ハゲタカのNHK版（大森南朋主演）が綾野剛版より面白い？違和感を感じる理由は？

このまとめでは、大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」について詳しくまとめていきます。テレビ朝日の綾野剛版よりも面白いと評判の大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」ですが、どんな点が面白いと言われているのでしょうか。NHK版ドラマ「ハゲタカ」のキャストや面白いと言われている点、逆に違和感を感じられる点など、感想・レビューなどを踏まえながら丁寧に解説していきます。

綾野剛版とキャストの違う大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」、どちらを見ようかと考えている方、また綾野剛版を見ているけれど大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」の評判も気になるという方はぜひチェックしてみてください。

大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」ですが、まず「ハゲタカ」とはどんな作品なのでしょうか。前提として、作品「ハゲタカ」の情報について見てきましょう。「ハゲタカ」は、真山仁により執筆された経済小説のシリーズです。真山仁は1995年に阪神淡路大震災で被災した経験を持ち、2003年に生命保険会社の経済破綻について描いた「連鎖破綻　ダブルギアリング」で作家デビューを果たします。

この時すでに経済小説という自分の作風を確立していた真山仁は、2004年にダイヤモンド社より第1作目の「ハゲタカ」を発表。バブル崩壊後の日本を舞台に、「ハゲタカファンド」と呼ばれる投資ファンドで利益獲得に奔走する鷲津という男と、彼を取り巻く人々を描く経済小説です。

「ハゲタカ」に続き2006年に「バイアウト」（文庫化に伴い「ハゲタカⅡ」へと改名）、2009年に「レッドゾーン」と同シリーズを発表し、今までに5作のシリーズ作と、2作のスピンオフ作品を発表しています。第1作目の「ハゲタカ」と「バイアウト」を合わせてドラマ化したのが、2007年にNHK総合テレビとBSハイビジョンの土曜ドラマでテレビドラマ化されたものでした。

また、2009年には続編となる映画も製作されており、こちらは「ハゲタカ」と同シリーズ作の「レッドアウト」を映像化したものでした。大森南朋主演キャストのNHK版ドラマ「ハゲタカ」は、第33回放送文化基金賞テレビドラマ部門「本賞」 を受賞したほか、イタリア放送協会が主催する国際的なコンクールである第59回イタリア賞シリーズドラマ部門を受賞するなど、国内外から高い評価を受けています。

脚本は「離婚弁護士」や「医龍」など数々のヒットどらまの脚本家を務めた林宏司、またその後「るろうに剣心」など映画監督として活躍する大友啓史が演出として関わっています。

では、面白いと評判のNHK版ドラマ「ハゲタカ」のストーリーとはどんなものなのでしょうか。面白いと評判のNHK版ドラマ「ハゲタカ」は、2007年にNHK総合ほかで放送されました。かつて日本の銀行マンとして働いていた鷲津政彦は、米国の投資ファンド「ホライズン」の日本代表として帰国します。

一方その頃、鷲津の元上司であった芝野は、三葉銀行の積み上がった不良債権をどうにかするよう任せられ、資産流動対策室の室長として画策していました。芝野は、不良債権をまとめて売り払うバルクセールを打開策として上層部に提案します。バルクセールの取引相手として浮上したのが、鷲津率いる「ホライズン」というファンド。かつての部下である鷲津に、適正な価格で買収をして欲しいと頼み込む芝野。

実は過去、三島製作所という小さな町の工場が経営難に陥った時、メインバンクであった三葉銀行からの貸し渋りにあい、工場長が自殺するという事件が起きました。その時三葉銀行の担当であったのが鷲津、当時の上司が芝野でした。心に傷を負った鷲津は渡米。自殺した工場長の娘である三島由香はジャーナリストとなり、ファンドマネージャーとして帰国した鷲津の動向を追っています。

様々な金と思惑が複雑に絡みながら、やがてドラマは大空電気という一大企業の存続をめぐって動き出します。「日本」を象徴するような、モノづくりの最先端を担ってきた企業である大空電気。その大空電気の再建をめぐり、鷲津と芝野は対立します。「カメラ・レンズ事業部」のような、地味だけれど古くから会社の礎を築いてきた部署とそこの人員を、大空電気の一員として残すのか、それとも売り飛ばしてしまうのか。

