もののけ姫の時代設定はいつ?室町時代?セリフや登場ワードから時代背景を考察

人間の強欲さ故に失われつつある自然の行方と人間の在り方に迫った「もののけ姫」は、ファンタジー要素の強い宮崎駿監督作品の中で異色の作品として記憶に残っている方もいることでしょう。「もののけ姫」の舞台は室町時代となっていますが、日本の歴史上でのポピュラーな偉人が登場していないため室町時代のいつごろなのかがわかりづらいようです。「もののけ姫」の時代設定がいつ頃なのか探るべく、劇中の台詞やツールから歴史的背景に迫っていきます。

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目次

  1. もののけ姫とは?
  2. もののけ姫の時代設定はいつ?室町時代?歴史から考察
  3. もののけ姫の時代背景・舞台をさらに推測!年代は?
  4. もののけ姫のその後や物語に関する謎を考察
  5. もののけ姫の時代に関する感想や評価
  6. もののけ姫の時代まとめ

もののけ姫とは?

もののけ姫の概要

1997年に公開されたアニメ界の巨匠・宮崎駿監督のジブリ映画「もののけ姫」は「風の谷のナウシカ」のように人間によって失われつつある自然がテーマとなっていますが、時代設定が荒廃した未来の「風の谷のナウシカ」とは違い、中世・室町時代の日本が舞台となっています。

宮崎駿印のファンダジー要素がありつつも、リアルな人間ドラマを追求した「もののけ姫」は、公開当時の日本映画の興行記録を塗り替える193億円という大ヒットとなり、宮崎駿監督の代表作品の一つに挙げられています。

もののけ姫のあらすじ

自然と人間との間に境界線があった室町時代の日本。人間への憎悪から化け物となった巨大なイノシシがエミシの村を襲撃します。化け物を退治した少年アシタカは、右腕に死の呪いをかけられてしまい村を追放処分となってしまいます。

呪いから解放されるための旅路の途中でアシタカは、彼が助けた男たちが住む村・タタラ場に流れ着きます。そこでアシタカは、タタラ場と対立する「もののけ姫」と呼ばれる少女サンと関わってしまったことで、もののけたちと人間との壮絶な戦いに否応なしに巻き込まれていくことになります。

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もののけ姫の時代設定はいつ?室町時代?歴史から考察

もののけ姫の時代は室町時代?

宮崎駿監督作品で「ルパン三世 カリオストロの城」は現代、「風の谷のナウシカ」は荒廃した未来、「となりのトトロ」は昭和30年代と、比較的に時代設定を20世紀から近未来を舞台にしていることが多い中、「もののけ姫」は時代を遡り室町時代が舞台となっています。

「もののけ姫」の時代設定は室町時代となっていますが、当時の歴史上の偉人とされる一休さんや足利一族などが出ていないことから、237年間続いた室町時代(1336年〜1573年)のいつ頃を舞台にしているのかぱっと見にはわからないようです。

冒頭のエミシの村のおばさんのセリフから考察

「もののけ姫」が室町時代のいつ頃なのかは、冒頭の場面でエミシの村のおばさんが「大和との戦に破れてこの地に潜んでから五百十余年」というセリフからある程度の予測ができそうです。「大和との戦いに破れて…」とは、大和(近畿地方にあった大昔の政権)と蝦夷(関東や東北地方あたりの人々)との最後の戦いとなった前九年の役(1051~1062年)と後三年の役(1083~1087年)という出来事を示しているようです。

「…この地に潜んでから五百十余年」から、「もののけ姫」の時代設定は1570年頃あたりの室町時代後期になるようです。「大和の王の力もない、将軍の牙も折れた聞く」に注目すると、室町幕府が応仁の乱(1467年〜1477年)の後に弱体の一途を辿っていたという歴史的背景が伺えるようです。その点から「もののけ姫」の時代設定がいつ頃かと絞り込むと、室町時代後期1573年に織田信長が最後の将軍を追放した頃だと考察されます。

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もののけ姫の時代背景・舞台をさらに推測!年代は?

