2018年08月13日公開
2018年08月13日更新
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!感想やキャストも紹介
スラムドッグミリオネアは、なんとイギリスの映画である。2008年当時インドの外交官、ヴィカス・スワラップ著書の「ぼくと1ルピーの神様」を「トレインスポッティング」で有名なダニー・ボイルが映画化した。アカデミー賞で作品賞を含む8部門を受賞した「スラムドッグミリオネア」は、スラム街出身の人に対する悪口「スラムドッグ」の男が、有名なクイズ番組「ミリオネア」に出場し、奇跡の回答で賞金を獲得していくという物語である。ここではそのストーリーをネタバレを含めて紹介していく。
目次
スラムドッグミリオネアのあらすじや感想をネタバレ紹介!
スラムドッグミリオネアは社会的エンターティメントとして非常に優れている作品である。貧富の差、それに置いての差別や偏見などを描きつつ、正直者の若者がもっとも賞金の高いクイズ番組に挑戦していく。「無学の若者がクイズに正解できるはずはない」ということそのものが偏見であり、それを痛快に覆していくサクセスストーリーは観ていて気持ちがいいと評されることが多い。
この記事の前半ではスラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレを含めて紹介していく。実際この映画は様々な真実を含んでいることに気づいていただけるだろう。ネタバレが苦手な人は気をつけて進めていただきたい。後半では感想や、この映画がもたらしたキャストへ実話や報酬の裏話なども紹介する。合わせてご覧いただきたい。
スラムドッグミリオネアとは?
「ぼくと1ルピーの神様」原作の映画化作品
スラムドッグミリオネアは、インドの外交官であるヴィカス・スワラップが原作の小説、「ぼくと1ルピーの神様」が原作の映画である。それを「トレイン・スポッティング」で有名なダニー・ボイルが映像化。結果アカデミー賞を総なめにした。もともとこの小説は発売してから3年で3万5千部を販売したが、映画が公開になってからはなんと1ヶ月で同じ部数を売り上げたのだ。
爆発的に人気が出たため、たくさんの人が原作も読んだが、文章の運びもうまく、「処女作でここまでかけるのはすごい」という感想も見られた。彼はその後「6人の容疑者」という本も2008年に出版している。こちらもインドの推理小説ということで、様々な人に興味を持たれる内容となっている。
監督はダニー・ボイル
ダニー・ボイルの作品は名作が多い。1996年の「トレイン・スポッティング」、2008年の「スラムドッグミリオネア」、2015年の「スティーブ・ジョブズ」、そして最新作の007の監督も務めている。現実的なドキュメンタリーを元にしたファンタジーを得意としているようで、2002年の「28日後」というゾンビパニック映画でも、ストーリーの描写が実際にある事件のようだった、というストーリーの緻密さを褒める感想が多かった。
つまり、「ファンタジーをリアルに描く」という手法に長けた監督であり、この映画の題材にはうってつけの監督だったことがわかる。他にもダニー・ボイルの作品は一種「切り込んだ」作品が多いので、物語を深く楽しみたい人にはオススメの監督である。
スラムドッグミリオネアの出演キャスト
ここではスラムドッグミリオネアの主要な役を担うキャストを紹介していく。映画の中で重要な役割をもつ役者さんたちだが、彼らの子供時代のキャストには、映画の上映後にある事件が起きていた。それはキャスト紹介とともに記事の後半で紹介する。
デーヴ・パテール(ジャマール・マリク役)スラムドッグミリオネアの出演キャスト!
スラム街で育ち、兄と一緒に不条理な世の中を正直に生き抜いた青年ジャマールのキャストは、デーヴ・パテールだ。彼はインド系移民の両親の元1990年イギリスに生まれた、インド系イギリス人である。高校生の頃から演劇を始め、講師からは「天才的な生徒だ」と当時から言われていた。格闘技も志ており、2004年にタブリンで行われた格闘技会大会で銅メダルを獲得している。この映画で世界に名前が知られることとなった。
マドゥル・ミッタル(サリーム・マリク役)スラムドッグミリオネアの出演キャスト!
