2019年03月30日公開
2019年03月30日更新
ダネイホンの元ネタ・モデルはビセイクル?萬平の栄養食品の由来は?【まんぷく】
NHK連続テレビ小説の第99作目にあたる『まんぷく』は、インスタントラーメンを世に出した日清食品(日清食品ホールディングス)創業者の安藤百福さんと、その妻である仁子(まさこ)さんの半生をモデルに、互いを支え合って生きる夫婦を描いたTVドラマです。ドラマのクライマックスはインスタントラーメンの開発ですが、そこに辿りつくまでにも様々なものを誕生させました。その中のひとつが、栄養食品ダネイホンです。この記事ではまんぷくに出てくるダネイホンの元ネタや、ダネイホンの名前の由来についてご紹介していきます。
ダネイホンは萬平が作る栄養食品?
ダネイホンが登場するドラマまんぷく
『まんぷく』は、NHK第99作目の連続テレビ小説です。2018年10月から放送されました。『まんぷく』というタイトルは、主人公の福子と、その夫の萬平の名前に由来しています。それぞれ名前から一文字ずつ取って『まんぷく』です。それから「世の人たちのおなかをいっぱいに満たしたい」という願い、日本の朝に幸せが満ちますようにという願いも、タイトルの由来となっているそうです。
『まんぷく』はインスタントラーメンを世に出した日清食品(日清食品ホールディングス)創業者の安藤百福さんと、その妻である仁子(まさこ)さんの半生をモデルに、互いを支え合う夫婦をときにコミカルに、ときに真面目に描いたテレビドラマです。『まんぷく』タイトルの由来にもなった「世の人たちのおなかをいっぱいに満たしたい」という願いは、モデルとなった安藤夫妻の願いだったそうです。
物語の主人公は、安藤百福氏を支えた仁子さんをモデルにした、福子(安藤サクラ)です。序盤では夫となる立花萬平との馴れ初めを。中盤では福子の出産、萬平の塩業と栄養食品ダネイホン開発を描きます。クライマックスは、安藤百福さんの劇的なヒット商品であるチキンラーメン・カップヌードル誕生をモデルに、まんぷくラーメンとまんぷくヌードルの誕生を描きます。
さて主人公・福子のモデルとなったのは安藤百福さんの妻であった仁子さんですが、安藤仁子さんに関する公開資料はそうありませんでした。なので、ドラマ『まんぷく』のため、親族や友人などに初めてインタビューされたそうです。『まんぷく』は事実をもとにしたフィクションで、登場人物や団体名はすべて架空のものです。
なおNHKの連続テレビ小説は、通常は主人公をオーディションで選びます。しかし『まんぷく』の主人公はオーディションをせず、安藤サクラさんを選んだと2018年1月に発表がありました。安藤サクラさんは2017年6月に長女を出産し、子育てに集中することを考えていたようです。そして同年10月に『まんぷく』スタッフからオファーがありました。安藤サクラさんは育児と仕事の両立に悩み、オファーを断ろうとも考えていたそうです。
しかし安藤サクラさんは、朝ドラヒロインに憧れがありました。オーディションも数えきれないほど受けたそうです。家族がサクラさんの背中を押したこと、そしてNHKスタッフが育児をサポートすると約束したことから、安藤サクラさんは『まんぷく』の仕事を引き受けたのだそうです。このことは連続テレビ史上初の『ママさんヒロイン誕生』と発表されました。
『まんぷく』の撮影は育児サポートのために、通常は朝の9時~23時ごろまで行う撮影を、19時で切り上げていた模様です。撮影時間短縮のためにクランクインの時期を、5月の大型連休時期へと早めたり、大阪局内に託児スペースを作ったりなど、手厚い対応をしたようです。テレビドラマ『まんぷく』は2018年5月1日にクランクインを迎え、そして2019年2月27日に大阪放送局で、クランクアップを迎えたようです。
ダネイホンは萬平が作る栄養食品
さて『まんぷく』に登場するダネイホンですが、これは主人公・福子の夫である立花萬平(長谷川博己)が開発する栄養食品です。萬平は戦後の大阪の町で、多くの人々が栄養失調で倒れているのを、まのあたりにします。当時の日本は、まだまだ食糧不足に苦しんでいました。くわえて福子の産後の肥立ちが良くないのを見た萬平は、栄養食品の開発に挑む決意をします。
