許されざる者はクリント・イーストウッド監督の傑作映画!ネタバレ感想や評価は?

『許されざる者』は'92年公開のアメリカ映画です。クリント・イーストウッドが監督と主演を兼務し、彼が師と仰ぐドン・シーゲルとセルジオ・レオーネに捧げられました。映画監督クリント・イーストウッドの代表作であり「最後の西部劇」とも言われています。この作品で彼は第65回アカデミー賞監督賞と作品賞を受賞しています。そんな映画史上にも残る傑作、『許されざる者』のネタバレあらすじ、感想や評価、さらには俳優としても監督としても圧倒的存在感を示すクリント・イーストウッドについて詳しく紹介していきます。

許されざる者はクリント・イーストウッド監督の傑作映画!ネタバレ感想や評価は?のイメージ

目次

  1. 許されざる者(映画)をネタバレ!クリント・イーストウッドの傑作映画の感想・評価は?
  2. 許されざる者(映画)とは?
  3. 許されざる者(映画)の監督・クリント・イーストウッドについて
  4. 許されざる者(映画)のあらすじをネタバレ解説!
  5. 許されざる者(映画)の結末をネタバレ解説!
  6. 許されざる者(映画)のキャスト一覧
  7. 許されざる者(映画)の感想・評価をネタバレ紹介!
  8. 許されざる者(映画)を是非ご覧あれ!

許されざる者(映画)をネタバレ!クリント・イーストウッドの傑作映画の感想・評価は?

クリント・イーストウッドが監督・主演を務めた、最後の西部劇ともいわれる映画『許されざる者』。クリント・イーストウッド役者人生の原点である西部劇の集大成、この傑作映画のネタバレあらすじから映画ファンの感想や評価までお届けします。

許されざる者(映画)とは?

『許されざる者』は1992年公開のアメリカ映画です。監督・主演は、西部劇を知り尽くした男、クリント・イーストウッドが兼務しています。アカデミー賞 作品賞を受賞していますが、これは西部劇としては3作目となる偉業です。

クリント・イーストウッドはこの映画『許されざる者』の構想を10年以上温めていましたが、自身が主人公と同年齢になるのを待っていたためとされています。この映画にかけるイーストウッドの思いが伝わってくる逸話です。

許されざる者(映画)の監督・クリント・イーストウッドについて

『許されざる者』で監督・主演を務めているクリント・イーストウッド。俳優業だけでなく監督として携わった作品も大ヒットし高く評価されているのはご承知のとおりです。今回はその監督業にスポットを当て、彼の魅力に迫ってまいります。

監督クリント・イーストウッドのプロフィール

クリント・イーストウッドの経歴につては、改めてご紹介するまでもないでしょう。下記のキャスト紹介でも記しているとおり、1932年アメリカ生まれの映画俳優、映画監督、映画プロデューサー、映画音楽作曲家、政治活動家とさまざまな顔を持つ映画界の巨人です。ただ、アカデミー賞やゴールデングローブ賞など世界に冠たる映画賞でのイーストウッドの受賞歴をみると、その多くが監督としての受賞であることに驚かされます。

クリント・イーストウッドは、俳優としてアカデミー賞受賞の栄誉を受けていないことを冗談めかして次のように述べています。

私が決してオスカー賞を受賞できない理由を知っていますか?まず第一に、私がユダヤ人ではないから。第二に、アカデミーの古臭い奴らのために金を作り過ぎるから。そして最も重要な理由は、私が審査員と寝ていないからです。(1970年代のクリント・イーストウッドのアカデミー賞レースについてのコメント)

このように、あれだけ大ヒットした映画に次々と主演し、個性的な演技で一世を風靡したクリント・イーストウッドは、俳優としては一度もオスカー像を手にしたことはないのです。他人が作る映画に出ているだけではダメだ、という思いに突き動かされたのか、クリント・イーストウッドは40歳を過ぎた’70年ごろから映画制作に積極的に取り組むようになります。

