モンテ・クリスト伯の原作小説あらすじを解説!ドラマとの違いやラストの結末は?

2018年に『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』の名でドラマ化されたことでも注目を集めている、アレクサンドル・デュマ・ペール原作の小説『モンテ・クリスト伯』。19世紀から愛され続ける絢爛たる復讐劇のあらすじやラストについて徹底解説します。原作小説の舞台や登場人物、あらすじやラストなど、ドラマと原作小説を比較しつつ他のメディアミックスにも触れながら、今だからこそ楽しめる小説『モンテ・クリスト伯』の世界観をご紹介しましょう。

モンテ・クリスト伯の原作小説あらすじを解説!ドラマとの違いやラストの結末は?のイメージ

目次

  1. モンテ・クリスト伯の原作小説あらすじが気になる!
  2. モンテ・クリスト伯の原作小説の作品情報
  3. モンテ・クリスト伯の原作小説の主な登場人物
  4. モンテ・クリスト伯の原作小説とドラマの違いは?
  5. モンテ・クリスト伯の原作小説のあらすじネタバレ
  6. モンテ・クリスト伯の原作小説のラスト結末は?
  7. モンテ・クリスト伯の原作小説を読んだ感想は?
  8. モンテ・クリスト伯の原作小説あらすじまとめ

モンテ・クリスト伯の原作小説あらすじが気になる!

2018年の4月から2ヶ月に渡りテレビで放映された『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』に実は原作小説があるのをみなさんご存知でしょうか?番組予告当初「これは流石に滑るのでは?」とまで囁かれるほどドラマと原作小説では設定の時点から大胆なアレンジが加えられていたことも話題になりました。

今回は、その原作にあたる19世紀の小説『モンテ・クリスト伯』のあらすじやラスト、ドラマとの比較を行いながら世界観を解説していきましょう。

Tips:ドラマ『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』

『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』は2018年の4月19日から2ヶ月に渡り全9話がフジテレビで放映されたドラマです。ディーン・フジオカが主演の復讐鬼を演じ、ダークなヒューマンドラマとサスペンス劇がお茶の間を魅了しました。あらすじは省きますが、『謎解きはディナーのあとで』『ストロベリーナイト』シリーズの黒岩勉さんが舞台を現代日本にするなど大胆なアレンジを加え新たなモンテ・クリスト伯を生み出しています。

モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐― オフィシャルサイト - フジテレビ

モンテ・クリスト伯の原作小説の作品情報

『モンテ・クリスト伯』の原作小説がはじめて世に出たのは170年以上前の1844年、フランスの当時の大手新聞「デバ」紙に掲載されたものが一番最初になります。原作小説の作者はアレクサンドル・デュマ・ペール。彼の手によって新聞で連載された復讐劇はフランスで大人気になり、復讐劇や義賊物語的な展開、そして風刺的な群像劇などがなんと18巻にも渡る超大作へとまとめられていきます。

日本では、明治時代に黒岩涙香が『Le Comte de Monte-Cristo(モンテ・クリスト伯)』を『史外史伝巌窟王』という題名に訳して新聞『萬朝報』に連載したことで今でも「巌窟王」の名で愛されています。『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』のアレンジではこの黒岩涙香の『史外史伝巌窟王』の翻訳の際に行われたような、馴染みやすいように日本名の人名や船名に変えるだけでなく舞台ごと変えるという大胆さを持っています。

Tips:原作小説『モンテ・クリスト伯』と小説家「大デュマ」

アレクサンドル・デュマ・ペールはもとは劇作家を目指していたこともあり、デビュー作の『アンリ三世とその宮廷』(1829)をはじめ歴史劇や戯曲で培った流暢で華麗な文体を武器に歴史教師だったオーギュスト・マケとタッグを組む形で『モンテ・クリスト伯』を連載したのです。彼は『モンテ・クリスト伯』やその後発表した『三銃士』や『ダルタニャン物語』などで多額の富を得て実際に「モンテ=クリスト城」を建設しています。

また、息子のアレクサンドル・デュマ・フィスもまたかの有名な『椿姫』を1848年にわずか24歳で書き上げ歌劇界に親子揃って多大な影響を与えたことから父親のアレクサンドル・デュマ・ペールを「大デュマ」、息子のアレクサンドル・デュマ・フィスを「小デュマ」と呼ぶことがあります。『モンテ・クリスト伯』のみならず、彼らの作品はいまだに多くの舞台で何度も上演されている絶大な人気を誇る作家たちなのです。

Tips:アニメ『巌窟王』

様々なメディアミックスで愛され続けている『モンテ・クリスト伯』は実は1956年にアルフレッド・ベスターの手によって『虎よ、虎よ!』という宇宙が舞台に置き換わった小説が登場しています。そして、その流れを汲んで2004年にアニメ『巌窟王』がGONZOにより製作されました。巌窟王というとこちらの姿を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?

