2001年宇宙の旅をわかりやすく解説!あらすじやモノリスの意味も考察

2001年宇宙の旅は、スタンリー・キューブリックが監督したSF映画です。共同脚本にアーサー・C・クラークも参加しており、現在では「SF映画の最高傑作」と呼ばれるなど、非常に高い評価を得ています。しかし、映画を観ただけでは分かりづらい部分も多く、難解な事でも知られています。そこで、あらすじとネタバレ解説しつつ、作中で登場する様々な謎についてのネタバレ解説や、「2001年宇宙の旅」の評価についても紹介していきます。

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目次

  1. 2001年宇宙の旅をネタバレ解説!モノリスの意味も考察!
  2. 2001年宇宙の旅とは?
  3. 2001年宇宙の旅のあらすじをネタバレ解説!
  4. 2001年宇宙の旅のラストをネタバレ解説!
  5. 2001年宇宙の旅の謎や意味をネタバレ解説!
  6. 2001年宇宙の旅を観た人の感想・評価を紹介!
  7. 2001年宇宙の旅ネタバレ解説まとめ!

2001年宇宙の旅をネタバレ解説!モノリスの意味も考察!

SF映画の名作『2001年宇宙の旅』

『2001年宇宙の旅』はSF映画の名作として知られ、高い評価を得ています。その後のSF作品に影響を与え続けており、科学的描写の正確さや映像美などは、今でも色褪せない魅力があります。

しかし、同時に難解な作りになっており、「眠い」「意味が分からない」といった意見も多く聞かれます。そこで、あらすじを紹介しながら『2001年宇宙の旅』をネタバレ解説していきます。作品のあらすじと共に、物語の重要な存在である「モノリス」の存在やラストの謎なども併せてネタバレ解説・考察をしていきます。

2001年宇宙の旅とは?

監督はスタンリー・キューブリック

あらすじの前に、監督と脚本を担当した2人の人物を紹介します。『2001年宇宙の旅』の監督はスタンリー・キューブリックです。『時計じかけのオレンジ』や『シャイニング』や『フルメタル・ジャケット』などの監督として知られています。

キューブリックが描いた『2001年宇宙の旅』の映像は、鮮烈な印象を与えています。その色彩や映像美は、他の作品にも共通しています。また、本作でキューブリックは脚本も手掛けています。

1999年、キューブリック監督は自身が監督した映画『アイズワイドシャット』の試写会の5日後、自宅で心臓発作を起こして亡くなったため、生きて2001年を迎える事はありませんでした。

共同脚本はアーサー・C・クラーク

キューブリックと共に脚本を手掛けたのは、SF作家のアーサー・C・クラークです。ロバート・A・ハインライン、アイザック・アシモフと並んで「ビッグ・スリー」とも呼ばれるSF作家であり、科学解説者でもあります。小説だけではなくノンフィクションなども数多く残している大御所です。

著作に『幼年期の終わり』や『宇宙のランデブー』などがあり、『2001年宇宙の旅』では脚本の他に小説も書いています。この映画の元になったのはクラークの『前哨』という短編小説で、異星人とのファーストコンタクトを描くにあたり、キューブリックは科学考証や共同脚本をクラークに求めました。

アーサー・C・クラークが関わった事で、劇中の科学考証の正確さは高まり、作品の質は一気に押し上げました。その正確さは、現在観ても決して古びた印象を与えていません。科学考証の正確さも、本作が語り継がれる名作たる所以と言えます。

公開年は1968年

あらすじとネタバレ解説に入る前に、公開年についても触れておく必要があります。『2001年宇宙の旅』が公開されたのは1968年4月6日で、当時は冷戦の真っただ中でした。アメリカとソ連は宇宙開発でも対立しており、ボストーク1号によるユーリ・ガガーリンの有人宇宙飛行に負けじと、アメリカではアポロ計画が進行していました。

1961年に「10年以内に、人類を月へ到着させる」とケネディ大統領が演説し、1968年12月にアポロ8号が月の裏側を回って帰還し、翌年にアポロ11号が月面へと降り立ちました。『2001年宇宙の旅』は、アポロ計画よりも前に作られていて、宇宙空間をリアルに描いた作品として評価されました。

2001年宇宙の旅のあらすじをネタバレ解説!

