火垂るの墓実写版ドラマのあらすじ・結末ネタバレ！おばさん役に松嶋菜々子

ジブリ映画として有名なアニメ版火垂るの墓と今回の実写版火垂るの墓では描写に色々と違いがあります。まず、主人公の視点が違うこと。そして、それによって描かれるシーンがアニメ版火垂るの墓よりも大幅に増えていることです。

アニメ版火垂るの墓を見たあとに実写版火垂るの墓を見ることでより一層原作で描きたかったメッセージが伝わるようになります。今回はその実写版火垂るの墓の主な視点となる松嶋菜々子を中心としてご紹介していきます。

『火垂るの墓』（ほたるのはか）は、野坂自身の戦争体験を題材とした短編小説が原作です。1988年ジブリ映画として放映された際は監督・脚本は高畑勲が務めています。
兵庫県西宮近郊を舞台とし、14歳の兄と4歳の妹が戦争直後の日本に2人だけで生きていこうとし、それが叶わず栄養失調や病に伏してしまう悲劇の最期までを描いている作品です。

アニメ版火垂るの墓では衰弱していく妹の節子と兄清太のリアルな食事などの日常生活の描写と、2人の死に方が話題となりました。節子が好きなサクマドロップを最期まで求めて倒れるシーンなど、涙を誘う名場面が沢山あります。また、最後の衝撃のラストで解る戦争がもたらすものは何もない救いのない描写は一部では放映禁止になる程でした。

ドラマ実写版火垂るの墓は、終戦60年スペシャルドラマ『火垂るの墓―ほたるのはか―』として2005年に日本テレビ系で放送され、その視聴率は21.2%と高い記録を出しました。

実写版ではアニメでは描写されなかった清太達兄妹の名字が追加され、清太たちの父親がいかにして戦争に出掛けたか。更にアニメ版では詳しく描かれなかった叔母が清太達を引き取ることになった経緯や、叔母の心情の変化と清太を受け入れた家族側の話を中心として描かれています。

どのような作品かは解ってきたところで本作、実写版ドラマ『火垂るの墓』のあらすじをご紹介します。舞台は兵庫県神戸大空襲のあった戦後。節子や清太の母と引き取り役になる叔母(松嶋菜々子)がどのような約束をしたかから物語は始まります。では順を追って実写版『火垂るの墓』のあらすじをご紹介していきましょう。

納骨式、故人の久子(松嶋菜々子)を悼む娘なつ（岸恵子）と曾孫恵子（井上真央）。家に帰って遺品整理をしていると思い出のドロップ缶が。そこから時は遡って戦後の三宮駅。瓦礫だらけの三宮駅で清太の遺骨を探してさ迷う久子と恵子。その瓦礫から思い出のドロップ缶を見つけます。久子のせいで死んだと訴える恵子を後ろに潤んだ瞳の久子は当時を思い出すのでした。

昭和18年。長男の清太(石田法嗣)は父親の横川清(沢村一樹)に呼び出され出征することを告げられます。その際に男性として一家を支える大黒柱になれと心臓の悪い母の京子（夏川結衣）と幼い妹節子（佐々木麻緒）を守り抜く様にと言い聞かせられます。その話を妹の節子が聞くことはありませんでした。

一方同じ日、また久子(松嶋菜々子)も夫の澤野源造（伊原剛志）を戦地へと送り出さないといけない状況となりました。赤飯が食べれると喜ぶ子供たちですがその中で長女のなつ（井上真央）だけは、久子同様、落胆の色を隠せません。必ず帰って、と訴える久子へ昔から逃げ足だけは、早いんだ。と帰途を約束し出征する源造。その帰り道、久子は偶然従姉妹の京子と会ったのです。

久子と京子は従姉妹同士の関係でしたが、それまではあまり親しく付き合った事はありませんでした。しかし、同じ日に夫を送り出したという境遇の一致が2人の絆を生んだのです。妻同士、困った時は助け合い、子供達を守って行こうと約束する二人でした。両家はまだ、夫が戦争へ行ったこと以外は比較的平和な日々を過ごしていました。

けれど、昭和２０年になると、３月１０日東京大空襲から相次いで空襲に見舞われました。神戸も例外ではなく２度に渡る空襲で神戸の西半分が全滅、壊滅的な大打撃を受けました。この頃になると配給のお米も底をつき、一般の人にも戦争の本当の姿が見え始めていたのです。

