2018年11月13日公開
2018年11月13日更新
北の国からの純はダメ人間でクズ?歴代彼女や名言・名セリフまとめ【吉岡秀隆】
ドラマ「北の国から」(1981年10月9日から82年3月26日まで)は本編全24回とSPドラマ8回(前・後編含む)で2002年まで続いた国民的ドラマ。田中邦衛演じる黒板五郎、吉岡秀隆演じる長男・純、中嶋朋子演じる長女・蛍を通じて家族の絆や変わる世相の中で翻弄されつつも生きる親子を描いた物語。今回の記事は黒板純の彼女やセリフを紹介しつつ、ネットを中心に沸き起こった「ダメ人間でクズ?」という意見について検証。ドラマ「北の国から」は脚本家・倉本聰の傑作シリーズ。
目次
北の国からの純はクズ?その真相に迫る!
この記事では名作「北の国から」に登場する黒板純についてダメ人間でクズなのかという検証していきます。「北の国から」に限らず倉本作品に精通し、論理的に検証した場合、本当にクズなのでしょうか?
「誰がなにを言おうが北の国からの純はダメ人間じゃない」という意見も、多くあります。客観的事実を基にして、ネットで囁かれる「北の国からのダメ人間説」を検証していきましょう。「北の国から」の歴代彼女たちとその後の活躍など盛り沢山の内容でお送りします。
北の国からとは?あらすじを紹介!
ここでは連続ドラマ版の「北の国から」のあらすじを簡単に紹介いたします。SP版「北の国から」については標題にある黒板純の成長と併せて追々あらすじも含む内容をご紹介します。
連続ドラマ「北の国から」あらすじ
「北の国から」のあらすじは女房に逃げられて都落ちした黒板五郎(田中邦衛)が僅かばかりの資金を手に故郷の富良野に戻り、長男の純(吉岡秀隆)と長女の蛍(中嶋朋子)を大自然に恵まれた北海道の地で育てるという物語です。子供達の手も借り自給自足体制を整え、人がましい生活を送れるようになります。やがて妻の令子(いしだあゆみ)と正式に離婚しますが、死別。義兄の五郎を一人の男性として慕う雪子(竹下景子)。
出典: https://note.mu
幼馴染みであり、五郎にとって貴重な現金収入源となってくれる製材所の社長・中畑和夫(地井武男)、五郎の従兄弟の子で純と蛍にとり、実の兄のような北村草太(岩城滉一)らに支えられ純と蛍が成長していく物語です。貧しいけれども何事にも一生懸命で人に親切な五郎はその行動で富良野の人々の信用を勝ち得ていきます。しかし妻の令子との離婚成立後に令子が他界し、純と蛍は母親を喪うというのが連続ドラマ「北の国から」です。
SP版で描かれるその後の「北の国から」
人の良い五郎はそれなりの資産を蓄え、念願の立派な自宅を完成させます。幼馴染みの笠松みどりの子・正吉(中澤佳仁)も引き取って暮らしますが正吉の失火と純の嘘で折角の新居を失います。また、笠松みどりの借金の連帯保証人となったことでまた無一文に逆戻りします。
やがて成長した純と蛍はそれぞれ巣立っていきますが、社会に出た二人を様々な難題が待ち受けている様を、SPドラマ「北の国から〇〇」(〇〇には年号が入る)で追っていき、黒板家の五郎、純、蛍を中心にそれぞれがぶつかる出来事や恋愛模様。北海道が直面している社会問題を世に問うて大ヒットしたドラマが「北の国から」です。ドラマのヒットで富良野は一大観光地になり道内でも裕福な街になりました。
北の国からの純とは?プロフィールを紹介!
