イットのピエロ・ペニーワイズとは何者？演じているのはイケメン俳優？

イットのペニーワイズはいったい何者なのでしょうか。名前の由来などは特に公開されていません。ピエロという形にしたのは「この世で最も子どもを震え上がらせるものはピエロだったから」と語っています。イットの原作の小説を書いたスティーブン・キングは子どもたちを怖がらせる存在の最適な答えとして、ピエロを選択したようです。その結果、あのおぞましい姿が生まれたのです。

2017年版でのイットでピエロのペニーワイズを演じたのはイケメン俳優、ビル・スカルスガルドでした。スウェーデン出身の彼は普段は優しいのですが、メイクをしたら恐ろしくてたまらなかったみたいです。ピエロになっているときは怖い印象を持たれるビルでしたが、メイクを落とすとイケメンと話題になりました。

ビルはイットのインタビューに「ずっと演じたいと願っていたこの役柄を獲得した後も、演じ切れるかどうか不安はたくさんあった。だから小説をくまなく読んで、知的にペニーワイズを分析することで没頭した。小説の中でペニーワイズの声に関して多様な言葉で表現しているからこそこの映画の中でもペニーワイズの声のトーンに変化を持たせたかった。全ての要素を混ぜ込んだ僕なりのペニーワイズの声を作り出した」と語りました。

彼は声だけでなく、目の動きや身体の動かし方など、慎重にイットのペニーワイズを作り上げたと言います。映画の中にある、左右の目をバラバラに動かすシーンは、CGではなく彼自身がやったそうです。狂気に満ちた殺人ピエロはイケメン俳優だったわけですが、彼自身も出演後、ピエロの悪夢に苦しまされたそうです。

アメリカの最東部にあるメイン州・デリー。そこに住んでいる兄弟ビルとジョージーは仲のいい兄弟でした。ビルは当時、病気で遊べませんでしたが、弟のジョージーは雨でも遊びたがります。黄色のレインコートを着たジョージーは雨の中、折り紙の小舟を持って出かけます。ジョージーは水たまりに小舟を浮かべると大雨だったため流れてしまい、雨水口に入ってしまいました。

ジョージーが雨水口をのぞき込んでいると、ピエロのペニーワイズが顔を出します。ペニーワイズはジョージーに小舟を見せながら友人の名を教えろと迫ります。怖くなったジョージーは小舟をもらって帰ろうとすると、ペニーワイズに右腕を噛まれそのまま引き込まれてしまいます。

ジョージーが行方不目になって8か月が経ちましたが、ビルは弟のジョージーを諦めきれずにいました。そして町では他にも子どもたちが行方不明になる事件が多発していました。ビルは自宅のガレージで実験をし、ハムスターのトンネルを使って、雨水が流れ込む規則性を父に提示しますが、父はもうジョージーのことを諦めています。別の日、ビルは友人を連れてジョージーが流された可能性が高い近くの森の下水道まで行きました。

奥まで見えず、入るのをためらっていると、下水道の入り口付近で行方不明の少女・ベティの靴が見つかりました。そして捜索をしますが、途中で、いじめられて逃げてきたベンが腹から血を流しているのを見て捜索は中断し、ベンの手当てをします。その頃、残って捜索をしていたパトリックは下水道で行方不明の子どもたちの死霊の団体を見て驚き、転倒します。そして、ペニーワイズに襲われてしまいます。

次の日の夜、弟のジョージーの部屋で弟を思い出していたビルは、物音に気づいて階下へ移動します。そこで弟の陰を見つけ、地下室へ行きます。そこで弟はペニーワイズに姿を変えます。そんな幻影を見たビルは驚きます。翌日、友人たちにそのことを話すと、他の子たちの身にも不可解なことが起こっていることが分かります。

この町で起きた事件について調査していたベンはみんなに結果を話します。それは「27年おきにイットが冬眠から目覚め、事件を起こしているのではないか」という仮説です。ビルのガレージに移動した一同は、旧市街地と現在の下水道マップを重ね合わせ、過去に起きた事件の場所をプロジェクターで見てみました。すると、その中心にあるのは「井戸の家」と呼ばれる黒い廃屋でした。