いよいよその日がやってきました。
鳴り響く空襲警報に心臓の悪い母の京子に先に防空壕に行くように伝えた後、節子を背負って家を出た清太の目に空一杯に飛行しているＢ２９の戦闘機の集団が目に映ります。

燃え盛る街を駆け抜け、なんとか避難した橋桁の下で身を寄せる清太と節子。
清太が土手を駆け上がると目のまえに広がったのは一面の焼け野原と化した街でした。
被災者へ御影国民学校に避難するようにとの案内が耳に入り、もしかしたら先に避難しているかも、と国民学校へ急ぎます。

学校に着くと叔母の久子とは再会出来ました。母の居場所を聞くと校舎内にいると伝え、節子はいかないほうがいいと付け加えました。清太が校舎内へ入ると緊急の病棟のようになっており、病人や怪我人がそこらへんに横たわっています。

母の様子を心配する清太へ大林が声を掛けました。ようやく母と再会出来ましたが、既に京子は変わり果てていました。校舎から出た清太へ節子が京子の様子を聞きますが、清太はお母ちゃんは病院へ行ったと嘘を吐いてしまいました。

母の京子との約束だから、と家へ呼んだ久子。戸惑い最初は遠慮をする清太へ京子との約束だから心配しないで任せなさい、と優しく微笑み返します。そして久子の守る澤野一家の子供たちも一緒に遊んだり、楽しく食卓を取り囲んだりと優しく迎え入れるのでした。節子はすぐに懐き、清太も心休まるのでした。

翌日、清太は焼け跡の中から床下に備蓄していた自宅の食糧を発掘します。それは軍人の父親を持つ家庭だからこその久子たち一家よりも豪華な食糧でした。嬉しそうに見せる清太でしたが、その違いに少しの戸惑いを見せる久子。対して久子が貰える配給の食糧はかなり質素なものでした。

子供2人が増えたことを訴えても配給元から返ってくる返答は辛辣なもの。偽善で引き取るから大変な目に合うんだ、と言われてしまいます。更に満足な食事ができない苛立ちは一家を包み、子供たちも清太たち兄妹へ攻撃的なことを言い出します。夜な夜な母を求めて泣き出す節子の夜泣きも一家には耳障りになってくるのでした。

少しずつ家庭が不穏になっていくある日、久子の元へふみが届きます。それは夫の戦死を告げる内容でした。居間で家族へ説明する久子。名誉ある死という文章へ何が名誉か、と吐き捨てるとそれを聞いた清太が名誉ある死であることと父の海軍大佐が必ず敵を、と声を掛けますがそれは久子にとって更に逆上する内容なのでした。満足に実の子供への治療も出来ず、清太の発言にも久子の苛立ちが募ります。

翌日、久子(松嶋菜々子)に大きな変化が表れました。食事の際に清太と節子の分だけ上澄みばかりを渡すようになったのです。お米や具がないことを訴える清太へご飯は出しているではないか、と冷酷に言い返します。また空襲があった日、一緒に避難しなかったうえに隣組の防火活動をしないことに対して責めますが、清太は節子を一人にできないと伝えました。

稼ぐ手段や労働をしない清太へそれなら母の形見の指輪を米に変えなさい、と久子が命じます。駄々を捏ねる節子を抑えて売った指輪で久しぶりの満足な白米の食事を得るのでした。しかしそれも長くは続かず、すぐに上澄みの食事へ戻ります。白米を訴える清太へ備蓄していると伝える久子。それに対し、節子は自分たちのお米なのにと呟き更に仲は悪化してしまうのでした。

7月になって戦争が激化するといよいよ配給も途切れ途切れになりました。お米の一件で久子(松嶋菜々子)はそれでは食事を分けましょう、と言い放ちます。食器を町で買って自炊をする清太たち。食事を取ったあと、家の水を使って濯ぐことすらも許さず、自分たちで、というのは食器を洗う水も調達することですよ、と追い詰めていきます。

食器を濯ぎにやってきた川のほとりに防空壕を見つけた節子と清太は防空壕に住むことに決めました。荷物を纏め、リアカーを引いて家を出た2人は最初は部屋がいくつもある防空壕が鬼のようになってしまった久子のいるところよりもずっと快適だと喜ぶのでした。