※便宜上、今回の登場人物などの紹介画像としてアニメ『巌窟王』を引用しながらあらすじ紹介をさせていただきます。あらすじは『モンテ・クリスト伯』とほぼ同じなので、アニメで楽しみたい方にはこちらの作品もおすすめ出来るでしょう。

巌窟王 | GONZO

モンテ・クリスト伯の原作小説の主な登場人物

エドモン・ダンテス/モンテ・クリスト伯爵

彼の経歴自体が重大なネタバレになってしまいますが、モレル商会の一等航海士として、あるいは20歳を迎える間際のファラオン号の船長昇格を受けた真面目な青年がこの物語では登場します。それがエドモン・ダンテスであり、のちに復讐劇に走ることになるモンテ・クリスト伯爵の正体なのです。彼は恋人メルセデスとの婚礼を控え友人たちに祝福されながら結婚式を開きますが、そこで「ある悲劇」に見舞われ投獄されてしまいます。

そこで「ファリア神父」と出会い、シャトー・ディフ監獄でエドモンに富のありかと知恵の数々や教養、そして思想を与え、彼との出会いによりエドモン・ダンテスは巌窟王…モンテ・クリスト伯爵としてパリに帰還後復讐劇に身を投じていくのです。

ファリア神父

イタリア人の神父。モンテクリスト島の秘宝について古文書から知りすぎてしまい、発掘しようとした動きそのものがイタリア独立運動と関係あると冤罪づけられシャトー・ディフ監獄に投獄されてしまいます。彼は己を助けるものに莫大な富を与えると訴え何とか外に出ようとしますが、その手をとったのは看守でもなく見舞人でもなく、エドモン・ダンテスという同じ冤罪によって人生をねじ曲げられた青年だったのです。

彼は、ただただ絶望し悲しみにくれるエドモンに知恵と思想を与え、自らの死をも利用して虎のように賢く気高く教え抜いた彼を外の世界へと送り出すのです。

エデ

もともとはギリシャのジャニナ地方の太守令嬢でしたが、軍人時代のフェルナンの裏切りによって父親を失いそのまま本人も没落し奴隷同然の扱いを受けてしまいます。そんな彼女を救ったのが復讐の途上にあったモンテ・クリスト伯爵であり、同じ「フェルナンへの復讐」の協力のために同行しながら徐々に擬似親子から恋人のような感情へと移り変わっていきます。彼女もまた、エドモンに人の善意を見せてくれる人物のひとりです。

フェルナン・モンデゴ/モルセール伯爵

元はカタルーニャ系フランス人の漁師でエドモンの親友でしたが、従妹のメルセデスに横恋をしてしまい、彼らの恋路に割って入る形でダングラールやヴィルフォールと結託してエドモンに冤罪を着せて投獄した張本人がこのフェルナン・モンデゴです。彼はその後、メルセデスと結婚し、従軍するなかでエドモン以外にも様々な人々を裏切り勝利し陸軍中将と貴族院議員の地位を得るのです。

後述するダングラールやヴィルフォールもそうですが、悪役ながらどこか憎めない面を持っているのがこの『モンテ・クリスト伯』の特色のひとつで彼の場合は愛してしまったメルセデスと、息子のアルベールをただの人として愛し、ただの一家の大黒柱として汚い手を使ってでも安心を得ようとし足掻いた痕跡がよりこのお話を深いものにしていっているのです。

アルベール

フェルナンとメルセデスの間に生まれた息子。ダングラールの娘である許嫁のユージェニーとお互いに恋愛関係まで意識がいっておらず、鬱屈とした日々を過ごしています。どこか登場序盤は頼りなく、良くも悪くもどこにでもいそうな青年ですが、モンテ・クリスト伯爵の復讐劇や友や親たちの葛藤を経てもっとも劇中で成長を遂げる人物でもあります。

ローマへと親友のフランツと共に赴いた際にモンテ・クリスト伯爵と出会い、そして山賊ルイジ・ヴァンパの手から救い出されたことで彼に恩義と敬愛を抱くようになります。彼は第二の父のようにモンテ・クリスト伯爵を慕いますが、実はその愛こそが後々に復讐劇を深く大きくしていくのです。