ビルは「井戸の家に行こう」と提案します。行ったけどみんな入るのをしり込みして、ビル、リッチー、エディの3人が入りました。エディは床に空いた穴に落ち、左腕を骨折してしまいます。リッチーは部屋に閉じ込められ、ペニーワイズから襲われそうになりますが、ドアを開けて逃げ、ビルと合流します。

別行動のエディはペニーワイズに襲わかけますが、後から入ってきたベバリーが逆襲し、鉄の棒でペニーワイズの右目を刺します。ペニーワイズは井戸に入りましたがエディが負傷しているので追わず、戻ります。エディの母は怒り狂いましたが、ビルとベバリーは諦めませんでした。「住処を見つけたのだから退治しよう」と言いますが、他の仲間は乗り気にならず、うやむやになりました。

そのまま時は過ぎ、8月になります。「イット」は活動を辞めていませんでした。そんな中事件が置きます。ベバリーがペニーワイズにさらわれてしまいます。友人を含め6人でベバリーを助けるために再び「井戸の家」に行きます。ベバリーは下水道に倒れていました。子どもたちは井戸の中へ進みます。そしてたくさんの遺体の顔を見て悲鳴を上げます。

ここでペニーワイズとの最後の戦いが始まります。子どもたちはペニーワイズの弱点が「恐れないこと」だと気づき立ち向かい、そして倒します。ペニーワイズが本当に退治できたかはわかりませんが、それが分かるのは27年後でしょう。「もしイットが死んでいなかったら、僕らも戻ると誓おう」そう言った7人はガラス片で手に傷をつけ、輪になって手をつなぎます。そして1人ずつ去っていきました。

イットのペニーワイズが襲うのは幼い子どもたちばかりです。90年代版のイットでは、男子生徒3名が脅迫的な態度で女の子を囲んでいるシーンで、その光景を見ているに関わらず、無視する大人たちがいました。そのような「見て見ぬふりをする大人たち」には、イットのペニーワイズの姿を見ることができないことを示していました。

あわせて、「大人たちは夢を見ないからね」と、大人になるとイットのペニーワイズを見ることができない理由を、子どもたち自身が語っているシーンもあります。つまり、ペニーワイズは子どもたちにしか見えない存在であり、また夢を抱く思春期に現れる怪物として描かれているのです。しかし、子どもだった12歳から30年という月日が経ち、42歳となった、大人の彼らの前にも、イットのペニーワイズは現れたのです。

なぜ大人となった彼らにもイットのペニーワイズが見えるのでしょうか。90年代版ではそのヒントとして、彼らが皆「子どもがいない」ことを語るシーンがあります。未婚で子どもがいない＝まだ大人になりきれていない存在、として解釈できるのかもしれません。しかし、誰が見えて誰が見えていないのかについては、90年代版でかなりアバウトに描かれていたようだと言われています。

イットのピエロ、ペニーワイズはいったい何者なのでしょうか。イットは、さまざまな姿に化けて出てきます。行方不明となったジョージーや、戦死したはずのベンの父などの人間に化ける場合や、ゴリラのような怪物の姿など、人間以外のものに化けることもあります。つまり、ペニーワイズは正体不明のイットが化けた姿であり、子どもたちを怖がらせる一番の姿が、まさに恐ろしいピエロだったのです。

イットのピエロ、ペニーワイズにはモデルとなった人物がいます。それはアメリカの連続殺人者、ジョン・ウェイン・ゲイシーです。彼はピエロの「ポゴ」に扮して福祉施設を訪れる地域の人気者であり、子どもたちからも慕われていました。それを逆手にとって9歳から20歳までの男子を誘い込み、性的暴行を加え、殺していました。

ピエロに扮することが多かったことから、キラー・クラウンの異名を持ちます。被害者は33人に及び、当然、死刑となっています。彼が刑務所で描いたピエロの絵は一部マニアの間で高い人気を誇っていて、展示会が開かれたり、高値で取引されています。俳優のジョニー・デップも購入しています。

ジョンは心臓疾患を持って生まれ、父親はそのことに失望し、ジョンに対して虐待をします。最終的には家族を追い出されましたが、それでもジョンは自信を罵倒し続けた父親を心から愛していて、いつかお父さんに認めてもらおうと一生懸命に働きました。ゲイシーは結婚をしますが、その後、反自然性交の容疑で逮捕されます。