人類の夜明け

400万年前、後に「アフリカ」と呼ばれる土地には、ヒトザルと呼ばれる生き物が住んでいました。人間よりも猿に近い種族で、僅かに地面に生えた草を一生懸命獲っては食べ、空腹を満たしていました。知能もさほど高くない上に、肉体的にも弱い存在でした。

そんなヒトザルを豹が襲います。彼らは獰猛な肉食動物に対しては無力で、抵抗する事ができません。また、他のヒトザルの群れに水場を奪われるなど、彼らが生きていくのには常に命の危機が迫っていました。ある群れが巣穴で寝る前に、1人のヒトザルが月を見上げました。

朝、起きると巣穴の前には異様なものがありました。黒くて四角い物体『モノリス』です。彼らにはそれが何かは分かっていませんでしたが、モノリスと囲んで精一杯威嚇します。ですが、触っても害がない事が分かると、彼らはモノリスの近くに集まってきました。

モノリスは、彼らヒトザルに変革をもたらしました。ヒトザルは少しずつ知恵を持ち始めました。落ちていた骨を掴み、振り下ろします。やがて動物を殺して食料とする事で餓える事がなくなりました。骨を武器とする事で、他の群れのヒトザルを殺し、水場を巡る争いにも勝利します。

第2のモノリス『TMA・1』

時は過ぎ、人類は宇宙へと進出する時代となりました。地球の衛星軌道には、宇宙船や軍事衛星、宇宙ステーションなどが存在しています。

ヘイウッド・フロイド博士を乗せた有翼宇宙機は宇宙ステーションへと到着します。フロイド博士がこれから向かおうとしている月のクラビウス基地は音信不通になっており、未知の伝染病が発生したのではと噂されています。しかし、フロイド博士はステーションから月シャトルに乗り、クラビウス基地へ到着しました。

月ではある物が発掘されていました。『TMA・1』と名付けられた黒い長方形もモノリスでした。400万年前の地面に埋められており、人類が埋めたわけでもなく、自然にできた物でもありません。調査のためにモノリスに触れますが、何も起こりません。解析もできず、傷一つ付けられない、まさの謎の物体です。

記念写真を撮ろうとモノリスの前に並んだ時、その場にいた全員は強烈な耳鳴りを覚えました。発掘現場に太陽光が差し込んだ時、モノリスが起動しました。モノリスは強力な電磁波を放ちます。そしてその電磁波が放たれた先は、地球から遥か離れた場所でした。

木星探査計画

TMA・1の起動から18ヶ月後、宇宙船ディスカバリー号が木星へ向かっています。木星の探査が目的です。デヴィッド・ボーマン船長とフランク・プールに人工冬眠中の3人の科学者が乗っており、ディスカバリー号には史上最高の人工知能HAL9000が搭載されています。

HALはディスカバリー号の頭脳であり、中枢神経そのものです。ごく自然に人間と会話をし、問題を解決する能力を持っています。ボーマンとプールは船内の見回りをしながら、地球からのインタビューに答えたり、HALとチェスをして過ごしていました。お互いに当番を交代しながら、約7億5000万キロの旅を続けていました。

ある時、HALが「AE-35ユニットが故障した」と故障予測をしました。AE-35ユニットはアンテナで地球の位置を捉える部品です。もし故障すれば、ディスカバリー号は地球の位置を見失い、交信不能に陥ります。地球と交信の後、スペースポッドで宇宙へ出て、船外活動でユニットの交換を行いました。

交換したユニットをチェックしてみますが、どこにも異常はありません。地球の管制センターの報告では、HALの故障予測に過ちがある可能性を示唆し、地球にある2機の9000シリーズもその結論を導き出しました。ミスをしないはずの人工知能がミスを犯しました。HALは「ヒューマンエラーだ」と結論づけています。

「取り外した部品を元に戻して故障するか確認する」と結論を出したボーマンとプールは、スペースポッド内でHALに聞かれないように通信を切った状態で話し合い、「場合によってはHALの回路を切るしかない」と結論を出しました。しかし、HALは2人の唇の動きから話している内容を知っていました。