監督デビュー作『恐怖のメロディ』

クリント・イーストウッドが演じるのはラジオ局のスターDJデイブ。彼の番組に、決まった時間に同じ女が同じ曲「ミスティ」をリクエストします。ある日、デイブは仕事帰りにバーでイブリンという女と出会います。そのイブリンこそ彼のラジオ番組でリクエストを繰り返していた女でした。二人は一夜限りの情事をもちますが、やがてイブリンは勝手に彼の自宅に押しいり、何食わぬ顔で居すわる様になります…。

その後、凄惨な結末が待っているわけですが、主人公に異常なまでに執着する、今で言う「ストーカー」の恐怖を描くスリラーです。この作品が公開された'71年当時は、まだストーカーという概念が社会に浸透していなかった時代です。クリント・イーストウッドが描くスリラーは、時代を先取りして人々の心をつかみました。なお、この映画には、クリント・イーストウッドが師と仰ぐドン・シーゲルがバーテンダー役で出演しています。

超話題作を次々に制作

監督デビュー作での高い評価に支えられ、クリント・イーストウッドは2作目の制作に着手します。『フレンチ・コネクション』でアカデミー脚色賞を受賞したアーネスト・タイディマンを起用した。’73年公開の『荒野のストレンジャー』です。評価には賛否両論ありましたが、興行収入800万ドルと成功を収めます。作品中に見られるブラックユーモアは、もう一人の師、セルジオ・レオーネの影響と言われています。

その後も、家族のきずなをテーマとした『アウトロー』や『ブロンコ・ビリー』といった話題作を世に送り出しますが、何といっても監督クリント・イーストウッドの転機となった作品は、今回ご紹介している映画『許されざる者』でしょう。俳優としては手にすることのなかったオスカーを監督賞・作品賞とダブル受賞します。また、ゴールデングローブ賞でも監督賞の栄誉に輝いています。

『許されざる者』でダブルオスカーを獲得したころから、文芸作品にも意欲的に取り組み、『マディソン郡の橋』や『ミスティック・リバー』を制作します。さらには74歳のとき『ミリオンダラー・ベイビー』で2度目のアカデミー作品賞/監督賞をダブル受賞し、監督として頂点を極めた感があります。こうした実績により「アクションから文芸ものまで幅広く手がける監督兼俳優」という評価が衆目の一致するところとなりました。

許されざる者(映画)のあらすじをネタバレ解説!

いよいよここからが本題です。映画『許されざる者』のあらすじをネタバレ解説してまいります。

映画『許されざる者』は、ある貧しい農村が舞台となります。ある日、貧しい農夫のもとに一人の若者が訪ねてきます。若者は男にある町で起きた、娼婦たちが絡んだ賞金首の話をします。農夫は、3年前に妻に先立たれ今は残された子供たちと静かに暮らすどこにでもいるような男でしたが、実はかつて多くの人々を容赦なく殺した伝説のならず者だったのです。そんな男が金のため、亡き妻との約束で封印していた銃を再び手にします。

第1幕

まずはネタバレ解説、序章からです。美しい女性クローディアが、かつての無法者の夫と子供たちを残し非業の死を遂げて幾星霜、中西部のある町で事件が起こります。娼館に来ていたカウボーイが、娼婦の顔をナイフで切り刻むいう凄惨なものでした。カウボーイの名はマイク、被害者である娼婦の名はディライラといいました。

”商品”に傷をつけられたといって娼館の店主が怒り出したため、駆けつけた保安官のリトルビルはマイクと連れの男を捕えます。リトルビルは2人に厳罰を課すことなく、7頭の馬を賠償として持って来るよう言いつけ釈放してしまいます。この処分を承服できない姉御肌の娼婦アリスは、仲間と金を出し合い2人の首に1000ドルの賞金をかけます。ここまでが事件のあらましとなります。