兄弟思いな兄でありながら、暴力の道を選んでしまったサリームのキャストは、マドゥル・ミッタルだ。彼は1987年インドのアーグラで生まれ、ムンバイ大学で演劇を学んだ。スラムドッグミリオネア出演への役作りにおいて、実際にギャングと暮らし、その感覚を身につけるほどのストイックさを持っている。のちにディズニー映画の「ミリオンダラーアーム」で実在のインド人メジャーリーガーを演じた。
フリーダ・ピントー(ラティカー役)スラムドッグミリオネアの出演キャスト!
本作のヒロインであり、スラム街で生まれ、ジャマールたちと出会い、紆余曲折をへてダンサーになった女性、ラティカーのキャストは、フリーダ・ピントーだ。もともとモデルであり、CM出演もこなしていた彼女は、スラムドッグミリオネアで、英国アカデミー賞、助演女優賞を受賞した。その後はなんと主演だったデーヴ・パテールと交際することになり、6年の間同棲をしていた。今ではインスタグラムに多数のファンがいる。
アニル・カプール(プレーム・クマール役)スラムドッグミリオネアの出演キャスト!
映画内でも重要な役割を果たしたプレーム・クマール。キャストはアニル・カプールだ。彼はインドを中心とした役者で、デビューはボリウッドの「マシャール」で初出演となった。2010年にはインド版「twenty four」のジャック・バウアー役に抜擢された。彼は映画で表現されていた、恵まれない子供達や児童虐待の実態などを知ってもらうため、スラムドッグミリオネアの出演料は、慈善団体へ全額寄付したという。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!
ここからネタバレ内容が含まれる記事となっている。物語は一問ずつ進むたびに主人公であるジャマールの人生の描写が差し込まれてくる。最後にはそれが一致し、現在に戻ってくる流れだ。こうした手法が観ている人を飽きさせず、物語を色濃いものにしている。
冒頭の問題は運命か?スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!
映画の初めにはある問題が表示される。「彼は後一問でミリオネア。なぜ勝ち進めた?」と。選択肢は4つだ。「A、インチキした。」「B、ツイていた。」「C、天才だった。」「D、運命だった。」これらはあらすじを追っていただければいずれ分かることだ。「who wants to be a millionaire(ミリオネア)」というクイズ番組で挑戦者として登場した、ムンバイからやってきたジャマール・マリクが紹介される。
クイズ番組で携帯電話のコールセンターでお茶汲みをしている話が終わると、時間が飛び、警察が彼を拷問している。どうやらクイズ番組で正解を答えたことを疑われているらしい。体に電気を流す拷問をし、「インチキの方法を吐け」と脅されていた。教授、医者、法律家でも1万6千ルピー止まりなのに、彼は1千万ルピーも手に入れたのが納得できないらしい。意識も絶え絶えなジャマールが「僕は答えを知っていたんだ。」と言った。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!1000ルピーの問題
かつて、いたずら好きなジャマールとその兄サリームはスラム街で母と一緒に暮らしていた。警察の一人が彼が出演した「ミリオネア」のビデオを写す。画面には彼と司会のプレーム・クマールがルールについて会話していた。そして1000ルピーの問題が出題される。内容は「1973年のヒット映画「鎖」の主演俳優は?」だ。ジャマールはスラム街で暮らしていた時のことを思い出すのであった。
ジャマール少年の心のヒーローは「アミダーブ・バッチャン」であった。そのスターが彼のいるスラム街に来たことがあったのだ。いたずらで閉じ込められたトイレから、排泄口を通り糞尿にまみれながら、ボロボロの写真にサインをもらったジャマール。しかし、兄のサイールが隙を見てその写真を売ってしまったのだった。二度と戻ってこないサインに落胆する少年。そして、彼は問題に「アミダーブ・バッチャン」と答えるのだった。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!4000ルピーの問題