メルセデス

マルセイユ生まれの美しい女性がメルセデスです。エドモンと相思相愛の婚約者でしたが、フェルナンたちの裏切りにより投獄され長い年月のうちにフェルナンとの結婚を承諾してしまった悲劇的な人物でもあります。彼女もまた悪意があったわけがない「どうしようもなかった」と読者が共感出来る人物でもあり、この絡み合った群像劇に深みのあるドラマとエッセンスを添えているのです。

ダングラール

元モレル商会の会計士で、現在は数多くの銀行を所有するパリ有数の銀行家にして男爵という大出世をしたのがこのダングラールです。

彼はあらすじを先取りしてしまうと、エドモンの船長への昇格を妬み疎ましく思ったためフェルナンと結託して冤罪をふっかけてその後に男爵令嬢のエルミーヌと結婚することで地位を得たずる賢い人物です。娘のユージェニーをアルベールに嫁がせたのもフェルナン伯爵の財を狙ったものであり、典型的ながらどこまでも金の亡者であるなんとも憎めない悪役になっています。

ユージェニー

ダングラールと男爵と結婚し元夫を自殺に追い込んだエルミーヌ夫人の娘が、ユージェニーです。彼女はアルベールと友人のようなフランクな立場にあり恋愛感情らしいものはないものの許嫁として彼を支え、あるいは支えられていきます。彼女には音楽に関しての芸術的な才能があり、両親の思惑とは別にその才能を活かしたいという夢を密かに持っています。

ジェラール・ド・ヴィルフォール

『モンテ・クリスト伯』の世界でマルセイユの検事代理を勤めている冷徹な人物はジェラール・ド・ヴィルフォールです。彼はエドモンが冤罪であることを知りながら、ダングラールからの袖の下やエドモンの持っていた「ある手紙」がきっかけでエドモンをシャトー・ディフ監獄に投獄した権威の権現であり、彼への復讐劇は特に社会的風刺に満ちたエピソードになっています。

エロイーズ

ヴィルフォールの後妻で、先妻の忘れ形見である義娘のヴァランティーヌを疎み彼女を殺そうとします。自分には得られない莫大な相続財産と、後妻であるがゆえの情動に漬け込んでモンテ・クリスト伯爵の手でヴィルフォール家に破滅をもたらす…ドラマ版でも有名な下りの核心にいるのが彼女なのですが、重大なネタバレになるので詳しい話はあらすじの章でご紹介いたします。

ヴァランティーヌ

ヴィルフォールの娘にして先妻ルネの忘れ形見であり、この『モンテ・クリスト伯』の世界観と群像劇における重要なキーになる女性のひとりがこのヴァランティーヌです。

彼女は生まれながらにして権力の権化であるヴィルフォールと相続目当てでひどい当てつけを繰り返すエロイーズ、そして老いた家長の祖父ノワルティエなどに囲まれていました。そして、彼女は婚約者のフランツや、真の愛を見出すことになるマクシミリアンなど多くの人物の手の中で翻弄されつつも「ある言葉」をモンテ・クリスト伯爵に伝えることになります。

マクシミリアン・モレル

エドモンの勤めていた「モレル商会」の経営者であるピエール・モレルの息子がこのマクシミリアン・モレルです。彼は騎兵大尉でありながらモンテ・クリスト伯爵のパリでの1番の友人として彼の凶行を知らぬまま彼を支えていくことになります。

誠実で愚直なまでにまっすぐな人物であり、伯爵にはエデを幸せにしてほしいと望まれますが、彼自身が不憫に思いそこから愛へと見初めたヴァランティーヌを助けるために奔走することになるのです。彼とヴァランティーヌの行動はモンテ・クリスト伯爵の正確無比な復讐計画に人らしさを齎らし、ラストを決定づける「人間らしさ」の象徴となっています。

フランツ・デピネー

アルベールの親友にしてヴァランティーヌの婚約者でもある若き男爵。アルベールのことを親身になって心配しており、彼は彼なりの行動を起こし続けますが復讐劇の歯車を止めることが出来ず苦悩することになります。彼とアルベールやその婚約者たちの関係性もまた、「かつてエドモンとフェルナン、そしてメルセデスの間にあったであろう真に友愛に満ちた関係」の鏡写しでもあるという考察もあります。