三田村会長(橋爪功)から援助してもらった資金の3万円を使って、萬平は栄養食品の開発をはじめます。まずは部下の神部(瀬戸康史)に紹介してもらった大阪帝大医学部で、栄養学を研究していた近江谷先生とともに、栄養食品の開発をスタートします。
ダネイホンの栄養効果
栄養食品として世に出たダネイホンは、どのような効果があるのでしょうか?ダネイホンの栄養素は牛の骨髄由来です。牛の骨髄からは、リンタンパク質/ビタミンA,B1,B2,B6,D/リン脂質/ミネラル/コラーゲン/コンドロイチン/タンパク質などの成分が抽出されます。
この栄養価値が高いといえる、牛の骨髄エキスは『マローエキス』とも呼ばれています。『マローエキス』(骨髄エキス)には、老化防止、貧血の改善、美肌、骨粗しょう症の予防、動脈硬化の予防、高血圧の予防など、さまざまな効果があると考えられています。牛の骨髄由来の『マローエキス』をたくさん含んだ『ダネイホン』は、栄養効果が抜群であるだろうと、作品内で評価されていました。
『ダネイホン』は栄養については高く評価されていましたが、見た目はわかめ由来の深緑色…見た目と味については、販売前はやや不評でした。ファンの間でも『ダメイホン』と呼ばれ、失敗を予想される始末。しかしスモモや昆布だしを入れて味を改良して販売したダネイホンについては「美味しい」「食べられるようになった」と、登場人物たちもまずまずの評価でした。
ダネイホンの名前の由来
ではここで、ダネイホンの名前の由来について触れていきます。ダネイホンの名前は、ドイツ語の『ディーエアネールング』が由来です。『ディーエアネールング』は『栄養』という意味です。ディーエアネールング→ディアネーフン→デネイフン→ダネイホンというふうに、なまって略されたものです。この由来について『まんぷく』登場人物の忠彦は「ちょっと無理あるなぁ」とつぶやいています。
ダネイホンの元ネタ・実在モデルはビセイクル?
ダネイホンの元ネタ・モデルはビセイクル
ダネイホンにはモデルとなった食品があるようです。それは『ビセイクル』という実在した栄養食品です。ビセイクルは日清食品の創業者・安藤百福さんが作った栄養食品です。百福さんはビセイクルを開発する前に、泉大津で塩田事業をおこなっていました。そして昭和23年(1948年)、塩田の敷地内に『国民栄養科学研究所』を設置します。
安藤百福さんは栄養食品の研究を始めたとき、材料として、まず庭にいた食用ガエルを捕まえたそうです。食用ガエルが大爆発したこともあったようです。電熱器にかけたときに食用ガエルが爆発して、百福さんの自宅の天井や壁を汚しました。そして食用ガエルは栄養食品にはなりませんでした。百福さんの嫁や息子の、おかずにはなったようです。食用ガエルの味は、鶏肉に似ているそうです。
そういう過程があって、安藤百福さんは食用ガエルではなく、牛や豚の骨髄を、栄養食品の材料に選びます。動物の骨髄から、タンパク質を多く含むエキスを抽出することに成功します。その栄養たっぷりのエキスを練りこみ、「ダネイホン」の元ネタとなったペースト状の栄養食品「ビセイクル」を発明しました。
ダネイホンの元ネタ・ビセイクルを安藤百福が作った理由
ダネイホンのモデルとなった栄養食品、ビセイクルが作られた理由は、安藤百福さんが栄養失調に苦しむ人々を見たからです。当時はまだ戦後の深刻な食糧不足で、大阪の町には栄養失調で行きだおれになる人もいました。命を落とす人も少なくありませんでした。そのため安藤百福さんは「日本の復興は食から」と考え、以前より興味があった食品開発に、手をつけたのです。『まんぷく』の萬平も同じ経由でダネイホンを開発します。
安藤百福さんがはじめに設立した会社は「中交総社」といいます。1948年、泉大津にて作られました。『まんぷく』でも、泉大津を舞台に栄養食品ダネイホンが開発されます。なお会社を設立する前は『まんぷく』と同じように、失業した若者たちを集めて塩業と漁業をしていましたが、実際には塩は販売していなかったそうです。できあがった塩は、近所に無料配布していたそうです。
安藤百福さんは会社を設立してからは魚介類の加工と販売を行いました。そしてその年に水産業の発展と改善を目的に、水産庁が設立されました。安藤百福さんは当時の波に乗った形となったといえます。
ダネイホンの元ネタ・ビセイクルはヒットしなかった?