「俺でも答えられる。」という警官の一人に「だから、天才じゃなくてもいい。」と答える青年ジャマール。しかしビデオで流れる次の「インド国旗に三頭の獅子が描かれているが、その下に書かれた言葉は?」という問題に詰まってしまう。さらにライフラインのオーディエンスまで使ってしまう。
「インドでもっとも有名な言葉」を知らないジャマールに、「5歳児でも知っている。なぜだ?」と質問する警官。彼は「一皿のパニプリの金額は?木曜日に駅で巡査の自転車を盗んだのは?」と質問し、「知っているのか?」と返す警官に「5歳児でも知ってる。」と微笑むのだった。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!1万6000ルピーの問題
ビデオの中でプレームが次の出題をする。「ラーマ神の描写で彼が右手に持つものは何でしょう?」という問題に、また彼の記憶が蘇ってくる。かつてスラム街で母と洗濯をしていた時であった。「イスラム教徒狩り」が起きたのだ。その騒動で母は殺されてしまう。騒動から逃げる兄弟たちの前に「ラーマ神」の格好をした子供を見かけたのだった。同じく親を無くした女の子と一緒に3人で、彼らは混乱を生き抜いたのだった。
警官の前でジャマールは「その答えは知らない方が幸せだった。ラーマとアラーのせいで母さんは死んだ。」と呟く。そして、かつて見かけた子供を思い出したビデオの中のジャマールは「弓と矢だ。」と答えるのだった。「大したものだ」と握手をした司会プレームは、CMに入った途端に「ツイてたな。次は無理だ。ここまでにしておけ。」とおどしつけるのだった。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!2万5000ルピーの問題
焼け出され、家も家族も失ったジャマールたちは過酷な現実を生きることになる。一緒に逃げて来た女の子はラティカーと名乗り、兄弟と一緒に眠るのだった。思い出にふけっていたジャマールはまた問題回答に引き戻された。出題は「「クリシュナ神の歌」を書いた有名な詩人は?」だった。ジャマールは再びラティカーのことを思い出すのだった。
ゴミ捨て場で生活していた3人は、ある男たちに拾われることになる。男たちは子供たちに食べ物と住むところを分け与え、歌の勉強までさせてくれたのだった。喜ぶジャマールたち。そして、男たちの指示で組織的に物乞いを行うようになっていったのだった。しかし、ある夜、男たちのリーダーママンの手伝いをしていたサリームは恐るべき光景を目にすることになる。
ママンは歌が上達した子供を薬を使って眠らせると、眠っている子供に目に熱した薬品を掛け、潰したのだ。そして、彼はサリームに「ジャマールを連れてこい」と言うのだった。その頃ジャマールはラティカーと将来について話をしていた。ママンに呼ばれ、プロの歌手になれるのだと疑わない彼は「ゆくゆくはお屋敷に住める」と期待していた。そこでママンは「クリシュナ神の歌」を歌えとジャマールに指示するのだった。
サリームは突然薬品をママンの部下に浴びせかけると、様子を見に来たラティカー、ジャマールとともに逃げ出したのだった。追いかけてくるママンの追跡をかわすために電車に飛び乗る二人だったが、一度掴んだラティカーの手をサリームは振りほどいてしまう。サリームを責めるも、もはやどうしようもないジャマール。そして、クイズの回答にジャマールは「スールダース」と答え、正解するのだった。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!100万ルピーの問題
「盲目の歌手は2倍稼げる。」と言うジャマールに「奴には別の考えがあったんだ。ずっと後になってわかった。」と語るジャマール。そして、また兄弟2人で旅をしながら暮らしていた時のことを思い出すのだった。電車の食料を盗もうとして車両を放り出された兄弟は、「タージ・マハル」にたどり着いていたのだった。靴を脱いで入るタージ・マハルの前で、彼らは盗んだ靴を売って生活をしていた。
タージ・マハルの前で生活し続け、自然に英語とタージマハルについての知識を覚えたジャマールは、インチキガイドをしながら生活するようになる。クイズでプレームがまた出題する。「アメリカの100ドル札には、どの政治家の顔が書かれている?」と言う問題に、ガイドをした時、アメリカ人お客にもらったチップのもらった100ドル札をジャマールは覚えていた。「ベンジャミン・フランクリン」と彼は答えたのだった。