ベネデット/アンドレア・カヴァルカンティ

モンテ・クリスト伯爵の暴き出す人の業のもっとも過酷で象徴的な人物のひとりがベネデットことアンドレア・カヴァルカンティ公です。彼はモンテ・クリスト伯爵の手によって「カヴァルカンティ公の失われた嫡子」という地位を得て「彼自身の復讐劇」のためにダングラールの娘のユージェニーと婚約をし「ある事件」を巻き起こします。

彼の詳しい生い立ちや事件についてはあらすじで語りますが、両親に捨てられ愛情を得られず、その空虚さを埋め合わせるようにひたすらに悪行に走る姿は滑稽であると同時に残酷なまでに人の業を映し出しており、『モンテ・クリスト伯』をより一層深いものにしているのです。

Thumbモンテ・クリスト伯のキャストと相関図!ドラマの登場人物や復讐された悪役は? | 大人のためのエンターテイメントメディアBiBi[ビビ]

モンテ・クリスト伯の原作小説とドラマの違いは?

時は西暦、ところは…

原作小説『モンテ・クリスト伯』の舞台は1815年のマルセイユから話が始まり、投獄を経てパリに至る道筋になっています。1844年に連載が始まった背景からも「ちょっと過去の偉人とその友人たちの群像劇」といった距離感で風刺を込めた作風を見せていたのに対し、ドラマ『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』もまた2003年の静岡から東京へと話を展開させ視聴者との時代距離感自体は近いものに設定されています。

また、原作小説の主だった舞台の中心が大デュマの得意分野でもあった「歌劇や話術が盛んなパリの貴族社交界と追いやられた人々」だったのに対して、ドラマは脚本担当の黒岩勉さんの十八番でもある「愛憎と権力争いの渦巻く警察組織や芸能界と翻弄される市井の人々」に舞台を映しているのも当時と今の流行色の違いが色濃く反映された結果とも言えるでしょう。

エドモンと暖

主人公のエドモンは先述の通り「モレル商会所属の一等航海士」「ファラオン号の船長」という職業についていましたが、ドラマ『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』の柴門暖は「守尾漁業のもつ遠洋漁船『海進丸』の船員」という立場にコンバートされています。

また、冤罪のきっかけは同じく「手紙」がキーになっていますが、罪状も現代日本に適応させるために「監禁されているナポレオンの協力者」という立場から「外国人テログループへの加担」へと変更がなされています。復讐パートでもディーン・フジオカさん演じるモンテ・クリスト・真海が「投資家」という立場で登場したのに対し、原作の小説では社交界で暗躍する「一貴族」として描かれているのです。

時代観ゆえの相違点

武器はもちろん危険物への取り扱いも厳しい現代日本とナポレオン退位後の戦争と隣り合わせでありながら混沌とした19世紀のパリとではやはり復讐劇のいろはや説得力を持たせるための演出も変わってきます。特に、原作小説のエロイーズによるヴァランティーヌへの陰湿な嫌がらせや貴族女性の事情などは流石に現代日本ではそのまま再現が難しかったポイントでしょう。

原作小説では金とモンテ・クリスト伯爵の手による入れ知恵で凶行に走ったエロイーズは、ドラマでは薬学部の出身という「ある種出来上がった狂気のカケラ」を持ったまま入間瑛理奈が義娘の未蘭を追い詰めていきます。こちらはこちらで説得力のある設定であるという考察もあります。

ふたつのラスト、それぞれの「愛」

詳しいドラマのネタバレは本記事では避けますが、原作小説『モンテ・クリスト伯』で一等強烈で感動的と称されるラストと、ドラマ版のラストは方向性の違った衝撃が待ち受けています。どちらのラストが好みかは見る人次第でしょうが、しかし、両者に共通して言えるのは「愛」ゆえのラストの選択が待っているという点です。

このふたつに別れたラストについてはそれぞれがそれぞれの文脈とフラグの拾い合いの末に訪れる納得のラストになっているので、是非両方を自分の目で見比べて堪能することをおすすめします。

Thumbモンテ・クリスト伯の未蘭は死ぬ?解毒剤を飲んで生きてる?演じる女優も調査 | 大人のためのエンターテイメントメディアBiBi[ビビ]

モンテ・クリスト伯の原作小説のあらすじネタバレ

この章では、18巻のうちからドラマにも登場する象徴的なエピソードのあらすじを主にピックアップしてご紹介します。原作は長くて読みづらいと嫌煙している方にもわかりやすく紹介していきますので、まだ未読の方ももう読み終わった方も気軽に楽しんでいってください。

