ワンピースのギルド・テゾーロの能力と過去とは？ドフラミンゴとの関係は？

ギルド・テゾーロは2016年に公開されたワンピースの映画「ONE PIECE FILM GOLD」に登場する悪役であり、映画にのみ登場するオリジナルキャラクターです。アメリカのエンターテイナーを思わせる派手な外見と歌やダンスを得意とするこれまでにない独特なキャラクターであるテゾーロですが、ワンピースの悪役の中でも一際悲しい過去を持っている人物でもあります。

この記事ではテゾーロの過去や生い立ち、彼が操るゴルゴルの実の能力や作中では深く語られなかったドフラミンゴとの関係などを細かく紹介していきます。作中では支配欲に憑りつかれた悪役として描かれ、その悪辣さに激怒したルフィと戦った末に倒されてしまったテゾーロですが、彼が抱えている悲しい過去や生い立ちを知れば映画で見た時の印象が変わるかもしれません。

ワンピースの世界においてテゾーロは"黄金帝"、"新世界の怪物"の異名で呼ばれており、世界政府からも警戒されているかなりの大物として描かれています。またワンピースの世界で絶大な権力を持つ天竜人やドフラミンゴともつながっているなど、ある意味他の海賊とは明らかにランクが違う存在です。そんなテゾーロは一体何をしている人物なのか、ここでは紹介していきます。

テゾーロは元々海賊でしたが、現在では巨大カジノ「グラン・テゾーロ」のオーナーであり、カジノ王として君臨しています。ワンピースの世界の中でもテゾーロは名うての大富豪であり、その財力は世界の通過の20％を掌握しているともいわれています。またテゾーロの資産は「テゾーロマネー」と呼ばれ、その総資産額は5000億ベリーともいわれており、小さい国であれば丸ごと買えるほどのものです。

テゾーロはその財力を生かし、天竜人に多額の天上金を納めることで世界政府を動かし、天竜人を懐柔するなど政治の面でも絶大な影響力を持っています。そのためテゾーロの立ち位置は実質的に王下七武海に匹敵するものであり、彼が所有するグラン・テゾーロは世界政府公認の中立地帯になっています。海軍もテゾーロには簡単に手を出せない存在であり、世界勢力に影響する存在としてテゾーロは危険視されています。

大富豪という一面が強いテゾーロですが、自らステージに立ってショーを開催するなどエンターテイナーとしても一流です。作中では歌を歌うだけでなく、タップダンスを披露するなど歌や踊りを存分に披露しています。ただ、テゾーロにとって歌や踊りは彼が金と並んで重要視しているものであり、小説版ではカリーナは「ステージに立っているテゾーロこそが一番彼らしい」と評しています。

テゾーロを語るうえで欠かせないのが彼が所有するカジノ船「グラン・テゾーロ」です。グラン・テゾーロはワンピースの作中に登場する船の中でも最大級の船であり、その全長は10ｋｍに及びます。グラン・テゾーロにはカジノだけでなく、水族館やゴルフ場、サーキット場など様々な娯楽施設があります。そしてグラン・テゾーロはテゾーロのゴルゴルの実の能力が行き届いており、この船自体が彼の武器ともいえます。

世界有数の大富豪に名を連ねるカジノ王、歌と踊りをパーフェクトにこなすエンターテイナーと様々な一面を持つテゾーロですが、果たしてその人格はどうなっているのでしょうか。ここではテゾーロがどんな性格なのかを掘り下げていきます。彼の性格を分析していくと作中で描かれているテゾーロは単純な悪人ではなく、複雑な内面を持つ人物であることがわかります。

エンターテイナーだけあってテゾーロはかなり派手好きです。ピンク色の派手なスーツや豪華なステージ衣装だけでなく黄金の指輪、星型の刺青やピアスなどいったアクセサリーもつけるなどゴージャスな外見をしています。さらにテゾーロは享楽的な性格でもあり、テゾーロマネーの噂を流して泥棒を集めて賭けの対象にしたり、麦わらの一味とロングロング海賊団の戦いを見世物にしたりと楽しければ何でもよいと考えています。

ワンピースの悪役の例に漏れず、テゾーロはかなり支配欲が強く、金を何より絶対視している性格です。グラン・テゾーロ内にいる人間を常に監視しており、金のない人間を迫害しています。さらに部下でも自分より先に笑った人間を容赦なく制裁するなど歪んだ嗜虐心を垣間見せています。しかしテゾーロのこの性格は過去の経験や不遇だった生い立ちの反動で形成されたものであり、彼の過去・生い立ちが原因だといえます。