賞金の噂を聞きつけた若者キッドは、かねてから凄腕と評判のマニーに賞金稼ぎの相棒にならないかと誘いをかけます。マニーは昔はならず者で売っていましたが、クローディアを妻にめとると裏稼業から足を洗い、農夫として堅実に生きていました。クローディアの死後は、幼い息子と娘を育てながら男やもめを通しています。

マニーは、キッドが持ちかけてきた儲け話を一旦は断ります。しかし、現実の極貧生活に疲れていた彼は、結局お金の魅力に勝つことはできませんでした。マニーは家の奥にしまっていた銃を取り出します。

今までに見たことのない父の行動を目にした子供たちは怯えます。そんな子供たちにマニーは、人を乗せようとしない駄馬やこの貧しい生活は皆、無法者だった自分への天罰だと言い、母さんが父さんをまともな人間に変えてくれたんだと説明します。それから銃を手にしたマニーは、子供たちに3週間で戻ると言い残し、家を後にします。

マニーは、途中で無法者時代からの知り合いネッドを誘います。ネッドはマニーの気心の知れた相棒で、マニー同様今は妻と農場で貧しいながらも平和に暮らしていました。マニーの誘いに最初は反対したネッドでしたが、やは金の力には逆らえずマニーとともにワイオミングを目指すことを決めます。

ネッドから協力の確約を得たマニーは、話を持ち込んできたキッドを追い返してしまいます。こうして2人の賞金稼ぎの旅が始まりました。道中マニーは、子供たちのために金が必要だからやるのであり、決して昔の自分に戻るわけではないとキッドに説明します。昔のマニーを知るネッドは、ひとこと感慨深くつぶやきます。「お前はまともになった」。

第2幕

ネタバレ解説2幕は、いよいよ賞金稼ぎたち一堂に会す場面です。娼館のある町に賞金稼ぎたちが続々と集まってきます。町の保安官リトルビルは、娼婦アリスがカウボーイ2名に賞金をかけたという話を聞き、町の入り口に「銃の持ち込み禁止、銃を持つ者は保安官事務所に預けるべし」という看板を立てます。

賞金稼ぎの話を聞いて、凄腕ガンマン・イングリッシュ・ボブがやってきます。彼は自分の伝記を書かせるため作家のブーシャンプを帯同していました。そこへ保安官のリトルビルが現れますが、彼の顔を見るとイングリッシュ・ボブの表情が変わります。殺し屋稼業の長いボブは、リトルビルの恐ろしさをよく承知していました。

案の定ボブは、見せしめとしてリトルビルにこっぴどくぶちのめされます。リトルビルは、正義の名のもとにならず者や賞金稼ぎに対して容赦のない仕打ちを平気で行える人間でした。賞金稼ぎたちの目の前で凄腕イングリッシュ・ボブを痛めつけることで、リトルビルは町の混乱を回避することに成功しました。

マニーたちは町に向かう途中、突然銃撃を受けます。銃撃はデタラメな撃ち方で、マニーたち2人は互いに顔を見合わせます。なんと撃ってきたのは、マニーに最初に話を持ちかけた若者、キッドでした。キッドはマニーが自分以外に相棒ネッドを勝手にいれたことに不満を漏らしますが、マニーはなんとか説得します。

マニーとネッドが野営していると、後から来たキッドはマニーたちに過去の悪行を尋ねますが、 2人は話そうとはしませんでした。そして逆にキッドにいままで何人殺したかを聞きただします。キッドは5人殺したと自分の悪行を誇示しますが、2人は相手にせず床につきます。

マニーはブーシャンプに銃撃戦の難しさを力説します。それからマニーは、ブーシャンプに銃を渡すと銃口を自分に向けさせます。しかしブーシャンプは、なぜか身の危険を感じ引き金に触れることすらできません。彼は牢屋にいるボブに銃を渡そうとしますが、ボブもまた受け取りませんでした。結局マニーは銃を取り上げると弾を抜き取ります。そして2人に向かって、もしお前たちが銃を手にしていたら撃ち殺していたと打ち明けます。