大空電気の再建には、大空電気の下請けである三島製作所の行く末もかかっていました。冷たいファンドマネージャーの顔を持つ一方で、三島製作所を救いたいという願いも捨てきれない鷲津。彼は、大空電気「レンズ事業部」にしか興味のない「ホライズン」アメリカ本社の意向を無視しようとしたことで、解雇されてしまいます。

そして追い打ちをかけるように、経営する旅館をかつて鷲津によって売り飛ばされ、自殺した旅館経営者の息子・西野という男の手によって銃で撃たれ、命の危機に陥ります。新しく着任した「ホライズン」のマネージャーにより、大空電気の各部署は次々と身売りを余儀なくされます。従業員たちによる批判の矢面に立たされた芝野は、療養中の鷲津の元を訪れ、手を組まないかと持ちかけます。

なんとか大空電気を救いたい一心の芝野に対し、「鷲津ファンド」という新たなファンドを立ち上げようと思うと打ち明ける鷲津。そして、二人による大空電気を救うための戦いが始まるのでした。

経済ドラマとして高い評価を受けた大森南朋主演キャストのNHK版ドラマ「ハゲタカ」ですが、原作小説の「ハゲタカ」をベースにしながらも、脚色として2007年当時の経済状況をうまくドラマの中に盛り込み、脚色をしていたことも話題となりました。例えば、NHK版の「ハゲタカ」で鷲津政彦が口にする「お金を稼ぐことがいけない事でしょうか」 という台詞は、大阪府大阪市出身でシンガポール在住の投資家・村上世彰の言葉。

日本の株主が企業の経営方針等にはあまり口を出さず、株主提案も控えめな傾向であるのに対し、村上は株主を軽視する経営者に対しては株主総会などで経営陣を批判・叱咤することなどから、「もの言う株主」として注目を集めました。また、西野旅館の一人息子でその後IT企業を立ち上げた西野治は、のちにインサイダー取引の容疑で突然逮捕されます。

これはNHK版の「ハゲタカ」と同時期に粉飾決済などの容疑で逮捕された堀江貴文を彷彿とさせます。また、1983年にヤシカというカメラ事業部を吸収合併した京セラは、ドラマと同時期の2007年7月にカメラ事業から撤退し、香港のJNCデイタム・テック・インターナショナルに「ヤシカ」商標権を売却しています。なお、「ハゲタカ」の映画版を製作した2009年は、リーマン・ショックが起こった年。

製作サイドは現実の出来事を反映した物語にするために脚本を大幅に（8割程度も）書き換え、配役やその設定自体を見直したと言われています。そのため、公開時期が後ろ倒しになっています。

よくできた経済ドラマとして好評を博した大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」ですが、キャストはどのような違いがあったのでしょうか。主要なキャストを一人一人見ていきましょう。NHK版ドラマ「ハゲタカ」の鷲津政彦を演じているキャストは、大森南朋。大森南朋は、素顔では「草食系」と言われるほど、地味で大人しめの外見をしています。

キャストとしての俳優デビューは、サントリーオールドの「恋は遠い日の花火じゃない」というCM。このCMで、大森南朋は田中裕子相手役を務めています。また、役者として初期には映画「ヴァイブレータ」で寺島しのぶに推薦され、トラック運転手役を演じました。ドラマでは「タイガー＆ドラゴン」にも、プロデューサー役として1話だけキャストとしてゲスト出演。

また、「ハゲタカ」と同じNHKのドラマ「クラマーズハイ」にもキャストとして出演し、将来有望なキレ者の若手新聞記者という役所を演じています。こうして見ると、「ハゲタカ」以前は脇役を多く演じていることがわかります。そんな中、「ハゲタカ」ではキャストとして主役に大抜擢され、一躍有名になりました。

なお、NHK版の「ハゲタカ」でメインキャストを務めた大森南朋は、のちの大友啓史が監督を務めた映画「秘密-TOP SECRET」（清水玲子原作）などで、大友作品のキャストを務めています。とあるレビューによると、「ハゲタカ」の大森南朋のよさは、大森南朋が完全に「鷲津政彦」になりきり、ドラマの中だけにしか存在しない鷲津政彦という人間をそこに存在させていたこと。