あらすじ:彼らは友人だった

恋人のメルセデスとの結婚を控えたマルセイユのエドモンは幸せでした。かつての皇帝ナポレオンの側近から手紙を託されるだけの誠実さを持ち、偶然にも恋人や愛すべき友に恵まれた彼は、当然「その日」もまた幸せを祝してもらえるものだと信じていたのです。しかし、現実は非情にも親友や仲間の不和により結婚式場を騒然とさせ、青年エドモンは何もわからないままシャトー・ディフ監獄に投獄されてしまいます。

その悲劇の裏には「フェルナンの横恋(エドモンへの嫉妬)」と「ダングラールの地位欲しさの画策」と「ヴィルフォールの保身のための口封じ」がありました。エドモンが誠実さを求めた3人の男たちは己の可愛さや嫉妬など人らしい理由で無垢なエドモンを生贄の羊に仕立て上げてしまいます。

そして悲劇の最たる点として、当のエドモンや引き裂かれたメルセデスはただただこの段階だと小市民であり、何も裏側を知らなかったが故に「再会できる」と信じ流れに身を任せてしまったという選択が深々とこの物語の根底に根を張っています。そう、この物語は超人ヒーローのなす復讐劇ではなくごくありふれた人間らしい業とすれ違いに根ざした群像劇なのです。

あらすじ:なさけよ、人道よ、恩義よ、さようなら

ただただ悲しみに暮れ、無罪を訴える声もだんだん細々となってくる青年エドモンを導き大人に変えたのは監獄内でも狂人と見放されていたファリア神父でした。彼もまた冤罪のなかに表舞台から消された社会の被害者のひとりであり、青年エドモンに悲しみの救済方法として知恵と洞察を与えます。そしてここで「無垢なエドモン」は死に「理不尽な世の中と悪人に吼える冷酷な巌窟王」が誕生し3人の悪鬼への復讐心が灯りはじめるのです。

ここまでの流れでエドモンが「愛情深い人物だった」ことをどうか覚えておいてください。ファリア神父の与えた知恵は一見すると残酷な世の中の真理であり救いようもない復讐鬼(ソシオパス)が誕生してしまったように見えますが、彼にとってこの教えは巡り巡って「このどうしようもない人界における救いの在りか」を探す物語の羅針盤になっていきます。

あらすじ:1億フランでできること

シャトー・ディフ監獄から息子のように自分を愛してくれたファリア神父の協力で脱獄したエドモンは、助け出されたジェノヴァの密輸船の上で14年も経ってしまった外の世界に驚きます。なんと自分の無事を祈り続けてくれた父は死に、善良なるピエール・モレルは経営不振に陥り、自分とメルセデスの仲を引き裂いたフェルナン、ダングラール、ヴィルフォールの3人はファリア神父の洞察通り天上人へとのし上がっていたのです。

エドモンは密輸船の船員に身を窶しつつも機を伺ってモンテクリスト島の財宝を手に入れ、モンテ・クリスト伯と名乗るようになります。そうしてピエールへの救済を行うなど静かに布石を行なっていくのです。彼はとても注意深く、そして大胆な策を講じます。その泥を啜るような復讐劇をパリの悪鬼が知ることになるのはずっと先のお話になります。

あらすじ:百万フランくらいなんになりましょう?

舞台は移り変わって9年後の貴族の喧騒渦巻くパリ。その絢爛豪華な街にひとりの貴族が訪れます。彼の名はモンテ・クリスト伯爵。イタリアの貴族であるという彼は莫大な財産と話術を武器にダングラールに金を貸し付けるなど商談を進めていきます。同時にフェルナン中将の子息であるアルベールを山賊から救うなど人徳優れた人物であるという評判はあっという間にパリの社交界の話題となってゆくのです。

しかし、このアルベールの救出劇も、ダングラールとの商談も、全てはモンテ・クリスト伯爵の復讐劇の1プロットに過ぎないのでした。そんなこととはつゆ知らずアルベールは両親に敬愛するモンテ・クリスト伯爵を紹介し、かつて愛し合ったメルセデスはほんのりと面影を見つつも「別人」としてモンテ・クリスト伯爵に接し、フェルナンもまたエドモンだとは全く気付かずに彼に興味をもち接触していきます。