嵐がひどくなったのでマニーたちは、夜が明けるのを待たず町に向けて出発します。ネッドはマニーに、キッドが人を殺した経験があるか尋ねます。答えは「ない」でした。町に着くと拘留されていたボブが釈放されます。伝記作家のブーシャンプは、ボブの伝記をあきらめマニーに鞍替えします 。それを見て賞金主の娼婦アリスは「マニーがいれば誰も賞金を狙いに来ない」と意味深に言うのでした。

第3幕

ネタバレ解説3幕は、賞金首狙いにマニーが加わるところからです。マニーたちは、夜のうちにビッグ・ウィンスキーの町へ到着します。しかし長雨にさらされ、マニーの具合は悪そうでした。雨漏りがひどい中、マニーは自分のこれまでの悪行をブーシャンプに話し、伝記を執筆させます。

賞金のことを聞きに行ったキッドを待っている間にも、マニーの具合はどんどん悪化していきます。彼は突然、銃で殺した男が見えたと口にします。しかしそれは、目の前を通っていったボブを見間違えただけでした。

無法者が町にやってきたという話を聞いて、保安官リトルビルはスキニーの店へ入ります。リトルビルは町の法律を盾に銃を渡すようマニーに命令します。マニーは、銃など持っていないと白々しく嘘をつきます。リトルビルはマニーが銃を隠しているのを暴くと、病気で弱った身体のマニーを容赦なくぶちのめします。

娼婦たちは、リトルビルに見つからないようにネッドたちを逃してやります。マニーはなんとか自力でスキニーの店を出ます。ネッドたちはマニーを助けると一緒に隠れ家に向かいました。ネッドはかいがいしくマニーの手当てします。一方キッドは反撃すらしなかったマニーに冷ややかな眼差しを向けます。当のマニーは高熱にうなされ死の恐怖に怯えていました。うわ言で、自分の過去を誰にも話すなと言います。

ディライラの看病の甲斐あってマニーの意識が戻ります。ディライラはマニーに賞金の前借りをするかと聞きます。賞金の前借とは、女を買うかという意味でした。マニーはそれを断ります。ディライラは、顔がキズ付けられ醜くなっていることを気にして「相手をするのは私ではなくアリスかシルキィ」と伝えます。マニーは、妻を裏切るようでできないと言い訳し、「君はきれいだ、もし選ぶとしたら君を選ぶ」と答えました。

カウボーイたちが牛を追っていると、突然銃撃を受けます。彼らは物陰に隠れますが、狙われたカーボーイ、デービーは馬を打たれ倒れた時に足を折って身動きが取れなくなってしまいます。マニーはネッドにとどめを刺すように命令します。しかしネッドは渋るように顔をしかめて、ライフルをマニーに渡してしまいます。マニーはライフルを受け取ると、デービーに銃口を向け急所を撃ちぬきました。

デービーの状態を尋ねるキッドに、この男はすぐ死ぬだろうとマニーは顔色一つ変えずに告げました。苦しむデービーは、最後に水を飲ませてくれと頼みます。マニーはデービーの仲間に水を与えることを許しますが、ほどなく彼は息絶えました。

なんとか逃走に成功したマニーたちでしたが、ネッドが突然仲間から抜けると言い出します。目的のマイク殺しが残っていましたが、ネッドの意志は固くマニーの説得も聞き入れません。賞金はいらないと言うネッドでしたが、マニーは賞金はきちんと3等分して渡すと伝えます。ひとりでカンザスへ向かったネッドは、道中カウボーイたちに捕まり保安官リトルビルのもとへ連れて行かれます。

リトルビルはネッドの拷問を繰り返し行い、マニーたちの居場所を白状させようとします。しかしネッドは拷問にも屈せず、口を割ろうとしません。リトルビルをしだいに苛立ち始めます。

