2019年03月12日公開
2019年03月12日更新
過去のない男のあらすじと結末は?映画の感想や音楽・名セリフも紹介
過去のない男は心温まる映画です。本記事ではあらすじ&結末をネタバレします。物語のあらすじは記憶喪失の男が貧困層の人々に囲まれながら前を向いて生きていくというもの。あらすじや結末のネタバレが感動的なため「心が温まる」という感想の多い作品です。映画の感想ネタバレや名シーンのネタバレ。記憶喪失の男の結末とは?イルマとの恋の結末とは?結末はすっきりしない?あらすじと結末から考察できるメッセージや感想もネタバレします。過去のない男の感想、あらすじや結末のネタバレを徹底調査しましたのでぜひご覧ください。
過去のない男とは?
映画過去のない男の作品情報
過去のない男は2002年に制作されたフィンランド、ドイツ、フランスの映画です。コンテナで暮らす労働階級の人々のところに、記憶を失った中年の男がやってくる作品です。監督はアキ・カウリスマキ。日本の「クレージーケンバンド」の音楽が使われていることで有名な作品です。
映画過去のない男のキャスト
過去のない男の主役を演じるのはマルック・ペルトラ。作中ではMと呼ばれています。日本では「かもめ食堂」などに出演されています。2007年12月31日に亡くなられています。主な代表作はこの「過去のない男」です。
そしてヒロイン役を演じるのは、カティ・オウティネン。フィンランド出身の女優さんです。アキ・カウリスマキの作品に多く出演していて、何があっても無表情な演技をするカティ・オウティネンはフランス映画でも活躍しています。カンヌ映画祭では、過去のない男で女優賞を獲得しています。
過去のない男の予告動画
過去のない男は、映画ファンの中で密かに人気です。監督はアキ・カウリスマキ監督。それまではオカルト映画をとる監督として認知されていましたが、「過去のない男」で有名になったことを契機にさまざまな作品を撮り始めました。
アキ・カウリスマキ監督の代表作となる「顔のない男」。記憶喪失で過去を失ってしまった中年の冴えない男は記憶を取り戻すのでしょうか?かっこいい音楽や、映画「過去のない男」の名セリフにも注目です。
過去のない男の映画あらすじをネタバレ
過去のない男あらすじネタバレ:記憶喪失
何かの目的があってやってきた男は突然暴漢の3人組に襲われてしまいます。頭を殴られて目が冷めた時には、男は自分が誰なのか思い出せません。身分証明書のはいった財布も暴漢に取られてしまったため、自分が誰なのか確認することもできません。自力でなんとか病院に着きますが、そこで力尽きてしまいました。そのため医者には死亡と判断されてしまいます。
男は医者がいなくなった後にむくりと起き上がり、生き返ってしまうのです。そしてまた街をさまよい辿り着いた岸辺で倒れてしまいます。男は岸辺の近くに住む貧しい子供達に助けられ、彼らの両親に看病をしてもらいます。少し調子がよくなってきた男に対して、子供の両親らは「誰なのか?」「どこから来たのか?」と質問をしますが、男は頭を暴漢に殴られ全てを忘れてしまっているため、答えられません。
過去のない男あらすじネタバレ:金曜のディナー
岸辺に住んでいる仲間たちに誘われて金曜日のディナーに誘われます。豪華な食事が待っている訳ではなく、そこには救世軍が行なっている炊き出しに群れる人だかりがありました。そのなかで男の気を引いたのが救世軍のイルマという人物でした。男は働くところはおろか、住むところがありません。そのため、地元の警察に住むところを提供してもらいます。
過去のない男あらすじネタバレ:職安も門前払い
しかし、警察というもののそれは悪党で、紹介されたコンテナは最近凍死者がでたコンテナでした。男は淡々とそのコンテナを綺麗にして、まわりの畑に芋を植えたりします。なんとか自給自足で生活できるようになりました。救世軍から衣類を恵んでもらいます。金を得るために職を探そうと、ハローワークにも出かけますが、男には過去も名前もありません。
保険証の番号がわからない男に働き口はなく、門前払いにされてしまいます。職がない男はコンテナの家賃が払えません。警察に正直にそのことを伝えると交換条件を提示されました。飼っている凶暴な人食い犬の餌やりをして世話をする代わりに、家賃の支払いを待ってくれるというのです。
過去のない男あらすじネタバレ:強盗
コンテナの生活に慣れてきた男はしつこく惚れた相手のイルマをデートや食事に誘います。預かっている人食い犬は男に懐いており、周りの住民とも仲良くやっているうちに、男の無くした過去の記憶が戻ってきたのです。鉄の溶接の仕事を男が任された時に気づいたのですが、男は手際が良く溶接が得意であるようなのです。この特技を生かして、職にもありつくことができました。