吉岡秀隆演じる「北の国から」の黒板純はドラマの主人公・黒板五郎の長男です。妹の蛍と共にシングルファザーとなった五郎に連れられて富良野にやってきます。年の割に少しマセて、溝のある父親に敬語で話します。また、マザコンで母・令子が自分たちを捨てて不倫相手に走り、離婚しようという事情や、母親が別の男性と同棲している事情を理解出来ていないがため、五郎に不満を抱き東京の母親の許に連絡しようとします。
五郎は女にだらしのない人で職業も長続きしません。交際相手を簡単に妊娠させてしまうため「一発屋の五郎」と呼ばれていた程です。令子の浮気を契機に子供達の養育権を持ち、無一文同然(7、8万程度)で富良野に帰ってきます。いわゆる「都落ち」です。「北の国から」のドラマ序盤で五郎とは幼馴染みの中畑和夫以外にはほとんど歓迎されていません。このとき「人間のクズ」だったのは実は五郎でした。
廃材で丸太小屋を作り、和夫の手伝いもあって水を引き、電気も引くなど、自給自足同然の生活で子供たちに人がましい生活をさせようと五郎は奮闘します。こうして貧しく、不自由ながらも純と蛍を育てようと懸命に働く五郎に対して富良野の人々が認識を変えます。北村草太はともかく、その母・正子は五郎の帰省に批判的で「子連れで都落ちしたクズ」と見做していましたが、そうした人々の心も変えます。
様々な出来事の後に、五郎は令子と正式に離婚しますが皮肉にも離婚直後に死別します。男やもめとなった五郎ですが、令子への愛は変わらず、後添えを得ようとはせず、心から自分を慕っている令子の腹違いの妹・雪子も突き放します。北村草太は「五郎おじさん」と慕う好青年でしたが、雪子を巡っては五郎とライバルの関係で、男を上げるために一度は断念したボクサーとしての再起を目指しますが、夢破れます。
「北の国から87 初恋 」で中学卒業を控えた純は父親に資産的余裕がないことを知っており、成績優秀な妹の蛍のために敢えて中卒という茨の道を選択し、就職のために上京します。しかし、餞別として父から渡された泥のついた万札を「北の国から89 帰郷」でタチの悪い男に盗まれたと誤解して傷害事件を起こします。純にとって五郎は裏切ってはならない絶対的な存在です。しかし、それがために事件を起こすことになります。
「北の国から87 初恋」で最愛の彼女「れいちゃん」こと大里れいとは大里家が離農した後、札幌に住所を移したことを知って交際を再開させます。しかし、遠距離恋愛となってしまいました。皮肉にもかつての父と同様にガソリンスタンドの店員となった純は、人恋しさから職場で「トロ子」と呼ばれる松田タマコと肉体関係を持ち、妊娠させます。またしても、五郎に恥をかかせたと落ち込む純。
しかし、五郎の側にしたら恐ろしいほどによく似た親子です。まるで自分の前半生をなぞるかのように実社会で迷走を続ける純。学力的には高校進学も出来たのに五郎や蛍を思って敢えて進学せずに中卒就職という道を選んだ純が「東京」という五郎が馴染めなかった街で孤独に奮闘した結果の「過ち」を怒れる筈がなかったのです。すべては学費の心配をさせて息子を高校にも通わせられなかった五郎の不徳が招いたことでした。
「北の国から87 帰郷」で純が北海道に戻った本当の事情。大晦日の晩に五郎は蛍が正月に戻らない(勇次の実家で過ごす予定)ことに落ち込み、吹雪の中で新居建設の作業を強行して遭難。危うく凍死しかけます。先々のことは考えていなかった純でしたが五郎の「危なっかしさ」を怖れ、北海道に残る決意をしますが、就職口の乏しい富良野でなく、れいの居る札幌を選びます。それでも車で駆けつけられる距離。
このように純粋すぎる純は「北の国から」の劇中で父・五郎の過去の所行など知らず、「絶対的尊敬」から自分を「不肖の息子」と貶めますが、様々な失敗を重ねた五郎からすればその時々に一生懸命で、恋愛にも常に本気だという純は溺愛に値する孝行息子に他なりません。ただ、ドラマとしての演出上、五郎の過去の所行があまり取り沙汰されないため、視聴者からするとクズだったり、ロクデナシに見えてしまうだけなのかもしません。
