2018年08月17日公開
2018年08月17日更新
ひよっこにモデルはいる?谷田部みね子や「金の卵」の若者について調査
ひよっこのモデルは存在するのか徹底調査!一世を風靡したNHK連続テレビ小説ひよっこ。そのモデルは果たして存在するのか、あらすじからヒロインの谷田部みね子や彼女の働く会社まで考察していきます。また、作中に登場した集団就職「金の卵」についても作品の時代設定や当時の社会状況に照らして調査していき、この作品に込められた想いを考察していきます。ひよっこを既に見たことのある方も、まだ見たことのない方も、これを見れば全てがわかるはず!
目次
ひよっこにモデルはいるのか?「金の卵」の若者や登場人物のモデルについて徹底調査!
一時期一世を風靡したNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」。本記事では、作中に登場するヒロイン谷田部みね子や、彼女が務めた向島電気、すずふり亭まで詳しく考察していきます。また、奥茨城村の助川時子や角谷三男も経験した集団就職について、当時呼ばれていた「金の卵」についても紹介していきます。
ひよっこはどんな作品?
まずは「ひよっこ」の作品自体を紹介していきます。「ひよっこ」は2017年度上半期に放送されたNHK連続テレビ小説です。初回視聴率が19.5%と振るわなく、第13週まで20%に届かなかったと放送当初はあまり人気がなかったものの、徐々に視聴率を伸ばしていき、期間全体の平均視聴率は20.4%を記録しました。
作品に関しては当初マスコミ業界からも多くの批判コメントが飛び交い、視聴者からも様々な議論が出ていました。しかし視聴率が上がるにつれ、放送終盤には多くの好評価を得ています。
「ひよっこ」のヒロイン谷田部みね子を演じたのは、2013年放送のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」でも天野春子の青年期を演じた、有村架純さんです。彼女は谷田部みね子の特徴である「昭和の田舎娘」の雰囲気を醸し出すために、役作りで体重を5kgも増やしたとのことです。しかし体重は増やすよりも減らす方が大変というのは言うまでもなく、ダイエットに苦戦しました。
「ひよっこ」の特徴は何といっても「懐かしき昭和の時代」を温かく描いたところです。田舎の農家の一少女が、高校を卒業して間もなく集団就職で東京に向かうという昭和の時代。作品は細部にまで「昭和要素」を組み込んであり、登校中にみね子、時子、三男の3人が乗り込んだボンネットバスとその車掌にも、昭和の雰囲気を感じます。この時代にみね子たちと同世代であった人は、自然と当時を思い出してしまうはずです。
ひよっこの脚本家は誰?他にはどんな作品を描いている?
「ひよっこ」を担当した脚本家は、岡田恵和(おかだ よしかず)さんです。彼は1990年代から様々な作品の脚本を務めており、NHK連続テレビ小説だけでも「ちゅらさん」「おひさま」「ひよっこ」と、3作品も描いています。また、テレビ朝日系「イグアナの娘」やフジテレビ系「ビーチボーイズ」など、数々の名高いテレビドラマの脚本も担当しています。他にも小説やエッセイ、楽曲の作詞など、様々なジャンルで活躍しています。
主題歌を歌うのは誰?
NHK連毒テレビ小説と言えば、主題歌を歌う歌手が豪華です。「半分、青い」には星野源の「アイデア」、「あさが来た」にはAKB48の「365日の紙飛行機」、「マッサン」には中島みゆきの「麦の唄」が起用されています。「ひよっこ」には、桑田佳祐の「若い広場」が起用されました。
桑田佳祐さんは知らない人がいないロックバンド・サザンオールスターズのリーダーを務め、シンガーソングライターとしても活躍している人物です。この「若い広場」が収録された彼の5枚目となるアルバム「がらくた」に収められています。「がらくた」は好評を博し、オリコン週間CDアルバムランキングで初週16.8万枚を売り上げ初登場1位を獲得し、2017年8月・9月のオリコンではそれぞれ月間1位・2位を記録しました。
「若い広場」の歌詞について桑田佳祐さんは、自然と自分の一生を今一度辿っていく感覚とともに、夢と希望に溢れた日本の未来に思いながら書いたといいます。
ひよっこにモデルは存在する?
「ひよっこ」にはモデルは存在するのでしょうか?ここでは、谷田部みね子や向島電気、すずふり亭のモデルをそれぞれ考察していきます。
ひよっこの谷田部みね子のモデルは誰?
NHk連続テレビ小説には、主人公にモデルが存在する作品が多くあります。例えば第91作目の「マッサン」はニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝をモデルとしていますし、第97作目の「わろてんか」は吉本興業の創業者である吉本せいをモデルとしています。
他にも「花子とアン」の村岡花子などがいますが、最近のテレビ小説にはモデルが存在しない作品も多くあります。「ひよっこ」も同様で、ヒロイン谷田部みね子にはモデルは存在しません。ただの田舎の少女であるヒロイン谷田部みね子。彼女自身にモデルがいないというのは納得できると思いますが、だからといって一からその人物像を描くのはかなり大変です。
となると、やはり谷田部みね子にはモデルがいるはず。実はみね子には、人物としてのモデルがいないだけであって、抽象的なモデルは存在します。それが「金の卵」です。この言葉は、作品の時代設定当時の象徴的な言葉で、これがヒロインのモデルとなっています。「金の卵」については後程紹介します。
ひよっこの向島電気のモデルは存在する?
ヒロイン谷田部みね子が東京に来て初めて就職するのがこの向島電気。地元で家族ぐるみに仲の良かった助川時子とともにトランジスタラジオの製作に関わることになり、決して手の起用でないみね子は集団で同じ作業を行う工場で苦戦します。
しかし、同じく地方から集団就職で東京にやってきた仲間と共に励ましあい、時には喧嘩もしながらも、彼女からの応援を胸にみね子は徐々に仕事に慣れていき、一人前になる、そんなストーリーが描かれています。
では、そんな谷田部みね子たちが青春を過ごす向島電気にモデルは存在するのでしょうか?向島電気といえば、トランジスタラジオを製作しているシーンが印象的です。従業員がベルトコンベアを前に1列に並び、それぞれが自分に課された部品を取り付けていきます。
時代設定を鑑みると、この時代にトランジスタラジオを製作しているのは東京通信工業(現:ソニー)をはじめ日立や三菱など、今でも大企業と呼ばれる会社。その中でモデルになっている可能性が一番高いのは、東京通信工業です。東京通信工業は、1955年に日本初のトランジスタラジオTR-55の市販に成功しました。
「ひよっこ」で作られた「アポロンAR-64」のモデルが果たしてTR-55なのかどうかは定かではありませんが、TR-55の“55”は1955年の下二桁を表しているのに対し、アポロンAR-64の“64”は1964年の下二桁を表しているように考えられます。1964年は集団就職が多く行われていた時代とちょうど重なり、作中の時代設定と合います。となると、東京通信工業が向島電気のモデルとなっていることは確実です。
ひよっこのすずふり亭のモデルは?
作中に序盤から度々登場するすずふり亭。一番最初に出てきたのは、谷田部みね子の父、実が出稼ぎで行っていた東京でたまたま入ったシーン。彼は始めて食べる本格的な洋食に感動。そこで出稼ぎ労働者としての気持ちを汲み取ったすずふり亭の従業員に、奥茨城村の家族のお土産にとポークカツサンドを貰います。それを家族に食べさせると大盛況。ここでみね子たちは、いつか東京へ行ってすずふり亭で洋食を食べようと心に誓います。
谷田部みね子が右左もわからない状況で家族のように慕ったのがこのすずふり亭でした。向島電気から少ないながらも1カ月の給料をもらうとこの店に行き、60円のビーフコロッケを食べるというのがみね子のルーティンとなっていました。その後向島電気が倒産するとすずふり亭の亭主牧野鈴子にここで働かないかと提案され、結局働くことになります。そこでみね子は見習いコックであった前田秀俊と結婚、順風満帆な生活を送ります。
では、そんなすずふり亭にモデルは存在するのでしょうか?すずふり亭は作中、東京・赤坂の「あかね坂商店街」にあるとされています。すずふり亭とその周りのお店で働く人たちが広場に集まって団欒するシーンが多く登場しますが、もちろん、「あかね坂商店街」は実在しません。すずふり亭に関しても、今のところはモデルは存在しないとされています。
一部の情報によると、すずふり亭のメニューが、昭和39年に開店し今は閉店してしまった「アマンド赤坂レストランルーム」に類似しているとのこと。このお店は現在も高級喫茶店として名高い「アマンド」が経営していたそうで、当時珍しかったハヤシライスやグラタンを提供し、みね子の愛したコロッケも、単品で売っていたそうです。そのお店で人気だった「コンビネーションサラダ」がすずふり亭のメニューにも入っています。
確実に、までは言い切れませんが、モデルとなっている可能性が高いです。さて、ここまでヒロイン谷田部みね子自身や彼女が働いた場所について詳しく考察してきましたが、明確なモデルは存在しませんでした。「ひよっこ」という作品自体フィクションなのでモデルが存在しないのは当然なのかもしれません。
ひよっこの「金の卵」の若者たちは実在していた?
集団就職で働きに行く若者を表した言葉、「金の卵」。果たして、実際に存在していたのでしょうか?
ひよっこの時代設定は1964年前後
「ひよっこ」の時代設定は、1964年前後となっています。このころは一家の大黒柱である父が地方から出稼ぎで東京に出て工事現場などで働いたり、急ピッチに戦後の復興、経済の振興が行われた所謂高度経済成長期と呼ばれる時代です。谷田部みね子の父、実も東京に出て工事現場で働くシーンが度々登場しました。
しかし、地方から東京に出て行ったのは大人だけではありません。みね子たちのように高校を卒業してすぐに出稼ぎに出た人もいれば、中学校を卒業してすぐに出稼ぎに出た人もいました。向島電気で働く人たちも、そのようにして家族のために働きに出てきた者たちばかりです。
集団就職「金の卵」とは?
工場生産システムが大量生産を主とするようになった戦後期。製造業界では、それに対応するために安い賃金で働いてくれる労働者を探していました。一方農村地域では戦後しばらく経ったといっても未だ経済が復興していないという状況。安定した職と、少なくても纏まったお金を必要としていました。
そんな2者の需要と供給が重なり、地方から安い賃金でも働きたいと思う若者が大量に東京にやってきて、企業側が大量雇用を行う、それが集団就職です。地方と都市部を結ぶ鉄道路線の車内は、そういった人たちで溢れていたといいます。
このように若者でありながらも集団就職で東京で働く、そんな人たちのことを、「金の卵」と呼びます。この「金の卵」には、「まだ未熟な若者ではあるが、高い潜在能力をもつ人」という意味が込められています。実際に、高度経済成長期を縁の下で支えていた者の中に「金の卵」も入ります。この若者たちのおかげで、戦後の焼野原から急速に経済復興を果たし、今や世界の中でも経済大国と呼ばれる日本が作り上げられたのです。
実は「金の卵」の世代は、「団塊の世代」とも重なります。現在70歳前後の人々がちょうどこの世代です。学生闘争などを行った世代として有名ですが、学生にはならずに集団就職で日本の経済を支えた世代でもあるのです。
脚本家がひよっこという作品に込めた想いとは?
「ひよっこ」は、主に日常を描いており、あまり物語の起伏はありません。登場人物にも、誰一人としてこれといった特徴を持った者はいません。谷田部みね子も向島電気の給料日にすずふり亭で60円のビーフコロッケを食べる、という小さな目標をもって生活していました。
出典: https://thetv.jp
唯一漫画家だけは大きな目標を持っていましたが、作中ではあまり大きな偉業は達成していません。そんな日々の暮らしを描いただけの「ひよっこ」。脚本家はどんな想いを寄せて描いたのでしょうか?
脚本家の岡田恵和氏は、高度経済成長期という面に重きを置いています。彼が言うには、この時期にだって上を目指さず、目の前の小さな出来事を一つずつこなしていく、そんな人物もいたはずで、誰もが大きな夢を持っていたわけではない。それを朝ドラという枠の中におさめたかったとのことです。
ひよっこに実在モデルはいなかったがストーリーには様々な想いが込められていた!
日常生活を淡々と描き続けたNHK連続テレビ小説「ひよっこ」。ヒロイン谷田部みね子や向島電気、その周りの環境には実在するモデルはありませんでしたが、作中には、高度経済成長期を縁の下で支えた「金の卵」と呼ばれた若者たちの葛藤と、その時代で必死に生きる人々の温かさがありました。
決して自分は大きく目立つものではないけれども、小さくとも大きい夢を抱き、目の前のことに精を出し続ける。そんな昭和の古き良き人物像が印象深く描かれている作品です。
もうすぐ平成が終わろうとしているこの時期。もう一度、今の経済を作り上げてきた「金の卵」に注目してみてはいかがでしょうか。そうすれば、きっと自分とは何か、自分は何を目指して生きているのかなど、アイデンティティを見つけ出し、今後の生活の糧になるはずです。