2020年08月01日公開
2020年08月01日更新
【声優】納谷悟朗の出演作品と銭形警部など演じたキャラは?弟は納谷六朗?
「ルパン三世」の銭形警部は粋なルパンとは違い、古き良き時代の生真面目さを残しており、重そうなキャラになるところを故・声優の納谷悟朗さんによる綿密な演技で「ルパン三世」という作品に必要不可欠な存在となります。庶民にとって身近なエンターテイメントツールであるテレビで、声優・俳優として活躍してきた納谷悟朗さん出演作品や演じてきたキャラ、同業者である弟の納谷六朗さんについてまとめていきます。
納谷悟朗とは?
納谷悟朗のプロフィール
「ルパン三世」の銭形警部で知られている納谷悟朗さんは、俳優としてデビューしてから声優・ナレーター・舞台演出家として幅広い分野で活躍していました。妻の火野カチ子さん、弟の納谷六朗さんも役者・声優として活躍していることから生粋の芸能一族だと言えるかもしれません。
1929年11月17日に生まれた納谷悟朗さんは1951年から俳優、1959年から声優として活動をスタートしています。俳優・声優として忙殺する日々の中、胃潰瘍や胃癌などで手術を経験することがあり、2008年に健康面の不安から俳優を引退、2012年までは声優を休止していたようですが、2013年3月5日慢性呼吸不全により83歳で演技に捧げた人生を閉じています。
納谷悟朗が声優を目指した理由
学生時代に芝居にのめり込み大学を中退した納谷悟朗さんは、1951年に劇団東童入団し舞台「宝島」で俳優デビューしています。1955年劇団「稲の会」設立に参加後、1957年劇団「現代劇場」を経て、1959年に亡くなるまで所属していたテアトル・エコーで声優の仕事に数多く関わることになります。
70〜80年代に巻き起こったアニメブームが大衆文化として根付いたことで、今では声優という職業は憧れのひとつとなり声優関連の学校の軒を連ねています。納谷悟朗さんが俳優デビューした50年代は声優の学校などはなく、洋画のテレビ放映の吹き替えには新劇関連の俳優が多く起用されていたようです。舞台俳優として活動していた納谷悟朗さんも、数多く洋画の吹き替えに起用されていきます。
テレビドラマにも出演した納谷悟朗さんでしたが、拘束日数が長いのを所属事務所が嫌がっていたことから声優の仕事が徐々に増えていったようです。「メイクも衣装も不要」のお手軽な声優の現場での扱いは雑でギャラも安かったようですが、当時希少だった俳優兼声優の納谷悟朗さんは仕事が途切れることがなかったのでシッカリ稼げたようです。
納谷悟朗の出演作品やアニメキャラ
納谷悟朗の出演アニメ
映画「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年)で、名台詞「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」を残した銭形警部演じる納谷悟朗さんは、「風の谷のナウシカ」「宇宙戦艦ヤマト」などアニメ史に残る作品に出演しています。そこから遡ること、日本初の国産テレビアニメ作品「鉄腕アトム」(1963年)に出演していることから、納谷悟朗さんは超絶レジェント級の声優だと言えるでしょう。
風の谷のナウシカ(ユパ)
宮崎駿の同名漫画作品を映画化した「風の谷のナウシカ」(1984年)は、戦争により文明と自然が崩壊した世界が舞台となっています。自らの愚かな行為で人類が生息困難にしてしまった世界で、新種の生物に恐れながら生存の道を模索する人類を少女ナウシカの姿を通じて描いています。
「風の谷のナウシカ」は、飛行装置メーヴェで颯爽と空を駆け抜けるナウシカに心躍らせるファンタジー要素があるものの、自然を顧みようとせず争いに明け暮れる人類への警告を含んでおり、本国日本だけでなく世界的に評価の高い名作アニメ作品のひとつに挙げられています。