考察①石火矢という武器

大砲のプロトタイプのような石火矢(いしびや)とは、室町時代後期に西洋から導入された火砲の一種です。火薬を用い、石を弾丸とする背景から日本では石火矢と呼ばれていますが、破壊力の凄さから「国崩」とも言われています。「もののけ姫」でも石火矢の鍛冶職人が、「国崩」と言っている場面があります。

室町時代が舞台となる「もののけ姫」では武器や乗り物などはリアリさを追求しており、「風の谷のナウシカ」のメーヴェのような想像力が掻き立てられるものではないようです。「もののけ姫」で登場した鉄砲のような石火矢は、中国歴代王朝の一つである明時代の火槍がルーツという歴史的背景があり、大砲のプロトタイプのような石火矢とは違うようです。しかしエボシは、明ルートの石火矢をバージョンアップさせています。

室町時代の武器の歴史的背景の一つとして、みなさんが歴史の授業で習ったポルトガル人により日本に鉄砲が伝わった「鉄砲伝来」があります。織田信長の天下統一に一役買った歴史的背景がある鉄砲は、1543年にポルトガル人の商人が乗っていた船が台風により種子島に漂着したことで日本に伝わることとなります。

考察②アサノ公方

「もののけ姫」には大和朝廷や謎の組織、大名などが己の利権で暗躍する姿が描かれており、名前だけの登場ですがアサノ公方がタタラ場を狙っていたようです。登場人物の名前がカタカナ表記なので、アサノ公方が実在の大名をモデルにしたかは不明ですが、尾張(愛知県)に浅野長政という武将・大名が、戦国時代から江戸時代初期(1547年~1611年)に実在しており、メインではありませんが大河ドラマでも登場していたようです。

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もののけ姫のその後や物語に関する謎を考察

考察①勧善懲悪の物語にならなかった理由

「水戸黄門」や「半沢直樹」などに代表される勧善懲悪ものは、いつの時代にも親しまれているジャンルだと言えるでしょう。アニメもかつては完全懲悪ものが主流だったようですが、80年代のアニメブームを皮切りに善悪の境界線が曖昧な設定の作品が登場し始め「もののけ姫」もその傾向が強いようです。

タタラ場のリーダーであるエボシは武力で森に侵攻し、もののけたちを殺戮している行為は平和に暮らしている者から見れば悪行と言えるでしょう。しかし、生活の糧となる製鉄所タタラ場を維持するためには、森や山々の資源が必要になることもあるので、それを阻止するものは排除しなくてはならなくなります。

戦乱の世で生きていくのに必死なタタラ場の人たちにとって、エボシは絶対的な信頼がおけるリーダーなのです。一方、山犬に育てられたサンは、己の為に自然を荒らし続ける人間を深く恨み続けています。

「もののけ姫」は人間ともののけとの対立がメインとなっていますが、人間界やもののけ界でも様々な対立が勃発し始めます。現実でも些細なほころびから様々な対立が勃発し、人間は二つの世界大戦を起してしまいます。「もののけ姫」の背景には、勧善懲悪のように物事が解決しない人間の性が描かれていると言えるでしょう。

考察②アシタカがエボシに笑われる理由

「もののけ姫」の主人公アシタカは、少女漫画に出てきそうな定番の清廉潔白な少年です。なのでアシタカは、助けた男たちを送り届けたタタラ場で女たちの注目の的になってしまいますが、有頂天になることなく紳士的でいます。それに対し人間の裏表を知り抜いているエボシは、正々堂々と優等生発言をするアシタカがばかばかしく可笑しかったに違いなかったのでしょう。

しかし、エボシに笑われてもアシタカは、ゆるぎない信念で人間ともののけの争いを食い止めようと奔走します。エボシのようにタタラ場の人たちを守るために森を侵しても仕方ないという潔さも必要ですが、結果多くの敵を作ってしまう可能性が高くなります。欲と憎しみに囚われた争いを断ち切るには、アシタカのように損得抜きで行動できる人物が必要なのかもしれません。

考察③シシ神とコダマの意味

生きとし生けるものの命をコントロールする美しく超次元の存在とされるシシ神は、山々や森が破壊されていく終盤の場面からわかるように人間やもののけたちが触れてはいけないものであるようです。アシタカとサンによりシシ神に首は返され、山々や森に緑が蘇り平和が訪れたように見えますが、人間が介入してしまったことでそこはシシ神の森ではなくなってしまったのです。

すなわち18世紀半ばから19世紀に起こった西ヨーロッパから始まった産業革命のように、「もののけ姫」でもいつしか経済拡大という大義名分のもと人間の進出が顕著になる時代の幕開けを描き出しているようです。

宮崎駿監督作品には、「風の谷のナウシカ」のテトや「となりのトトロ」のトトロなど可愛らしいキャラが登場しており、不思議系ゆるキャラ・コダマもその一員に加わったようです。宮崎駿監督はコダマを森には植物、動物、虫以外にも何かがいるかもしれないという漠然なイメージをもとに作り上げたようです。