作中でテゾーロは商売仲間のドフラミンゴを倒した麦わらの一味を罠にはめていますが、一方でルフィを気に入っている一面がありました。テゾーロは天竜人を殴り、世界政府に宣戦布告したルフィに好印象を持っており、実際部下が「海賊王になる」というルフィを嘲笑した際には不快感を浮かべています。ワンピースの悪役はルフィの夢を馬鹿にすることが多いですが、テゾーロはルフィの夢を否定していない珍しいタイプです。

テゾーロがルフィの夢を笑わない理由は彼の生い立ちに関係しているといえます。詳しくは後述しますが、テゾーロはその生い立ちのために夢を持っていても報われない人生を送り続けていました。それでもあらゆる犯罪を手に染め、人格が歪んでも夢を叶えたテゾーロだからこそルフィの夢を馬鹿にしないことがわかります。テゾーロの過去・生い立ちの影響は大きく、彼の行動や思想の随所に反映されています。

テゾーロを演じている声優は俳優歴40年を誇るベテランであるアニメでは山路和弘です。アニメでは「PSYCHO-PASS」や「進撃の巨人」、ゲームでは「ファイナルファンタジー7」に出演、吹き替えではジェイソン・ステイサム、ヒュー・ジャックマンなどを担当しています。映画や舞台、ドラマにも積極的に出演しており、とりわけ映画監督の原田眞人の作品に多く出演しています。

山路和弘はテレビアニメの方のワンピースにも出演しており、ドフラミンゴファミリーの幹部であるセニョール・ピンクを演じています。渋くてダンディズムに満ち溢れながらも、外見は思いっきり変態であるセニョール・ピンクの声優とテゾーロの声優がが同じであることには驚かされます。ちなみに直近までテレビアニメのワンピースに出演していて、そのまま劇場版の悪役を演じる声優は山路和弘が初めてです。

何かにつけて高笑いしたり、怒鳴ったり、叫んだりするテゾーロを演じた山路和弘は前に演じたセニョール・ピンクと比べてかなり苦労したとインタビューで語っています。とりわけルフィとテゾーロがラストで戦うシーンではルフィを演じる声優の田中真弓とリポビタンDを片手に演技したというエピソードがあるようです。それだけ山路和弘がテゾーロを熱演していたことがわかります。

さらに山路和弘は劇中でテゾーロがカリーナと歌う「GOLD & JIVE 〜 SILVER OCEAN」を実際に歌ってみせています。山路和弘はとりたてて音楽活動をしているわけではありませんが、俳優として何度もミュージカルに出演しており、その際に培った抜群の歌唱力を発揮しています。元々山路和弘は端正でどこかワイルドな顔立ちをしており、歌唱力の高さも相まってテゾーロを演じるにふさわしいキャスとです。

回想で描かれる過去で青年期のテゾーロを演じている声優は櫻井孝宏です。主にテレビアニメを中心に活躍している声優であり、「今日からマ王」、「デジモンアドベンチャー」、「PSYCHO-PASS」、「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」、「おそ松さん」など多くの大ヒットアニメで主要キャラクターを演じています。売れっ子の櫻井孝宏ですが、意外にもワンピース出演はテゾーロ役が初めてです。

テゾーロは超人系悪魔の実であるゴルゴルの実の能力者です。ゴルゴルの実は黄金を自在に操る能力であり、テゾーロは一度触れた黄金なら自由自在に操作することができます。固体はもちろん、液体の黄金や金粉も操作することが可能です。加えてテゾーロは能力を覚醒させており、グラン・テゾーロ内にある全ての黄金を操ることができるだけでなく、自身の支配下にある黄金に衝撃が加わればすぐに探知することができます。

ゴルゴルの実の弱点は海水です。ゴルゴルの実で操作されている黄金は海水を浴びると瞬く間に脆くなり、ゴルゴルの実の能力の影響を失います。そのためテゾーロはグラン・テゾーロ内に海水が入り込まないようにしています。作中ではカリーナの作戦で海水をグランテゾーロ内に引き込み、一気にばら撒くことでテゾーロのゴルゴルの実の能力を一気に打ち消し、ルフィ達は無事にゾロを救出しました。

テゾーロはゴルゴルの実を生かし、様々な技を使っています。元々ゴルゴルの実は黄金を自在に操る汎用性が高い能力であり、おまけにテゾーロは能力が覚醒の域に達しているため、その破壊力や影響力の広さは折り紙付きです。支配にも戦闘にも使えるゴルゴルの実はこれまで登場した悪魔の実の中でも強力なものの一つとして数えられるでしょう。ここでは作中でテゾーロが使った代表的な技を紹介していきます。