一方、マニーとキッドは牧場に向かいます。2人は、賞金のかかったマイクが仲間たちと隠れている小屋の周辺で殺害のチャンスを待っていました。ネッドが捕まって安心しきっていたマイクは、外のトイレへ用を足しに出てきます。マニーはキッドにマイクを殺すよう指示します。キッドは躊躇しながらも、用を足しているマイクに至近距離から銃弾を撃ち込みます。マニーの方はマイクの仲間たちを撃ち殺します。

第4幕

ネタバレ解説4幕は、いよいよクライマックス、マニーvsリトルビルです。マニーたちは、ディライラが賞金を持って来るのを待っていました。やがてディライラがあらわれ、ネッドが死んだことを伝えます。保安官リトルビルから過酷な拷問を受けた末に殺され、遺体がスキニーの店の前でさらされていることを聞くと、マニーは体の内から怒りの炎がメラメラと燃え上がってくるのを感じました。

マニーは、人殺しはやりたくないというキッドから銃を受け取ると、賞金を子供と死んだネッドの妻に渡すよう頼んでからスキニーの店へと向かっていきます。マニーが到着すると、リトルビルたちは酒宴を繰り広げている最中でした。店の前にさらされたネッドの遺体には「賞金稼ぎの末路」という看板までかけられていました。

マニーはまず店主スキニーを撃ち殺し、リトルビルと向き合います。マニーが引き金を引いたものの銃は不発、リトルビルは余裕で応じますが今度は弾を外してしまいます。マニーはキッドの銃でリトルビルと部下4名を撃ち殺します。マニーは外へ逃げた男たちに「ネッドを埋葬し娼婦を人間らしく扱わないと皆殺しにするぞ」と言い残して姿を消します。

亡き妻クローディアの母親は、マニーが子供たちと西海岸へ移住し成功を収めたらしいという噂を耳にします。そしてこう思います。「あの優しい娘が、どうしてあんなならず者と一緒になったのか」。

許されざる者(映画)の結末をネタバレ解説!

映画『許されざる者』の結末はどうなったのか、あらすじ解説でも簡単にご紹介しましたが、ここであらためてじっくりとネタバレ解説していきます。

ストーリーのおさらい

マニーとキッドは、賞金の受け渡し場所で女を待っていました。初めて人を殺したキッドは、その間ずっと酒を飲んでくだを巻いています。マニーは、そんなキッドに「お前は確かに人殺しをした」とダメ押しをします。キッドは人を殺したことを悔やんでいました。マニーは「人殺しは重大な罪だ」とさらに続けました。

そこにディライラが賞金を持ってやってきました。マニーが賞金を受け取り三等分するために金を数えはじめると、ディライラはネッドが死んだことを告げます。ネッドの死を知りマニーは驚きを隠せません。彼女はネッドが拷問の末死んだこと、その死体が娼館の前にさらされていることを伝えます。この話を聞き、マニーの復讐心に火がついたのでした。

ディライラは、ネッドが拷問の末にマニーの素性を話してしまったことを伝えます。実のところディライラはマニーに恐怖を感じていました。ネッドの話でマニーが無慈悲にも女子供まで虐殺したことを知ったからでした。ネッドは息絶えるとき、マニーが必ず復讐に来ると言い残しました。

マニーは、亡き妻との約束である禁酒を破り、酒を飲んでそれを聞いていました。マニーはキッドに銃を渡すよう言います。キッドは「人殺しは二度としたくない、あんたに任せる」と言うと銃を彼に渡しました。分け前もいらないと言うキッドでしたが、マニーはメガネでも買うようにと賞金を分け与えます。そして、「お前はおれが殺さないたった一人の友達だ」と伝えました。

マニーはキッドと別れると、一人で娼館へと向かいます。マニーたちは、1階の酒場で鋭気を養っていました。突然、撃鉄上げる音が聞こえ皆が注目します。マニーは店の主人スキニーにショットガンを向けると、ネッドを晒した報いと躊躇せず撃ち殺しました。保安官リトルビルは「お前が女子供を虐殺したあのマニーか」と尋ねます。マニーは「動く者は誰であれ皆殺しにしたと」答え、「今夜はお前が相手だ」と銃の狙いを定めます。