また、ヴィルフォール検事総長の妻エロイーズとその息子を馬車の事故から救うのも忘れません。こうしてパリの貴族は「辺境の異質な貴族としてのモンテ・クリスト伯爵」ではなく「人徳豊かでミステリアスなお金持ちのモンテ・クリスト伯爵」を受け入れダングラールは得意先として、フェルナンは息子の理解者として、そしてヴィルフォールもまた妻子の恩人としてごく近くにモンテ・クリスト伯爵が訪れることを許してしまいます。

あらすじ:まずはひとり…

まず復讐の標的として狙われたのはかつて妬みからエドモンの破滅をフェルナンに囁き袖の下を使って実行させた金の亡者ダングラールでした。彼は娘のユージェニーを使い、まさにフェルナン中将の財産をも狙っていましたが、モンテ・クリスト伯爵の登場により彼の勧めるままに掌を返すことになります。そのなかで所有する銀行が相次いで破産。

振る袖のなくなったダングラールは残された武器としてユージェニーによる玉の輿を画策し、モンテ・クリスト伯爵の紹介した「とんでもない大金持ちの息子」である『カヴァルカンティ家の嫡子・アンドレア』に目をつけ、アルベールとの婚約を無理に書き換えてでも存続のために足掻きます。このアンドレア・カヴァルカンティが第1の毒となる復讐劇の最初のキーマンです。

また、水面下でアンドレア…ベネデットを使ってかつて裏切りの片棒を担いだカドルッスを闇に葬り暗躍しているのが「ひとりではない」という描写を入れることで、この復讐劇がただのサスペンス的要素をもつものではなく人の繋がり方そのものにフォーカスされていくのも必見です。

ネタバレありあらすじ:裏切りの過去

アルベールとユージェニーの婚約を破棄するためにフェルナンを裏切るダングラール。モンテ・クリスト伯爵が耳打ちしたのは、婚約の破棄を正当化するためのフェルナンへの粗探しと暴露であり、ダングラールはフェルナンが軍人時代に行なった裏切りの真実を新聞で暴露します。そう、かつてフェルナンはエデの父親であるアリ・パシャの部下であり、そのアリを殺害して妻子をトルコに奴隷として売り渡したことで出世を果たしたのです。

このスクープをフェルナンは「誤報」と切って捨てますが、義父のように愛し友と敬愛したモンテ・クリスト伯爵が、自分の愛する父親の醜い過去を暴露するように唆したのだと知り義憤を募らせます。何故そんなことをしたのか?信じていたのにどうして?そういった過去にエドモンが嘆いた言葉を胸にモンテ・クリスト伯爵に決闘を挑みます。

あらすじ:どうか息子の命を奪わないでください

そして悲劇は訪れます。決闘前夜、なんとモンテ・クリスト伯爵のもとにメルセデスが命乞いのために訪れるのです。それも「モンテ・クリスト伯爵がエドモン・ダンテス」であるという認識を胸に、望まれない再会の席で息子の身を案じるのです。その信じ続けた貞淑ある言葉に伯爵は彼女の命乞いを受け入れますが、それだけ告げると自分の前から去ってしまうメルセデスに対して自分のなかにあった「細やかな期待」を自覚し苦悩します。

復讐を誓った男が普通の人間の情けを再び持ってしまった苦悩。良心を再び呼び覚ますメルセデスの言葉。その葛藤を目にしたエデは、己の復讐のためにフェルナンの過去の暴露に手を貸した伯爵に対する自分の想いを自覚し、届かなかった愛と悲しい運命に涙します。そうして愛する伯爵が、人の情けがあるからこそ退くに退けなくなった決闘を辞めるように伯爵に訴えるのです。それでも、明日はやってきてしまいます。

ネタバレありあらすじ:真実という名の毒

そして決闘当日、アルベールこそが本人は無意識に舞台にあがってしまった第2の毒となります。彼はただ純真に目の前で歪みだした歯車へと立ち向かい、愛する父や友人たちのために「何故?」と問うのをやめない、かつてのエドモンと同じ気質を持つ善意の象徴です。そうであるが故に狂ってゆく歯車が復讐の刃になる構図は非常に皮肉の効いているとの評価が高い場面になっています。

彼は決闘前に、自分の母親と父親の愛がエドモン・ダンテスという誠実な青年の不幸と消失の上に成り立っているという真実を母の言葉で知ってしまいます。それは、悲しくも不当に呻き続けた真実の声であり、彼が剣を納めるには十分な真実でありました。母であるメルセデスが直にエドモンにかけられなかった情けを息子のアルベールは純真であるがゆえに「友として」伯爵に与えることになります。