なぜ、彼がその名前を知っていたのか。兄弟はタージマハルから都市ムンバイへと移り住んだ。かつて住んでいたスラム街がある場所だ。ジャマールがラティカーを探すために戻りたいと言い出したのだった。そこで、かつてママンの手により、目を潰された男の子が路上で歌を歌っていた。アルヴィンドである。彼はジャマールから渡された100ドル札に「ベンジャミン・フランクリン」が書いてあることを教えてくれたのだった。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!250万ルピーの問題
アルヴィンドは「ピラ通りにいるチェリー」がラティカーだと教えてくれた。兄弟はそこへ行き、ダンスを踊るラティカーを見つけるのだった。だが、彼女にダンスを教え、高値で売ろうと企むママンが立ちはだかる。サリームは腰からリボルバーを取り出し、弟とラティカーを行かせるよう脅し掛けた。そして、逆に脅しかけるママンを撃ち、3人は逃げ果せたのだった。「リボルバーを発明したのは?」司会のプレームが急に出題した。
「サミュエル・コルト」とジャマールは過去をフラッシュバックしながら答えた。かつてママンを殺したサリームは、ジャヴェドというギャングのボスに取り入ろうと話をしに行った。その後帰って来た彼は、部屋からジャマールを追い出すため、彼の眉間に銃を突きつけた。「コルト45をぶっ放すぞ」と脅す彼を、ラティカーは納め、彼を静かに締め出し、ドアは再び開かなかった。二人はまたしても離れ離れになったのだ。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!500万ルピーの問題
過去での時は流れ、ジャマールは携帯電話会社のお茶汲みのアルバイトをしていた。そこで彼は長い間音信不通だったサリームの電話番号を手に入れ他のだった。司会のプレームが「ケンブリッジサーカスどのヨーロッパの都市にある?」と出題すると、彼は携帯電話会社で見た地理とイベントを記憶しており、「ロンドン」と答えた。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!1000万ルピーの問題
当時、サリームと連絡をとったジャマールは、彼と数年ぶりに出会う。怒りに任せて兄を殴るジャマールだったが、ラティカーを探すために彼とまた暮らすことにする。そして、サリームが大きな屋敷に入るところまで尾行し、ついにラティカーを見つけたのだった。彼女は美しくなっていたが、殴られながら生活していた。そして「会いに来てくれたことは嬉しい。だから何?」と言うのだった。
彼女はジャヴェドと一緒に暮らしており、すぐにムンバイを去るらしかった。そして、彼女を連れ出したいジャマールはすぐに出て行こうと誘うが、彼女は「もう手遅れよ。」と返す。追い返そうとするラティカーに「毎朝5時に駅で待ってる。」と投げかけるジャマールであった。その時、彼女が「ミリオネア」を見ていること、そしてジャヴェドがたまたま見ていた「クリケット」の試合が流れていたのだった。
司会のプレームは「最多センチュリーを獲得したクリケット選手は?」と出題した。ジャマールは過去を思い出しながら回答に臨んだ。ジャマールの朝5時の約束は、少しすぎたあたりでラティカーはやって来た。だが、またしてもサリームが手下とともに、ラティカーを拉致してしまったのだ。連れ去る時にナイフで傷つけられる彼女を、ジャマールは助けることができなかったのだった。
「ミリオネア」の最中、ジャマールはトイレに入っていた。すると司会のプレームが同じトイレに用を足しに来たのだった。「君は勝てる」と言ったプレームが手を洗った場所には「B」と書かれていたのだった。CMが明け、席に戻ったジャマールは50/50のライフラインを使い、答えを2つに絞った。残ったのはBとDであった。ジャマールは「D」と答え、プレームの思惑を断ち切ったのだった。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!最後の問題、2000万ルピーのクイズは?