安藤百福さんが作った『ビセイクル』の売れゆきは、それほど良くなかったようです。『ビセイクル』は、ピーナッツバターのようにパンに塗って食べる食品でした。『ビセイクル』は厚生省に品質を評価されました。そして病院でも使われました。『ビセイクル』は安藤百福さんの、最初の食品加工の作品ともいわれています。しかし当時パンが普及しなかったこともあり、大ヒットとはいかなかったようです。
ダネイホンの元ネタとなった「ビセイクル」はチキンラーメン、カップラーメンほどの大ヒット商品にはいたりませんでした。しかし品質は厚生省にも評価され、病院にも提供されました。このときの熱意や結果、そして失敗が、チキンラーメン発明へと続いたと考えることもできます。これらのエピソードを元ネタにしたドラマ『まんぷく』では、萬平は何度も「体に良く、美味しいものを作るぞ」と言っています。
余談ですが、チキンラーメンがモデルの『まんぷくラーメン』がドラマで登場しているとき、日清チキンラーメンが売り切れたスーパーやコンビニがありました。テレビ視聴をきっかけに、購買欲がそそられたようです。
ダネイホンの元ネタ・ビセイクルは現在販売されている?
さてダネイホンのモデルとなった『ビセイクル』ですが、2019年3月現在は、販売していないようです。今はビセイクル開発当時と違い、いろいろなサプリや健康食品が発売されています。席をゆずった形といえます。ただし現在でもビセイクルと同じ、牛のマローエキス(骨髄エキス)を含んだ健康補助食品は、販売されています。
そして現代のマローエキス(骨髄エキス)を含んだ健康補助食品は、味もバナナ味などに加工されてあり、以前よりさらに食べやすいようです。現在ではさまざまな栄養食品やサプリに席をゆずった『ビセイクル』ですが、戦後の食糧難の時代には、かなり貢献したと、考察することができます。
ダネイホンの歌が話題に
ダネイホンの歌が話題に
ダネイホンが大阪で売れはじめたとき、萬平たちが進駐軍に逮捕されるというハプニングがありました。このハプニングな事件をおこしたのは、萬平のもとで働いていた従業員です。塩をとりながらダネイホンの材料もとり、食料となる魚を取らなければならない。その作業内容に腹を立てた従業員の高木は、手りゅう弾を使って魚を捕まえるようになります。
結果的には福子の懸命な訴えもあり、萬平たちは進駐軍から釈放されました。しかし逮捕されたことが新聞に載ったので、塩の取引に影響が出ます。このことから萬平は、塩の製造をやめて、ダネイホンのみ製造・販売していこうと決めます。萬平の長年のパートナーである世良(桐谷健太)は、知名度をあげるためにダネイホンを宣伝することを提案します。ポスターでは萬平みずからがスーツを着て『萬平印のダネイホン』を宣伝しました。
ダネイホンの歌の歌詞
そしてダネイホン宣伝用の音声を担当したのは、主人公の福子です。福子の読んだナレーションは通称『ダネイホンの歌』です。『おいしいおいしいダネイホン。栄養満点ダネイホン。萬平印のダネイホン』…と。単純な歌ではありますが、独特ともいえるリズムです。妙に耳に残ると評判の声がありました。この音声とポスター、そしてテレビの宣伝の効果もあってで、ダネイホンは東京でも好評になったのでした。
ダネイホンの材料・作り方
