ルーキーズ安仁屋（市原隼人）のモデルは安仁屋宗八？経歴や選手としての成績は？

原作・テレビドラマともに大人気作品となった『ルーキーズ』。川藤と並ぶW主人公といっても過言ではないメインキャラクター安仁屋恵壹は、イケメン俳優である市川隼人さんが演じたことでも人気を博しました。抜群の野球センスとたゆまぬ努力で絶対的エースとして走攻守すべてにおいてチームを支える大黒柱安仁屋にはモデルがいるのはご存知でしょうか？

今回は『ルーキーズ』安仁屋恵壹のモデルとなった安仁屋宗八さんとはどんな選手だったのか、その経歴や成績にスポットを当て人物像に迫ります！

『ルーキーズ』は『週刊少年ジャンプ(集英社)』にて1998年から2003年まで連載された、高校野球を題材にした少年漫画と同題のテレビドラマです。原作者の森田まさのり先生は『北斗の拳』の作者である原哲夫のアシスタントとして経験を積んだこともあり、同時期に連載された『シャーマンキング』や『ハンター×ハンター』などデフォルメされた絵柄が多いジャンプ作品では珍しく、劇画調に近いリアルなタッチで描かれています。

そんな 『ルーキーズ』ですが、昨今の漫画原作からのテレビ化の流行にのり、原作の終了後5年という月日をおいて、2008年にTBS系列でテレビドラマ化が実現しました。人間関係が希薄になったといわれる現代において、泥臭いといえる熱血スポーツ根性上等なストーリーを、豪華イケメンキャストが演じる『ルーキーズ』は男女共に楽しめるドラマとして人気を博しました。

同局の土曜20時枠で連続テレビドラマが放送されるのは38年6ヶ月ぶりとなり、『ルーキーズ』はTBS土8の連続ドラマ第一弾として大成功をおさめました。また翌2009年5月にはテレビドラマの続編となる劇場版映画『ルーキーズ -卒業-』が公開されました。テレビドラマ版では登場しなかったキャラクターや試合が盛り込まれ、同年公開された全映画作品の中で興行収入第一位に輝く華々しい成績を残しています。

二児玉学園高校野球部、通称ニコガク野球部は、試合中に部員が起こした暴力事件により活動停止となっていました。元々は春の甲子園とも呼ばれる選抜高等学校野球大会への出場経験もある野球部でしたが、活動停止以降、部員たちは自暴自棄になり部は荒れに荒れ、多くは退部していき、野球部は事実上不良の溜まり場となっていました。

そこへ赴任してきたのは前任の学校で不良生徒を更生させようとし手を挙げたことで、生徒に大怪我を負わせる不祥事を起こし、一度は教職を辞した新任教師・川藤幸一でした。実直で暑苦しいほどに熱血な川藤は、野球部の現状を目の当たりにすると、自身に野球の経験もなければルールもわからない素人ながらも顧問に就任します。

しかし事件以降、無気力となった部員たちはそんな川藤の情熱についていけずに反発。特に中学から攻守共に優れたエース選手であった安仁屋の野球に対する葛藤は大きく、川藤と対立します。川藤は部員1人1人に真摯に向き合い、耳を傾け徐々に部員たちからの信頼を勝ち取っていきました。次第に一丸となっていくニコガク野球部は過去の因縁や様々な試練に見舞われながらも、川藤と共に甲子園を目指します。

安仁屋恵壹は、ポジションは投手ですが、4番バッターも務める走攻守全てに秀でたニコガク野球部不動のエースです。右投右打の右利きで、身長181cm体重75kgの長躯にがっちりとした筋肉を備えた大柄の選手です。

テレビドラマ版『ルーキーズ』で安仁屋を演じた俳優の市原隼人さんは、身長171cmと安仁屋に比べて小柄ですが、筋トレが趣味であることを公言しているように、分厚い筋肉に覆われた逞しい体格で安仁屋のイメージを損なうことはありませんでした。また安仁屋の武器は遠投123ｍを記録する強肩から繰り出される、150km/hを超える剛速球です。加えて打率は6割、50ｍ走6.0秒の俊足の持ち主で、チームの主力となっています。

安仁屋恵壹はニコガク野球部のエースで4番で、ストーリー上の最重要キーパーソンの1人であり、川藤と並んで『ルーキーズ』の主人公として扱われる人物です。中学時代から走攻守全てにおいて秀でており、3割超えれば優秀といわれる野球において打率6割を超えという優秀な成績を修めた実力派エース選手でした。非常に優れた選手でしたが、川上にノーヒットに抑えられた雪辱を高校で果たすと夢を描き、ニコガクに入学します。