ジャマールが最後の問題へと挑む直前、アラームが鳴り響いた。一度の番組がそこで終了したのだった。次の日の夜に最終問題は持ち越しになった。しかし、プレームが出演を終えたジャマールをそのまま警察へ引き渡したのだ。その後、映画冒頭の展開になったのであった。警官が「取り調べは終わりだ」と言うと、ジャマールは、「彼女が見ていると思って番組に出た」と真意を明かしたのだった。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!国中の英雄になるスラム街出身の若者
彼が最終問題に挑む直前、番組を見ていたラティカーは一人泣いていた。それを見たサリームはジャヴェドの隙を突き、車のキーを手渡し彼女を逃したのだった。去る間際、彼は「俺のしたことをどうか許してくれ。」と彼女を送り出すのだった。ジャマールは警察署から番組に復帰し、周りの視聴者から応援されることに戸惑うのであった。TVは彼のニュースで持ちきりで、彼が最後の問題にどう答えるのか、皆が注目していたのだ。
インド中の視聴者がジャマールを応援していた。司会のプレームが厳かに問題文を読み上げる。「アレクサンダー・デュマの三銃士、銃士2人の名はアトスとポルトス、3人目の銃士は?」と言う問題に、ジャマールは「全くわからないんです。」と微笑んだ。そして、スラム街で暮らしていた時にした三銃士の話を思い出していた。彼は最後のライフライン「テレフォン」を使う。彼が知っている番号は兄のサリームのものだけであった。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!「テレフォン」に出たのは?
コールを切ろうとする直前、ラティカーはサリームに託された電話に出る。驚くジャマールは問題文を読み上げる。その頃TVでラティカーの名前を聞いたジャヴェドは彼らを探し始めてしまう。そして、三銃士の3人目の名前は彼女にもわからなかった。ジャマールは笑顔でAのアラミスと答える。司会のプレームは「どうしてAを?」と聞くが、彼は「なんとなくそう思ったから。」と答えたのだった。最後の答えに根拠はなかったのだ。
スラムドッグミリオネアのあらすじをネタバレ!約束を忘れなかったラストシーン
最後の答えは、なんと正解であった。喝采を浴びるジャマール。その頃、サリームは紙幣をバスタブに入れ、ジャヴェドを待ち構えていた。ギャングたちが入ってくるなり彼を撃ち、そしてその部下たちにサリームは撃たれてしまう。彼の最後の言葉は「神は偉大なり」であった。興奮のるつぼと化すスタジオと、ジャマールを祝福するインド中の歓声が響き渡った。正真正銘スラムで生まれた彼はついに「ミリオネア」となったのだった。
駅で待ち合わせたジャマールとラティカーは、今度こそ無事に出会う。もう彼らを縛るものはなくなり、彼は線路を越えて一直線に彼女の元へ向かった。たくさんの出来事があった自分たちの人生を思い出しながら、彼は彼女の顔の傷へキスをし、彼女は彼に「キスして。」と返すのだった。一番最初の問題、「彼がなぜ勝ち進めたのか?」の答えは、「D、運命」だったのだ。
スラムドッグミリオネアの評価や感想を紹介
スラムドッグミリオネアは数々の感動を様々な人に与えた映画だ。当然様々な感想や反応があった。ここではそれらを紹介していく。上映後も騒動を呼んだ映画でもあるので、話題には事欠かなかった映画である。前述の子役キャストへ起きた事実を踏まえて感想を読むのも面白いかもしれない。
ブログなどでの感想!ジャマールのハッピー・エンディングはいいけれど、やはり心の底から笑えない映画なんだ
「普通に考えれば、非難されるべき人間なのだろうが、ジャマールが過酷な少年時代を生き延びたのも、現実的で、時には暴力も厭わないサリムの行動力があったからで、サリムの方がこの映画のテーマをより色濃く体現しているような気がする。ジャマールのハッピー・エンディングはいいけれど、やはり心の底から笑えない映画なんだよ。」
ブログなどでの感想!最後のダンスは重要なシーン
「最後の大ダンスのシーンはインドを舞台にしたスラムドッグミリオネアにとって、インド映画へのオマージュでもある重要なシーン。しかも映画の途中で子ども時代のジャマールがラティカに「月の光の下で君と僕。踊ってくれるよね?」と言ってて、それが大ラスのダンスシーンに繋がっています。このダンスシーンはダニー・ボイルという一筋縄ではいかない監督のこだわりだと思っています。」
ブログなどでの感想!兄のサリームが辛くて萌える
「兄サリームが辛くて萌え!サリームの行動原理は「弟を助ける」ということ。そんな彼がどうして金に執着し、バスタブ一杯の札束の中に埋もれているのか、それはきっと「金さえあれば」という思いが彼の中にあったからなんじゃないかなぁと思います。この、「金さえあれば」というのは、映画だけでなく、インドの貧困の中で今もなおあえいでいる子どもや貧者の現実なのかもしれません。」
ツイッターでの感想!インドだし踊りましょ!
