キングダムの李牧はどんなキャラ？その魅力と史実での最後までまとめ

キングダムとは原泰久さんによる春秋戦国時代を描いた人気漫画です。漫画＜キングダム＞は2018年1月現在で既刊49巻、累計発行部数は3300万部を突破しています。週刊ヤングジャンプで2006年9号から連載中です。第17回手塚治虫文学賞マンガ大賞も受賞しました。2012年-2013年、2013年-2014年にはアニメ＜キングダム＞も放映されました。近年はアプリゲームなどもリリースされ、老若男女問わず人気の作品となっています。

キングダムの舞台は中国の春秋戦国時代、時代は紀元前です。中国西方の国・秦に「信(しん)」と「漂(ひょう)」という2人の少年がいました。2人は孤児で身分は下僕でしたが、「いつかは戦場で活躍して天下に名を轟かせる大将軍になりたい」という夢を持っていました。時は過ぎ、漂は昌文君に仕官するも、戦乱によって亡くなります。信は漂の遺言を聞き、秦国の王・政(せい・のちの始皇帝)と出会い、戦乱に身を投じていきます。

今回はキングダムの中でも李牧というキャラに注目していきます。李牧は中国春秋戦国時代の「趙」の国の武将です。この趙の国には、キングダム内限定で三大天と称されるキャラが存在します。三大天とは、秦国と熱戦を繰り広げ、趙の国を支えた3人の大将軍を指します。またその三大天は旧三大天と新三大天に分かれます。李牧も「新」三大天に名を連ねるキャラであるため、まず最初に新・旧の三大天について考察していきます。

旧三大天1人目は藺相如(りんしょうじょ)というキャラです。武勇にはもちろん優れていましたが、とにかく頭の回る人物で、どちらかと言えば軍師役として趙王から重宝されていました。誰もが一度は使ったことのある「完璧」という言葉の語源になった人物です。度胸があり、秦王との会談でも知略をめぐらし、強国秦国を恐れさせました。病死しましたが、藺相如は後に司馬遷から「文武知勇の将」として賞賛されています。

三大天2人目は廉頗(れんぱ)というキャラです。廉頗も「刎頸の交わり」という言葉の語源となった出来事を藺相如と共に演じています。廉頗は紀元前283年に将軍となり、秦国に勝ち、昔陽(せきよう)を手に入れます。また、紀元前282年には斉に勝ち、陽晋を手中におさめました。この功績をきっかけとし、位を上げていきます。藺相如に比べると武闘派で年老いてもその活躍は素晴らしいものでしたが、晩年は国を転々とし病死しました。

旧三大天最後のキャラは趙奢(ちょうしゃ)です。最後は将軍となったものの、最初は政治家として活躍していました。趙奢はもとは田地の徴税官でした。その後、才を見出され趙の国税管理官にまでなります。趙奢の税管理のおかげで趙の国力は増大したと言われています。武人としては紀元前280年の斉攻めをきっかけに、紀元前269年の閼与の戦いなどで活躍し、馬服君に封じまれます。息子・趙括への危惧など先見の明もありました。

ここまで、旧三大天を紹介してきました。次はいよいよ李牧を含む新三大天の紹介です。旧三大天が退いた後(死んだ後)、趙国を秦国から守ったキャラは誰なのでしょうか？見ていきましょう！

新三大天の1人目は龐煖(ほうけん)というキャラです。将軍、道家、縦横家、兵家であり、文武に優れた人物です。若いころは楚国の山奥で学問を学んでいました。そのころから頭の良さがみられ、孫子の兵法「戦わずして勝つ者こそ最善である」という言葉を趙王・武霊王に解説しています。将軍になったのは紀元前245年。その後、武人として活躍し続けますが、紀元前236年を期に、龐煖の記録は途絶え、不明となっています。

そしてついに登場、新三大天の2人目が今回特集する李牧です。李牧に関しては後で詳しく説明します。最後3人目の新三大天が気になるところですが、実はまだ漫画＜キングダム＞には3人目の新三大天となるキャラが登場していません。数ある予想の中、一番有力な三大天候補を紹介したいと思います。