「北の国から」全体を通じるとむしろ一見すると品行方正な蛍の方が母・令子と恐ろしいほど同じ道を辿ることになり、そのことに家族や幼馴染みを巻き込みます。もっとも結果的に純まで「不倫の末に結ばれる」結末に。良きにつけ悪しきにつけ親の血を引き、同じ過ちを犯す「人間の業」を恐ろしいと感じる方もいらっしゃるでしょう。
「北の国から」の純についてのトリビア
フジテレビのバラエティ番組で「明日使える無駄知識を」をテーマにした「トリビアの泉」のNo.8が「北の国からで純は独白のセリフで口癖の「~なわけで」を通算で何回言ったか?」というもの。結果はシリーズ全編を通じて52回。詳細を紹介したブログもあるので興味のある方は是非探してみてください。
「北の国から」のトリビアを紹介した高橋克実と八嶋智人は最近では昼の情報番組で安藤優子アナと共に「直撃Liveグッディ!」の顔です。高橋さんがレギュラー進行役で高橋さんが舞台や撮影で不在時は八嶋さんがピンチヒッターという相変わらずのコンビ。
五郎と純の妙でトホホな共通点
「北の国から」で親子だけに良い意味で色々と似たところのある二人ですが、妙な共通点というのは①「彼女を簡単に妊娠させてしまう」。タマコの妊娠騒動でかつての一発屋・五郎が純を怒るに怒れないわけです。②「他人の恋愛に興味津々で彼氏・彼女をコッソリ確認しに行く」。蛍の彼氏(当時は緒形直人演じる和久井勇次と交際中)を二人でコッソリ見に行く。そこで五郎のセリフ「純、お前も似ているから気をつけろ」。
こうしたユーモアのある設定があるからこそ、「北の国から」は大人気シリーズとなったと解釈するのが良さそうでしょう。しかし、純の扱いの悪さに比べて蛍はなにをするにも恵まれてます。医療過疎地域問題にこの時点で言及し、純役の吉岡秀隆が問題解決に繋がる役(後述のコトー)を演ずる事になるとは倉本聰は正に予言者のようだ、との意見もあります。
北の国からの純の歴代彼女を紹介!
ここでは「北の国から」での純の歴代彼女を紹介しますが、長続きしなかったのは松田タマコだけで、歴とした彼女だった大里れい、小沼シュウとは交際期間が長く、破局の原因も純の落ち度ではないとも言われています。
むしろ、れいにもシュウにも自分の事情に巻き込むまいと身を引いた男らしさが際立ちます。最終的に結ばれる結とどうなったかは完結後のため不明ですが、シュウとの哀しすぎる別れを考えたら大切にしただろうとも言われています。
しかも、結は自立心も度胸も男勝り。浮気なんかしようものならズドン。自分に甘い純にはこのぐらい気の強い女性がお似合いだと言われています。実際、吉岡秀隆と内田有紀は「北の国から2002遺言」の公開後、結婚しましたが、3年後に離婚しました。原因は吉岡秀隆が忙しすぎて家を空けることが多く、片親家庭に育ち温かい家庭を求めた内田有紀が寂しかったのが原因だそうです。少なくとも性格の不一致とか浮気ではないようです。
ちなみに横山めぐみは「愛という名の下に」にも出演。現在もベテラン女優で上画像(日テレ「ブラックリベンジ」)の左。宮沢りえも和服美人として現在も健在。内田有紀は吉岡秀隆との離婚後も「最後から二番目の恋」(長倉家の次女万里子役)や「まんぷく」(18年10月期の朝ドラ。早世するヒロインの姉役)など女優のお仕事を幅広くやっていますが、裕木奈江だけが「不可解な干され方」をして芸能界を去っています。
彼女その1 大里れい/横山めぐみ
現実的にありえない「涼子先生」を除けば純の本当の初恋相手。越境通学で市の中心部の中学に通っていましたが雨宿りと尾崎豊の曲が好きだという共通項から純とは相思相愛の仲に。実家は大里家という比較的裕福な農家の娘でしたが、累積した負債がもとで「離農」を余儀なくされた両親と共に富良野を離れ、札幌に移り住み、偶然純と再会した後は交際を再開させます。しかし、札幌と東京の遠距離恋愛に。
純は五郎の遭難事故を契機に北海道に戻り、札幌市の臨時職員としてゴミ収集というキツい仕事をしており、高校卒業後にお洒落なOLとなったれいとは、彼氏・彼女というには価値観や意識が違いすぎる存在になってしまい破局。純のことは好きでしたが、別の男性と結婚します。