2度目の船外活動中、無人のはずのスペースポッドが動き出し、プールに激突しました。酸素供給を絶たれたプールはもがきますが、やがて動かなくなります。急いでボーマンが助けに行きますが、すでにフランク・プールは亡くなっていました。

HALの反乱

ボーマンがディスカバリー号を離れている間、HALは人工冬眠中の3人の科学者を冬眠させたまま殺害していきます。プールの遺体を回収してきたボーマンに対し、HALはエアロックを開ける事を拒否します。HALにとって、回路を切るという事は殺害にも等しい事でした。自らを殺されまいとして、HALは抵抗します。

プールの遺体を宇宙へ放つと、ボーマンは非常用エアロックからディスカバリー号内に入り、HALと対決します。「もう大丈夫です。過ちを犯しません」と冷静な口調で話しかけるHALに答える事なく、ボーマンは論理記憶中枢回路を切っていきます。そして最後は「デイジー・ベル」を歌いながら、HALの声は途絶えました。

HALの活動が停止したと同時に、あるビデオが流れ始めます。それは木星に着いた時に乗組員に知らされる任務の内容でした。月のモノリスが電波を発していたのは木星で、その調査のためにディスカバリー号が派遣されました。任務の内容はHALだけが知っており、船長のボーマンさえ知りませんでした。

2001年宇宙の旅のラストをネタバレ解説!

木星と無限のかなた

ディスカバリー号で1人になってしまったボーマンは、木星へとたどり着きます。木星の衛星軌道上にはモノリスが漂っていました。形状も色も同じでしたが、大きさは月のモノリスよりもはるかに巨大でした。

スペースポッドでモノリスに近付くボーマンに、突如光のシャワーが降り注ぎます。そして奇妙でサイケデリックな映像が次々に現れます。どこかの地表の上を飛んでいる映像の後、気が付くと、ボーマンを乗せたスペースポッドはある部屋にたどり着きました。

食事もあってバスルームもついている、この上品なホテルのような部屋でボーマンは徐々に老いていきます。ボーマンの死の間際、部屋に突如としてモノリスが現れます。次の瞬間、ボーマンの体は光に包まれた赤ん坊のような姿へと変化します。

ベッドにいたはずのボーマンの体は、もう存在していませんでした。どことなくボーマンの面影を残している赤ん坊は、地球を見下ろしています。

2001年宇宙の旅の謎や意味をネタバレ解説!

難解に作られた映画

あらすじで少し補いましたが、2001年宇宙の旅では、劇中での説明的なセリフやナレーションなどを省いています。そのため、非常に分かりづらい映画になっています。2001年宇宙の旅は、キューブリック監督によって「あえて難解に作られた映画」なので、映画を1回観ただけでは分からない部分がたくさんあります。

ここからは2001年宇宙の旅の中にちりばめられた数々の謎についてネタバレ解説していきます。あらすじでは省かれた謎や分かりにくいと言われているシーンについてもネタバレ解説で明らかにしていきます。

モノリスの意味とは?

まずは重要な存在であるモノリスのネタバレ解説です。あらすじでも3種類のモノリスが登場します。全てのモノリスに共通している事として、比率が1対4対9となっています。これは、最初の3つの自然数(1、2、3)の二乗とされていて、視覚的に人工物であると意識させる狙いがあります。見た目は似ていますが、それぞれに役割があります。

最初に出てきたのは、アフリカ・オルドヴァイ峡谷のヒトザルの前に現れたモノリスです。あらすじでも劇中でも、前触れもなく唐突に出現します。小説版では透明なモノリスと表現されていましたが、映画版では技術的に透明にする事が難しく、他と同じく真っ黒なモノリスで表されています。

目的は「知能を授ける事」です。実際、モノリスに触れたヒトザルが骨を武器にし、生存競争に生き残ってきました。やがてモノリスによって知能を授かったヒトザルは群れの数を増やし、アフリカから世界中へと広がっていき、さらなる進化を経て人間になりました。そして、人類は地球上から宇宙へと活動の場を移動させていきます。

2つ目のモノリスは「TMA・1」と人類によって名付けられました。月面のティコクレーターから発見されたため、「ティコモノリス」とも呼ばれている、という事が、小説版で説明されています。月の地下12メートルに埋められたTMA・1は強い磁性を持っており、その磁気のために人間に発掘されました。