新三大天最後の一人と予想されるのが司馬尚(しばしょう)です。漫画＜キングダム＞で三大天を一度断っていますので、承諾する時がくると予想されます。史実で司馬尚が登場するのは紀元前229年のことです。李牧の副将として登場しました。秦が大軍を率いて趙を攻めてきたため、李牧と司馬尚が迎撃しています。つまり秦の強大な力を防ぐのは龐煖・李牧とくると司馬尚以外の人物がいません。正解なのか今後のキングダムに注目です。

お待たせしました。それではいよいよキングダムの李牧について見ていきましょう。アニメ＜キングダム＞・漫画＜キングダム＞での李牧はどのように描かれているのでしょうか？そして史実での李牧はどのような魅力があり、どのような人生を歩んだのでしょうか？

漫画＜キングダム＞・アニメ＜キングダム＞で、李牧は非常にかっこよく描かれています。また、見た目から頭のよさそうな顔をしていますが、実際かなり冴えてます、というより天才です。慎重な性格をしており、軍師としての活躍が大きいです。大きなことが成し遂げられているときはほぼ確実に裏で李牧が関わっているといっても過言ではないでしょう。また、キングダムでは人の命を大切にするキャラという点も魅力の一つです。

漫画＜キングダム＞で李牧と言えば王騎を討ち取ったことで盛り上がりを見せました。李牧自体を見ればたくさんの魅力があり人気のあるキャラですが、王騎ファンからすると李牧は非常に憎い存在であるようです。また、麃公も討ち取っており、李牧の魅力が高まる一方、敵(読者)もたくさん増やしているように感じます。李牧はとにかく守備が固く、防衛戦に強いです。そして隙あらば反撃することを得意としています。

アニメ＜キングダム＞の李牧も魅力がたくさんあります。CVは森川智之さんが担当しています。他のアニメではワンピースのはっちゃん役、フェアリー・テイルのマルド・ギール役、銀魂の佐々木異三郎役など有名なアニメを担当されているベテラン声優です。ゲーム版CVは浪川大輔さんが担当されており、こちらもルパン三世の石川五エ門役、銀魂の一橋喜々役、Fate/Apocryphaのロード・エルメロイⅡ世役など人気の声優です。

キングダムの中で李牧は王騎を討ち取りましたが少しその内容を見ていきましょう。秦国と趙国の戦いが起こる前に、李牧は匈奴軍20万を討ち滅ぼすという大きな戦をしていましたが、この戦のことは情報封鎖によって、敵国どころか趙国の軍にも知らせていませんでした。感知されないまま、馬陽戦の最後に李牧はいきなり4万の軍を率いて秦軍に突撃、王騎もこの行動の早さを読むことが出来ず、最後を迎えることになったのです。

漫画＜キングダム＞・アニメ＜キングダム＞での李牧の魅力・人物像を見てきましたが、史実の李牧はどのような人生を歩んだのか見ていきましょう。キングダムは大枠は史実に則って描かれていますが、史実には出てこないキャラクターなどもいます。李牧はどうなのでしょうか？

史実では、李牧はもともと国境軍の長官を任されており、匈奴(きょうど)の侵攻を押さえる役目を担っていました。史実の李牧も漫画で再現されていたように、当時の武将としては珍しく、戦は好まず防衛に徹する人物だったとされています。そのため、匈奴の攻撃に対しては、とにかく防衛・籠城戦を実施し、味方の被害を常に最小に抑えて警備していました。史実でも「損害を避ける」行為がある点も李牧の魅力の1つです。

しかし、趙王は李牧の防衛に徹するやり方を嫌います。このことで口論となり、李牧は自分のやり方を変えるつもりがなかったため、長官から外されました。しかし、後任に就いた者が匈奴を攻めて甚大な被害を受けると、趙王は李牧を呼び戻します。最初は断った李牧でしたが、「自分のやり方で貫いていいなら」という条件をもとに李牧は将軍となり長官に復帰、その後、策略によって匈奴を誘い出し大敗させました。

趙は時間がたつにつれて前述した旧三大天・藺相如や趙奢などの勇将を失っていきます。そして紀元前260年の長平の戦いで秦国に大敗、壊滅的なダメージを受けました。紀元前245年には残る唯一の旧三大天・廉頗が出奔、秦国はこの機を逃さず、紀元前234年には10万人が犠牲となる戦いが起こりました。趙国の危機に李牧は幽繆王(ゆうぼくおう)に呼ばれ、大将軍に任ぜられて、中央で秦国と戦うことになります。