腕に黄金をまとい、即席のガントレットを使って相手を殴りつける技です。主に近接戦闘で使用される技であり、ギア2を発動したルフィと渡り合いました。形成した黄金爆は瞬時に液状化して相手を拘束することも可能であり、攻防一体の技だといえます。後述するゴールデンテゾーロを形成した際にも使用可能であり、その場合は「黄金の業火（ゴオン・インフェルノ）」という技に変わります。

液状化した黄金を噴出させる技です。液状化した金をばらまくことで金粉化させて相手に付着させたり、液状化した金で相手を覆います。そして付着した黄金を操作することで相手を金メッキの要領で固めてしまいます。テゾーロはショーの一環でこの技を使用し、グラン・テゾーロ内にいる人間に金粉をつけ、いつでも固められるという状況を作っています。テゾーロの支配を確立させている技だといえます。

テゾーロが使う大技の一つです。黄金で形成した巨大な肉体で相手を圧倒します。テゾーロ自身は腹部のコクピットのような部位に乗り込んでいます。非常に高い防御力を持ち、ルフィの武装色の覇気の一撃や海軍の砲撃を受けても破壊できません。攻撃力も高く、この状態で放たれるレーザー「黄金の神の火（ゴオン・フォーコ・ディ・ディオ）」は海軍の軍艦を一撃で破壊できます。

テゾーロがラストで使う大技です。画像からは分かりづらいですが巨大な黄金の触手を形成し、相手を押しつぶす攻撃です。ルフィのギア4"弾む男（バウンドマン）"に匹敵する威力を持っています。黄金で触手を作る技自体は作中でも多用しており、主に敵の捕縛に使用しています。黄金の神の裁き（ゴオン・リーラ・ディ・ディオ）はその中でも攻撃に振り切った技だといえます。

攻撃用ではなく、部下のために黄金で構築された鎧「ゴールドアーマー」を作り出す技です。形成したゴールドアーマーは非常に高い硬度を持ち、装着者の戦闘力を大きく向上させます。作中ではタナカさん、ダイス、バカラのためにゴールドアーマーを形成しています。ただ画像のバカラのゴールドアーマーに関しては見ての通り身体を覆っている部分が少なく、防御力に関してはやや心配です。

テゾーロの部下はそれぞれ特異かつ強力な能力を持っており、原作のワンピースに登場するキャラクターとは一味違う魅力を放っています。また、テゾーロには直属の部下だけでなく、傘下の海賊団も持っており、こちらはテレビアニメの方のワンピースでルフィ達と戦っています。ここでは映画、テレビアニメそれぞれに登場したテゾーロの代表的な部下6人を紹介していきます。

グラン・テゾーロのVIP担当コンシェルジュであり、テゾーロからも篤い信頼を得ている女性です。テゾーロへの忠誠心は高く、好意を寄せています。超人系悪魔の実「ラキラキの実」の能力者であり、触れた相手の相手の運気を奪うことができます。この能力でグランテゾーロの経営を盤石にしました。またバカラの外見はテゾーロの過去に大きく関わっている女性であるステラと似ています。

グラン・テゾーロの警備主任。コミカルな外見とは裏腹に、性格は傲慢。金のない人間を見下す傾向があります。テゾーロへの忠誠心は高く、しっかり仕事をこなせることからテゾーロからも重用されています。超人系悪魔の実「ヌケヌケの実」の能力者であり、あらゆる無機物をすり抜けることができることができます。そのためグランテゾーロのあちこちから出没し、相手を翻弄することができます。

グラン・テゾーロのディーラー。見た目はいかつい巨漢ですが、実は極度のマゾヒストであり、相手の攻撃を受ける度に恍惚とした表情を浮かべます。見た目通りの怪力の持ち主であり、戦闘では巨大な斧を振るい、武装色の覇気をまとって戦います。マゾヒストであるがゆえにゾロの斬撃を受けても喜んでいるなど、ある意味肉弾戦においてはテゾーロ一味の中でも無類の強さを誇っているといえます。

トレジャー海賊団船長であり、テゾーロに雇われているトレジャーハンターでもあります。粗暴で残忍な性格であり、トレジャーハンターだけあって財宝に対する執着心は強いです。テレビアニメの方のワンピースのスペシャル版「ハート・オブ・ゴールド」で初登場し、鎖を生み出す超人系悪魔の実「ジャラジャラの実」の能力で大暴れしました。ナミやカリーナの過去にも関わっており、映画本編でも回想で登場しています。

