2018年08月24日公開
2018年08月24日更新
シェイプ・オブ・ウォーターの感想は?R15になった理由やラストシーンを考察
この記事では、第90回オスカー作品「シェイプ・オブ・ウォーター」の感想をご紹介していきます。「人と怪獣との恋」という一風変わった設定ながら、どういった点が評価されたのでしょうか? また、感想の別れるラストシーンについての考察など、わかりやすく解説していきます。R15ということで見るのを躊躇している方も、このまとめで予習をして、ぜひ「シェイプ・オブ・ウォーター」お楽しみください!
目次
シェイプ・オブ・ウォーターの感想を徹底調査!
この記事では、今年第90回アカデミー賞受賞作品に輝いた「シェイプ・オブ・ウォーター」の感想・考察をご紹介していきます。「人と怪獣との恋」という一風変わった設定ながら、どういった点が評価されたのでしょうか?
また、見た人はどのような感想を持ったのかや、ラストの考察など、わかりやすく解説していきます。もうご覧になった方はもちろん、まだ見ていない方も、ぜひこの感想まとめや考察を参考に復習してみてください!
第90回オスカー「シェイプ・オブ・ウォーター」の感想を紹介!
本作「シェイプ・オブ・ウォーター」を撮ったのは、南米メキシコ出身のギレルモ・デル・トロ監督。ギレルモ・デル・トロ監督は、代表作として「パンズ・ラビリンス」や「パシフィック・リム」など、怪獣映画や怪奇映画、ロボットものといった作品を多く手がけてきました。
映画「シェイプ・オブ・ウォーター」は、ラブ・ロマンスともいえますが、主人公が恋をするのは人ではく半魚人。おまけに、R15シーンまであるということで、日本でも公開前から話題や考察を呼んでいました。
本作「シェイプ・オブ・ウォーター」は人間と半魚人との恋ということで、恋愛ものであると同時に「怪獣映画」ともいえる作品です。異なる種族同士がまともに恋などできるのか、疑問に思う人は多いでしょう。人と半魚人がまじめに恋愛をしたところで、それが果たして成就するのかどうかも分かりません。
実際、映画「シェイプ・オブ・ウォーター」のラストの展開は多くの考察も集めています。どうして人同士ではなく、あえて半魚人なのか? そこには、ギレルモ・デル・トロ監督の怪獣映画にかける想いがありました。
シェイプ・オブ・ウォーターとは?
「シェイプ・オブ・ウォーター」のあらすじ! 声を失った女性と半魚人のラブストーリー
映画「シェイプ・オブ・ウォーター」は、1962年冷戦下のアメリカが舞台。主人公はイライザという女性で、発達障害により声を発することができません。話すことができないイライザ(サリー・ホーキンス)はアパートに一人で暮らしています。
友人は、隣の部屋にすむゲイの画家・ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)だけ。イライザは航空宇宙研究センターの掃除婦として働いていますが、ある日機密施設の中に運ばれてきた奇妙な生き物を目撃します。ウロコとエラを持った「彼」は、アマゾンの奥地から無理やり研究目的で連れてこられた半魚人でした。
研究センターを牛耳る所長はストリックランド(マイケル・シャノン)といって、驕りたかぶった差別主義者の男です。イライザは掃除婦として見下されながらも、人目を盗んでは「彼」とコミュニケーションを取るようになります。
そして、次第に「彼」と次第に心を通わせていきますが、所長のストリックランドは反対に「彼」のことを「醜い」と罵り、拷問します。ストリックランドの目的は、「彼」を研究材料として、宇宙開発に役立てることでした。
なんとか自分の手柄を挙げたいストリックランドはある時、「彼」を解剖して、その体に秘められた能力を明らかにするように、研究メンバーのホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)に命じます。「彼」を殺させまいと、イライザは画策します。隣人のジャイルズ、同僚であり友人のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)らに協力をしてもらいながら、イライザは「彼」救出作戦に挑むのでした。
「シェイプ・オブ・ウォーター」タイトルの意味とは?