中央に戻った李牧は紀元前233年、秦国に赤麗と宜安を攻められますが、これを見事に撃退します。おまけに李牧はその戦いの中で秦の将軍・桓齮を討ち取っています。この活躍が評価されて李牧は武安君に封じられました。その後、紀元前232年に秦国は再び趙国を攻めてきます。しかし、李牧はこれを撃退するどころか、韓と魏を取り返します。趙が衰退する中、秦の攻撃を防ぎ切った将軍は、趙国では李牧と項燕の二人だけでした。

李牧はどのような最後を迎えたのでしょうか？李牧の最後には病死や暗殺死など様々な説が存在しています。その中でも一番有力であると言われているのが謀殺説です。紀元前229年、秦国は総力戦と言わんばかりに大軍を率いて趙に侵攻してきます。その時に派遣されたのが李牧と司馬尚でした。二人の活躍により、秦は趙攻めに苦戦します。この状況を打開しようと、秦国は幽繆王の側近に賄賂を送り作戦にでます。

「李牧と司馬尚が謀反をおこそうとしてる」賄賂を送られた側近は幽繆王に嘘の告げ口をします。これを信じた幽繆王は李牧を更迭しようと試みました。しかし、李牧はこれに応じません。不信に感じた幽繆王は李牧を拘束、そのまま殺してしまいました。このように李牧は悲しい最後を迎えています。司馬尚も誅殺は免れたものの、解任・更迭されました。こうして幽繆王は自ら趙国を破滅への導いていったのです。

李牧が悲運の最後を迎えた後、秦軍の侵攻は再開されます。これに対応した趙軍の将は趙葱(ちょうしょう)と顔聚(がんしゅ)です。しかし、趙の頭脳ともいえる李牧を失った軍は大敗、被害も甚大なものでした。最後には幽繆王も秦軍に捕まり、紀元前228年に趙は滅亡してしまいます。趙が滅んだのは李牧がこの世を去ってからわずか3か月後(5か月後)と言われています。その後、司馬遷は『史記』で李牧を「守戦の名将」と称えました。

史実での李牧の人生はいかがでしたか？どんなに頭が良くて、軍師として称えられても最後は仲間に殺されてしまうという残念な最後でした。昔、一般的に「軍師」と呼ばれ、敵に負けることがなかった武将たちはだいたい最後は味方に殺される(裏切られる)ことが多いです。残念ではありますが、それが頭の良すぎる武将たちの宿命なのかもしれません。それでは切り替えて、キングダムでの李牧の魅力を紹介していきたいと思います。

何度も繰り返していますが、キングダムで李牧の一番の魅力はやはり策略家ということです。頭脳で戦場を動かす、敵を掌の上で転がすことに憧れる方も多いのではないでしょうか。その上李牧は「将軍」です。策略家の事ばかり述べてきましたが、武人としても一流です。ただし、王騎を討ち取ったのは史実では龐煖とされていますが、キングダムでは李牧となっています。このように、キングダムでは李牧を贔屓している面もあります。

キングダムでの李牧の魅力２つ目は人を大切にすることです。李牧は無益な戦いは好みませんし、被害を最小限に抑えるために基本的には防衛戦に徹します。また味方はもちろんですが、敵兵ですら無意味に死ぬべきではないと言っています。人情があり、春秋戦国時代にこのような考えを持つ人、それも将軍としては非常に珍しいのではないでしょうか。このような平和主義的な内面部分もキングダムでの李牧の魅力の1つとなっています。

今回はキングダムの中の李牧に焦点を当ててみていきましたがいかがでしたか？キングダムの中での李牧の魅力はもちろん、史実での李牧、そして今後どのような展開が予想されるかなどご理解頂けたならば幸いです。キングダムの中では李牧は信の最大の敵・ライバルと言えます。しかし、史実の李牧は身内に殺される説が最も有力です。李牧と信の関係をどのように描いていくのでしょうか？これからのキングダム・李牧に注目です！