. 十二人の怒れる男のあらすじを解説!
  4. 十二人の怒れる男の脚本や演出について感想・考察を紹介!
  5. 十二人の怒れる男は様々なバリエーションが!リメイクやロシア版を紹介!
  6. 十二人の怒れる男についてのまとめ!

映画十二人の怒れる男(1957)のあらすじを解説!脚本や演出の感想や考察もあわせて紹介

日本で裁判員制度が始まってから、まもなく10年が経過します。法律の知識がない一般市民が裁判に参加し、判決に影響を与えるというこの制度ですが、選ばれた方は困難に直面することは想像に難くありません。陪審員制度先進国のアメリカで、陪審員をとりあげた映画があるのはご存知でしょうか。

1957年に制作された「十二人の怒れる男」は、陪審員に選ばれた12人の男たちが、有罪と思われた事件の証言を議論し合い、無罪という評決へたどり着く様を描いた法廷サスペンス映画です。「十二人の怒れる男」のあらすじを解説し、脚本の感想や考察もあわせてご紹介します。

映画十二人の怒れる男(1957)とは?

映画「十二人の怒れる男」は、1957年にアメリカで製作されました。もともとは、1954年放送されたテレビドラマをリメイクしたものになります。上映時間は、約90分その間、ほとんどの舞台は話し合いが行われる密室になります。映画「十二人の怒れる男」の監督は、「狼たちの午後」「ネットワーク」で有名なシドニー・ルメットです。

「十二人の怒れる男」は、1957年にベルリン国際映画祭の最優秀作品に贈られる金熊賞を受賞しています。その他にも、アカデミー賞の監督賞、脚色賞など数多くの賞レーズにノミネートされました。「十二人の怒れる男」の出演者ですが、12人の陪審員にヘンリー・フォンダ、マーティン・バルサム、ジョン・フィードラーなどが名を連ねます。

十二人の怒れる男のあらすじを解説!

選ばれし12人の陪審員たち

あらすじ解説に入る前に、「十二人の怒れる男」で重要な枠割を果たす陪審員をご紹介します。陪審員は12名いますが、名前は出てこず番号で呼ばれています。アメリカ社会の縮図を見るような、様々な階級や文化的背景をもった人物が登場します。陪審員1番は、フットボールのコーチで、陪審員長として話し合いの議事を進行します。陪審員2番は、メガネの一見気弱な銀行員ですが、慎重な姿勢で真面目に話し合いに参加します。

陪審員3番は、宅配便会社の社長で、息子と喧嘩をして音信不通の状態です。陪審員4番は、株式仲買人で、冷静沈着で論理的な性格です。陪審員5番はスラム育ちの労働者で、他の陪審員のスラムへの偏見に肩身が狭い様子です。陪審員6番は労働者で、義理人情に篤い。陪審員7番は、マーマレイドのセールスマンで、裁判へ興味がなく、付和雷同で自分の意見がありません。

陪審員8番は建築家で、当初から有罪について疑念があります。陪審員9番は年老いた老人ですが、観察眼が鋭く裁判で証人の様子を克明に記憶しています。陪審員10番は傾きかけた会社の経営者で、貧困層へのひどい偏見を持っています。陪審員11番はユダヤ系の移民で言葉に訛りがあります。陪審員12番は広告マンで、場を和ませる冗談を言い何度も意見を変えます。次に「十二人の怒れる男」のあらすじの解説に入ります。

十二人の怒れる男あらすじ解説1「陪審員に選ばれた主人公 」

十二人の怒れる男のあらすじの解説に入ります。舞台は暑い夏の日のアメリカの陪審室。父親殺しで1級殺人罪に問われたスラム育ちの少年の裁判に、フットボールのコーチ、銀行員、企業の経営者、老人、ユダヤ移民など様々な背景の12人の陪審員が集められます。証拠も証人も揃っており、少年の有罪は明白な状況です。暑く蒸す部屋の中で、陪審員達は窓を開けたり、ガムをかんだり、トイレに行ったりと話し合いが始まりません。

十二人の怒れる男あらすじ解説2「被告はスラム出身の少年!」

陪審員たちはスラム育ちで素行不良の少年が有罪であることに疑いを持ちません。あるものは野球の試合のため、あるものは傾きかけた会社の経営のため早く終わることだけに興味があります。そんな中、陪審員1番が話し合いを始めるため、議事進行を買ってでます。

十二人の怒れる男あらすじ解説3「検察側の主張は?」

検察側の主張では、父に殴られた少年が飛び出しナイフで、父の胸を刺したというものでした。その犯行を裏付けるものは、凶器が少年の買ったナイフであること、階下の老人が少年の「殺してやる」と言う声と被害者が倒れた音を聞き、その後逃げる少年の姿の目撃したこと、通りを挟んで犯行現場を目撃した女性がいることなど複数の証言です。少年は犯行を否認しており、ナイフは紛失したこと、犯行時間は映画を見ていたと証言します。