野球部入部後は1年生にして控え選手ながらもベンチ入りを果たしますが、同じく1年生でベンチ入りを果たした江夏が試合の最中に引き起こした暴力沙汰を間近で目撃することになります。その後、ニコガク野球部は活動停止となり凋落していきますが、その夏の甲子園でリベンジを誓った川上が大敗すると、川上にも及ばなかった自身と全国レベルの差を目の当たりにして、ショックを受けます。

江夏に起因する不祥事とは別に、挫折を味わった安仁屋は部員たちの中でも特に激しく川藤に反発しましたが、野球部に復帰後はストイックに練習をこなし、絶対的なチームの柱として活躍します。その突出した実力故に、人一倍重圧を負いワンマンプレーに走りがちでしたが、チームと共にチームプレイの重要性を学び、成長していきます。

強肩で豪速を誇る安仁屋のプレイスタイルはシンプルな真っ向勝負がメインです。戦略上、打率の高いバッターやすでに走者を抱えている場合、敬遠によって意図的にバッターを塁に出すこともありますが、安仁屋はこの敬遠を基本しないスタイルの投手です。中学時代で最速135km/hを記録し、高校入学後は150km/hを超える豪速のストレートが武器ですが、球種を増やす訓練を積み、変化球のカーブも習得しました。

テレビドラマ版及び映画版『ルーキーズ』で安仁屋恵壹を演じたのは俳優の市川隼人さんです。役柄通り熱くヤンチャなイメージのある市川さんは、ストイックで真面目な面を持ち、役に没入することで有名です。『ヤンキー母校に帰る』では主人公吉森真也が自身の面影を見る不良生徒氏家徹役、大人気テレビドラマ『WATER BOYS2』では主人公水嶋泳吉役を好演しイケメン人気俳優の仲間入りを果たしました。

『ルーキーズ』では安仁屋役に合わせて髪を伸ばし、繊細ながらも熱く責任感のある安仁屋を熱演しました。

『ルーキーズ』ニコガクの絶対的エース安仁屋恵壹ですが、モデルは実在する元野球選手ではないかと噂されています。その元選手が安仁屋宗八さんです。『ルーキーズ』の安仁屋は非常に珍しい名前をしており、安仁屋宗八さんはその名前の由来になった一人と言われています。ここでは安仁屋宗八さんは『ルーキーズ』安仁屋恵壹のモデルだったのか、検証していきます。

安仁屋宗八さんは1944年8月17日生まれの沖縄県那覇市出身の元プロ野球選手です。安仁屋という珍しい苗字も、沖縄に由来するのであれば納得です。1964年に広島カープ(入団当時の名称)に入団しプロ野球選手となります。ポジションは『ルーキーズ』の安仁屋と同じく投手。投球と打席も右投右打の右利きの選手です。

身長177cm、体重75kgというのは『ルーキーズ』安仁屋に比べると、4cm程身長が及びませんが、1960年代の成人男性の平均身長が161.1cmだったことを考えれば、当時としては『ルーキーズ』の安仁屋同様、高身長であったといえます。基本的な選手情報を見る限り、共通点も多く『ルーキーズ』の安仁屋は、安仁屋宗八さんをモデルにしていることがわかります。

沖縄出身の安仁屋宗八さんは、1962年の高校3年生の年に沖縄県初となる夏の甲子園に沖縄高校のエース打者として出場しています。投手ながらも打者としてもエースを張っていたところも『ルーキーズ』の安仁屋と重なります。高校卒業後はプロ野球選手になる意思はなく、琉球煙草に就職し社会人野球を続けていましたが、当時広島カープの現役選手だった平山智さんのスカウトに応じる形で、1964年に広島カープへ入団。

平山さんは本来スカウトではなく現役の選手でしたが、当時沖縄は戦後のアメリカの統治下にあったため、他球団のスカウトが足を運べないなか、アメリカ国籍を有し、沖縄への渡航の自由権を持つ平山さんだからこそ実現したスカウトだったといえます。アメリカ統治下の沖縄県出身者として初のプロ野球選手となった安仁屋宗八さんは、入団当初から注目を集め1年目から1軍に在籍しました。

変化球の球種に富んだ安仁屋宗八さんは、特に投手の利き手側に曲がる速球のシュートを得意とし、右利きの多い日本では多くのバッターを苦しめました。かの長嶋茂雄読売ジャイアンツ終身名誉監督も、安仁屋宗八さんのシュートには手こずったといわれています。その甲斐あって2年目以降は巨人キラーとして重宝されることになり、1968年には23勝とリーグ2位の防御率2.07という好成績を残しています。