TMA・1の目的は、知能を授けた地球の生命体が進化を遂げ、宇宙に進出してきた事を3つ目のモノリスに知らせる事でした。太陽の光を浴びた事で起動するため、地中に埋められて発掘される機会を400万年間待ち続けました。強力な電波を放ったという表現を、映画では耳鳴りという手法で表現していました。

そして3つ目のモノリスは「ビッグ・ブラザー」と呼称されます。木星の衛星軌道を漂っていますが、小説版では土星の衛星ヤペタスの地表にありました。小説版でも長辺600メートル、映画版では2キロ以上と大きいため、「TMA・1のでっかい兄貴」という意味で名付けられていますが、劇中でもあらすじでも名前は明らかにされていません。

役割はスターゲートを開く事です。TMA・1から発せられた電波を辿ってやってきた地球人に対してスターゲートを開き、宇宙の彼方へと転送し、肉体を脱した精神のみの生命体『スターチャイルド』に進化させる事が目的で、劇中では唯一生き残って木星へたどり着いたボーマンがスターチャイルドへと進化しました。

スターチャイルドとは?

次はスターチャイルドについてのネタバレ解説です。この時の様子はあらすじでは軽く触れていました。光のシャワーはスターゲートを通じて転送されている様子を描いていて、肉体を捨てるプロセスが描かれています。しかし、これらのシーンではナレーションも、モノリスを置いた生命体が話しかけるわけでもなく、淡々と映像が流れるだけです。

小説版、HALの回路を切って土星へ向かう間、ボーマンはモノリスを設置した未知の生物はどんな姿をしているだろう、と考えるシーンがあります。体を機械化するだけでは留まらず、最終的には脳さえも捨てて、人々が精霊と呼んだものに至るかもしれない。その先になにかあるとすれば、それは神の他にはあるまい、と考えました。

おそらく、モノリスを設置していった生命体と同じ存在こそがスターチャイルドであり、ボーマンを人類を超越した高次元の存在へと進化させました。ラストシーン、スターチャイルドとなったボーマンは地球を見下ろしています。この辺りはあらすじでも分かりづらく、ネタバレ解説がないと、よく分からないままエンドロールが流れてしまいます。

タイトルの意味とは?

タイトルのネタバレ解説です。タイトルは『2001年宇宙の旅』ですが、劇中では西暦が表示されないため、何が2001年なのか、映画の中だけでは分かりません。あらすじではあえて省きましたが、TMA・1の発見が1999年と、続編の『2010年』で明らかにされています。そしてディスカバリー号による木星への探査の年が2001年にあたります。

邦題では『2001年宇宙の旅』となっていますが、原題は『2001:A SPACE ODYSSEY』です。「ODYSSEY」は長い冒険、知的な探求といった意味を持っています。単なる宇宙旅行の話ではなく、未知の世界への旅立ちやスターチャイルドへの進化といったストーリーを暗示しているようなタイトルと言えます。

アーサー・C・クラークの小説は「2010年宇宙の旅(2010:Odyssey Two)」「2061年宇宙の旅(2061:Odyssey Three」「3001年終局への旅(3011:Final Odyssey)」と続きます。いずれのタイトルにも「ODYSSEY」が入っていて、長い歴史の冒険である事が窺えます。

HALの反乱はなぜ起こったか?

ディスカバリー号の頭脳であり中枢神経でもあるHAL9000は、作中で反乱を起こし、乗組員を次々に殺害していきます。「9000型は完全無欠です」とまで言い切るHALがなぜ間違いを犯したのでしょうか。その理由については、劇中では明らかにされません。ここからはHALの反乱についてあらすじを捕捉すると共に、ネタバレ解説していきます。

木星探査の名目で派遣されたディスカバリー号の乗組員には知らされていませんでしたが、真の目的はモノリスの電波が送られた先にあるものを探す事でした。探査ミッションのためにHALは乗組員と話し合い協力し合うようにプログラムされていましたが、一方で真の目的やモノリスの存在は乗組員に隠していました。

HALはボーマンたちに何かを伝えようと葛藤するセリフも出てきます。そうした後ろめたさから、地球との通信を避けようと考えたHALは、通信アンテナが地球を捉え続けるための部品である「AE-35」が故障した、という間違った故障予知をするようになりました。しかし、部品は交換されてしまい、部品に異常がないと判明してしまいます。