それでも、廻りだした復讐の歯車は止まらず。決闘が中止になったという世間体にとってもっとも印の付かない終幕にフェルナンは「家(と自分)のため」に怒り、再度モンテ・クリスト伯爵に自分自ら決闘を申し込むのです。

ネタバレありあらすじ:ただ一つだけでじゅうぶん

ここで、モンテ・クリスト伯爵は「人の情け」に密かに動かされつつも、ひとつの復讐劇に終わりを告げます。そう、フェルナンの前に水夫の姿で現れ高らかに己の名を告げるのです。自分が陥れもう2度と日の目を見ることはないと思っていたかつての友が、自分の過去を暴露しに舞い戻ったことを知ったフェルナンは亡霊を見たように逃げ帰りますが、その彼を待っているのは自分が紛いなりにも守ろうとした家族からの失意と別離でした。

フェルナンは、かつて「ただ愛がほしくて」親友を孤独の闇に突き落とし、他人の幸せを手に入れ、そこから守るために裏切ることを常にしていきました。そんな自分が親友のエドモンに与えたものと同じものを愛する妻と息子から贈られ、家を出ていってしまうメルセデスの後ろ姿を見て、永久の絶望に打ちひしがれたフェルナンは自分の銃に手をかけるのです。こうしてひとつ目の復讐に幕が降ります。

ネタバレありあらすじ:結婚式

突然の婚約に不安がるユージェニーを無視して大人たちだけで決められる婚礼の日。これで経営再建を図れると上機嫌のダングラールをよそに、その約束の日に、まるで「マルセイユのあの日」をなぞるようにアンドレアは突如として告発されます。悪夢のような光景に驚くダングラールの指の隙間を零れ落ちるようにユージェニーは本人の脚で出奔することにします。これは、メルセデスには取れなかった新しい選択です。

そんな娘の心を理解することも愛することもできなかったダングラールは、モンテ・クリスト伯爵から受け取った500万マルクを握りしめ在野へと逃げ出し「なんとかして生き残ろう」とします。

ネタバレありあらすじ:罪と罰

一方で、この唐突な告発の裏で手を引いていたヴィルフォール検事総長には憂いがありました。それは自分の家で起きている不可解な毒殺事件です。当初、マクシミリアンはじめ外部の者に愛だなんだと唆されたヴァランティーヌによる逆恨みかと疑念の目を向けていましたが、調べてゆくうちに犯人が妻のエロイーズであることに気付きます。

エロイーズはなんと、ヴィルフォールの知らないうちに蠱毒のように入りこんでいたモンテ・クリスト伯爵によって「ヴァランティーヌを毒殺すれば幼い息子と共に遺産を我が物にできる」という思想のもと遺産相続権のある者と邪魔者を排除していたのです。その罪を明るみにすることを恐れたヴィルフォールは「保身のため」に彼女に自殺するように言い渡し法廷に出かけます。

法廷にはアンドレアがいました。罪状は「カドルッスの殺害と身分の詐称」。しかし彼は全くブレずにこう返すのです。「お父さん」と。なんとアンドレアの正体はかつて自分が不貞を働き産ませてしまった捨て子であり、ベルトゥッチオに拾われて生きながらえた悪行の子であるというのです。過去の亡霊に社会的死を言い渡されたヴィルフォールは失意のまま自らの罪を認め、誰も残っていない我が家に帰るのでした。

忘我に揺れるヴィルフォールの正気を最期に焼き切ったのは、自分の言い渡した罪によって毒殺死を遂げた家族と変装を解いて現れたかつて「保身のために」社会的に殺したエドモンだったのです。

ネタバレありあらすじ:復讐は、もう充分だ

ヴィルフォールが発狂した際にモンテ・クリスト伯爵は見出しのようなセリフを口にしています。彼の目に映るものはなんだったのでしょうか?気になるラストの展開について次章で解説してきましょう。

Thumbモンテ・クリスト伯のドラマあらすじをネタバレ!第1話から最終回までまとめ | 大人のためのエンターテイメントメディアBiBi[ビビ]

モンテ・クリスト伯の原作小説のラスト結末は?