彼女その2 松田タマコ/裕木奈江
傷害事件の後、純が上京先で再就職したガソリンスタンドの同僚。何事にも鈍くさいため「トロ子」と陰口されていました。純はれいと同じビデオをレンタルして二人でデートした気分になるという「仮想デート」をしていた時期で、たまたまビデオレンタル店で鉢合せ。生来、親切な純はトロ子の失敗をフォローするなど優しさを見せ、れいの存在を伏せ、ラブホテルならビデオ見放題という事で入店しますが関係をもってしまいました。
妊娠したことにショックを受けて実家に戻りますが、純は恥を忍んだ五郎と共に謝罪に赴きます。純に好意を持ってはいましたが、結果に対する純の謝罪で自分とは本気でなかったと理解し身を引くことになります。厳密に言うと彼女・彼氏だったか疑問視されており、むしろ彼女(裕木奈江)の扱い自体が気の毒だとも言われています。
彼女その3 小沼シュウ/宮沢りえ
純が本気で結婚を考えて交際していた彼女。札幌市内でごみ収集の仕事をしていた際に、シュウが気に入った家具を純が用意したことから交際がスタートします。しかし、やがてシュウがかつてアダルトビデオに出演していたことが判明し、友人達からの誹謗や嘲笑を怖れた純はシュウと距離を置きます。しかし、シュウは過去の出来事を全て打ち明け、本気で純のことを愛していると意思表示したことで彼女として本格交際。
五郎も公認の仲でいずれはシュウが純の嫁として嫁ぐと信じていました。純は正装して小沼家に挨拶に行きますが、シュウの兄たちは純の学歴や職業を問題にして二人の交際に反対します。シュウを実家に戻し、すっかりめげた純は落ち込みシュウを放置してしまいますが、逢えない間に募った思いを赤裸々に綴ったシュウの日記を読んで、障害を撥ね除ける覚悟で交際を再スタート。
シュウへのクリスマスプレゼントを雪子の店で物色していた際に草太の訃報が届き、「草太兄ちゃん」を喪って酷く落ち込んだ純に寄り添ってやってくれという五郎の願いで、シュウは父親の運転する車で富良野に駆けつけて純の傍らに寄り添います。この際、「彼女」として蛍にも紹介。しかし、何故か蛍と正吉の結婚式にシュウは招かれず、草太の牧場経営を純と正吉とが引き継ぐよう半ば強制され、五郎の不安も的中してしまいます。
相思相愛で家族公認の仲でしたが、結果的に草太の行き過ぎた経営規模の拡大と負債とが、結婚していた蛍と正吉、予定していた純とシュウを引き裂いたのでした。借金返済の目処も立たないため、純とシュウは相思相愛のまま文字通り、泣く泣く別れることになります。宮沢りえの降板にも裏事情があったのかも、と囁かれる「北の国から」です。
彼女その4 高村結/内田有紀
牧場も故郷も家族も恋人も失い、借金を背に羅臼に流れ着いた純は「出会い系サイト」に寂しさを癒やす日々。傷心の最中に「涼子先生」と再会。その際に、教え子同士だということで結と知り合いに。結が独身だと思っていた純は結との交際をスタートさせますが、その実、結には籍の抜けていない夫が。自分でも知らないうちに不倫していたと知った純は結の義父「とど」こと高村五平や、夫の弘に怯えることになります。
実のところ、二人の交際が発覚した段階で五平は身元を隠して五郎を訪ね、その人柄にすっかり惚れ込み、純の気弱だが純朴な性格も気に入って認めます。突如、羅臼にもどった弘らからリンチを受けるも、純はこれ以上愛する人を失う悲しみに耐えられない心中を告白して、結の心を動かし散弾銃まで持ち出した結に戦いた弘は引き下がります。五郎が富良野から羅臼に来る直前に五平が遭難し、その一件で純と弘は和解します。
その後、結は純には内緒で富良野を訪ね、生活拠点として必要な情報や仕事先を探すなど、純と生涯を共にする覚悟で富良野に来る決意を知り、純も人々から誹謗中傷されようとも富良野で結とやり直し、借金返済は無理でも大恩ある三沢老人の介護をするため帰郷し、結と一緒になると決意します。シュウは優しい子でしたが精神的に強い子ではなく、結は一度結婚に失敗し、純に足りない逞しさを補う存在だったのが正に決め手となりました。
北の国からの純がクズだと言われる理由とは?