ある日、いつものお母さんを求めた夜泣きが始まる節子に清太が手の中に蛍を一杯入れて部屋中の蛍で節子を慰めます。その翌日、蛍は全て死んでしまい、そのお墓を作っている節子からお母さんの分も一緒に作ってあげると一言が。節子は隠していた母の死を既に知っていたのでした。節子に崩れ落ちながら清太が謝罪します。

久子(松嶋菜々子)の守る澤野家でも動きがありました。足を悪くして家に住んでいた叔父の善衛(要潤)が家を出ていくというのです。出ていく間際これ以上変わっていく久子を見たくないと溢します。久子は仕方ないと返して引き止めることをしませんでした。追っていく子供たち、そしてなつ(井上真央)が久子を鬼だと責めて自分も出ていくと言いますがそれなら助かると冷たく返すのでした。

節子と清太が食糧を売って欲しいと伝えてもとても満足する量を譲って貰えませんでした。そして、食糧が足りないために民家で泥棒をする清太をたまたま目撃したなつ。泥棒したことを持ち主から殴られて責められた清太の縋りつくような視線を送ってくるのに対して知り合いではないとなつは言葉を返してしまいます。

満足な食糧を得られないまま日々が過ぎ、節子が大きな痣とお腹の弛みを訴えてきたので病院に連れていきますが医者の診断は栄養失調でした。栄養のつくものを食べさせるようにだけ診断され、何も治療もされずに帰される清太と節子。状況が改善される訳もなく、節子は日に日に衰弱していきます。

いよいよ力尽きそうな節子が卵がゆが食べたいという言葉に対し、なんとか必死で答えようとまたも泥棒を働く清太。しかし、すぐに見つかりボコボコにされて駐在所へ連れていかれます。引き取りにきた久子へまた面倒を見るよう伝えてくる駐在の吉岡(生瀬勝久)。

帰り道にしかし久子はそれをしない旨を清太へ伝えます。僅かなお金を持ってなんとか譲って貰い、節子の元へ戻りますが時は既に遅く節子は木の幹にもたれかかったまま息を引き取るのでした。

節子の亡骸を背負って川のほとりを歩く清太。川のほとりで片方の下駄を節子に履かせて埋葬したあとそのまま横浜に帰ることはありませんでした。戦争の敗戦宣言がされ、ようやく節子と清太を探すなつと久子。2人によって節子の遺骨が入ったドロップ缶を持ったまま三宮の駅で力尽きている清太が発見されるのでした。

2人が死んだのは久子のせいだと責め、生きていたくないと弱音を吐くなつの頬を2回叩く久子。久子は戦争はまだ終わってない、むしろこれからが戦争で生きなければ意味がないと言い聞かせます。時は現代に戻り、そのあと久子が95歳まで一度も戦争のことを口にせず、4人を立派に育て上げたと語られるのでした。

実写版火垂るの墓の内容はお解りいただけたかと思います。本作はアニメ版の火垂るの墓の清太と節子が戦争に負けず力強く生きる描写は勿論ですが、どちらかというと叔母の久子の心情の変化や台詞に戦争はどれだけ悲惨なのかを伝えるメッセージがあるような構成となっています。その複雑な役を松嶋菜々子が演じています。

あらすじをご覧いただければお判り頂けるかと思いますが、久子は決して性根から悪い意地悪な叔母ではなく、最初は心優しい親戚思いの叔母だったのが途中から生きる為に冷酷にならざる負えない決意を持ったということが解ります。ドラマ版火垂るの墓での意地悪になってからの清太や節子への対応は冷酷そのものですが、端々に実は気に病んでいる人間らしい描写があります。

実写ドラマ版火垂るの墓で注目して頂きたいのは途中からの人格の切り替えと追い詰める為に吐く台詞の重みです。ただの意地悪なことを言っている訳ではなく生きる為に変わることを決意したことがにじみ出ています。清太が家族との約束を守る為に必死なのに対し、久子もまた家族を守る為に必死だということが伝わる台詞が満載です。説得力のある目力で訴える松嶋菜々子にご注目下さい。

いかがでしたでしょうか？実写版の火垂るの墓はジブリ作品の子供に向けた内容ではなく、大人だからこそ共感出来る部分が多くあります。戦争が人を変えてしまう怖さや、それぞれの人々の葛藤などがより鮮明に描かれており、松嶋奈々子をはじめとした豪華キャストが見事に表現しています。アニメ版火垂るの墓を知っている方も知らない方もお楽しみいただけるので、是非一度ご覧頂ください。