ダネイホンの材料
ダネイホンの材料は、次のとおりです。
- 牛骨 3.5kg
- 水 6L
- 塩 40g
- 菜種油 150ml
- ワカメ 800g
- スモモ 400g
- ニンニク 15g
- ショウガ 30g
- コショウ 2g
ダネイホンの作り方
ダネイホンの作り方は、次のとおりです。
- 牛骨を下処理後くだく
- 牛骨と水を圧力鍋で5時間加熱
- 加熱後、牛骨を取りのぞき塩を入れる
- ワカメを茹ですり鉢でペースト状にすりつぶす
- スモモをすり鉢ですりつぶす
- 牛骨エキスに、ワカメ、スモモ、菜種油、ニンニク、ショウガ、胡椒を入れ、具材が溶けるまで加熱
- 常温に冷ましペースト状に固まったら完成
ダネイホンは、ドラマ『まんぷく』ではじめて試食されたとき、全員が不味そうな顔をしていました。発売後はいまひとつの売れゆきでした。その後にスモモや昆布のダシを加えることによって、味は改良されたようです。食べやすくなったダネイホンは大阪を中心に、栄養食品として評価されたようです。
ダネイホンに関する感想や評価は?
ダネイホン、失敗の予感しかしない #まんぷく
— 謎の人 (@nazo_no_hito) November 26, 2018
テレビドラマ『まんぷく』に出てくるダネイホンは、放送当時、不安に思う声が多くあがっていました。販売前の見た目は、深緑色のペーストですから、あまり食欲を刺激されなかったようです。
見た目がエグすぎるなダネイホン。ベジマイトよりまずそう
— Masaki☆ (@masaki_kkmt) November 26, 2018
えぐい、実在の栄養食品よりもまずそうだ…という声もありました。スモモの酸味や昆布だしでだいぶ緩和されたようですが、いったい改良前は、どれだけ味を無視したものだろうかと、想像した方もおられるようです。
「ダネイホン」の元ネタになった「ビセイクル」どんな食べ物なのか、どんな味だったのかググってもいっこうにわからずとても気になるが、今も昔も大ヒットせずにそっと消えていく商品はあったんだろうなあ。#まんぷく
— 烏有園 (@uyusono_2016) November 27, 2018
また、ダネイホンの元ネタになったビセイクルについて、そっと消えていく商品はあったんだろうな、という声もありました。まんぷく食品のモデルとなった日清食品にも、消えていった商品はあります。たとえばお湯をかけて3分で出来る『カップライス』は、カップヌードルの6倍の値段で売れなかったそうです。ただカップライスの製造方法は、のちに日清食品の『ラ王』に生かされ、新たなヒット商品を生み出すことに成功しました。
ダネイホンの元ネタ・モデルまとめ
今は、お金さえ払えばなんでも手に入る時代ですが、戦後はまずお金がなく、たとえお金があっても、栄養摂取に苦労した時代です。その時代に栄養食品ビセイクルを作り出した安藤百福さん、そしてフィクションではダネイホンを作り出した立花萬平は、世に貢献したといえます。
世のために己の発想力が使える彼らだからこそ、インスタントラーメンを誕生させたといえるでしょう。安藤百福さんとその妻・仁子さんの半生をモデルにしたテレビドラマ『まんぷく』。今一度、はじめから彼らの功績を辿るのをおススメします。