マニーが引き金を引いたものの銃は不発でした。これを逃さずリトルビルは素早く銃を抜きますが外してしまい、逆に別の銃で撃ち返したマニーの弾が当たります。それからと言うもの店中でガンマンたちによる銃撃戦が始まりましたが、最後に残ったのはマニーただ一人でした。残りの連中は、撃たれて死ぬか逃げていくかのどちらかでした。

やがて店内が落ち着きを取り戻すと、 無傷だったブーシャンプはマニーにいろいろと聞こうとしますが、マニーはブーシャンプを追い出してしまいます。その様子をまだ意識のあった瀕死のリトルビルが見ていました。彼はなんとか銃を取り構えますが、マニーに見つかってしまいます。マニーはリトルビルに「お前こそ本当の悪党だ」と言います。そして「地獄で会おう」とだけ付け加えると彼を撃ち殺してしまいました。

マニーは、店内に残っていた連中に「撃てば家族友人まで皆殺しにする」と言い残し外に出ていきます。マニーはネッドを丁寧に埋葬すること、娼婦たちを人間扱いすることを男たちに命じて去っていきます。皆もが恐怖をたたえた目で身動きもできず見送る中、ディライラの彼に向けた眼差しには何か暖かいものが感じられました。

マニーの亡き妻、グローリアの母親が彼の家を訪ねた時、彼はすでに旅立った後でした。母親には、優しい娘がなぜあんなならず者を好きになったのか、最後まで理解できませんでした。

最後の西部劇とは

クリント・イーストウッド監督の傑作映画『許されざる者』は、ときに「最後の西部劇」とか「西部劇を葬った作品」と言われることがあります。それは一体なぜなのでしょうか?

ハリウッドでは夥しい数の西部劇が制作されてきましたが、’90年代になって作る西部劇の意義とは何なのか?クリント・イーストウッドといえども悩んだことでしょう。彼はこの映画で従来の西部劇のイメージを根底から覆したと言われています。それまでの西部劇は、正義の味方・保安官が悪の無法者どもをやっつける、いわゆる勧善懲悪ものでした。クリント・イーストウッドは、当時の社会情勢をもっとリアルに描こうとしました。

従来の西部劇は、正義の保安官やガンマンが無法者に正義の鉄拳を下す、勧善懲悪ものと決まっていました。日本の時代劇にあたります。ところが、そうした伝統に反してこの作品は、ヒーローであるべき人物の隠された裏の姿まで描き出し、ヒーローなんて一皮むけばこんなものだという真実を見る者に突きつけるのです。

法の名のもとに自らの権力を誇示しようとする正義の味方、保安官の悪行が描かれます。そして、ならず者が正義の味方であるべき保安官を倒すのです。まさに『許されざる者』が、西部劇を殺したとか最後の西部劇といわれる所以でもあります。

許されざる者とは誰のことか

『許されざる者』では、罪を背負った人間が何人も描かれています。娼婦の顔をナイフで切りつけたカウボーイ、人殺しや強盗は数知れず女子供まで手にかけたという主人公・ウィリアム・マニー、かつての相棒ネッド・ローガン、スコフィールド・キッド、伝説の賞金稼ぎイングリッシュ・ボブ、正義の名のもとに残虐な拷問や処刑を繰り返す保安官リトルビルなどです。

登場人物がそれぞれに罪を背負っています。誰一人として従来の西部劇に登場した、清廉潔白な正義漢はいません。許されざる者とは誰なのか?に対する明確な答えは、人それぞれで一概には言えないのかもしれません。クリント・イーストウッドの言いたかったことは、主人公マニーがリトルビルに放ったひとことに集約されているのではないでしょうか。「お前こそ本当の悪党だ、地獄で会おう」