シルバー海賊連合の船長。テゾーロに金の力で屈服させられた海賊であり、その経験から夢を見る海賊を見下すようになっています。使えない部下を平然と切り捨てる冷酷な性格です。テレビアニメの方のワンピースで放送された「シルバーマイン編」に登場し、体を溶鉱炉に変えて取り込んだ鉱石を武器に変える超人系悪魔の実「グツグツの実」の能力を使います。作中ではルフィと戦い、敗北しました。

グラン・テゾーロの歌姫。その歌唱力の高さと優れたパフォーマンスからテゾーロに重用されています。しかしその正体は「女狐」と称される名うての怪盗であり、テゾーロマネーを強奪するためにテゾーロに接近していました。泥棒をやっていたころのナミのライバルであり、よく張り合っていました。テゾーロでさえも出し抜いてしまう計算高い切れ者ですが、仲間を助けるためには自分の犠牲も厭わない性格です。

映画では断片的にしか語られていませんでしたが、テゾーロの生い立ちはかなり込み入っており、また過去には悲しい別れや辛い苦難を経験しています。作中でテゾーロは歪んだ支配欲を暴走させている悪役ですが、あまりに辛く悲しい過去を持っているからこそ現在の人格が形成されてしまったともいえます。ここからはワンピースの原作者である尾田栄一郎が設定したテゾーロの過去を紹介していきます。

テゾーロは子供の頃から歌が好きであり、煌びやかなショーに憧れていました。しかし貧しい家庭に生まれたために近所の子供達からは仲間外れにされており、孤独な少年時代を送っていました。また父親がギャンブル狂いであり、それも貧しさに拍車をかけていました。そんな中、父親は手術を受ければ治せる病気にかかってしまいます。しかし手術代が払えなかったため、父親は病死してしまいます。

父親の死後、テゾーロの家の生活はさらに悪化します。そのためテゾーロは荒んだ母親から罵倒され、愛していた歌を否定されるようになります。母親との関係が悪化したテゾーロは12歳の頃に家出し、不良とつるんでギャンブルや喧嘩、酒に明け暮れる生活を送るようになります。しかし16歳の頃にテゾーロは裏カジノで大負けし、人買いに連行されることになってしまいます。

辛くも人買いから逃れたテゾーロはたまたま行き着いたヒューマンショップで奴隷にされてしまったステラという女性に出会います。ステラはテゾーロの悪評を知っていましたが、テゾーロに優しく接し、彼の歌を褒めます。ステラの優しさに触れたテゾーロは改心し、彼女を解放するために真っ当な方法で金を稼ぎ、彼女を買い取ることを決意します。そしてステラを愛するようになりました。

それからテゾーロは昼夜を問わず働き、時間を見つけてはステラに歌を披露し、夢を語る生活を送っていました。しかし19歳となり、あと少しでステラを買い取ることができるだけの金が溜まろうとしている矢先、天竜人がステラを買い取ってしまいます。テゾーロが必死に抵抗するも虚しく、ステラは連れていかれます。連れていかれる間際、ステラはテゾーロに告げます。「私は、心から幸せだった」

テゾーロの不幸はまだまだ続きます。ステラが連れて行かれる際に抵抗したため、テゾーロもまた天竜人の奴隷になってしまいます。その際、天竜人は「自分より先に笑った」という理由で迫害されるなど理不尽な扱いを受けます。そして奴隷にされてから2年後、テゾーロはステラが死んだことを知ります。これがテゾーロの過去の最大のターニングポイントであり、その時から金に強い執着心を持つようになります。

不幸続きのテゾーロでしたが転機が訪れます。15年前にフィッシャー・タイガーが起こした奴隷解放事件に紛れてマリージョアを脱出。テゾーロはゴミを漁る過酷な生活を送りながらあらゆる犯罪に手を染めるようになります。詳しくは後述しますが、マリージョアから脱出したテゾーロはゴルゴルの実をドフラミンゴから奪取し、ドフラミンゴとは対立しながらも協力関係を築き、海賊として成りあがっていきます。

意外にもテゾーロは愛する人を奪われた悲惨な過去、貧しさによって苦しんだ生い立ちを持っていることがわかります。様々な不幸に見回れた結果歪んだ支配欲を持つ人間に変貌し、作中では終始悪役として振る舞っていたテゾーロですが、その生い立ちにも関わらず自分を助けてくれた人への恩義を決して忘れない一面があり、作中の随所でその証拠を見つけることができます。

テゾーロはステラへの想いをまだ失っておらず、テゾーロが歌や踊りを披露するショーを「ゴールド・ステラ・ショー」と名付けています。見ての通り、ショーに「ステラ」の名前が冠されています。またテゾーロは両手の指に指輪をはめていますが、結婚指輪をはめる左手の薬指にだけ指輪ははめられていません。これらはステラへの一途な想いをまだ失っていないことを象徴しているものだと推測できます。

そしてステラはイタリア語や英語で「星」を意味する言葉です。これを踏まえると、テゾーロが奴隷の紋章を星型の焼印で消したり、星をかたどったピアスを付けていたりと黄金や金に並んで星というモチーフに拘っている理由がそれとなく推測できます。テゾーロが歌に執着するのも、かつて母親にさえ否定された自分の歌をステラが褒めてくれたからだとわかります。

今でこそ支配欲に歪んでしまったテゾーロですが、その性格は貧乏であるがゆえに不遇だった生い立ちや、金がなかったがために愛する人を守れなかった絶望と無力感、そして天竜人の所業に苦しめられた反動によるものだとわかります。しかし金を執着を強めた結果、皮肉もテゾーロはかつて自分やステラを苦しめた天竜人と同じような存在、"怪物"になり果ててしまいます。

テゾーロはマリージョアで奴隷解放事件を起こし、自由になるきっかけを作ってくれたフィッシャー・タイガーへの恩義も忘れていません。魚人への差別感情が強い世界政府中枢と繋がりを得ていても、テゾーロが支配するグラン・テゾーロでは魚人差別の風習がないのはそれが理由です。歪んでいても、テゾーロは自身を救ってくれた人間への恩を忘れない性格だということがわかります。

テゾーロと深い関係を持っている人物として挙げられるのがワンピースの中でも屈指の実力者であり、王下七武海に名を連ねるドンキホーテ・ドフラミンゴです。テゾーロとドフラミンゴの生い立ちには共通点があり、時には敵対しながらもお互いを利用し合う関係を保っていました。その意味ではテゾーロを語るうえでドフラミンゴは欠かせない存在です。ここではテゾーロとドフラミンゴの関係について紹介していきます。

テゾーロとドフラミンゴの出会いのきっかけはゴルゴルの実でした。12年前、ドンキホーテファミリー主催のオークションでゴルゴルの実が出品されることを知ったテゾーロは犯罪者達を唆してオークション会場に火を放ちます。火事により数百人の死傷者を出しながらもテゾーロはゴルゴルの実を強奪します。元々客寄せのためにゴルゴルの実を出品していたドフラミンゴは激怒し、テゾーロの命を狙うようになります。

しかしテゾーロはゴルゴルの実の能力を得たことにより海賊として名を挙げるようになります。さらにタナカさんやダイスといった部下も得たことで存在感を増してきたテゾーロに対し、ドフラミンゴは彼を利用するために過去のいさかいを捨て、あえて協力関係を持ちかけます。世界政府へのパイプを求めていたテゾーロはドフラミンゴと協力関係を結び、さらにラキラキの実の能力を持つバカラ得てますます勢力を拡大します。

テゾーロは貧しい家庭の一般市民、ドフラミンゴは天竜人と生い立ちは違いますが、天竜人という存在に振り回された過去やゴミを漁った経験など共通点を多く持っています。そのためテゾーロは商売仲間であり同時に敵でもあるドフラミンゴをいずれ消そうと考えていましたが、ゴルゴルの実を得るきっかけになったことや天竜人に屈折した感情をを持っていることから彼に対しては敬意や共感の念を抱いていました。

テゾーロはこれまで登場したワンピースの悪役同様、支配欲が強く、人を人とも思わない一面を持っています。作中ではショーの一環としてゾロを処刑しようとしたり、ルフィ達を苦しめることを楽しんでいるなど典型的な悪人として描写されています。しかしそんなテゾーロの悪辣な一面は愛する人を守れず、金がないがために苦しんだ悲しい過去・生い立ちが大きく影響していることがわかります。

そんなテゾーロの名前の意味はイタリア語で「大切な人」という意味があります。テゾーロの行動原理の根底には彼にとっての「大切な人」であるステラがいると考えると、テゾーロのイメージが変わるのではないでしょうか。また「ONE PIECE FILM GOLD」を見る機会があったのならテゾーロの過去・生い立ちを踏まえたうえで鑑賞するとテゾーロの言動に隠された彼の想いがわかるかもしれません。