もともと個性の強くない大森南朋という役者だからこそ、スーツとメガネでビシッと決めた鷲津政彦という男が、ドラマの中だけの登場人物として物語を魅力的に見せていたのだという感想も。一方、テレビ朝日版で鷲津を演じているのは綾野剛。綾野剛の俳優デビューは、「仮面ライダー555」で怪人役を演じたことから。

NHKの朝の連続テレビ小説「カーネーション」では強い存在感を発揮し、わずか3話と出演話数の少なさながらも視聴率の伸びに貢献しました。また、NHKのドラマ「八重の桜」では、悲運の会津藩主・松平容保を好演しています。池脇千鶴と共演を果たした「そこのみにて光輝く」など、シリアスなドラマにも多数出演。吉田修一原作・李相日監督の「怒り」では妻夫木聡をパートナーに、ゲイカップルの役を演じて話題となりました。

今、日本で一番売れている俳優の一人とも言われます。なお、面白いと評判のNHK版ドラマ「ハゲタカ」と綾野剛版とは、登場人物としての行動などに大きな違いが現れています。まず、鷲津がアメリカ資本のファンド「ホライズン」を辞める経緯ですが、綾野剛版では右腕であるアランの裏切りに遭い、「ホライズン」からファンドの運営方針を問われて辞めさせられるという設定。

なお、池内博之演じるアランという役ですが、のちに綾野剛演じる鷲津が「サムライファンド」を立ち上げる際、鷲津にファンドにこないかと誘われますが、断っています。一方、面白いと評判のNHK版ドラマ「ハゲタカ」にもやはり鷲津の右腕的存在であるアランというキャラクターがいますが、鷲津に対しての働きかけは目立たず、鷲津が三島製作所を助けたい一心で行動したばかりに解雇された、という部分が強調されています。

大森南朋版が、あくまで投資ビジネスの上で鷲津の人間性を描き出していくのに対し、綾野剛版は、ほかの人物に対し叱責するような厳しい一面を見せながらも、同時に優しい一面も見せるなど、人情的な面が時折かいま見えるようなキャラ造形になっている点にも違いが。

一部のレビューによれば、NHK版「ハゲタカ」の鷲津は冷徹に見えながらも心の底では熱いものを持った男、という描き方がされており、より「おいしい」キャラクターとなっている、という感想も。鷲津以外のキャラクターしては、三葉銀行のエース・芝野健夫役を柴田恭兵が演じていましたが、テレビ朝日の綾野剛版「ハゲタカ」では渡部篤郎に変更されています。

また、三葉銀行の頭取・飯島亮介役は中尾彬が演じていましたが、テレビ朝日版では小林薫に変更されています。その他にも豪華キャストが出演している点は、大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」と綾野剛版の「ハゲタカ」ともに同じです。面白いと評判のNHK版には栗山千明、松田龍平、菅原文太、大杉漣、松重豊ら人気俳優が出演。

一方テレビ朝日版には、沢尻エリカや伊武雅刀といった大物俳優が出演しています。なお、テレビ朝日の綾野剛版「ハゲタカ」を製作しているのは、同テレビ朝日系列で大人気の長寿刑事ドラマの監督を務める和泉聖治。テレビ朝日版の「ハゲタカ」には、相棒でおなじみの六角精児も出演しています。和泉聖治もまた、社会派のドラマを撮ることで有名なドラマ監督です。

大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」がその時の時事的なネタをドラマに盛り込んでいたのと同様、綾野剛版のドラマもまたアベノミクスなど最近の経済問題を取り入れた仕立てとなっています。また、面白いと評判のNHK版ドラマ「ハゲタカ」にはない綾野剛版の魅力として、ドラマの第3話を原作者の真山仁が書き下ろすという贅沢なストーリーになっているという点が挙げられます。

面白いと評判のNHK版ドラマ「ハゲタカ」と綾野剛版との違いは、鷲津という人物のキャラクター性の違いとなって、顕著に現れています。大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」がそうであったように、ファンドビジネスによる企業買収という経済ドラマとなると、「企業を買い叩く重み」や、そこで地道に働く従業員、下請けの企業に対して発生する責任など、どうしても重くシリアスなドラマになってしまいがち。

しかし面白いと評判のNHK版「ハゲタカ」はそうした、冷徹でシビアな経済ドラマの中で描かれる人間性が視聴者に支持されました。対して、綾野剛版はそのような、ともすれば敬遠されがちな重苦しい要素を避けたいがゆえか、綾野剛演じる鷲津が「日本を変えてやる」というような、「世直しエンタメ」となっているという指摘も。