「北の国から」で少年時代から青年になって以降の純は「傷害事件」「妊娠騒動」と問題行動を起こし、性格的にも自虐的で劣等感の塊で皮肉屋。責任逃れをすることもあり、厳しい言い方をすれば自分に甘い意志薄弱な男。しかし、最初に指摘した通り、ダメ人間や人間のクズではないという意見もあります。では何故クズに見えるかを検証します。
「北の国から」のシリーズ全体を通じ、まとめ部分も含め、踏み込んだ検証をします。「北の国から2002遺言」での純は「出会い系サイト」や携帯料金に金を使うならちょっとずつ返済した方がマシなので、其処はクズかも知れません。仮にクズとしても繋がりという繋がりを断ち切られた(五郎にも現住所を教えない)純の孤独は想像を絶するものです。
純の性格的問題と「北の国から」SP作中の五郎の美化
「北の国から」の劇中で純は優柔不断で意志薄弱なダメ息子のように扱われますが、演出上の都合とSPドラマシリーズの視聴者が連続ドラマ「北の国から」を見ていないことが原因では?五郎も計画性ゼロな上に相当無責任で身勝手。「令子が子供たちに宛てた手紙を勝手に燃やす」など、父親としてやって良いことではないでしょう。離婚のため令子が立てた弁護士からも怒られます。なにより社会的には「落伍者」でクズだと言われています。
プロフィールで紹介しましたが純の最終学歴は中卒です。学業が不真面目だったから高校進学出来なかったのではなく、下に妹を抱え「家庭の経済的な事情」から中卒を余儀なくされました。上京する息子に五郎が手渡した万札の枚数。当時はまだ高校無償制度がなかったですが、あんなはした金では道内の公立高校にも入れません。(入学金にも足りない)経済的逼迫を痛感する純は五郎に進路相談も出来ないほどでした。
「北の国から87 初恋」では五郎はそのことに逆上して怒る始末。五郎が情けないのは亡き令子が託した「子供達の未来」についての展望。蛍は奨学金で看護学校に通いますが、純の場合「東京の高校に進学」が希望だったのに、中卒で上京して就職。高校に行くのが当たり前の時代に中卒で就職すれば、端っから進学出来ないワルに染まるのも時間の問題で、逆に染まらなければイジメやカツアゲに遭います。
「傷害事件」の内容に関しては誤解もあって、相手は正にとばっちりのようです。バールでぶん殴るなど殺人未遂。髪を染めてバイク(純は買ったつもりですが盗難車でした)を乗り回し、傷害事件を起こしました。よく少年院送致にならなかったということで、クズ説の根拠もここからきているのでは、と言われています。
喧嘩慣れしていない人(普段温厚な人)ほど認識が乏しく、凶器を手にするのは今でも同じ。草太のように元ボクサーでもなければ拳は「凶器」ではないという理解もなかったようです。
しかし、北海道から上京した元は純朴な優等生の純が喧嘩慣れしてる方が変だとも言われています。せいぜい正吉とじゃれあった程度の純は喧嘩にも「暗黙のルール」があることを知らず、クズ以前に世間知らずだったようです。
客観的に自分がどう見えるかも分からないお子様。警察に突き出された純は「不良ではない」と言い張りますが、世間は見た目で判断します。純の性格はやはり甘ちゃんではありますが、それでクズだクズだはあんまりだとの意見もありました。実際の元ヤンたちの対応は上画像。
「北の国から」冒頭設定で80年代の東京のガソリンスタンドの従業員で家族4人を養うにはかなり無理があります。場当たり的で計画性のない五郎の甲斐性の無さが令子に愛想を尽かされた原因のようですし、結婚に失敗して子連れで故郷に戻ってきます。「理想主義の五郎の方が純より現実が見えておらず、だから女房に愛想をつかされた」ようです。純も結婚を真剣に考えますが「経済的理由」でシュウと結婚できません。
借金返済の放棄でダメ人間?