過去のない男の結末ネタバレ:男の正体がわかる
「名前がなくても適当にでっち上げて、銀行口座をつくれ」と上司に言われて銀行に向かいました。しかし、不運なことに銀行に強盗が入ったのです。男は警察署に連れて行かれ「強盗の仲間ではないか」と怪しまれます。容疑が晴れず、警察署から出れない日々が続きます。その事件の容疑者として、新聞に男の顔写真が掲載されました。すると、男の妻だという女性から連絡が入り、男の正体がわかったのでした。
過去のない男の結末ネタバレ:妻のところにもどる
男は自分に妻がいることがショックでした。イルマが自分の初恋の人だと思っていたからです。実は無表情なイルマですが、大変ショックを受けています。実はイルマも男のことが好きだったからです。男は自分の本当の自宅に戻ると、妻との結婚生活は喧嘩ばかりだったことが告げられます。
過去のない男の結末ネタバレ:イルマと男
そのため、離婚の手続きをしていたのですが、その間に男は記憶喪失になってしまったのです。離婚はすでに成立していることを知らされ、さらには妻には新しい恋人がいることを知らされるのです。新しい恋人にイルマは「彼女を大切にしてあげてください」と伝えます。そして、男は初恋の人、イルマのところに行くのでした。
過去のない男を観た人の感想や評価は?
過去のない男を観た人の感想1
カウリスマキを観直そうシリーズ『過去のない男』
— dita (@ditagrapefruit) February 24, 2019
映画史上最も可愛いハンニバル!過去も金も名前もない男の周りには優しさと愛と情けがある。無理なんてしなくてもいい、ほんの少しの優しさでじゅうぶんだ。神が慈悲をかけなくても警察や役所に邪見にされても、カウリスマキは決して人を見捨てない。 pic.twitter.com/K87jewIgFY
映画「過去のない男」の評価や感想では、厳しい環境で懸命に生きる人々が描かれているという意見が多いです。アキ・カウリスマキ監督はそういった打ちひしがれたけれど一生懸命に生きる普通の人を描くことを、日本の映画監督の小津安二郎に学びました。
自分の作る映画にも、厳しい環境の中で懸命に生きる人々を登場させています。映画「過去のない男」の名言の一つに、「人生は後ろに進まない」というものがありますが、これも貧困の中を生きる人々の明日を支えるセリフになっています。
過去のない男を観た人の感想2
カウリスマキは『過去のない男』がハートフルな人間賛歌で、落ち込んでいるときに見ると励まされる作品なので大好きです。あと列車で食う寿司が全然うまくなさそうです。 pic.twitter.com/dmimHOxwJu
— 黑松 (@PONKOTSUforever) December 24, 2017
日本人や、日本の文化に関心が高いのがアキ・カウリスマキ監督の特徴です。映画「過去のない男」のワンシーンでは、汽車に乗っている過去のない男が寿司を食べるシーンがあります。いかにも不味そうな寿司という感想がありましたが、これはアキ・カウリスマキ監督の日本への憧れが感じられるワンシーンです。また、映画「過去のない男」に登場してくる人物は皆、貧困層。これはほかの国からきた難民の問題も取り扱っています。
母国から訳あって逃れてきた難民ですが、逃げた先の国でも働く場所や最低限文化的な生活を与えられていないという社会構造を描いています。それでも、一生懸命に生きる人々に対して同情や勇気をもらうという意見が多数みられました。カンヌ映画祭で受賞した作品だけあって、様々な角度から映画について言及することができます。
過去のない男を観た人の感想3
『過去のない男』
— cosmo (@cosmo_em) March 4, 2019
無表情、ロボットみたいな動き、くさいセリフ(笑)、淡々と進むストーリー。
そして、寿司、日本酒、ハワイハワイ~🎶(笑)
全体的に漂うシュールな雰囲気に魅了されてしまった、監督の他作品もぜひ観よう、うん👍
なんにせよ、ワンコが可愛すぎ🐕💕#映画 #コメディ #フィンランド pic.twitter.com/n11NTiasC1
映画過去のない男の特徴として挙げられるのが上のコメントでもあるように、「無表情、ロボットみたいな動き、くさいセリフ」などです。物語を楽しむというより、映画の中の雰囲気を楽しむ作品だという感想を抱かれた方が多いのではないでしょうか?唐突に登場してくる日本の寿司や日本の音楽などにも必見です!