十二人の怒れる男あらすじ解説4「有罪11対無罪1」

少年は、映画の題名を覚えておらず、映画館で少年を見かけた人は見つかっておらずアリバイは証明されません。状況から少年の有罪は決定的で、陪審員は真剣に議論をしようとはせず、評決を行います。全員一致で有罪か無罪かが決まります。評決の結果は、11人が有罪、陪審員8番のみ無罪を主張します。陪審員8番は、有罪である確証が持てないこと、18歳の少年の生死がかかった評決を5分で終わらせず、話し合いがしたいと主張します。

十二人の怒れる男あらすじ解説5「有罪の根拠は?」

反対する皆に対し、1時間だけ話し合うことを提案します。少年はスラム育ちで、5歳から父親に殴るなどの暴力を加えられていました。その父は服役の経験もあり、犯罪の温床のスラムの酷い環境で育った少年への偏見に充ち溢れています。検察の証言では、事件当日父親と言い合いになり、2回殴られたことにカッとして、殺してやると少年が叫んだのを近所の人が聞いていたと言います。

陪審員8番は、5歳から毎日殴られていたのに、その日だけたった2回で殺人に及ぶとは思えず動機を疑います。陪審員8番の意見を説得すべく、動かぬ証拠であるナイフを取り寄せて検証を始めます。古物商によると今まで取り扱ったとこがない珍しい飛び出しナイフで、全く同じものがないので少年の落としたという証言を嘘だと検察は主張しています。

陪審員8番は、ポケットに全く同じナイフを持っていました。それは少年の暮らす街の質屋で6ドルで手に入れたものでした。「珍しい飛び出しナイフ」という古物商の証言がここで否定され、同じナイフがほかに出回っている可能性を示唆し、少年のナイフを落としたという証言が正しい可能性が生まれます。「十二人の怒れる男」のあらすじ解説はまだまだ続きます。

十二人の怒れる男あらすじ解説6「有罪10対無罪2」

意見が変わったか陪審員8番を除いた11人で無記名投票をすることを提案し行います。無記名投票の結果、無罪を主張する人が1人いて、陪審員8番と合わせて無罪が2名になりました。有罪派は、無記名での投票なのに、誰が意見を変えたのか詰め寄り、陪審員5番のスラム出身の労働者へ疑いの目を向けます。無罪へと意見を変えたのは、陪審員9番の老人でした。

十二人の怒れる男あらすじ解説7「証言は本当に正しいの?」

陪審員8番は、目撃者の証言が本当に正しいのか検証します。「殺してやる」と叫んでから、父親が倒れる音がしたという証言について、列車がその時間通過していたのに、声がはっきり聞こえるのかどうか、疑問を持ちます。時期は夏で、窓は開け放しています。陪審員の一人が、列車の音はひどくうるさいことを同意します。陪審員9番の老人が、目撃者についての鋭い考察を伝えます。

証人は、控えめに静かに日の目を見ずに暮らしてきた老人でした。殺人事件の証言をすることで老人に人生で初めてスポットがあったったのです。そのためには、偽証する可能性もあると示唆します。

十二人の怒れる男あらすじ解説8「有罪9対無罪3」

ここで、評決を再度取ります。結果は、有罪9対無罪3で、有罪に対し疑念を持つ人が増えました。次に少年が映画を見た後、自宅へ戻ったことに疑念を抱きます。殺人を犯していたら、家に戻れば捕まることは目に見えています。有罪を主張する人は、少年が混乱をしていたからではと主張しますが、ナイフの指紋が拭き取られており犯人の冷静な態度と整合性が取れません。

十二人の怒れる男あらすじ解説9「有罪8対無罪4」

評決をとると、無罪が4人へ増えました。状況を1つずつ確認していくに従い、陪審員たちは一人また一人真剣に議論に参加します。今度は、被害者が倒れる音がしてから、20秒後に廊下に出たところ少年が逃げていく姿を見たという証言について検証します。足の悪い老人が20秒で移動ができるか、陪審室で現場に見立て、実際の距離を歩き、時間を計測する実験を行います。かかった時間は41秒でした。「十二人の怒れる男」のあらすじ解説は、続きます。

十二人の怒れる男あらすじ解説10「有罪6対無罪6!」

陪審員一人ずつ順番に有罪か無罪か意見を表明します。有罪6人、無罪6人で形成が逆転に向かいます。窓の外は、激しく雨が降り、故障していた扇風機も回りだします。陪審員たちは本腰を入れて、真剣に有罪か無罪か議論を交わします。ナイフの刺し傷が下向きだったことに疑問を呈します。被害者は少年よりも背が高く、通常だとナイフは上向きに刺さります。

陪審員たちが犯人と被害者の役にわかれ検証を始めると、それまでは静かに傍観していたスラム出身の陪審員5番が前に出ます。スラム出身ならではの飛び出しナイフの握り方を実演します。華麗にナイフの刃を飛び出させ、ナイフを握る位置、握り方を実演し、刺し傷が下向きになるはずがないと主張します。

十二人の怒れる男あらすじ解説11「無罪9対有罪3!形成逆転!」

評決をとると無罪9対有罪3へと形成が逆転します。スラム出身者に対し偏見を持っている陪審員10番は、評決に納得せず、貧困層についての偏見を皆の前でぶちまけます。あまりにもひどい偏見に、陪審員たちは席を立ち、陪審員10番へ背を向けます。話合いは続き、決定的な殺人現場をみた女性の証言について検証します。向かいの通りに住む女性がまさに少年が父親を刺した現場を見たと証言しています。