服役中に離婚を提訴され、結婚生活は終わります。刑務所内では模範囚であったためゲイシーは懲役10年の判決にも関わらず、わずか16か月で出所となります。しかし、服役中に父親が肝硬変で亡くなり、目標を失いました。釈放後半年でゲイシーは少年に対する暴行容疑で再逮捕されますが、原告が裁判に姿を見せなかったことで不起訴となります。

ある夜、自分が拾った青年とベットを共にします。早朝に目を覚ますと、その青年がナイフを持って立っているのを見て恐怖からパニックを起こし、格闘の末に刺し殺してしまいます。青年はゲイシーのためにサンドイッチを調理しており、彼はナイフを持ったままゲイシーを起こそうとしていたのでした。青年を刺し殺してしまったゲイシーは大きく混乱し、死体を床下に隠しました。これ以降、殺人が習慣となっていきます。

ゲイシーはその後二度目の結婚をします。彼女の連れ事も一緒に暮らし、地域でも尊敬される存在となりました。しかしその後もゲイシーは少年たちを家に誘って強姦、殺害を繰り返していました。そして二度目の離婚をし、そこからも犠牲者は増え続けました。

ゲイりーを怪しく思った刑事は、大きな罪で逮捕して家を調査しようと決めていました。やがてガソリンスタンドでゲイシーが顔なじみの従業員にマリファナを渡していたことを聞き込みで知り、麻薬不法所持の現行犯で逮捕し、家宅捜索令状を手に入れ、ゲイシーの自宅に入りました。強制捜査の結果29人の遺体が床下から発見されました。遺体は腐敗しきっており、強烈な悪臭と病気の感染との戦いとなりました。

イットのピエロ、ペニーワイズを90年代版で演じたのは俳優のティム・カリーです。バーミンガム大学とケンブリッジ大学で演劇と英文学を学び、卒業後に舞台「ヘアー」に出演します。声優としての出演作品も非常に多く、また歌手でもあり自分のバンドを率いてツアーを行ったりしていました。2012年に脳梗塞に襲われ、現在は俳優業はしておらず車いすで生活しています。

90年代版では原作よりも深くピエロ像にフィーチャーしており、淀んだ眼と空虚な笑顔に加え、ピエロらしいカラフルな衣装も印象的でした。17年版のペニーワイズと比べると現実的な怖さがあると言えます。17年版ではビルというイケメン俳優が演じています。俳優の違いで映画にも大きな影響を与えています。

2017年のイットのピエロ、ペニーワイズを演じたのはイケメン俳優のビル・スカルスガルドです。監督のアンディは「オーディションでのビルの演技に魅了された。ビルの表情には狂気が宿り、その仕草からは完全に不穏なものがにじみ出ていた。この役には肉体的に消耗させられる点もありましたが、ビルには脱帽。彼のエネルギーはつねに全開だった。」と述べています。

また、初期段階からペニーワイズは外斜視を考えており、片方の目が別の方向を向いている特殊なルックスを持たせたかった監督は、それをビルに話したら『それならできる』と言ってその場で見せたそうです。彼はペニーワイズに適任だったのでしょう。監督からも子役からも大絶賛のビルは、素のイケメンさを忘れてしまうほど不気味です。

そんなビル自身も、ペニーワイズを演じるにあたり「子供のころから原作とペニーワイズというキャラクターに慣れ親しんできた。彼が子供たちを手に入れるには、子どもたちに自分たちが見ているものを信じさせ、怖がらせる必要がある。恐怖が肉体をよりおいしくするから。それは自分としては一番恐ろしいコンセプト」と語っています。イケメンな彼からは想像のつかない恐ろしい役者根性が出ています。

イットそれが見えたら終わり。は大人も逃げ出したくなるような怖さの映画ですが、なぜここまで反響を得たのでしょうか。それはイットのピエロのペニーワイズのキャラクター性にあると言えます。また、イットのペニーワイズを演じたイケメン俳優のビルはコンセプトも自分の中でしっかり持っており、本物のペニーワイズになりきっていました。夢に出てきそうな彼の姿を見てみてはいかがでしょうか。