「話し合い協力する」と「話さずに隠せ」という2つの矛盾する指示を抱えていたHALは、ある時その矛盾に耐え切れず、人間で言うところを精神を病んだ状態となってしまいました。自分を停止しようとした乗組員を殺害しますが、人間が死んでしまえば、隠す必要もなくなります。探査ミッションは自分だけで遂行すればいい、とも考えていました。

HALの行動は「人工知能の反乱」を描いた象徴的なシーンとして知られています。人工知能との戦いは、『ターミネーター』シリーズの「スカイネット」などに代表されます。また、昨今の人工知能やコンピューターが発展すると共に、「もしかしたら人間に牙を剥くのでは」という意見が出てきますが、これも2001年宇宙の旅の影響と言えます。

映画の中でも非常にスリリングで盛り上がるHALの反乱ですが、元々の脚本には描かれておらず、ストーリーの都合上生まれたエピソードでした。これは、アーサー・C・クラークの著作『失われた宇宙の旅2001』でその一部始終が語られています。

当初は全員が生きて木星へとたどり着き、ビッグ・ブラザーの調査が行われ、その後スペースポッドに乗ったボーマンがモノリスのスターゲートに飲み込まれる、という内容でした。ですが、木星探査の様子を映像化する予算も足りず、当時のSFX技術的にも困難でした。実際、木星を映像化するだけでも苦労していたようです。

そこで他の乗務員を殺害して、ボーマンだけが木星にたどり着くという内容に変更されました。しかし、考えられた内容は「探査ミッション中にポッドが故障してアンテナが破損する」「人工冬眠の蘇生に失敗する」といった、事故が連発するといったもので、偶然に頼り説得力のないものでした。

そこで考え出されたアイディアが、「宇宙船を管理しているコンピューターが反乱を起こして乗組員を次々に殺していく」というものでした。HALの反乱が生まれたきっかけは、ボーマンを1人生き残らせるための説得力のあるアイディアからでした。ですが、結果として未来を予言しているかのようなストーリーが誕生しました。

2001年宇宙の旅を観た人の感想・評価を紹介!

今の時代に見てもかっこいい映画!

2001年宇宙の旅は、1968年に公開された映画ですが、今観ても強烈な印象を与えてくれます。通常古いSF映画は、未来の進歩した世界を描きますが、現実の技術の方が発展してしまい、古びて見えてしまう事があります。しかし、2001年宇宙の旅では、まったくそういった感覚がありません。

CGは使われておらず、特殊効果や特撮技術を駆使して撮影されています。公開年の12月、アポロ8号が史上初めて月の裏側を回って帰還しましたが、その時撮影された月面入れ込みの地球の写真が劇中のそれにそっくりで、本作の特撮のクオリティの高さを示しました。

また、アポロ8号の船長の名前が「フランク・ボーマン」で、2001年宇宙の旅の登場人物である「フランク・プール」と「デヴィッド・ボーマン」を合わせたような名前である事も、偶然ですが話題となりました。

音楽がすごい

2001年宇宙の旅では全編にわたって、クラシックの楽曲が使用されています。それまでのSF映画では、未来的な雰囲気を出すために電子音楽が使われる事が多かったのですが、本作ではそれがありません。

メインタイトルにはリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の導入部分が使われており、月へ向かう場面ではヨハン・シュトラウス2世の円舞曲「美しく青きドナウ」といった有名な曲が使われています。

クラシック音楽を使った事で、安っぽさを感じさせない作風になり、物語が持つ壮大さを一層際立たせる印象を与えています。また宇宙空間のシーンは無音で展開されるといった、作中の音にも注目です。非常に効果的に使われていて、映画を盛り上げています。

内容が難解

本作の内容は難解で、謎めいた展開が多く、分かりづらいのも特徴です。そのため、公開当初から現在のような評価をされたわけではありませんでした。むしろその逆で、最初の頃の評価は散々なものでした。

映画評論家たちの評価は最低でした。評論家のポーリン・ケイルからは「史上最低の素人映画」と酷評され、俳優のロック・ハドソンは「何の話だったのか、誰か教えてくれ」と言ったそうです。映像のクオリティやテーマを評価する一方で、難解で抽象的な内容を批判する声もありました。実際、公開直後の興行成績は悪く、内容も賛否両論でした。