映画「シェイプ・オブ・ウォーター」に関するインタビューで、監督のギレルモ・デル・トロはこの映画を「美女と野獣」の物語へのアンチテーゼであると語っています。
2017年にもディズニーにより実写映画化された「美女と野獣」には、「人は見た目じゃない」というテーマがありながら、ヒロインは美人であり、野獣は最後にハンサムな王子に戻ります。それに疑問を抱いたギレルモ・デル・トロ監督は、本作「シェイプ・オブ・ウォーター」で、冴えない掃除婦とグロテスクな半魚人とのラブストーリーを描いたのです。
「シェイプ・オブ・ウォーター」について、ギレルモ・デル・トロ監督はインタビューで「“愛”は“水”と同じなんだ」と語っています。水にはもともと、決められた形がありません。愛の前には容姿はもちろん、縛られるべきルールは何もないのです。
水がコップに入ればコップの形に、花瓶に注がれれば花瓶の形になるように、器の数だけさまざまな可能性がある。それが「愛」なのだ、という監督の強いメッセージが、「シェイプ・オブ・ウォーター」のタイトルには籠められていると言えるでしょう。
シェイプ・オブ・ウォーターの感想を紹介!
感想「「シェイプ・オブ・ウォーター」はギレルモ・デル・トロ監督の思いが詰まった傑作」
デルトロ監督が子供の頃に『大アマゾンの半魚人』を観て、住処に侵略されたうえ最後は殺されてしまう半魚人が幸せになるifイラストを描いていたというエピソードを知ると、シェイプ・オブ・ウォーターはif二次創作の傑作だなとも思う。私もあの人やあの子に違う結末を迎えさせてえ……!!!
— 瀬尾はやみ三世 (@hayamiseo) March 6, 2018
感想にもあるように、本作「シェイプ・オブ・ウォーター」には、実は元ネタがあります。ギレルモ・デル・トロ監督が幼少時に鑑賞した、1954年の「大アマゾンの半魚人」という映画です。この映画の中にも「シェイプ・オブ・ウォーター」と同様、アマゾンの奥地にいる怪物の半魚人が登場します。
この半魚人は、アマゾンにやってきた探検隊の女性に恋をしますが、彼女に近づいた途端に危険な魔物だと見なされ、人間たちによる攻撃を受けてしまいます。攻撃により傷を負った半魚人は、一人入江の奥へと消えて行きます。ギレルモ・デル・トロ監督がそれを見て「半魚人がかわいそうじゃないか」と思い、長い時を隔ててつくりあげたのが「シェイプ・オブ・ウォーター」でした。
子どものころ、テレビの中の怪獣だけが友だちだったと話すギレルモ・デル・トロ監督。幼少期には、日本の漫画や特撮、ロボットアニメ、円谷英二作品にも影響を受けたといいます。この「シェイプ・オブ・ウォーター」は、長年にわたるギレルモ・デル・トロ監督の怪獣への愛が結集していた映画だと言えるのでしょう。
感想「時代がギレルモ・デル・トロに追いついた」
何とまあ、ギレルモ・デル・トロは愛されキャラなのだろう。会見の舞台替えの合間に、歌まで披露。ここ10年くらい低迷期だと思っていたが、『シェイプ・オブ・ウォーター』は間違いなく彼の最高傑作だ。時代が彼に追いついた。公開後あと3回は観たい。アカデミー賞監督賞も獲れるような気がしている。 pic.twitter.com/esj17Dzwu1
— 清水 節 (@Tshmz) January 30, 2018
「シェイプ・オブ・ウォーター」の感想や考察の中には、「時代がやっとギレルモ・デル・トロ に追いついた」というものも。ハリウッドのアカデミー賞では長らく、ホラー映画やカルト映画、怪獣映画など、娯楽性が高いいわゆる「ジャンル映画」と呼ばれる作品は、センターから遠ざけられてきました。
挙げ始めれば枚挙にいとまがありませんが、例えば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「E.T」などは、音響効果賞などは受賞していますが作品賞は逃しています。「ジョーズ」や「シックス・センス」などの作品も同様です。多くの人の記憶に強く残っている作品の多くが、アカデミーの中心から排除されてきました。
そうした意味で、本作「シェイプ・オブ・ウォーター」がアカデミー作品賞・監督賞・作曲賞・美術賞を受賞したことは、大きな意味があります。ギレルモ・デル・トロ監督は受賞の1週間前、「E.T」のスティーブン・スピルバーグ監督に「受賞したら誇りに思え」と言われたと言います。その言葉通り、怪獣映画初のアカデミー賞受賞作として歴史に名を刻みました。