ラストネタバレありあらすじ:最後の者は助けてやろう

場面は結婚の日に夜逃げをしたローマのダングラールの話に移り変わります。ついに復讐も3人目。どのような復讐劇になるのかと思いきや、ここで現れるのは山賊でした。

彼らはダングラールを捕えると、「1食につき10万フラン」の金を要求しだします。最初は法外な額に意地を張り我慢するダングラールでしたが飢えに負け、10万また10万と「生き残るため」に支払っていきます。そうして残り5万マルクになった時に命乞いの末に現れたのは山賊ではなくモンテ・クリスト伯爵。彼は言い放ちます。「我が父は飢えて亡くなった」と。

彼は己の金銭欲のために蹴落とした人と同じ境遇を味わい、「復讐されることなく」「富んだまま」見逃されるのです。5万マルクという生きていくには十分でそして貴族として生きるには破滅的な数字を抱えたまま、ダングラールはまた在野に放たれかつてエドモンが歩んだような苦悩に打ちひしがれるのです。

ラストネタバレありあらすじ:愛する者へ

そうして復讐劇を終えたモンテ・クリスト伯爵は、「ある若者」に会いに行きます。それは、マクシミリアンでした。彼はヴィルフォールの事件を憂い伯爵に「どうか愛するヴァランティーヌを救ってほしい」と頼みましたが、ヴァランティーヌはエロイーズに毒殺され失意に暮れ薬で自殺をはかります。

そんな瀕死の彼を連れ、モンテクリスト島を訪れるとそこにはヴァランティーヌがいたのです。なんと、仮死状態で世を騙しつつも、モンテ・クリスト伯爵はあの事件の段階で「復讐を終え」呪われた血を持って生まれてきてしまったヴァランティーヌを救っていたのです。薬で眠るマクシミリアンとヴァランティーヌが、そうして待ち望んだ再開を果たしたことを見届けながらモンテ・クリスト伯爵は静かにパリを去ろうとします。

それはかつて、エドモンが望んでいた光景でした。そして、メルセデスも密かにアルベールを通じて伝えた「真実の愛」であり、マクシミリアンとヴァランティーヌが証明する「愛すべき人の性」なのです。満足げに去る伯爵を引き止めたのはまさにその第二のメルセデスとも言えるヴァランティーヌであり、彼女はメルセデスのとれなかった大胆な行動に出ます。

ラストネタバレありあらすじ:待て、しかして希望せよ

それはエデの秘する想いを伝えてあげるという善意からくる純真な行為でした。その言葉にモンテ・クリスト伯爵…巌窟王は死に、ここに得るはずだった誠実な愛を得て壮年のエドモンはエデの手をとり、マクシミリアンに手紙と財産を残して旅立つのです。

この世には、幸福もあり不幸もあり、ただ在るものは、一つの状態と他の状態との比較にすぎないということなのです。きわめて大きな不幸を経験したもののみ、きわめて大きな幸福を感じることができるのです。

(中略)

人間の叡智はすべて次の言葉に尽きることをお忘れにならずに。待て、しかして希望せよ!

まるでこの『モンテ・クリスト伯』で脈々と語られた悲劇と満たされなかったそれぞれの想いに応えるように誠実に綴られた言葉と「待て、しかして希望せよ!」という名言でこの復讐劇は人間賛歌と愛情に溢れた物語として語り継がれていくのです。

Thumbモンテ・クリスト伯の最終回・最期の結末をネタバレ!ラストシーンの意味とは? | 大人のためのエンターテイメントメディアBiBi[ビビ]

モンテ・クリスト伯の原作小説を読んだ感想は?

様々なメディアで語られリメイクを経た上での面白い超大作!

文量が多く読むのに難儀するとされていますが、それでもやはり多くのメディアミックスで語られ続けたからこその圧巻の面白さをあげる方は少なくありません。

ドラマ⇄原作小説は難しい?

一方で、原作小説の背景としてガッチリと固められている時代観や宗教観はなかなか理解するのが難しく独特である分だけハードルが高いという感想も見られています。

別の切り口から触れるという手もある!

様々なメディアミックスで語られる強みとしてラストなど「別の解釈」が無限に存在するという楽しみ方もあると言えます。特にドラマと原作小説とアニメといった具合に敷居の近いもの同士から観るように勧める声も多く挙がっているのです。コミックなどもあるので自分にあった形から入ってみるのは得策かもしれません。

モンテ・クリスト伯の原作小説あらすじまとめ

原作小説『モンテ・クリスト伯』のあらすじやラストの解説はいかがでしたか?ただの復讐劇では終わらない2世紀近くも愛され続ける所以の一旦と熱狂ぶりを少しでも感じ取っていただけたでしょうか。これを機に「平成最後の読書の秋」を大デュマで飾るのも楽しい過ごし方かもしれません。

関連するまとめ

人気の記事

人気のあるまとめランキング

新着一覧

最近公開されたまとめ