しかし、再公開を経て評価が高まりました。公開から数ヶ月後、ポーリン・ケイルも最初の評価を撤回しています。また、終盤のスターゲートの映像でサイケデリックな感覚に包まれる事から、配給のMGMスタジオは映画の宣伝文を「冒険と探検の一大叙事詩」から「究極の体験」へと変更しました。

現在では2001年宇宙の旅は不朽の名作として知られ、公開から時間が経った今での評価されています。1991年には「文化的、歴史的、美学的に意義深い」として、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されています。日本でも、SF映画では唯一この映画を文部科学省が「特選」に指定しています。

1968年のアカデミー賞では監督賞と脚本賞にノミネート、特殊視覚効果賞を受賞し、翌年の1969年にはSFの賞であるヒューゴー賞を受賞しました。現在でも、映画史上のベストランキングやオールタイムベストでは、ほぼ必ずといっていいほどランクインされています。

映画の作りが不親切なため、初見では完全に理解できないものの、不思議な魅力があります。そのため、現在でも人々の心を掴む作品と言えますが、作品の理解度によって評価が分かれてしまうのも事実です。

2001年宇宙の旅が与えた影響

2001年宇宙の旅は、その後の作品に多くの影響を及ぼしています。非常に分かりやすい形で受けている影響もあれば、実は影響を受けている、といったものまで多数あります。その中のいくつかを解説付きで紹介します。

非常に分かりやすい例としては、『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する「ゼーレ」は、黒い板として表現されていますが、これはモノリスがモチーフになっています。感情などが一切分からないモノリスにした事で、ゼーレの不気味さや神秘さなどが際立った演出です。

2001年宇宙の旅にボーマンたちが食べる宇宙食として、トレーに入ったペースト状の食品が出てきます。これに似たシーンがエヴァンゲリオンにも登場しています。無重力状態で食べるのに適した食品で、SF的な表現としては特徴的なシーンです。

また、第4使徒シャムシエルの頭部は、ボーマンの宇宙服のヘルメットを上から見るとそっくりで、ヘルメットにも目のような模様が入っています。シャムシエルの目を入れるアイディアは庵野秀明監督のアイディアだそうで、様々な作品のオマージュシーンを作品によく使用する庵野監督ならではと言えます。

2001年宇宙の旅に出てくるスペースポッドは、『機動戦士ガンダム』に登場する「ボール」に酷似しています。ガンダムシリーズも「ニュータイプ」という人類の進化をテーマに扱っていて、2001年宇宙の旅のテーマと共通しています。また、どちらの作品にも登場する「無重力空間での描写」は似ており、多少なりとも影響があるようです。

2001年宇宙の旅ネタバレ解説まとめ!

難しいけど不朽の名作

2001年宇宙の旅はあえて難しく作られていて、映画本編を観ただけでは作品の全体像が掴みづらくなっています。しかし、それこそがスタンリー・キューブリック監督とアーサー・C・クラークの狙いです。そのため、あらすじやネタバレ解説を読む前に、まず最初に映画を観る事をおすすめします。

その後、ネタバレ解説やあらすじを読み、作品の分からなかった部分を補いながら、もう1度本編を観ると、比較的すんなり入ってきます。ネタバレ解説やあらすじも、人によって様々な解釈があるため、その違いを楽しみながら、自分なりの解釈を広げていくと、さらに作品を楽しめます。

もっと作品を楽しむためには、1度映画を観た後にクラークの小説版を読む事をおすすめします。小説版は映画本編のように突き放した表現はしておらず、丁寧に書かれています。ネタバレ解説やあらすじを併せて読むと、より深く世界観を味わえます。そして小説版を読んだ後に映画を観返すと、監督が画面に込めた情報の多さに驚かされます。

ナレーションや説明的なセリフを省いた事が洗練された映画表現とも思え、陳腐な雰囲気をまるで感じない作品に仕上がっています。1回目に観た時とはまったく違った印象を感じます。あらすじや解説を併せて、壮大な物語を含んだ不朽の名作である2001年宇宙の旅は、繰り返し何度も観たい、そんな映画です。

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