納谷悟朗さんが「風の谷のナウシカ」で演じている剣豪ユパは、ナウシカの父の旧友でナウシカの師匠的存在です。人類にとって有害な腐海の謎を解き明かそうとしている旅人ユパは、久しぶりに風の谷へ帰還する道すがら羽蟲に追われていたところをナウシカに救出されます。風の谷の危機に奔走するナウシカを陰ながらフォローするユパは、物語の後半では剣豪の腕をいかんなく発揮しています。
宇宙戦艦ヤマト(沖田十三)
「宇宙戦艦ヤマト」は70〜80年代のアニメブームを牽引し、日本のアニメ作品が世界的に評価される礎を作ったと言えるでしょう。1974年にテレビ放映されたアニメ「宇宙戦艦ヤマト」はSFと人間ドラマを丹念に描き「アニメ=子供向け」の定義を打ち破っていることから、当時のアニメ作品としては斬新な構成となっていたようです。
視聴率は振るわなかったのですが、再放送で人気に火がつき1977年〜1983年にかけて4作の劇場版「宇宙戦艦ヤマト」が公開され、21世紀に入ってからも「宇宙戦艦ヤマト」のリメイク版が制作されています。リメイク版の沖田十三の声優は菅生隆之さんです。
納谷悟朗さんが「宇宙戦艦ヤマト」で演じている宇宙戦艦ヤマトの初代艦長である沖田十三は、病に侵されながらもガミラス帝国との壮絶な戦いの指揮を執り、イスカンダルへの旅を成功に導き力尽きます。その後の「宇宙戦艦ヤマト」シリースで沖田十三は回想や幻として登場していますが、映画「宇宙戦艦ヤマト 完結編」(1983年)では実は生存していましたというびっくり仰天設定になっていたようです。
「仮面ライダー」シリーズ
1971年の特撮テレビドラマ「仮面ライダー」のショッカー首領は、納谷悟朗さんの声の演技だけで特撮史上における名高い悪役として記憶されていることでしょう。以後の「仮面ライダー」シリーズで、ショッカー首領だけでなく数々の悪役を演じた納谷悟朗さんは希望が叶って、「仮面ライダーアマゾン」(1974年)ではナレーションを務めていたようです。
往年のバラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげです」の人気コーナーのひとつである「仮面ノリダー」は、「仮面ライダー」をパロっておりショッカー首領役の納谷悟朗さんはナレーションとしてゲスト出演していたようです。
納谷悟朗の出演する洋画吹き替え作品
超絶レジェント声優の納谷悟朗さんが吹き替えを担当した数多くの海外俳優は、ハリウッドの一時代を築いた名優ばかりです。主な吹き替え代表作品として、マリリン・モンローの遺作「荒馬と女」(1961年)ではクラーク・ゲーブル、「荒馬と女」、ジョン・ウェイン西部劇「駅馬車」(1939年)ではジョン・ウェイン、歴史超大作「ベン・ハー」(1959年)ではチャールトン・ヘストンなどそうそうたる名優揃いです。
納谷悟朗と山田康雄の関係
納谷悟朗さんはルパンの山田康雄さんとは個人的に親しく、ルパンに続く当たり役となっている山田康雄さんが吹き替えを担当しているクリント・イーストウッド主演「夕陽のガンマン」(1965年)・「続・夕陽のガンマン」(1966年)で共演をしていたようです。この作品には次元の小林清志さんも出演しており、「ルパン三世」ファンにとって狂気乱舞な吹き替え共演作品だと言えるでしょう。
1995年3月19日に62歳で死去した山田康雄さんの葬儀で弔辞をすることとなった納谷悟朗さんは、銭形警部を彷彿させる涙声で語りかけたようです。映画「目撃」(1997年)のソフト版で亡き山田康雄さんに代わりクリント・イーストウッドの吹き替えをしていますが、1971年のテレビ朝日版「荒野の用心棒」(1964年)では、友人の当たり役の吹替えをするのに躊躇したのか、生前の山田康雄さんと相談し引き受けたようです。
納谷悟朗の代表キャラは銭形警部役!いつから変わった?