陪審員9番の老人が再び鋭い観察力を発揮します。陪審員9番の老人は女性の証言に違和感を持ちます。その正体は、女性の鼻筋にメガネの跡が残っていたことでした。普段は見た目を気にしてメガネをかけていないが、跡が付いていたことから視力が悪いのではないかと推理します。ここで殺人現場を目撃した女性の証言も有罪を決定づけるものではないと、陪審員の意見が変わってきます。

十二人の怒れる男あらすじ解説12「無罪12対有罪0!」

評決をとると最初の評決を全く逆の状況の有罪1対無罪11になります。最後まで少年が有罪と主張するのは、陪審員3番の宅配便会社経営者の男でした。陪審員3番は自分が息子と何年か前に言い争いになるあごを殴られ、息子とは音信不通の状態です。息子との確執から有罪へ固執します。有罪と思う理由を主張しますが、説得性に欠き無罪であることを認めます。

話しあいが終わり、外へ出ると雨は上がり、晴れ間がさしていました。映画「十二人の怒れる男」のあらすじの解説は以上になります。

十二人の怒れる男の脚本や演出について感想・考察を紹介!

感想1シンプルな脚本と演出が最高の法廷劇!

次に「十二人の怒れる男」を見た感想を取り上げます。「十二人の怒れる男」の感想で多いものは、シンプルな脚本と演出を高く評価する感想です。登場人物の名前を省き、陪審室という限られた空間で難しい裁判の話が語られていきますが、シンプルかつ飽きさせないセリフ回しは見る人をひきつけます。「十二人の怒れる男」は、雨の降るシーンや陪審員の上着をかける動作などの演出でシンプルな脚本をカバーしています。

感想2ストーリの手法が勉強になる!

「十二人の怒れる男」の感想で多いもののひとつに、ストーリーの巧みさについて高く評価する感想があります。人物の持つ文化的な背景を日常会話からあぶり出し、陪審員の話し合いの中でも主張する意見から社会的階級が見え隠れします。映画「十二人の怒れる男」は、「疑わしきは罰せず」という陪審制度の在り方をわかりやすく説明する題材として、授業での教材として使っている大学もあります。

感想3見事な逆転だった!

映画「二人の怒れる男」の感想として、見事な逆転劇を称賛する感想も多くあります。有罪11対無罪1から有罪0対無罪12へ評決をひっくり返すストーリーの流れは見る側をひきつけます。「十二人の怒れる男」は、登場人物の詳しい説明や事件についても裁判本編は全くありません。陪審員の議論や世間話を通じて、事件の内容や主張が理解でき、だんだんと話に引き込まれていく脚本と演出は高く評価されています。

十二人の怒れる男は様々なバリエーションが!リメイクやロシア版を紹介!

十二人の怒れる男 評決の行方

法廷サスペンスという分野で高い評価を得た「十二人の怒れる男」はその後の映画界に影響を与え、リメイク作品も誕生しています。代表的なものとして、1997年アメリカでリメイクされた「十二人の怒れる男 評決の行方」があります。オリジナルと同じ脚本でリメイクされ、陪審員8番にジャック・レモンを迎え、刑事グラハムで有名なウィリアム・ピーターセンなどが出演しています。

設定をかえたロシア版十二人の怒れる男

海を渡りロシアでも「十二人の怒れる男」はリメイクされています。タイトルは「12」です。ロシアの奥に事情を取り入れていて、被告はチェチェンの少年、裏ビジネス事情に通じている男が登場します。陪審員の意見が有罪12から無罪へと変わっていく様子はオリジナルを踏襲しますが、その間話されるストーリーはオリジナル性に富んでいます。ロシアの文化を垣間見ることのできる作品です。

三谷幸喜脚本の喜劇!「12人の優しい日本人」

日本でも「十二人の怒れる男」をオマージュした作品として、「12人の優しい日本人」という映画が三谷幸喜の脚本で制作されています。こちらは、日本にもし陪審制度があったらという仮定で、12人の陪審員に選ばれた日本人の困惑と日本人らしいやり取りを描いたコメディ映画です。陪審員8番にあたる無罪へと論破する役に豊川悦司、ほかにも梶原善、相島一之など個性派俳優が出演しています。

十二人の怒れる男についてのまとめ!

「十二人の怒れる男」について解説してきましたがいかがでしょうか。十二人の怒れる男は、1958年に制作され、舞台は陪審室の1室のみです。有罪と思われていた事件を陪審員が話し合いで無罪へと意見を変える内容です。シンプルかつ考えられた脚本は評価が高く、見るものをひきつけます。また、「十二人の怒れる男」は、ベルリン国際映画の金熊賞の受賞をはじめ、沢山の賞にノミネートされた作品でもあります。

「12人の怒れる男」は、法廷サスペンス映画の先駆けでリメークされたものやオマージュをもって制作されたものもありますので興味のある方はぜひ見てみましょう。

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