純と正吉がなかなか結婚出来ないのは働いても働いても貧しい事で「経済的な事情」が許さなかった。それをなんとかしたいと誰より考えていたのが北村草太でした。女房のアイコが結婚式の際の流産で自身の子供が望めないと知った草太は必要以上に仕事にのめり込み、純と正吉を自分の後継者として面倒を見るつもり。しかし、その一方で性格的には完全におかしくなっていました。(その理由は別項)
恩人である五郎のやっていること(無農薬農法)を鼻で笑い、他人の秘密は平気で漏らします。草太を先輩と慕っていた電気工の宮田寛次でさえ、敢えて苦言を呈する程でした。独り善がりな馬鹿な思いつきに自分の子でもない純や正吉を巻き込み、二人の幼馴染み・中津完次を死ぬまで追い詰めます。挙げ句に完次の元新居を買い叩き蛍と正吉に住まわせるなど、トラクターを買い叩くとかやる事がひどく、正吉や純にも呆れられます。
一番最大の問題が「草太が死んだせいで経営規模が巨大すぎる農場が残され、その跡継ぎに純と正吉が指名される」。ご存じの通り純の黒板家は裕福ではない家庭。正吉も水商売の母親の子。資金繰りに苦しんだとき、親の支援で立て直せる状況ではないものを「故人の遺志」を口実に押しつけました。その大人たちは経営破綻後は知らん顔です。五郎は言葉少なに純を弁護しますが、富良野の人々の仕打ちに激怒しても良い程でしょう。
純は五郎から教わった生き方として「人は身の丈を弁えて生きるものだ。あとはお天道様がなんとかしてくれる」(遺言の内容)を実践していました。農業経営の難しさもれいの実家や完次が「離農」したのを目の当たりにしています。お金の大切さは身に染みています。経営破綻しかかった企業を無償で支える存在を「ホワイトナイト」と言いますが、これに相当するのは三沢のお爺さんだけでした。ゴリ押ししたのは成田新吉たちでした。
正吉は幼少期に五郎の全財産である小屋を失火させた償いで返済していましたし、元自衛官で重機の操縦免許も持っていましたし、結婚もしていました。しかし、純には手に何の職もないただの中卒です。借金返済が出来なくなるのは火を見るより明らかでした。そんな純を故郷から叩き出したのは富良野の人たちでした。しかも取り立てに真っ先に来て差し押さえたのは「貸し剥がし」をした富良野農協。
蛍の「お兄ちゃんお金返してないんだって」という台詞に純のだらしなさを感じる人もいるかと思いますが、それ以前の話として「雇われ経営者」としてやったこともない農業経営をさせられ、本来なら頼りになる筈のベテラン従業員たちが真っ先に逃げ出す。アイコと正子は夜逃げ。負債は純と正吉に丸投げ、返済をしていた正吉は立派ですがこれでも純をクズと責めるのは難しいのかもしれません。
本当のクズ野郎はクズには見えない立派な身なりをしている
北の国から2002の話ではなく、北の国から98の話で純と正吉に過大なものを大人たちが背負わせました。それでも二人は一生懸命にやりました。男同士で同居生活するなど慎ましく生ききた二人に「一家離散」という負の遺産を追わせた北村草太がクズだという意見もあります。しかし、草太も「鬼」になるほど追い詰められました。規模を広げて収益を重視しないと天候に左右される農家は脆いと精神的に追い込まれたのです。
「問題児」や「精神病者」を抱えた家庭ではありがちですが、心根が優しく真面目で正直な分、精神的には弱い人のところに皺寄せが行くものです。つまり、家族の中の「負け犬」係が汚辱と汚名を全て背負い込みます。
本当のクズは「非を認めない高圧的な人物」や「既得権益に胡座をかき弱者を虐げる存在」。それが人間社会の本質だとする意見もありました。標題にした「本当のクズは立派な身なり」はそのような部分を表現しているようです。
純は一生懸命に生き、ゴミ収集にも誇りを持つプロ意識を持った労働者。しかし、貧しいが故の弱さを露呈しやすく、自分に自信を持てないままでいました。純のような青年が置かれた状況は現在「貧困の連鎖」と認知される社会問題です。
北の国からの純の名言や名セリフを紹介!