また、メキシコ出身の映画監督としてアカデミー賞を受賞したのは、ギレルモ・デル・トロ監督が3人目。メキシコで育った子どもたちに夢を与えたという意味で、「シェイプ・オブ・ウォーター」の受賞は大きな意味を持つのだという感想や考察も。
感想「「シェイプ・オブ・ウォーター」はマイノリティの物語」
「シェイプ・オブ・ウォーター」を見た。種族や言葉の壁を超えて結ばれる2人。ストーリーは予想とは違って王道展開で、"大人のファンタジー"というキャッチコピー通り。マイノリティが迫害されがちな現代で、愛のカタチは人それぞれだとストレートに表現してる作品だった。それと水が綺麗。
— フラフラのグラグラ (@furagura) August 23, 2018
本作「シェイプ・オブ・ウォーター」に登場する、さまざまなマイノリティに着目した感想もあります。主人公イライザの部屋の隣に住んでいるジャイルズは同性愛者、同僚で友人のゼルダは黒人です。主人公のイライザは女性であり障がい者ですが、彼女の「声が出せない」という設定は、自分たちの声を持たないマイノリティの象徴です。
反対に、敵役のストリックランドは差別的な思考が染みついた男。「力」に固執したストリックランドが、「馬力がいい」という売り文句を聞いて思わず車を購入してしまうシーンなどは、コミカルでいっそ笑える、といった感想・考察も。
イライザたち弱き人たちには力がありませんが、各々自分自身の愛に正直に生きています。感想や考察にもあるように、本作「シェイプ・オブ・ウォーター」はストーリーとしては王道ながら、声を持たない人たちがそれでも愛を求めて邁進するさまを描くことで、様々な軋轢を孕む今日の社会を反映している。そうした部分を評価する感想・考察もありました。
感想「サリー・ホーキンスの演技がすばらしい」
シェイプオブウォーター鑑賞。平日昼間なので高齢者が一杯。パンズラビリンスの方が好きだけど、とても楽しめた。美女と野獣のアンチテーゼ。サリー・ホーキンスが素晴らしい。彼女の出演作は駄作なし。日本人には親しみやすい体格です。。。「しあわせの絵の具」も見たい。
— kaori (@rosarind0428) March 7, 2018
本作「シェイプ・オブ・ウォーター」では、主演のサリー・ホーキンスの演技が光るという感想も。本作が代表作となるサリー・ホーキンスですが、これまでにも光る作品はありました。主なところでは「わたしを離さないで」や「パディントン」などの作品でしょう。「パディントン」では、愛情深い一家の母親役を演じ、多くの人の記憶に残りました。
本作「シェイプ・オブ・ウォーター」で、サリー・ホーキンスは夢見がちながらも芯の強い女性を演じています。敵役のストリックランドは加虐趣味の強い男で、声の出ないイライザに関係を迫ります。そんなストリックランドに対し、イライザが手話で示すひと言は痛快そのもの。また、別の人が演じたら気が強すぎると感じかねない役所を、サリー・ホーキンスが柔軟に、愛嬌たっぷりに演じているところを評価する感想も。
感想「すばらしい美術、脇役たちとの関係性も◎」
シェイプオブウォーター見た!映像めっちゃ綺麗だった…………良き話だった………孤独な二人が一緒に住んでるの性癖なので、イライザと絵描きのおじさんの関係好きだし、博士……….博士〜〜ッ!!!😭
— 隅 (@_yu_no_ji) August 19, 2018
映画「シェイプ・オブ・ウォーター」の魅力はテーマやストーリーだけではありません。感想を見てみると、映像のうつくしさに注目した感想がたくさん見られました。研究施設の少し錆びた感じもさることながら、イライザとジャイルズが住まうアパートの美術はすばらしいのひと言。作品はイライザが夜更けに起きて仕事に出かけるシーンから始まるのですが、そこからもう物語の世界に引き込まれること間違いありません。
また、感想では脇役との関係性を評価するものも。イライザは孤独な女性ですが、一人ではありません。隣人のジャイルズはゲイの絵描きで、イライザに恋心を抱いているわけではありません。しかしジャイルズはイライザのことを心のそこから大事に思い、「彼」を救出する作戦にも手を貸します。深い友情で結ばれたキャラクター同士の関係性に心打たれる、といった感想もありました。
シェイプ・オブ・ウォーターがR15になった理由とは?