過去のない男を観た人の感想4
「かもめ食堂」。「コーヒーは人にいれてもらう方がうまいんだ」のマッティはマルック・ペルトラ。アキ・カウリスマキ「過去のない男」主演。本作は2006年の映画だが、フィルムが消耗しているように見えた。上映回数が多いということか。作品のトーンに対して音楽が大きすぎると感じたところが数箇所。
— タカラカニ・エンゼッツ (@nsetz) February 10, 2019
過去のない男で主演のマルック・ペルトラは実は日本の映画にも登場しています。2006年に公開された群ようこ原作の「かもめ食堂」では、舞台となる食堂にふらりと訪れた外国人の役を演じています。
過去のない男の音楽について
カウリスマキの映画は音楽が魅力
アキ・カウリスマキ監督の魅力としてあげられるのが、使われている音楽。映画「過去のない男」ではアキ・カウリスマキ監督が大好きな日本の音楽が作中でつかわれています。どのような音楽が使われているのでしょうか?紹介します。
映画過去のない男の音楽①悪魔に追われて
救世軍のバンドが夜にライブで演奏する音楽「悪魔に追われて」という曲。炊き出しで集まる人々を楽しませるためのバンド演奏は、人々を喜ばせます。このシーンではカウリスマキの映画の「優しさ」が滲み出る名シーンなので、ぜひご覧ください!
映画過去のない男の音楽②思い出のモンレポ公園
貧しい人々に炊き出しを行う救世軍。お金も職もない男は同じコンテナに住む難民と混じって、炊き出しのご飯を待ちます。この炊き出しは金曜のディナーと呼ばれている、貧民層にとってはご馳走。そんなひと時をより楽しむために、救世軍はカセットで音楽をならします。上司が歌う「思い出のモンレポ公園」。実はこの上司、女優ではなくフィンランドの歌手です。
映画過去のない男の日本の音楽も使用
アキ・カウリスマキ監督は日本の音楽にも関心が深く、映画「過去のない男」ではクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」も使われています。欧州で作られたこの映画ですが、日本の音楽は合うのでしょうか?ハワイの夜は日本語の歌詞がなく、かっこいいサウンドのため、映画に挿入される音楽としてぴったりと話題になりました。
過去のない男の魅力
素敵な登場人物
登場する中心人物は、皆やさしく、どこの骨かわからない主人公の男に看病してやったりします。貧困層で生きる人々は日々の暮らしも精一杯であるのに、男に対して寛容です。これはアキ・カウリスマキ監督の作品のすべてに共通することですが、アキ・カウリスマキ監督の作品には根っからの悪い人は登場しません。登場するのは良い面と悪い面を持ち合わせた人々で、酔っ払いの夫も登場しますが、慈愛深い一面を持ちます。
アキ・カウリスマキ監督がインタビューで答えるには、小津安二郎を尊敬しているとのこと。なぜ尊敬しているかというと「人生の根源を描くとき、一度として殺人や暴力や銃を使わなかったことです」と答えていました。映画「過去のない男」でも暴力や強盗は登場しますが、それは一場面に限り、作品の底辺に流れているのは、「人々の優しさ」です。
パルムドッグ賞を受賞
パルムドック賞とは映画で活躍した俳優の犬たちにおくられる賞です。パルムドール賞のように映画の中で特に優れた演技をした犬に送られます。このパルムドック賞を受賞したのが、映画「過去のない男」に登場する一匹の犬。警察に飼われていた犬です。コンテナ住居の家賃が払えない、身分不明の主人公の男。一週間ごとに請求される家賃は、働けない男にとってどうしようもないものでした。