二桁勝利という好成績ながらも、江夏豊や星野仙一、板東英二など野球に馴染みのない人でもその名を知る投手の群雄割拠時代において、タイトル獲得には至りませんでした。その後、酒豪が祟って痛風を患い成績は低迷しますが、1974年に阪神タイガースにトレード移籍すると、翌年の1975年には防御率1.91にまで成績は回復し、最優秀賞防御率とカムバック賞という念願の2つのタイトルを獲得しています。

選手晩年の1979年に古巣広島東洋カープに戻り、1981年に現役選手を引退。生涯成績は通算119勝をあげ、うち34勝は巨人キラーの異名に相応しく巨人相手に修めました。

安仁屋の苗字が安仁屋宗八さんに由来することは疑いようがありませんが、沖縄由来の苗字の珍しさもさることながら、下の名前の恵壹もあまり馴染みのない字を使用した変わった名前となっています。これは阪神タイガースの元プロ野球選手・藪恵壹さんのお名前に由来しているといわれています。つまり安仁屋恵壹の名前は安仁屋宗八さんと藪恵壹さんのお名前を掛け合わせたハイブリッドネームになっているというわけです。

『ルーキーズ』のニコガクは安仁屋のみならず、監督川藤をはじめ部員、教員陣に至るまで阪神タイガースの実在選手名に由来しているのはご存知でしょうか？原作者の森田まさのり先生は阪神タイガースのファンであることを公言しており、作中でも川藤が着ているユニフォームが野球部員が着用する現行ユニフォームとは異なる、縦縞のデザインのユニフォームであることに疑問を抱いた方も少なくないと思います。

この縦縞ユニフォームはニコガク野球部の旧ユニフォームで、ご存知阪神タイガースの代名詞ともいえる縦縞デザインをモデルにしています。

また、TBS系列でのテレビドラマ化より先に日本テレビでのテレビドラマ化が打診された際には、日本テレビの関係会社であり主要株主でもある読売新聞グループに配慮し、登場キャラクターの名前を阪神タイガースではなく読売ジャイアンツ選手名に変更する案が提案されましたが、森田先生はこれに強い難色を示したことでも有名です。

ちなみに、阪神タイガースを愛する森田先生は、ニコガク野球部が対戦する強敵ライバルたちに読売ジャイアンツの選手から名前を拝借しています。特にニコガク野球部の凋落の原因となった重要人物・江夏は阪神から移籍し20世紀最高の投手と称される江夏豊と巨人の怪物と呼ばれた江川卓を掛け合わせた、因縁深い名前になっています。

では実際に登場キャラクターの名前のモデルになった選手を紹介していきましょう。先に述べたとおり、安仁屋は安仁屋宗八と藪恵壹を足した名前です。また主人公の川藤は川藤幸三と原作者の森田先生が大ファンであるホームラン王こと田淵幸一の名前をモデルにしています。キャプテンを務める御子柴は御子柴進と和田徹、投手安仁屋の女房役を務める捕手の若菜は若菜嘉晴と坪井智哉からとられています。

チームに合流したのは一番最後ながら強打者として開花する新庄はメジャーリーグでも活躍した新庄剛志と井川慶、若菜の幼馴染でひげ面が特徴的な桧山は桧山進次郎と中西清起がモデルです。また、チーム一の俊足で塁に出ることに長けた関川は関川浩一と田中秀太をモデルにしています。

坊主が定番の高校野球児の中でも特にドレッドヘアが目を引く岡田は岡田彰布と安藤優也、小柄で際立った特技はないものの何事もそつなくこなす器用さを持った今岡は今岡誠と福原忍から命名。さらにお調子者で野球センスはイマイチなものの、代打に出ると異常なほどの活躍を見せる平塚は平塚克洋と藤田平、チーム一の長身と独特のフォームと掛け声が特徴的な湯船は湯舟敏郎と川尻哲郎をモデルとしています。

この他、部員に留まらず教師陣にも阪神選手の名前を用いており、森田先生の深い阪神愛を伺うことができます。

『ルーキーズ』安仁屋のモデルについて、成績や様々な観点から考察してきましたが、いかがでしたでしょうか？安仁屋のモデルとなった安仁屋宗八さんの選手プロフィールなど名前だけでなく安仁屋と重なる共通点を見出せたのではないかと思います。

また安仁屋をはじめとする、ニコガク野球部には原作者森田先生の阪神への並々ならぬ愛とライバルたちの名前にも秘められた関係性など、野球ファンにとっては溜まらない設定がふんだんに盛り込まれていました。『ルーキーズ』をご覧になるときは、本まとめを参考に選手のモデルや実在の選手にもぜひ思いを馳せてみてください。