「シェイプ・オブ・ウォーター」R15の理由は怪獣とのラブシーン
「シェイプ・オブ・ウォーター」は、R15指定作品です。人と怪獣との恋愛を描きながら、R15指定であると公開前から話題になっていた本作。R15指定となったのは、ズバリ、ラブシーンが理由です。
「シェイプ・オブ・ウォーター」は、冒頭のシーンからいきなり、主人公であるイライザの自慰のシーンから始まります。ファンタジックな雰囲気とは裏腹に、度肝を抜かれた人も多いはず。主人公のイライザは夢見がちな女性であると同時に、R15作品にふさわしくパンチの効いたキャラクターとなっています。
さらには、R15の理由となったイライザと「彼」とのラブシーンですが、「え……人と怪獣のラブシーン?」と後ずさりしている方も、心配はご無用。R15指定ということでショッキングな映像を想像する方もいるかもしれませんが、実際はエロティックながらもうつくしいシーンとなっています。R15という指定にとらわれず、一度ご覧いただくのをおススメします。
猟奇描写も「シェイプ・オブ・ウォーター」R15の理由
さらに、映画「シェイプ・オブ・ウォーター」はR15作品として若干の猟奇要素を含んでいます。ショックの度合いでいえば、イライザと「彼」とのラブシーンよりも暴力描写の方が、R15作品として刺激が強いでしょう。特に、マイケル・シャノン演じるストリックランドの暴力シーンは迫力満点。
このシーンだけでR15指定にしていいほどです。バイオレンスが苦手という方にはオススメできませんが、猟奇ものが好きという方には自信を持ってオススメできるR15作品です。
シェイプ・オブ・ウォーターのラストシーンを考察!
「シェイプ・オブ・ウォーター」ラストシーンでイライザの体に起こったこと
「シェイプ・オブ・ウォーター」のラストは、ファンタジックで現実なのか分からない部分が多いラストとなっています。この結末は、一体どんな意味を持っているのでしょうか? 考察しながらみていきましょう。
映画のラストで、一命をとりとめたイライザは「彼」とともに水の中に入り、そして「彼」と抱擁を交わします。その時、彼女の体には不思議な現象が起こります。映画のラストで、彼女の首にあった三本の傷が、まるで魚のエラのように動き出すのです。あたかも、水中を棲み家にする「彼」と同じ生き物になったかのように。イライザの首の傷について、所長のストリックランドは幼少期の虐待が原因だと話していました。
真相は、映画の中ではラストまで語られませんが、彼女にとってその傷が不自由な体の象徴になっていたことは想像に難くありません。声が出ず、体に障がいを抱えたイライザですが、彼女は友人のジャイルズにこう話します。《「彼」はほんとうの私を見てくれる。「彼」といる時、私は「不完全」ではなくなる》のだと。
「彼」はイライザの体を見て、どんな偏見も持ちません。容姿や体にかかわりなく、「彼」はありのままのイライザ自身を愛してくれたのです。ラストでエラへと変化する彼女の首の傷は、そのことを象徴しているようにも思えます。
ファンタジックな雰囲気で終わる「シェイプ・オブ・ウォーター」のラストは謎が多く、もしかすればジャイルズによる作り話なのでは?と疑うほどです。ですが、孤独に生きてきたイライザが、ラストで自分の居るべき場所を見つけたということは確かなのではないでしょうか。ラストでエラとなった彼女の首の傷は、「彼」と一心同体と呼べるほど心を通いあわせたということを表しているようです。
シェイプ・オブ・ウォーターの感想まとめ!
さてここまで、映画「シェイプ・オブ・ウォーター」の感想やラストの考察などをご紹介してきました。普遍的なテーマながらも、ギレルモ・デル・トロ 監督ならではのユニークな演出が光る本作。中には「あまり合わなかった」という感想やも見られますが、「よかった」という感想が大多数です。まだチェックしていないという方はぜひ、「シェイプ・オブ・ウォーター」をチェックしてみてはいかがでしょうか?