ここでは「北の国から」の劇中で純の名セリフを纏めます。場面を回想しつつ思い出してみましょう。それに相応しい曲は間違いなくこのさだまさしの名曲です。
純の独白セリフ「関係ない人が父さんの悪口を言うのは耐えられず…」
ドラマ「北の国から」第4回の純の独白のセリフ。離婚協議をしている最中、弁護士役の宮本信子が令子から子供たちに充てた手紙を勝手に処分した五郎を非難するのを受けてのセリフです。
純の独白セリフ「父さん、僕は会話に入っていけませんでした。」
ドラマ「北の国から」第13回の純の独白セリフ。令子の見舞いのため東京に戻った純が久しぶりの再会をした友達の家にて、少し居なかっただけで置いて行かれる東京の忙しなさを現したセリフ。
純の独白のセリフ「母さん、今日も雲がきれいです」
ドラマ「北の国から」第二十四回(最終回)の純の独白セリフ。「母さんが見たっていう雲はどれだか分かりません。だけど、その雲を、僕と螢はどれだったんだろうと時々話しており…」と続くセリフが母親の令子が生前、二人の我が子に残した手紙に富良野の雲が綺麗だったと書かれていたのを受けての純の独白セリフ。
純のセリフ「そうだそうだ、かぼちゃ作ってみろチクショウ!」
SPドラマ「北の国から84夏」より。東京から来た努がパソコンの自慢話をし、いずれパソコンで仕事をする時代が来ると言われた際、暗に五郎を揶揄されたと感じた正吉が「パソコンで何でもやるようになるって、そんじゃ、パソコンでカボチャ作ってみろ!」と言ったのに唱和してのセリフ。努も、正吉も、純も「君たちはみんな正しい」としか言えません。狭義な意味でパソコンでカボチャは今も作れません。
純のセリフ「情けないじゃないか!父さん近頃本当に情けない!僕がここを出たいのはそんな父さん見たくないからさ!」
SPドラマ「北の国から87初恋」より、純が高校は東京に進学したいと思い、まずは雪子や草太に相談しますが五郎には相談しません。何故俺に相談しないと親子の口論となって純の本音のセリフ。蛍はれいに影響された(れいも東京での進学志望)と言いますが、純はもともと上京志向(本来の意味での帰郷)が強かったようです。
純のセリフ「大事なものをそいつにとられたから」
SPドラマ「北の国から89帰郷」より東京で傷害事件を起こして富良野に戻り五郎にその報告をした際の純のセリフ。喧嘩の原因が「泥のついた万札」だとは絶対に言わない純。「それは、他人を怪我さすくらい、お前にとって大事なものだったのか」という五郎の言葉に純は泣き、締めの五郎の言葉は「男にはだれだって、何といわれたって、戦わなきゃならん時がある」。
純の独白セリフ「人に喜んでもらえているということが 仕事の励みになる」
SPドラマ「北の国から98時代」より札幌市の臨時職員と言う立場で「ゴミ収集の仕事を続けて3年。何度も嫌になり、疑問を抱きやめようかと投げ出しそうになってそれでもこの仕事を続けてこれたのはゴミを出しに来る町の人たちからお礼の言葉を投げかけられるからだ。くじけそうになる僕の気持ちをかろうじて支えてくれたものは人に喜ばれている、そういう意識である。」というのが純の独白セリフです。
このセリフは「北の国から2002遺言」の五郎のセリフ「俺は(農業を)ちっちゃくやる。誰かのありがとうが聞こえるところでちっちゃくやる」。間違いなく五郎と純は親子だという、同じ高い職業(プロ)意識を持つ二つのセリフです。
純のセリフ「俺の妹だぞ!俺の…たった一人の…妹だぞ」
SPドラマ「北の国から98時代」より同居生活していた正吉が突然改まり、蛍を妊娠させた事を告げられ、取り乱してのセリフ。若い頃の失敗で暴力とは無縁だった純もこのときばかりは乱暴です。これより少し前、蛍から金策を申し込まれ、理由を聞かずに全財産を渡そうとするほど、純は蛍を愛していました。
純と草太のやり取りのセリフ「兄ちゃん、オレは最近お兄ちゃんのやり方がわからないよ。」
SPドラマ「北の国から98時代」よりスナックに呼び出された純が完次のトラクターを運ぶのを手伝ってくれと切り出されて二度拒否した後のセリフ。更に「兄ちゃんは最近絶対おかしいよ。まるで人間が変わったみたいだよ。」五郎と純の性格的な最大の違い。相手を選ばず、五郎は言うべきことがあっても言葉を呑み込む。純は言うべきと思ったことははっきりと言い切る。それが正しいという二人の価値観の違いのようです。
純のセリフ「もう逃げるのはイヤなんだ」
SPドラマ「北の国から2002遺言」より。弘たちのリンチでボコボコにされ、結に心配されて泣きながらのセリフ。この後、結は散弾銃を持ち出しますが、純は土間で土下座して弘に「結さんをボクにください」と頭を下げ、結も慌ててそれに倣います。弘は拍子抜けしました。
仕返しに来たのでなくリンチを主導した相手に謝罪と結との離婚を頼むため、土下座しに来たのです。こうした処も純の純朴さです。
北の国からの純役を演じる俳優キャストを紹介!