許されざる者(映画)のキャスト一覧

ここで、映画『許されざる者』のキャストを紹介しておきます。主役のならず者にクリント・イーストウッド、相対する保安官にジーン・ハックマン、脇を固めるモーガン・フリーマンにリチャード・ハリスとハリウッドの名優ぞろいです。

ウィリアム・"ビル”・マニー/クリント・イーストウッド

主人公マニー役は、ご存じクリント・イーストウッド。1930年5月31日、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ生まれです。映画俳優のみならず、映画監督、映画プロデューサー、作曲家、政治活動家といくつもの顔を持ち、文字通り八面六臂(ろっぴ)の活躍です。

俳優としては、’59年『ローハイド』を皮切りに数多くの西部劇やアクション映画に出演します。最大のヒット作は、ハリー・キャラハン役を演じた『ダーティハリー』シリーズでしょう。監督としても、この映画『許されざる者』や『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー作品賞と監督賞を受賞するなど高く評価されています。一方では保守派の論客として政治活動にも熱心で、カリフォルニア州カーメル市市長を1期2年間務めました。

リトル・ビル・ダゲット/ジーン・ハックマン

ジーン・ハックマンは、1930年1月30日生まれのアメリカ合衆国の映画俳優です。舞台やテレビ出演をしながら下積み生活を送っていましたが、ロバート・ロッセン監督に見出され、'64年『ハリス』で銀幕デビューをはたします。この映画で共演したウォーレン・ベイティに促され、'67年『ボニーとクライド/俺たちに明日はない』に出演し、アカデミー助演男優賞にノミネートされ一躍注目を集めました。

'71年には彼の代表作とも目される、『フレンチ・コネクション』でアカデミー主演男優賞を受賞します。その後、心臓病を患い引退も考えますが大手術の末に復活。'92年この映画『許されざる者』でアカデミー助演男優賞を受賞します。独特の存在感を漂わせる個性派俳優として主役から悪役まで幅広くこなします。

ネッド・ローガン/モーガン・フリーマン

モーガン・フリーマンは、1937年6月1日、アメリカ合衆国テネシー州メンフィスに生まれた、俳優、映画監督、ナレーターです。'04年クリント・イーストウッド監督の映画『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー助演男優賞を受賞します。その他『ドライビング Miss デイジー』『ショーシャンクの空に』『セブン』などの映画で見せた、安定感と味のある演技によって世界各国で賞賛を受けています。

また、フリーマンはナレーターとしての顔を持っており、'05年スティーヴン・スピルバーグ監督『宇宙戦争』やアカデミー賞最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞した『皇帝ペンギン』でのナレーションが有名です。

イングリッシュ・ボブ/リチャード・ハリス

リチャード・ハリスは、1930年10月1日生まれで 2002年10月25日に72歳で亡くなったアイルランドの俳優、歌手です。'58年に映画デビューを飾ると、'63年『孤独の報酬』でカンヌ国際映画祭男優賞受賞、アカデミー主演男優賞にノミネートされます。その後ハリウッドに進出し、大作ミュージカル『キャメロット』に主演し名前が知られるようになります。

以降順調に経歴を重ね、『カサンドラ・クロス』、『ワイルド・ギース』などアクション映画を中心に活躍しました。'90年の映画『ザ・フィールド』では、27年ぶりにアカデミー主演男優賞にノミネートされ、健在ぶりを示します。最晩年は『ハリー・ポッター』1作目と2作目で魔法学校の校長ダンブルドアを演じますが、'02年にリンパ腫で急逝。ハリーポッター2作目(ハリー・ポッターと秘密の部屋)が遺作となりました。

デライラ・フィッツジェラルド/アンナ・トムソン

アンナ・トムソンは、1953年9月18日生まれのアメリカ合衆国の女優です。彼女は、幼少のころ孤児院からニューヨークの資産家の養父母に引きとられるという経歴を持ちます。10代からモデルとして活躍していましたが、養父が事業に失敗すると家計を助けるためにさまざまなアルバイトで身を粉にして働きます。

ダンサーをしていた時にスカウトされ、'75年に女優デビューします。映画デビューは、’80年の「天国の門」。’92年この映画『許されざる者』の娼婦役で注目を集めます。その後、2000年ニューヨークを舞台にしたコメディ『ファストフード・ファストウーマン』に主演し、カンヌ国際映画祭で主演女優賞にノミネートされるなど高い評価を受けました。その他には、「ウォール街」('87年)、「トゥルー・ロマンス」(’93年)、「バッドボーイズ」(’94年)などに出演しています。

許されざる者(映画)の感想・評価をネタバレ紹介!