払えないと男が正直に答えると、警察は「この犬の面倒を見てくれるなら家賃を待ってやってもいい」と言います。犬は人喰い犬という設定でハンニバルという名前です。主人公の男と生活してくハンニバルはだんだん、男に慣れていきます。この犬の演技が評価され、カンヌ国際映画祭の場で、犬は「パルムドック賞」を与えられました。
名演技をするこの犬ですが、実は雌犬。ハンニバル役の犬の孫にあたるのが、2011年に作られたキ・カウリスマキ監督のコメディ映画「ル・アーヴルの靴みがき」でライカ役を演じている犬です。アキ・カウリスマキ監督の映画には犬が常に登場します。
カティ・オウティネンもアキ・カウリスマキ監督の映画では常連の女優さんですが同じぐらい犬が登場します。その共通点は、無表情であること。映画「顔のない男」に登場する犬もほとんど吠えたりしません。寡黙で戸籍がないために虐げられる男の様子をじっと見守っています。犬が多く登場するアキ・カウリスマキ監督の他の作品もぜひ見てみてください。
過去のない男の名セリフ
映画「過去のない男」の映画の中では多くの名台詞が登場します。その中でも極めて印象的だとされて、有名なセリフがあります。記憶を失ってしまった男がコンテナの家を手に入れ、部屋の整備をして環境を整えているシーン。男はコンテナ内に電気を通して明かりのある生活をしようとします。そこに同じ貧困層の電気業者の男がやってきました。電気業者はコンテナから一番近いところにある電柱から電気をもらいます。
コンテナに灯りが付くようにしてくれたのです。過去のない男は反射的に「お礼は?(なにかいるか)」と聞くと、電気業者の男は「俺が死んだら情けを」と答えます。このセリフは映画「過去のない男」のなかで印象的なセリフとされています。記憶をなくした男に住む場所や風呂場、食事を与える人々。貧しいために自分のことで精一杯であるはずなのに、優しさがしみるシーンです。
作品のメッセージ
人生は前にしか進まない。映画「過去のない男」のポスターにかかれている言葉です。この映画は、過去を記憶喪失で失った男が自分の過去を取り戻すまでが描かれているわけはなく、ただ貧しいコンテナ暮らしで職につくこともできない現実が描かれています。記憶が戻ったりすることは、二の次で「今目の前にある生活をどうするか」という点においては誰も同じであるというメッセージが感じられるのではないでしょうか?
一方、記憶を取り戻した男でしたが、本来の妻とはやり直しがききません。離婚はすでに成立しているため「人生を前に進める」しか選択肢はないのです。それは過去が人にあるか、ないかにかぎらず、人生には明日(前)しかない。というメッセージが読み取れます。
男を客観的に見れば、ただただ悲惨です。暴漢に襲われ気を失った上に妻に振られるという悲惨この上ない状況です。しかし、前を向き、初恋の人であるイルマを迎えに行くラストは、感動的です。必死で生きる男やまわりの貧困層の人々の姿に勇気がもらえるのではないでしょうか?
過去のない男の映画ネタバレまとめ
過去のない男のあらすじと結末は?映画の感想や音楽・名セリフも紹介いかがだったでしょうか?貧しい中でも生きる人々、そして魅力的な音楽に勇気のもらえる作品なのでぜひご覧ください!