コダマはなんとなく後味の悪いハッピーエンドを迎えた「もののけ姫」のラストショット出ていることから、森がシシ神の森でなくなったとしても、どこかで自然の神秘性が保たれているというメッセージを訴えかけているようです。

考察④タタラ場に子供がいない理由

宮崎速雄監督作品では一貫して、「天空の城ラピュタ」や「となりのトトロ」のように子供たちがメインとなり大活躍していますが、「もののけ姫」では子供は登場していません。子供たちが遊んでいる場面ありそうなタタラ場で、子供が見当たらないのを不審だと感じたファンも多いことでしょう。宮崎駿監督曰く「もののけ姫」で子供が登場していないのは、「子供を入れるとややこしくなる」からだそうです。

「もののけ姫」では元気ハツラツな子供たちではなく物語の舞台となるタタラ場で、歴史的に弱者とされている女性が強く逞しく働く姿を表現しているようです。ラストですべてを失ってしまったエボシでしたが、アシタカとの出会いを通じ考えた方に多様性が芽生えてきたらしく、村人と共に子沢山で平和なタタラ場を再興することでしょう。

考察⑤その後はどうなった?

アシタカとサンの出会いから「もののけ姫」には、ボーイ・ミーツ・ガール的な恋愛要素もあると言えるでしょう。少年アシタカと少女サンが出会い恋に落ちるというストレートな展開ではありませんが、立場が違いながらも二人は惹かれあっている様子が伺えます。二人のラストは、「天空の城ラピュタ」のパズーとシータのように誰もが納得するハッピーエンドとしては描かれていないようです。

アシタカと生きていきたいものの人間を受け入れられないサンは森で生き、アシタカはタタラ場で暮らすようですが、サンに対して「時々は森に行きたい」と答えています。結局二人は別れたのか、七夕の彦星と織姫みたいな関係になっているのか想像の余韻を残しているようです。

アシタカとサンは結婚した

アシタカとサンのその後について気になるファンも多い中、宮崎駿監督は「二人はしょっちゅう会ってる」と語っているようです。スタジオジブリから発売された絵コンテ集に、アシタカのプロポーズをサンが受ける場面があることから宮崎駿監督の発言はただのリップサービスではなかったようです。

アシタカには許婚がいた!

アシタカのことを「あにさま」と呼んでいたカヤは、物語の序盤に出ただけなので忘れた方もいるかもしれませんが、エミシ一族の後継者となるアシタカの許婚です。カヤが「あにさま」呼んでいたことからアシタカの妹だと勘違いしていた人もいるかもしれませんが、そのように呼んでいたのは目上の人に対する敬意からだったようです。

右腕にかけられた呪いを断つために旅立つアシタカに、カヤは変わらぬ愛の証として黒曜石の小刀を送っています。当時の時代背景を踏まえると、アシタカは旅の途中で死ぬ可能性もあるので二人は別れを覚悟していたのかもしれません。

器量よしのカヤだったら新たな結婚相手が見つかりそうですが、「アシタカがいつか必ず帰ってくる」と健気に信じている姿も想像されます。ドラマチックな別れをした二人ですが、その後アシタカは例の小刀をサンに与えている背景から、心のベクトルはいつしかカヤからサンに変わっていたようです。宮崎駿監督作品では、主人公が他の異性に乗り換えるという展開はないので、アシタカの行為に驚かれた方もいることでしょう。

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もののけ姫の時代に関する感想や評価

「もののけ姫」の魅力の一つとして、物語の舞台となる室町時代の空気を時代劇よりリアルに描いていると言えるでしょう。時代劇においてモブキャラとなっている平民が、「もののけ姫」では力強く生き生きと描かれ、当時の歴史の雰囲気を肌で感じさせてくれます。

平和すぎる現代とは違い「もののけ姫」の舞台となる室町時代は、決して平和に暮らせる時代ではないので、タタラ場以前のエボシは波乱万丈な人生を歩んできたと想像できます。そんなエボシは、扱いが難しい石火矢を華麗を使いこなしているようです。

いつの時代も化粧は、自らを美しく見せる手段であると言えるでしょう。しかし、サンのように俗世から離れ人里離れた森で暮らしている民族は独自のコミュニティを築いている背景があるので、化粧は自らの信条を表す手段なのかもしれません。

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もののけ姫の時代まとめ

「もののけ姫」はレンタル視聴や定期的なテレビ放映がされているので、物語の舞台となる時代設定や歴史的背景などに興味を抱かれる方も多いことでしょう。歴史とファンタジーを融合させた「もののけ姫」ワールドは、これからも果てしなく広がっていくことでしょう。

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