幽遊白書の主人公・浦飯幽助とは？強さ・必殺技や螢子とのその後について考察

現在週刊少年ジャンプに連載されている作品『HUNTER×HUNTER』の作者である、冨樫義博先生。先生の過去作であり、代表作といっても過言ではない作品が『幽遊白書』です。連載期間は1990年～1994年と、なんと20年以上前の作品でもあります。当時から絶大な人気を誇り、週刊少年ジャンプの黄金期、その一角を支えた作品です。

1992年から、スタジオぴえろ制作、フジテレビ系列よりTVアニメも放送され、全112話の平均視聴率は17.6％、最高視聴率はなんと24.7％にも上りました。当時視聴をされていた世代の方々も、一度は幽助の必殺技である霊丸の真似をしたのではないでしょうか。

その人気から多数のