聲の形(映画)の評価・原作との違いは?感想やあらすじをネタバレ紹介

アニメーション映画の当たり年となった2016年に公開された映画「聲の形(こえのかたち)」。同時期に「君の名は。」が公開され、興行収益を伸ばす中、映画「聲の形」は公開館数120館と小規模ながら公開12日目にして興収10億を突破し、2016年度の日本映画全体の興収ランキングで第10位、松竹の配給作品では第1位となった。4/21より公開の「リズと青い鳥」作成スタッフによって作成された本作。今その「聲の形」を振り返っていく。

聲の形(映画)の評価・原作との違いは?感想やあらすじをネタバレ紹介のイメージ

目次

  1. 映画「聲の形(こえのかたち)」とは?
  2. 映画『聲の形』あらすじ序章を紹介
  3. 映画『聲の形』のあらすじ:将也の過去を紹介
  4. 映画『聲の形』のあらすじ:将也の決意
  5. 映画『聲の形』のあらすじ:月
  6. 映画『聲の形』のあらすじ:お節介
  7. 映画『聲の形』のあらすじ:疑心暗鬼
  8. 映画『聲の形』のあらすじ:支え
  9. 映画『聲の形』のあらすじ:デートごっこ
  10. 映画『聲の形』のあらすじ:害悪
  11. 映画「聲の形」のあらすじ:硝子の決意
  12. 映画『聲の形』のあらすじ:終章
  13. 映画『聲の形』は原作に勝るとも劣らない名作

映画「聲の形(こえのかたち)」とは?

映画「聲の形」の原作

映画『聲の形(the shape of voice)』は、大今良時(おおいまよしとき)の漫画『聲の形(こえのかたち)』(A Silent Voice)を原作とする長編アニメーションで、主人公の「石田将也(いしだしょうや)」と先天性の聴覚障害を持つ「西宮硝子(にしみやしょうこ)」を中心に、人と人との繋がりやディスコミュニケーションが描かれている。設定に大きな違いはないが、映画化に伴い絶妙な取捨選択やその他改変が行われている。

映画『聲の形』は山田尚子監督作品で、第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞、第26回日本映画批評家大賞アニメーション部門作品賞、第20回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞作。文部科学省タイアップ作品。累計動員177万人を突破し、興行収入は23億円を達成した。同じスタッフによって制作された「リズと青い鳥」が4/21から劇場公開され話題となっている。

Thumb聲の形の声優キャスト一覧!原作漫画との比較や感動のシーンも紹介 | 大人のためのエンターテイメントメディアBiBi[ビビ]

映画『聲の形』あらすじ序章を紹介

主人公の石田将也(高校3年生)は、自室のカレンダーを途中までで破り捨て、これまで続けていたアルバイトを辞め、自室の家具その他を全て売り払う。銀行口座からそれまで貯めた全財産を引き出し、その札束を封筒に入れ、母の眠る枕元に置き、「ある決意」を胸に家を出る。

映画『聲の形』公式サイト

映画『聲の形』のあらすじ:将也の過去を紹介

小学生の将也は、退屈が大嫌いなガキ大将だった。ある日、先天性の聴覚障害をもった硝子が将也のクラスに転校してくる。筆談用ノートで自分は耳が聞こえないと自己紹介をする硝子を見て将也は思わず「ヤッベ!」と叫ぶ。退屈を嫌う将也は硝子に対して無邪気な好奇心を持ち、その好奇心はエスカレート。いじめの様相を呈してゆく。中でも補聴器の紛失、故障が170万円にも達してしまい、校長を巻き込んでの問題に発展してしまう。

クラスでいじめの首謀者として吊るし上げられてしまった将也は、「みんなも一緒にやってたじゃん!」と言い返し、結果将也自身がいじめの対象になってしまう。学校からの連絡で硝子との事を知った母、美也子(みやこ)は、将也とともに、硝子の母、八重子(やえこ)の元を訪れるが、八重子から帯同を許されなかった将也が見たものは、ピアスを引きちぎられ耳から血を流しながら「明日からいい子にするんだよ」と諭す母の姿だった。

執拗ないじめに合う将也。ある日の夕方、将也は、自分の机に何かをしている硝子を見かけて「俺の机で何してんの?」と掴みかかり、意思の疎通がうまくいかない2人は取っ組み合いのケンカを始めてしまう。結局そのまま硝子は転校してしまうが、その後将也は硝子が自分の机で何をしていたのか初めて知ることになる。硝子は「悪口の書かれた将也の机」を掃除していたのだった。将也に対するいじめは小学校卒業の日まで続いた。

映画「聲の形」と原作の違いをネタバレ紹介:小学生の将也

原作『聲の形』では小学生の将也の性格や行動、思考が映画『聲の形』より詳細に描かれている。硝子への態度についての担任からの吊し上げなどは、映画『聲の形』だと(違和感はないが)急にキレたように見えるが、原作『聲の形』では事前に数回「お前の気持ちもわかるが、自己責任でやれよ」といった旨の発言がされている。また将也の姉の男性遍歴や、その交際相手の弟とのケンカなどで「退屈に勝つ」という素性が強調されている。

Thumb聲の形のラストシーンをネタバレ解説!漫画版と映画版の結末・あらすじは? | 大人のためのエンターテイメントメディアBiBi[ビビ]

映画『聲の形』のあらすじ:将也の決意

将也は人間不信に陥り「自分がしたことは自分に跳ね返る。自分は罪を背負い、罰を受ける必要のある人間である。」との気持ちを抱き孤立。中学・高校に上がっても心を閉ざし、孤独に過ごしていく。そんなこれまでの人生を清算するため、将也は自殺を決意する。手話を習得していた将也は、死ぬ前に硝子に謝罪(死ぬための儀式=人生最大の度胸試し)をするため、硝子が通う手話サークルを訪れる。

そこで目にしたのは、髪型こそ変わったものの当時の面影を色濃く残す硝子の姿だった。始めこそ避けられてしまうものの、将也自身がいじめられてた時に偶然拾った硝子の筆談用ノートを「忘れ物」と手話で伝えて渡すと、硝子はそれに驚くが「またね」と手話で返す。硝子との和解や、美也子の説得により自殺を思いとどまる将也は、「またね」の意味を、友達とは何かを考え込んでしまい、「また会いに行っていいのか?」と自問する。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:硝子との邂逅

会いに来た将也に困惑し、逃げ出す硝子だが、映画『聲の形』では隠れたつもりの所で追いつかれるのに対し、原作『聲の形』では、靴が脱げて転倒した将也を助けに戻ってくる。「友達になれるか?」のくだりも、若干映画『聲の形』の方が唐突な感じに対し、原作はそこに至るまでの葛藤が描かれている。その後原作では、硝子を迎えに来た八重子と遭遇し、「筆談用ノート」は八重子に投げ捨てられ、その後将也はビンタを食らう。

Thumb聲の形をネタバレ感想!ラストまでのあらすじ・名シーンなど魅力は? | 大人のためのエンターテイメントメディアBiBi[ビビ]

映画『聲の形』のあらすじ:月

彼氏のフリをして将也が会いに来るのを邪魔していた硝子の妹、結絃(ゆづる)とも和解し、自分のせいで失ってしまったのかも知れない5年間を取り戻すため、将也は連絡先も知らない小学校の同級生を探し、硝子との交流のきっかけ作りに奔走する。順調に行くかに見えた友達との邂逅も「植野直花(うえのなおか)」だけはうまく行かない。当時から彼女には彼女の言い分があり、また植野は小学生の時から将也に恋心を抱いていたのだ。

昔のように硝子の補聴器を取り上げてからかう植野を諌める将也に驚き、植野は「あんたたち付き合ってんの?」と疑う。植野の行動を前にした硝子は、普段はしないポニーテールで補聴器を隠さず、将也と声で会話しようとするがうまくいかない。将也は手話で話すよう伝えるが、硝子は声で「ちゅき!(好き!)」と告白。しかし「月」と勘違いされ、伝わらない。以降、硝子に避けられてるように感じた将也は皆で遊びに行こうと誘うが…

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:西宮結絃

硝子を訪ね手話サークルを訪れた将也を「硝子はいません。あなたは本当に友達ですか」と拒み追い返す結絃は、硝子とのケンカで(結絃が将也の写真をSNSに公開したことで停学になってしまったことを責められて)家出してしまう。結絃は空腹で倒れている所を将也に拾われた後、石田家で食事を共にする。将也の行動が理解できない結絃は雨の夜中に抜け出してしてしまうが、追いかけて来た将也と和解する。

将也が結絃を西宮家まで送る際、自分が男(彼氏)ではなく「妹」であること伝えるが結絃を探しに来た八重子にビンタを食らう。一方、原作『聲の形』では、将也に拾われた結絃は石田家に泊まるが、夜更けに八重子が石田家を訪ねてくる。ケンカで家出をした結絃を心配した硝子が夜中に探しに出てしまい、それを探しに来たというのだ。

慌てて硝子を探しに出かける将也と結絃。探している間、結絃は将也の行動が理解できず昔の行為を責めるが和解し、明け方硝子を見つけ出す。後日、結絃は置きっ放しのカメラを取りに石田家を尋ね、夕食を同伴後銭湯へ誘われるが頑なに入ろうとしない。逃げ出した結絃を追いかけると、結絃を迎えがてら、借りていた服と手土産を石田家へ届けに来た硝子と出会い、結絃が「妹」であることを知らされる。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:佐原みよこ

家財を一切売り払ってしまっていた将也は母からスマホを買ってもらう。硝子にメアドを聞いて欲しい将也は「誰かメアドを知りたい人いる?」と聞くと、手話で「さ、は、ら」と指し示す。小学生の時に硝子の味方をしていじめに合い不登校になった「佐原みよこ」に会いたいと言われ探しに行く将也と、それに同行することになった硝子。この時点で将也のメアドは結絃から伝わっており、電車で探しに行くシーンで効果的使われている。

映画『聲の形』では駅のエスカレーターですれ違った将也と硝子に気づいた佐原に声をかけられる。一方原作『聲の形』では同日には出会えず、無駄に交通費を使わせてしまったり、聞きたい事が聞き出せないことに将也は「使えねーな俺…」と落ち込む。翌日将也だけが学校をサボって探しに行くため乗った電車で偶然佐原と一緒になり「会いたがってる人がいる」と伝え、放課後に硝子に引きあわせることに成功する。

またカラオケは、後日佐原が計画し、将也はメールで誘われ悩むが結局参加する。その帰り、佐原と2人になった将也は、自分が硝子をいじめ、自身もいじめにあったことを告白する(佐原は不登校だったため、硝子のいじめも、将也へのいじめも知らない)。反省の弁や、硝子の失われた時間を取り戻そうとする行動を知った佐原は「石田くんは大丈夫。私たちを会わせてくれてありがとう」と将也へ感謝のメールを送る。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:植野直花

映画『聲の形』では、佐原に会う事ができた硝子がガールズトークに花を咲かせている間に席を外した将也が「にゃんにゃん倶楽部(猫カフェ)」の割引券を配る植野と出会す。佐原と同じように仲を取り持つ事が出来ればと、変装して(風俗店と勘違いしている)店を尋ねるが、植野も変装してしまい会えなかった。後日、街で将也の乗る自転車にいきなり乗ってくる形で再会後、偶然見かけた硝子に嫌がらせ(補聴器を取り上げる)を行う。

一方原作『聲の形』では、店を訪ねる所まではほぼ同じ。変装した植野は店で配るポーチの中に告白を認め手渡すが行き違いから将也には渡らず、結局将也の高校の校門で待ち伏せる。将也の自転車に強引に乗り込み、途中で見かけた硝子の補聴器を取り上げた後、将也に諌められるが、立ち去った後将也を再度待ち、硝子との関係を詰問(「あんたたち付き合ってんの?」など)。将也の行動を「友達ごっこ」と切り捨てる。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:硝子の告白

映画『聲の形』では、植野と将也を見て自分の心を知り、普段と違う格好(ポニーテール)で、将也に告白するが、原作『聲の形』では植野とのやりとりが気になってしょうがない硝子は、将也に「何を話していたのか」執拗に尋ねる。しかし将也は「大した話はしていない」とごまかしその場を去る。将也は「無理してつるんであげてんの?」集めてあげなきゃダメなんて「友達ごっこ」などという植野の話を聞かせられないと思ったのだ。

その後も植野は将也の元を訪ね、過去の過ち(「将也いじめ」に加担した事)を詫びるが、将也は、「自分はいいから硝子に謝れ」と言い出す。植野は「西宮さんに許されたいんじゃない。将也との時間を取り戻したいだけ」と心情を吐露するが、「お前の顔見たくない」と将也に追い出される。引き際、植野に「あの子愛想笑い得意だし、『お前の顔見たくない』って思ってるんじゃない?」と言われ考え込んでしまう将也だった。

硝子の見せる笑顔に自信の持てなくなった将也は、意を決してメールで硝子に植野との顛末を伝え「俺らの関係って友達ごっこなんかじゃないよな?」と尋ねる。「私もそうなのかなって思ってしまいました。でもごっこは嫌です。もっとあなたのことが知りたい」という硝子の返信から目をあげると、目の前にはポニーテール姿の硝子が立っていた。手話を使わずに会話をしようとする硝子はついに「うきぃ(好きぃ)!」と叫ぶのだった。

Thumb聲の形の植野直花がかわいい!もう一人のヒロインの魅力と画像は? | 大人のためのエンターテイメントメディアBiBi[ビビ]

映画『聲の形』のあらすじ:お節介

将也は硝子を誘って小学校や高校の同級生と遊びに行くことになるが、なぜかそこに植野の姿もあった。やたらと硝子に馴れ馴れしい直花を見た結絃は「あいつ誰?」と将也に尋ねる。将也の心配をよそに楽しむ皆をみて、自分も「楽しんでいいのか?なんか友達っぽい…!」と思い始める。他人との関わりを避けて来た将也の心も変化し始める。唐突に植野は「私、たこ焼き食べたい。一緒に買いに行こ」と将也を売店に付き合わせる。

「たこ焼きお待たせしましたぁ」。「どうも」と店員に笑顔を返す将也。すると店員は「植野さぁ、こういうお節介要らないから」と植野に話しかける。店員は小学校時代に将也をいじめる側に回った「親友だったはず」の「島田一旗(しまだかずき)」だった。植野の差し金で苦い再会し、口も利かずに終わった将也に「私、2人がまた昔みたいに仲良くなれたらって思っただけ」と伝えるが、将也は「勝手な事すんなよ」と植野を咎める。

そう言ってハッとなる将也。「あれ?俺も(硝子に)おんなじことした…」。落ち込む将也に植野は「西宮さんがいなければみんなハッピーだった。島田との仲が壊れることもなかった」と語るが、将也は否定する。「私のこと嫌い?」植野の問いに「多分」と返す将也。植野は硝子と2人で観覧車に乗ると言い出す。抗うでもなく観覧車に乗り込もうとする硝子に、結絃は「ジェットコースターに乗るから」とカメラを預ける。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:植野の行動

映画『聲の形』では、植野を誰が呼んだのかわからず、また唐突に硝子を観覧車に誘ったように見えるが、原作『聲の形』で植野を誘ったのは、小学校時代からの旧友(?)で同級生の「川井みき(かわい−)」。遊園地行きを決めたのは植野(なので島田がたこ焼きをしているのを知っている)。観覧車のくだりは「硝子と話し合ってくる。仲良くなれたら、島田とも仲良くしてくれるよね?私とも」と言って植野は硝子を誘う。

観覧車から降乗してくる硝子の頬が赤い事に気づいた将也は「ちゃんと話せたか?」と植野を問い質すが、「だめだった。なんでひっぱたかれたのか西宮さんに聞いてみれば?あんたには関係ないこと!」との答え。将也は「関係あるッ!」と怒りを露わにするが植野は逆ギレし「なんで関係あるのよ!」と将也にアイスを叩きつける。将也と硝子は「楽しかった?」と手話で交わし合うがお互い気まずいまま帰途につくのだった。

映画『聲の形』のあらすじ:私は私が嫌い

石田家を訪れた結絃は「極秘映像を入手した」と将也に告げる。「観覧車の映像」と聞き、将也は「え?どういうこと?」と聞き返すと結絃はことも無げに「盗撮」と答える。そこには植野と硝子の会話が録画されていた。「私あんたのことが嫌い。私はあなたへの理解が足りていなかった。でもあなたも私のこと理解しようとしていなかったよね。いつもヘラヘラして、近づかないでっていうサインを無視して大人たちにチクった。」

「そのせいで石田は友達を無くした」。植野がそう伝えると、と硝子の返事は「私は私が嫌いです」だった。「結局、あんたは5年前も今も私と話す気が無いのよッ」。思わず植野は硝子に手をあげてしまう。「どう思う?」結絃の問いかけに将也は「西宮には西宮のこと好きになってもらいたいよ」と答えるのだった。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:結絃の反応

原作『聲の形』で結絃は「ねーちゃんはなんかあっても何も言わないから、イライラするのは分かる」と植野の行動に理解を示す。また将也は「俺もそーだし人のこと言えないけど」と前置きしつつ「西宮には西宮のこと好きになってもらいたいよ」と。将也は植野の行動に自分の糧を見出す。

映画『聲の形』のあらすじ:疑心暗鬼

一緒に遊びに行った硝子と植野の間に何があったのかと将也に尋ねる「真柴智(ましばさとし)」は耳が聞こえなくていじめにあっていたのかと自ら悟る。その様子に将也は川井が昔のことを話していないか気になり尋ねるが、川井は「私が昔のことを言い触らしてるって言ってるの?結局石田くんは何も変わってない」。教室で大声を出し将也を批判し始める川井は、皆の前でトラウマとなっている小学校時の将也の話を皆に暴露してしまう。

気分が悪くなり、学校から逃げ出す将也は「俺も俺が嫌いだ」と呟く。いつも硝子たちがいる橋を通りかかると、硝子と結絃、佐原がいた。様子のおかしい将也をみて「どうかしたの?」と尋ねる佐原になんでもないと答えるが、そこへ川井、真柴、植野、そして自称?「親友」の「永束友宏(ながつかともひろ)」が将也のカバンを持って現れる。

「さっきはごめんなさい」と謝る川井は続けて「でも元を正せば石田くんのせいなんだから」と言い出す。その言葉に割って入る植野は「それっておかしいよね?その件で私たちに石田を責める権利ないでしょ?」と川井を制止する。いじめに加担していた意識のない川井は「違うよ直ちゃん(植野)は積極的に西宮さんをいじめていた」と一緒にされることに憤慨する。

何が起きているのかわからなず狼狽える硝子。植野と川井を中心にそれぞれの言い分は佐原へも延焼していく。ため息をつき、その場に座り込む将也は、言い合いを制止し「俺が…全部悪いから」といい始める。自暴自棄になった将也は、植野に「自分勝手になんでもかんでも決めつけんな」、佐原に「また逃げて後悔すんだろ。"弱虫だ"って」、川井に「昔からお前は自分が可愛いだけなんだよ」と、それぞれに暴言を吐く。

たまらず永束は「俺はお前の味方だから」と庇うが、「俺のこと知りもしないくせに味方とか言ってんじゃねえ」撥ね付け、「石田くんひどすぎるよ」と咎める真柴へは「部外者のくせに口挟むなよ」と言い放つ。西宮姉妹と将也が残ったその場で、将也は大きくため息をつくと、「来週から夏休みだからどこかへ遊びに行こう」と硝子を誘うが、結絃は俯いたまま黙り込み、硝子は作り笑いをするのが精一杯だった。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:煩わしいもの

原作『聲の形』では、川井の暴露により学校から逃げ出した将也は植野と出会す。植野は事情を聞き「私がなんとかする。上手くいかなかったら私のせいにしていい」と将也と共にいつもの橋へ向かうが、結局上手くいかなかった。将也の皆に対する蟠りは辛辣で、植野へは「川井と変わらねえ、目クソ鼻クソだ」、佐原へは「心配してるフリはやめろ、だからいじめられるんだ」、川井へは「心の底から気持ち悪いと思う、もう喋るな」と吐き捨てる。

真柴は、自分がいじめられっ子だったので、いじめる奴が許せないと言っていたため、将也は「前に殴りたいって言ってただろ。やりたきゃやれよ」と言い放つと、「え?いいの」と躊躇いもなく将也を殴りつけた。たまらず結絃は「何様だよ。お前」と言い寄ると、真柴は一言「他人様」といいその場から去った。結絃は「将也が煩わしいものを取っ払ったように見えた」と語る。

映画『聲の形』のあらすじ:支え

夏休みに入り、バイトに精を出す将也は、パンを購入しいつもの橋に向かう道すがら、硝子を励ますリハーサルをしながら歩く。しかしいくら待っても硝子が現れる様子はなく、帰ろうとするとセーラー服姿で涙を流す結絃が目に入る。声をかけずに帰ろうとすると結絃から声をかけてきた。「何、その格好」と尋ねる将也に、「制服じゃん。学校だよ」と答える結絃。「今夏休みじゃないの?」と聞き返すが答えは得られない。

不意に結絃の携帯が鳴り、「ねーちゃんからだ、俺行かねぇと」と言う結絃を送ると言い出した将也は一旦断られるが最終的には「勝手にすれば」と言われる。「ありがとう石田。ここまででいいよ。」着いた先は葬儀場だった。硝子と結絃の祖母、「いと」が亡くなったのだ。硝子と結絃の周りをひらひらと舞う蝶を、2人は手話で「おばあちゃん」だと伝え合うのだった。

原作『聲の形』では、結絃が橋の上まで来て将也と会話する所までは同じだが、学校へ行き始めたと思い込んだ将也は、なぜ泣いていたのか聞けずに食事に誘う。食欲が無いと飲み物だけ飲む結絃に「学校は楽しいか?」と聞くと学校へは行っていないという。制服はおばさんの結婚式だというが、会話の端々がかみ合わない。将也は何かあるなら自分が、足りなければ自分の友達が、家族が力になると伝える。それを聞いた結絃は涙を浮かべる。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:制服

結絃を葬儀場まで送った後、将也は自分が超部外者であることに気づき立ち去ろうとするが、気丈に振る舞いながら影で涙する八重子や、硝子を目の当たりにしてしまう。タイミング悪く結絃と八重子に見つかってしまう。結絃は制服のポケットに「いと」からの手紙を発見し、最期の言葉なんて読みたく無いと将也に手紙を朗読させるが、結絃が否定している八重子を庇う文言に、手紙を取り上げ捨ててしまう。

硝子に「強くあれ」と無理やり短髪にしようとした八重子の行動を止めたのは結絃だった。結絃は硝子を守るため自分で自分の髪を短く切って以降、男のように振舞っていたのだ。立ち去る結絃と入れ違うように現れた八重子に、打ち捨てられた手紙を拾い上げ手渡すと、八重子は将也に「いつも結絃と仲良くしてくれてありがとう」と感謝の意を伝えるのだった。

映画『聲の形』のあらすじ:デートごっこ

将也は硝子へ「もしよかったら明日どっかいかない?」とメールし、電車で遠出する。坂で滑って倒れる将也を救い損ねた硝子は手話で詫びる。「なんで謝んの?」と尋ねる将也に「私と一緒にいると不幸になる」と硝子は伝える。「そんな訳ねえじゃん!明日も遊ぼう」と硝子の言葉を否定する将也は「西宮を不幸にしたのは俺なのに」と自問し、硝子の言葉に抗うように連日遊びに誘い続けるのだった。

そんなある日、西宮姉妹と映画を観た後、「明日はどこへ行こうか?」と誘うと、結絃は明日は用事があるからダメと断るが、硝子は一緒に作ろうと誘う。将也が誘われたのは西宮家で八重子の誕生日を祝うケーキ作りだった。「俺がここにいんの合ってる?」またビンタされないかとビビりまくる将也は予想通り、帰宅した八重子から追い出されそうになるが、結絃と硝子に諌められ事無きを得、来週の花火大会へも誘われるのだった。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:植野と佐原

原作『聲の形』では、将也は友達とのトラブル後、スマホを充電したまま持ち歩かずにいた。美也子から「うるさいからなんとかしなさい」と言われ着信履歴を見ると植野から何度も電話が入っていた。佐原からも「どうしたら自分が昔より成長したことを証明できるんだろう」とメールが入るが、将也はスマホの電源を切ってしまう。

映画『聲の形』のあらすじ:花火

花火大会の前、黄昏時に浴衣姿の硝子は空を見上げ何事かを思っていた。夜になり西宮家3人と花火大会を見物する将也。石田家、川井、永束、真柴、佐原、植野。それぞれがそれぞれの場所から同じ花火を見上げる。結絃と八重子が席を空け、二人きりになった将也は、八重子の誕生日に家に呼んでくれた礼をいい、硝子の誕生日を尋ね、来年は一緒に祝おうと伝える。目を瞑る硝子を見て将也は花火の振動を体で感じているのだと悟る。

まもなく、硝子は立ち上がり、勉強があるから帰ると言い出す。送るという将也に「大丈夫」と返す硝子。じゃあ「またな」という将也に、「ありがとう」と返事を返す硝子。席に帰ってきた結絃は将也に家にあるカメラを取ってきてくれと頼む。花火の音を聞きながら階段を登り西宮家に着いた将也は、全身に光と振動を感じながらベランダから身を投げようとしている硝子を発見。「硝子〜ッ!」家具にぶつかりながら将也は手を伸ばす。

辛うじて将也の右手は硝子の右手を掴むが、人ひとりをぶら下げ続けるには限界があった。「神さま。どうかもうひとふり俺に力をください。もう嫌なことから逃げたりしません。明日からみんなの声もちゃんと聞きます」。硝子の左手がベランダに届く。将也は最後の力を振り絞り硝子を引き上げるが、その勢いで自分が転落してしまう。硝子は、自分のせいで将也の築いてきたものが壊れてしまった事に責任を感じ、自殺を決行したのだ。

映画『聲の形』のあらすじ:害悪

病院のロビーで結絃はその目線の先に美也子を見つける。石田家に電話をしても誰も出ないのでここで待っていたと伝える結絃は、将也が一命を取り止め、意識不明ながら病室に移ることを知らされる。「石田さん。」美也子を呼び止めたのは八重子だった。「将也が迷惑をかけた」と詫びようとすると、八重子は「すみませんでした」と土下座を始めた。結絃も「バカねーちゃんを助けてくれた。俺の監督不行届です」といって母に並んだ。

「なんで石田が傷つかねえといけねえんだよッ!」病院の外では植野が怒りに任せて硝子に当たり散らしていた。「お前マジ害悪なんだよ!」フェンスに叩きつけられても声ひとつ立てない硝子。後ろから平手が飛び植野の頬を叩く。八重子だ。当たり所のない怒りをぶつけるように取っ組み合いのケンカを始める2人。「やめ…」涙を浮かべる結絃は声が出ない。「何やってるのよ。やめなさいッ。なんで!」割って入ったのは美也子だった。

「硝子…さん?」近くで座り込む硝子を見つけ、美也子は声をかけた。将也に引き上げられた右手を吊ったまま美也子の足もとに這い寄り、足に頭を付け「ごめんなたい!ごめん…なたい!」。堰を切ったかのように詫びる硝子の鳴き叫ぶ声が辺りに響き、美也子もその姿を見て言葉を飲み込んだ。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:怒る植野

原作『聲の形』では、硝子に当たり散らす植野は、硝子から受け取った手紙を持って来ておりそれを読み上げる。硝子は皆で遊びに行った後、植野に手紙を認めていたが、作中ではこのシーンになるまでその内容に触れられることはなかった。その手紙には「結絃への想い、作り笑いの理由、植野への感謝」などが記されていた。しかし「そこまで考えているなら尻拭いしてから死ね」と硝子への暴力は、佐原の静止が入るまで執拗に続く。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:硝子と美也子

原作『聲の形』では植野と八重子のケンカを止めるのは、その場に居合わせた佐原と結絃が呼びに行った「誰か」。将也の見舞いに行った硝子は病院内で出会い頭に美也子とぶつかって初めて顔を合わせる。美也子はぶつかった相手の顔を覗き込み「あなた…硝子さん…?」と語りかける。ハッとした硝子は怪我をした利き手で即筆談のためメモ書きを始るが、美也子はそれを見ることなく「じゃあ、ね」とその場を立ち去る。

美也子は「何を言っていいのかわからないの。励ますことも、怒ることも、笑顔で話すこともできるけど、どれも本物じゃないような気がして…。将也が目覚めたらその時…ゆっくり話しましょ」と言って、その場にいた将也の友人たちに伝言を頼み、硝子との会話を避ける。

映画『聲の形』のあらすじ:どうすればよかったの?

その夜、西宮家では結絃が家中に貼られていた写真を剥がしていた。死骸を写した写真だ。「何してるの?」と八重子が声をかける。「これ見たら、姉ちゃん死にたいなんて言わなくなると思った。どうすればよかったの?」と泣きながら結絃は答える。涙を押し殺しながら写真を剥がし始める2人。その後ろでは俯いた硝子が無言で立ち尽くしていた。翌朝、写真を捨てにいく結絃は何かを決心したかのように歩く硝子の姿を見かける。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:石田お前ならどうしてた?

結絃が死骸の写真を撮り始めた理由は、硝子が小学生の時にずぶ濡れで「死にたい」と泣きながら伝えてきたことがきっかけだった。原作『聲の形』では、写真を剥がしながら結絃は「無駄だった、全部…。…全然伝わってなかった…。ちゃんと言葉で言えば良かった?「死なないで」って。そしたら変わってくれた?」泣きながら考え、「石田お前ならどうしてた?オレはどうすればよかった?」と将也への明らかな信頼=心の変化を示す。

映画「聲の形」のあらすじ:硝子の決意

未だ目を覚まさない将也の病室では植野が籠城し、硝子は見舞いも出来ずにいた。見舞えない硝子を見かけた永束は扉を開けようとするが開かない。永束は硝子をロビーに誘い「やーしょー(将也)とのこと聞いたよ」と話しかけると、硝子は「石田君が築き上げてきたものを壊してしまいました」と返す。「やーしょーは僕のビッグフレンドだから目を覚ましてもらわなきゃ困る」。永束の言葉にハッとなる硝子。

「私が壊してしまったものをもう一度取りもどしたいです」。将也が仲違いしてしまった友達に会いにいく硝子。佐原は会いに来た硝子に礼をいい「私、自信ないよ。もし石田くんが目覚めても私合わせる顔がない。私は変われなかった。しょーちゃん(硝子)のことまた守れなかった」と心情を吐露する。そんな佐原に硝子は「こえからかある。しゃはらたん(これから変わる。佐原さん)」と手話を交えながら伝え、心を通わせる。

そして、面会時間終了まで籠城を続ける植野を毎日病院前で待ち続ける硝子。植野は当て付けるように無視し続けるが、雨の降り始めた日の帰り道、後ろから差し出される傘に足を止め、植野は硝子と対峙する。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:お見舞い

原作『聲の形』では硝子と永束、植野の他にも友達が見舞いにきており、籠城している植野とそれを「許さない」と言って怒る川井との言い合いで「石田君が振り向いてくれないからって!」と将也への想いがバレバレであることなどが描かれている。ここでのやりとり中に美也子が現れ、硝子と初めて顔を合わせる(厳密に言うと、映画、原作とも、小学校時代に硝子は美也子の店(床屋)に行って髪を切っているため初めてではない)。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:籠城

原作『聲の形』では、植野は籠城中、目を覚まさない将也のベッドの上に乗りキスを繰り返す。植野は「私は石田がずっと好きだった」と昔のことを回想する。好きになったきっかけ、将也を裏切った反省、そして硝子を嫌いになった経緯を思い返し、目を覚まさない将也に向かって「石田、西宮なんかにダマされんなよ」と心の中で思いながら、「ザマーみろ」と呟く。そして自分を選んでくれないのなら目覚めない方がいいと願うのだった。

映画『聲の形』のあらすじ:火曜日が終わる

硝子は、自分に障害がなく皆と仲良くしている夢を見る。振り返ると将也が座っていたはずの席には誰もいない。オーバーラップする救急車のサイレンと、ずぶ濡れの島田たち。手話サークルの廊下。会いに来た将也の言葉が文字で浮かぶ。「西宮」「見つけた」「俺」「しのーと思ってさ」「もうすぐ、火曜日が終わる」。硝子の望む世界、それは会いに来てくれた将也のいない世界を意味する。

飛び起きた硝子は家を飛び出し、将也を探しに夜道を走り回るが見つかる筈もなく、毎週火曜日に将也と会っていた橋の上で一人慟哭する。時を同じくして昏睡状態だった将也が目を覚ます。飛び起きて「ハッ!にひみや(西宮)…」と発しながら辺りを見合わすと、身体中から医療器具の管が這い出している自分に愕然とする。将也もまた、自分で医療器具を外して硝子を探しに夜の街へ飛び出すのだった。

「西宮…西宮…西宮…」。うわ言のように呟きながら件の橋まで辿り着いた将也はよろめき、橋の欄干に手を着く。泣き崩れた硝子はその振動を感じて思わず身を乗り出す。お互いの姿を確認し、呆気にとられる2人。その場に座り込みお互いの無事を確認し、将也は改って「昔のことをちゃんと謝っていなかった」と詫びる。「多分もっと話がしたかったんだ。なのに俺は君を傷つけて、最悪な選択させちゃって」と語る将也を硝子は遮った。

「違う。私が変わらなかったからあなたが落ちた。全部私のせい。私がいなくなればいいって…。ごめんなさい…」と言って号泣する硝子に、将也は「自分もずっと同じこと考えてたけど、死に値することじゃないと思ったよ。みんなにもちゃんと謝りたい」と言い、「君に生きるのを手伝ってほしい」と硝子の手で「友達」の形を作り、その上から自分の手を添えた。硝子は自分の小指と小指を引っ掛け、手話で「約束」と伝えた。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:将也の夢美也子の夢

原作『聲の形』では、将也も意識不明中に夢を見ている。これは将也視点で硝子に障害がなく皆と仲良くしている夢だ。橋の上での将也と硝子の会話中、結絃と美也子、八重子が2人を発見するが、美也子は安心から気を失ってしまう。美也子は「夢で将也が目を覚ましたと勘違い」するが、勘違いではなく、目を覚ましたのは病院のベッドで、尻の様子(西宮家のマンションから落ちた時に鯉に食われた)を見てもらっている将也の横だった。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:硝子の手話

原作『聲の形』では、橋の上での将也と硝子のやりとりや会話はもう少し複雑で、こと硝子の手話3ページ分に至っては作者は解説をしておらず、ファンブログなどでも手話通訳者を巻き込んで意見が分かれている。映画「聲の形」の「違う。私が変わらなかったからあなたが落ちた。」に相当する部分だ。ちなみにこのシーンで将也は、泣きじゃくる硝子を抱きしめようとして思い止まり、肩を叩く。

映画『聲の形』のあらすじ:終章

退院した将也は家の前で待ち伏せ(?)る植野を見つける。美也子は将也に「ずっと看病してくれてたのよ」と伝え、礼をするよう促す。公園で将也は植野に礼をすると、植野は「こんな状態になっても硝子のことを好きになれない」。将也が「マンションから落ちた時、助けたのは島田たちだ」と伝え「石田、おかえり」と残し走り去る。

将也が帰宅すると美也子に散髪してもらっている八重子の姿があった。将也は「いらっしゃいませ」と挨拶すると、八重子は一言「ごめんなさい」と詫びた。自分の部屋に戻ると制服姿の結絃が(硝子と八重子が勝手に応募した)フォトコンテストで入賞したことを聞き、復学のきっかけを作ってもらったことを伝え、低得点の回答用紙を見せながら勉強を教えてくれるよう懇願するのだった。

将也の退院後初登校日は文化祭当日。鏡の前で皆に挨拶の練習をするが、なんとなく気が重い。気合を入れ学校に着くと硝子が校門の前で待っている。案内するつもりが、自分を噂する声に気圧され教室まで辿り着けない将也は硝子に手を引いてもらい自分のクラスに到着する。扉を開けると「石田くん?」「石田くんじゃん!」クラスメイトの視線が一斉に集まり、結局将也は「お腹が痛いかも…」と言ってトイレに篭ってしまう。

トイレに篭り呼吸を整える将也はノックの音と呼び声に「永束…くん?」と反応する。下を俯いたまま顔を見られずにいる将也に永束は「よかった無事で…。君があのまま目を覚まさなかったら僕の全てが終わってしまうところだった…!」と抱きついて泣き始める。「橋の上での…ことは気にするな。頼むから遠くへ行かないでくれぇ」。永束の言葉に「ありがとう」と返す将也だった。トイレを後にすると、硝子と共に川井、真柴もいた。

植野も佐原も集まってくる。将也は皆に手話を交えながら「みんなで一緒に文化祭見て回りたい」と頼む。校内を歩きながら深く呼吸をする将也は、少しずつ心の耳に被せた自分の手を下ろして行く。少しずつ雑踏の声が入り込み、手を下ろし切った時、皆の声と同時に、皆の顔が、日常が将也の心に入り込んで行く。そこに敵はいなかった。自分の居て良い場所だった。将也の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:最終回

映画は、最後に友達と文化祭を見て回りながら将也が閉ざしていた心を開き、溢れ出る涙を止められないシーンで終わるが、原作では中盤より友達と自主制作映画を作成し、文化祭で披露。その後それぞれの進路で悩むが、硝子は理容師になるため東京へ行くことを決意。将也も母の仕事を手伝うため理容師の資格取得を目指すことになる。最終回は硝子とともに成人式に出席し、小学校の同窓が集まる部屋の扉を2人で開き、物語は終わる。

映画『聲の形』と原作の違いをネタバレ紹介:将也の性格

映画『聲の形』の将也は高校時点では「自分がどう見られているか?」ということにナーバスになっており、他人を見ない、聞かない、言わないといった描かれ方をしている。声を荒らげて主張するようなシーンは殆どないが、原作『聲の形』ではナーバス気味であることは変わらないものの、どちらかと言うと臆病というより卑屈な描かれ方(映画と比べて)になっており、モノローグや声を荒らげて主張したり怒ったりするシーンも多い。

映画『聲の形』は原作に勝るとも劣らない名作

音のない漫画とは違い、映画には音があり、動きがある。劇伴は音響的なアプローチで内面的な部分をうまく表現しており、聴覚障害を扱う上で難しいヒロイン、硝子の役作りを声優の早見沙織さんは見事にこなしていると評判だ。将也役の入野自由さんも「将也がどんな声をしているかわからなかったが、聞いた時しっくりきた」と作者が絶賛。手話の動きも、実際の動きを撮影して絵にしていったそうだ。

映画の構成は絶妙な取捨選択、その他改変がなされており、映画の後に原作を見ると、違いというよりは補完版、もしくはスピンオフを見ているような錯覚に陥る。それ位、映画『聲の形』は非常に完成度が高いと評判だ。

いじめや障害といったセンシティブな部分にフォーカスされがちな本作。いじめの描写に関しては賛否両論あり、胸糞悪くなり(そうで)見たく無いといった意見も多いが、映画化に際しては必要最低限にまとめられており、直接的な描写は殆ど無く、実際そこは舞台装置でしかない。すでにご覧になった方はもちろん、まだご覧になっていない方も、原作、映画を比較しながらご覧になってみてはいかがだろうか。

関連するまとめ

人気の記事

人気のあるまとめランキング

新着一覧

最近公開されたまとめ