まるで、「半沢直樹」や「下町ロケット」、「陸王」などTBSの日曜劇場を追従するような作りなのです。鷲津以外にも、六角精児ら他キャストの演技もまた、劇画チックで外連味にあふれたものになっています。面白いと評判のNHK版と比較すると明らかに「軽い」ドラマとなっており、それがいい！と評するレビューも中にはあります。

しかしどうしてもNHK版の「ハゲタカ」と比べてしまうという声もあり、賛否両論の演出となっています。特に、大森南朋の当たり役となった鷲津というキャラクターを演じた綾野剛に対しては、辛いレビューも多い様子。また、面白いと評判のNHK版は「再生ファンド」といった形態がまだ世に知られていなかった時代、「ハゲタカ」のドラマによって脚光を浴びたという背景もあります。

バブル崩壊後に日本国内の経済状況が目まぐるしく変わる中、2007年という年に制作された大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」は、時流に乗ってヒットした傑作だった、という声も。

大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」は、経済ドラマとして面白いという評価と同時に、キャストの演技が光っていて面白いというレビューや感想も多く見受けられます。大森南朋は、「ハゲタカ」放送当時「代表作」と呼べるような作品にまだ当たっておらず、どちらかといえば「無名」に近い俳優でした。

そのことが逆に、視聴者が先入観を持つことを避け、フラットな心持ちで「ハゲタカ」や「鷲津」という男に没入するのに適していた、といった感想も。また、大森南朋以外のキャストもはまり役であり、例えば芝野役の柴田恭兵はたまたま肺がんの手術を終えてやややつれ気味の状態で撮影に臨みましたが、そのことが逆に、芝野という男の人物像をよく表しているといった声もあります。

なお、大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」は、松田龍平の初連続ドラマ出演作でもあります。松田龍平は中学生の時大島渚監督の映画「御法度」で映画デビューしましたが、連続ドラマはNHK版ドラマ「ハゲタカ」が初。それも、当初出演予定だった中村獅童が交番となったため、代理で出演が決まったのでした。

たまたま抜擢されたNHK版ドラマ「ハゲタカ」で、松田龍平はギラギラとした野心家の若者役を好演。レビューなどで、一躍高い評価を受けました。なお、NHK版「ハゲタカ」は中尾彬などの大物俳優を起用している一方で、大森南朋や松田龍平といった若手俳優を積極的にキャスティングしているのも魅力のひとつ。

NHK版ドラマ「ハゲタカ」から2年後の2009年に公開された同スタッフ・キャストによる映画「ハゲタカ」では、まだ映画に出始めの高良健吾が重要な役どころで出演。多くのレビューサイトで言及されているように、多くのファンの印象に残る演技を見せました。

Twitterで評価を見ると、NHK版を面白いと評価する人の中には大森南朋はじめキャスト陣の抑えめな演技を評価する声が多く見られます。NHK版の「ハゲタカ」は下手にエンタテインメント性を追求せず、金融をめぐる人間ドラマを重厚に描いたことが、視聴者から面白いという評価を受けている要因だという声も多数。

大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」は2007年のドラマですから、すでに10年以上が経過していますが、今なおファンから面白いという評価の声が聞かれるほどの傑作でした。そうした骨太な作風は、NHKだからこそできたという意見も。一方、綾野剛版の「ハゲタカ」に関しては演出が過剰で不愉快だったという感想も。

各人物の心情描写を控えめに、クールに描いていたNHK版と差別化を測ろうとした結果ながら、その試みが裏目に出て、「ドクターX」など他の民法ドラマと同じような、普通のドラマになってしまっているという分析も中にはあります。

大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」と比べ、綾野剛版に違和感を感じる理由は、NHK版があまりに傑作だったばかりに、ファンはどうしてもNHK版と比べてしまう、といった意見が多く見られました。民法で放送するという意識からか、エンタテインメント性を強く打ち出す作風でしたが、今回はそれが裏目に出てしまった、という分析もありました。

以上、大森南朋主演のNHK版ドラマ「ハゲタカ」と綾野剛版の比較を通して、ふたつのフラマ版の分析を行ってきました。両者の特徴を踏まえつつ、見比べてみてはいかがでしょうか。