納谷悟朗は「ルパン三世」の銭形警部役で有名
ルパン逮捕に執念というか、いつしか生きがいになってしまっている銭形警部は、小説「銭形平次捕物控」の主人公・銭形平次の子孫という架空のご先祖様の子孫という設定になっています。劇中では「銭形警部」「銭形のとっつあん」と呼ばれていますが、本名は銭形幸一でプライベートの扱いはシリーズによってまちまちのようです。
原作者である故モンキー・パンチ氏(81歳没)は「銭形平一」と命名したはずが、なぜか「銭形幸一」になってしまいます。原作で使用することなかった「幸一」をすっかり忘れていたモンキー・パンチ氏はその後、銭形警部の名前を「平太郎」にしていますが最終的には「銭形幸一」が公式となったようです。
納谷悟朗さんは「ルパン三世」テレビ第1シリーズ・劇場版・スペシャル版を含め、2010年まで銭形警部を39年間演じています。納谷悟朗さんは歳を取らない銭形警部に対し、自身は歳を取っていく一方なので合わせるのが少々辛いと感じていたようですが、機会があれば銭形警部を再び演じたいと語っていたようです。
亡くなる前年の2012年に納谷悟朗さんは、旧声優陣が登場したビデオグラム「ルパン三世」での短編アニメ「ルパン一家勢揃い」で再び銭形警部役を演じています。ルパンの後任となったものまねタレントの栗田貫一さんは、外野の雑音から常に自分を守ってくれた納谷悟朗さんに感謝していたようです。
銭形警部の声優はいつ変わった?二代目は山寺宏一!
2011年に放送40周年迎えた国民的アニメ「ルパン三世」のテレビスペシャル第22作「ルパン三世 血の刻印 〜永遠のMermaid〜」で、二代目ルパンの栗田貫一さん、次元大介の小林清志さん以外の声優陣が引退し、銭形警部を七色の声を持つ山寺宏一さん、石川五ェ門を浪川大輔さん、峰不二子を沢城みゆきさんら今をときめく人気声優陣が加入し新たなスタートを切っています。
納谷悟朗が演じた銭形警部役は今でも大事に継承されている
黙っていればイケおじに見えなくもない銭形警部を納谷悟朗さんは、当初はイケメン路線で進めるつもりでしたが、周りのキャラとの違いを強調するため皆さんご存知の三枚目路線になったようです。そして、地声が澄んでいる納谷悟朗さんは、銭形警部を演じる際は濁声で演じていたようです。
後任を引き継いだ山寺宏一さんは、納谷悟朗さんが作り上げた濁声の三枚目・銭形警部を見事に表現しており、リアムタイム世代のファンも大満足のようです。何かと賛否両論がある漫画・アニメの実写版で、実写版ドラマ「銭形警部」の主人公・銭形警部を演じた俳優の鈴木亮平さんも濁声の三枚目で熱演しています。
納谷悟朗と弟は納谷六朗?共演作も紹介
納谷悟朗の弟は納谷六朗
コワモテだけど心優しい「クレヨンしんちゃん」の園長先生役の納谷六朗さんも兄・納谷悟朗さんと同じく、声優以外に俳優、ナレーター、演出家として幅広く活躍していたようです。妻の納谷光枝さん(2014年没)は、納谷六朗さんの最終所属事務所となるマウスプロモーション代表取締役社長だったようですが、その後は長男の納谷僚介さんが務めていたようです。
1932年10月20日に生まれた納谷六朗さんは、7人兄弟の六男で納谷悟朗さんは五男ですが、名前に数字が関わっているのはこの二人だけのようです。大学卒業後、兄・納谷悟朗さんが所属していた劇団「稲の会」の手伝いをしていた納谷六朗さんは、50年代から声優・俳優活動をスタートさせています。2014年11月17日肺炎により82歳で亡くなる同年10月22日に体調不良を訴えるまでは、精力的に声優・俳優活動していたようです。
納谷悟朗と納谷六朗の共演作はルパン三世?