ネタバレ感想① 西部劇ロマンに溢れる

最後に『許されざる者』のさまざまな感想や評価をご紹介します。議論を巻き起こす傑作だけに感想や評価も賛否両論飛び交い、興味深いものとなっています。なかには、ネタバレありの感想・評価もありますのでご注意ください。

最初は、”西部劇ロマンに溢れる”という好意的な感想です。俳優としてのクリント・イーストウッドを高く評価しています。

『許されざる者』は、西部開拓時代のロマンがいっぱいに詰め込まれた作品でした。銃を片手に、現代の資本主義や道徳観に囚われない素の人間としての感情や道義で動く中年の男・ウィル。彼は正真正銘のアウトローであり前時代の存在です。クリント・イーストウッドは見事にその渋みを醸し出していました。

ネタバレ感想② 主人公は野垂れ死するべき

次のネタバレ感想・評価は、ハッピーエンド風のラストに違和感を抱いた映画ファンの感想・評価です。ごく自然に抱く感想で共鳴できる内容です。何処かで野垂れ死にするラストもまた一興です。(残酷すぎるけど)

ラストのナレーションで「西海岸で商売に成功した」のはハッピーエンドってこと?過去の無益な殺人を悔いて酒も絶ってきた筈のストイックな主人公の姿にはどうも重ならない。こんな成功譚をわざわざ説明する必要はない(中略)ラストはやはり何処かで野垂れ死する方がふさわしい。主人公の子どもたちは気の毒だけど。

ネタバレ感想⓷ 西部劇として違和感

続いては、従来の西部劇の概念を打ち破る本作に違和感を感じた、映画ファンのネタバレ評価・感想です。西部劇に対するこだわりで評価・感想の賛否が分かれるようです。

いかに貧窮しているとはいえ、そして子供たちのためとはいえ、賞金欲しさでカウボーイたちを殺すことに抵抗がある。(中略)これまで見てきたクリント・イーストウッド主演の西部劇では、主人公が高い倫理性を持ち合わせていた。今回は、そこが今までと違う。違和感を抱くのは、そんなところにもあるのかもしれない。

ネタバレ感想⓸ 「許されざる者」の意味するもの

ネタバレ感想、最後は”許されざる者の意味するもの”です。題名の『許されざる者』とは誰のことなのか?ここに思いを馳せてしまう映画ファンも多いことでしょう。この記事でも、そのことを取り上げていますので参考にしてください。

本作のタイトル「許されざる者」。人は誰でもこの世で贖罪を背負った許されざる者なのかも知れません。本作のマニーは、かつての大悪党としての自分を消した筈だった。そんな彼をかつての非情な人間に戻してしまう、ネッドの死。絶っていた酒を飲み、キッドから銃を受け取る。この時のイーストウッドの胸の内、このシーンこそ本作の肝だと思います。

許されざる者(映画)を是非ご覧あれ!

ここまで、監督兼俳優クリント・イーストウッドの代表作『許されざる者』のネタバレありの解説や感想・評価をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。賛否両論あってもクリント・イーストウッドの代表作のひとつには間違いありません。共和党支持者にもかかわらず、かつてイラク戦争の際には、極めて重大な過ちを犯した、と暴力に正義などないという彼の信念はこの映画にも色濃く表れています。

クリント・イーストウッドのファンのみならず、映画ファンを自負する方にはぜひとも見ていただきたい作品です。

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