「#スラムドッグミリオネア」
— まさし(小僧) (@iiduka_masasi) March 4, 2018
日本でもやっていたあの番組のクイズが主人公の人生と重なる!どんなに生い立ちが不幸であろうとただ前に進み続ける主人公にさらに辛いことが起き続けるが、やっぱり三銃士の絆の力は強かったわけで。そうだよね、そうなったらインド映画だし踊りましょ!#シネフィル pic.twitter.com/HCpXPCQr6X
日本でも放映されたほどの有名なクイズ番組ともあって「ミリオネア」そのものは高い知名度を誇るとわかる感想。ハードな内容だが、インド映画独特のダンスシーンがちょっとしたガス抜きになったようだ。
ツイッターでの感想!運命にも立ち向かっていける
#スラムドッグミリオネア
— ダニエル (@danielnori) August 4, 2018
運命…そんな言葉じゃもの足りない
遠回りをしても、全てがそこへ辿り着くためのものだったとしたら…
本当なら、富なんかなくても彼らは幸せなはずなのに…
何かに繋がる運命のために今があるとすれば、困難にも立ち向かっていける‼︎
CGだけが映画じゃない‼︎ pic.twitter.com/DPiFbXU1vY
この映画における最大のテーマを前向きに受け取った感想。確かにCGを全く使っていない映画でも良作はたくさんある。人生の壁にぶつかった時に立ち向かう、と言うメッセージを受け取ったようだ。
ツイッターでの感想!スラム街の事実
#スラムドッグミリオネア
— りん (@mo_co_mr27) December 4, 2017
すんばらしかったーー
観る価値あり!てか今更観た笑
スラム街の現実を見れた気がする…#映画好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/pDRgglUt9C
スラム街の現実は、実際に目にすることが少ない。こうした感想が出るということは、映画表現の中で物語として問題を取り上げる方法は、この映画に関して大成功だと言えるだろう。
スラムドッグミリオネアは実話なの?
冒頭にも紹介したが、もともと「ぼくと1ルピーの神様」という原作が存在しているので、スラムドッグミリオネアは実話ではない。しかし、この映画のストーリー上で紹介されている「抜け出すべき境遇」は真に迫るものがある。あらすじでは正直者のジャマールが大金を手にし、ラティカーと幸せになるラストになっているが、ではサリームのように「抜け出せなかった人たち」はどのように生活しているのだろうか。
一部のキャストたちは未だ、インドのスラム街で暮らしている人も多くいる。「スラムドッグ」と言うスラングはバカにしている、とか、「貧困に漬け込んで搾取した」といった感想も寄せられたことがあるようだ。そういったことは全て、これから紹介するエピソードを読んでから判断していただきたい。
スラムドッグミリオネアに出演した子役のその後は?