「北の国から」の黒板純役・吉岡秀隆さんをまだ「純」と呼ぶファンもいるようですが、実は50歳近いバツイチのおじさんです。なにより子役から名優に成長した人物ですが、「北の国から」で成長を見続けたので当時の視聴者は容姿の変化に見慣れているのかもしれません。
ドラマは「北の国から」(本編+SPドラマ10本)「Drコトー診療所」(ドラマ2期+SPドラマ4本)映画は「男はつらいよ」(計23本)「学校」(2作)「ALWAYS 三丁目の夕陽」(3作)など。倉本聰にも山田洋次にも黒澤明(晩年期の作品には起用)にも愛された役者。ちなみに名子役から名優にという意味では「後継者」の育成に携わっています。
「ALWAYS三丁目の夕陽」でシリーズ3作を通じ、吉岡さん演ずる茶川竜之介の弟子で義理の息子の古行淳之介役を演じた須賀健太。現在24歳。子役から主演作も増やしている伸び盛りの俳優。下画像は主演作「獣道」(17年公開)から。名子役から名優への道を着実に歩んでいます。上の画像と下の画像見比べたら同一人物に見えないとも言われています。三作目では眼鏡をかけた東大進学志望の「優等生」。
そして吉岡秀隆といえば日本アカデミー賞の常連です。主演でも助演でも複数回受賞しています。
また話題作に吉岡秀隆ありで共演者が受賞した「阿弥陀堂だより」同じく「64(ロクヨン)」、6部門受賞の「海賊と呼ばれた男」2017年も物凄いキャスト(岡田准一、小栗旬、柄本佑、長澤まさみ、安藤サクラ)が集結した「追憶」。須賀健太も「おじちゃん」(三丁目の夕陽での呼び名)に見習い名声も勝ち取って欲しい、との意見もあります。
北の国からの純についてまとめ!
「北の国から」の黒板純は優柔不断で頼りなく「不肖の息子」を自虐的に自称していますが、父の背中を見て育ち、血は争えなかっただけでダメ人間ではありません。むしろ、「慎ましく生きる」を信条にしている好青年です。だからこそ、助けてくれる人が居て、支える人にも恵まれ、彼女にも恵まれていました。純は五郎の遺言を聞くまでもなく、既に実践していました。
「北の国から」で純は何年もゴミ収集の仕事をしましたし、自分の犯した罪は忘れません。人に散々迷惑もかけますが、必ず反省し、足掻き続けます。純の不器用さは五郎と同じです。純が駄目な卑怯者ならそう育てた五郎の責任でもあります。
家長の五郎が言うべきことを言えば、草太の牧場の尻拭いで「一家離散」もなかったのかもしれません。五郎を富良野の人たちが助けてくれたように純を助けてくれる人がいます。それが三沢のお爺さんでした。
富良野に帰ってきた五郎の人生が幸せなら、きっと純も幸せになれる筈です。軽口も屁理屈も言いますが、それは草太も和夫も同じ事でした。本当に二人ともクズでしょうか?草太はともかく和夫は違う、とのコメントも有りました。「北の国から」の物語を通じて吉岡秀隆が演じた黒板純は真っ当な人間「真人間」ではないでしょうか?
脚本家・倉本聰が伝えたいこと
脚本家・倉本聰は「非の打ち所のない人間」は描きません。来年第2期が始まる「やすらぎの郷」の主人公・菊村栄(石坂浩二)も妻の律子を愛していながらかつて浮気し、バレないと思ってプレゼントを隠します。断筆しようが禁煙は出来ない。若い女の子に年甲斐もなく「恋」をします。息子の嫁との不和は深刻で折れようとしない。周りの人々の凹凸が激しいので目立たないだけで頑固者で優柔不断です。
完璧にほど遠く、むしろ倉本聰の人間性を等身大にした人物のようで「だからこそ」好感が持てます。同じく「優しい時間」という作品では寺尾聰演じる勇吉と息子・拓郎役の二宮和也の確執が描かれました。勇吉はエリート商社マンで脱サラし喫茶店を営む「一見完璧な人生の達人」ですが、愛妻を奪った一人息子を許せない度量の小さな人間です。拓郎は父の赦しを得るため入れ墨を消そうと命に関わる大火傷を負います。
「北の国から」の純と五郎の親子はわかりあっていて、性格的にもよく似た人物です。前述した勇吉、拓郎親子のような深刻な溝もありません。五郎の遭難事故のあと北海道に戻る決意をし、なにかあれば駆けつけられる札幌に居を構える孝行息子ですが、「北の国から87」のような価値観の違いによる衝突を怖れて適度な距離を保つ努力をしていました。それだけでも純は五郎や令子、雪子、草太に恥じない青年ではないでしょうか?