「ルパン三世」テレビシリーズに複数回ゲスト出演していた納谷六朗さんは、兄の当たり役である銭形警部が変装した役を演じたことがあったようです。ルパン三世のテレビスペシャルシリーズ第20作「 sweet lost night 〜魔法のランプは悪夢の予感〜」(2008年)にも出演しています。
その他の納谷兄弟共演作品
アカデミー賞に輝いた映画「アマデウス」(1984年)のスペシャルコレクション盤レーザーディスクの特典オーディオ・コメンタリーで監督ミロシュ・フォアマンの吹き替えを納谷六朗さん、脚本家ピーター・シェーファーの吹き替えを兄・納谷悟朗さんが担当するという超激レアな兄弟共演となっています。
廃盤になっていた兄弟共演の映画「アマデウス」の吹き替え版コメンタリーが収録されたLDは、後にDVDで復刻されています。映画「オズ」(1985年)では、兄弟共演作品ではなく兄弟そろった出演作品となっています。映画「人生狂騒曲」(1883年)も兄弟共演作品ではないのですが、体調不良の兄の代役で納谷六朗さんが登板しています。
納谷悟朗に関する感想や評価
★ディズニー★ 【カリブの海賊で登場するドクロの声は銭形警部と一緒】 故 納谷悟朗氏が声をあてています。 銭形警部以外にも沖田十三、チャールトン・ヘストン、ジョン・ウェイン等を担当した名声優です。 pic.twitter.com/YaYnfGQzil
— ディズニーに関するためになる雑学 (@disneyworld01) July 26, 2020
「ディズニーランド」のアトラクションで耳にする声はレジェンド級の声優が担当しており、「カリブの海賊」のドクロの声・納谷悟朗さんだけでなく、故・野沢那智さんも「ディズニーランド」のアトラクション「スター・ウォーズ」でC3POの声を担当していたようです。その他には、富田耕生さん・中田譲治さん・野島昭生さんらレジェンド級の声優陣が「ディズニーランド」のゲストを迎えています。
太陽にほえろ!
— 爆破・破壊bot (@bakuha_bot) July 25, 2020
第178話「リスと刑事」より。
麻薬密売人の男が乗る車(A30グロリア)と島刑事(小野寺昭)と三上刑事(勝野洋)が乗る覆面車(スプリンター)がカーチェイス。
男の車は土手を台に横転。密売人がガソリンに火をつけ、爆発炎上。
密売人役は、声優の納谷悟朗氏。pic.twitter.com/Q89XZDnOrC
納谷悟朗さんは、伝説のテレビドラマ「太陽にほえろ」に1975年12月12日放映の第178話「リスと刑事」にゲスト出演しており、望月という密売人役だったそうです。納谷悟朗さんは1971年の「ルパン三世」の第1シリーズから銭形警部を務めていたので、当時「太陽にほえろ」でのゲスト出演に気付いた方はいるのでしょうか。
「とっつぁん、何もこんなとこまで追いかけてくるなって」「うるさ~~~い!今までずっと追っかけてたんだ、ほらよっ 酒だ」「酒ぇ!?」「・・・おまえのケツは見飽きた!酒だ!花見だ!」「とっつぁん・・・」 納谷悟朗さん、お疲れ様です。 pic.twitter.com/VCt0th0xkH
— 絶対感動してしまう話♪ (@kandou_dekiru) July 24, 2020
「ルパン三世」の声優陣は一新され、昔の声優陣を知らない世代が多くなっています。ルパンの山田康雄さんと銭形警部の納谷悟朗さんも故人となっており、リアルタイム世代は「山田康雄さん版のルパン三世と納谷悟朗さん版の銭形警部」の丁々発止の掛け合いを懐かしく感じていることでしょう。
納谷悟朗まとめ
「声優である以前に俳優」がポリシーの納谷悟朗さんは、「声優」という呼び方を嫌っており、声優に目指す人たちに「舞台経験してから声優に」というアドバイスを送っていたようです。観客の反応を直に感じられる舞台で、生きた演技を学んできた納谷悟朗さんだからこその説得力のあるアドバイスだと言えることでしょう。