スラムドッグミリオネアが有名である背景に、これから紹介する貧困や搾取の実態がある。この事実に関して正面から受け止めるのはなかなか難しいものがある。それほど自分たちが見ている現実とはかけ離れている事実なのだ。それらに「切り込んだ」からこそ、この映画はアカデミー賞を総なめにするほどの映画になったし、ダニー・ボイルは名監督なのだ。
アズハルディン・モハメド・イスマイルちゃん(サイールの子供時代のキャスト)
彼はアカデミー賞の授賞式のあと帰国したが、なんと不法居住のスラム街で生活していたため、ブルドーザーによって家を破壊されてしまったのだ。さらに、アカデミー賞授賞式の帰国後、インタビューの約束を勝手に取り付けていた父親は、時差ボケで眠くなり、「インタビューは嫌だ」とぐずったアズハルディンくんをインタビュアーの前で、彼が泣くほど平手で叩き続けた。アカデミー賞受賞作品関係なく、あんまりな対応である。
当時このニュースを見た人から、映画関係者に抗議が殺到。インドのスラム街とはいえ子供を痛めつける父親には周囲の目に止まったようだ。映画キャストとして活躍していたアズハルディンくんに対して「かわいそう」と言う感想も多く、この事件ともう一つの事件のおかげでスラム街の問題が大きく提起された経緯がある。
ルビーナ・アリちゃん(ラティカーの子供時代のキャスト)
ルビーナちゃんは当時、父親によって明らかに違法な養子縁組に出されようとされており、それをつかんだ英紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」の記者が富豪のふりをしてそれを阻止した事件があった。記事によると、日本円にして約4000万円で養子に出すという取引がなされていたようだ。父親は、違法な養子縁組について「現在、ルビーナの商品価値は高く、娘や家族にとって最良の方法」という衝撃的な発言をした。
当時このニュースも衝撃であった。簡単にいえば、子供を人身売買しようという父親がいたと言う事実である。父親としては「相手方映画のキャスト」としての金額を提示したということらしいが、周囲はある種、虐待であり、大人による子供の搾取であるとの感想や見方が多かった。
大人による搾取を防ぐための報酬構造
監督のダニー・ボイルも出身は貧困な家庭であり、家を撤去されると聞いた監督は彼らに家をプレゼントしようと送金した。しかし、家族が受け取り、ブローカーにお金渡したところそのブローカーが持ち逃げしてしまったというのだ。ダニーとムンバイ住宅基金はアパートにした方が良いと考え、協力して280万円相当のアパートをプレゼントした。現金を持ち込むことは危険だと判断したのだ。
子役のルビーナ、アズハルディン、そしてジャマールの少年時代の子役、タナイ・チェーダーの3人には16歳の高校卒業時に多額のギャラが支払われる仕組みになっている。これは、周囲の大人からの搾取を懸念したためだ。映画にも表現されている通り、現実に幼い子供が大人に搾取される行為は当然に行われていたのだ。真にこの問題が解決するには長い時間がかかるのだろう。ダニーと子役達には敬意を表したい。
スラムドッグミリオネアをぜひ見てみよう!
いかがだっただろうか。「スラムドッグミリオネア」はたくさんの人が観て、たくさんの人が感動した映画でもあった。あらすじのポイントとしては、「ミリオネア」で答えたものに適当なものは一つもなく、全て血の通った答えがあったと言う点だ。彼の人生そのものがこの成功を引き寄せたように見えるラストであった。そして、映画の外で起きた事件を観ても一つの大きな問題が浮き彫りになっていることに気がつく。
それは、「お金」の問題だ。司会のプレークは問題の途中で「君はお金に興味が無いのか?」とジャマールに質問する下りがある。その時、彼は何も答えなかった。なぜなら、彼はお金の為にひどい目に遭って来た人間だったのだ。お金によって迫害が行われ、お金によって自由が奪われ、彼は正直者でい続ける以外になかったのだろう。実はこの映画内にお金で解決した問題は一つもない。むしろ厄介を呼び込む象徴として表現されている。
ジャマールの兄、サイールは小さな頃からお金の力を信じ、お金さえあればと行動して来た。しかし、その行動では結局弟の邪魔にしかならなかったのだ。彼は兄として行動している時が一番弟の為に動けており、お金にまつわることに首を突っ込んだ時、必ず厄介ごとに見舞われている。つまり、「お金そのものの価値」をこの映画では問いかけているのだ。
しかし、残念ながらその後の事件を見る限り、一番伝えたかった人たちには伝わらなかったようだ。彼ら貧困のある地域には、いくらお金が舞い降りたとしても、きっと砂に落ちる水のように消えてしまうのだろう。だからこそ、自分たちの一番身近なお金に対しての意識を深くすることが、この映画の存在価値を大きくする方法であるのだと感じる。
重たいテーマではあるが、ぜひ一度はこの映画を観て見ることをおすすめする。きっと様々な考えが生まれることになるだろうが、それらを諦めずに大切にしていただきたい。それがきっと「お金」のことを考える第一歩なのだ。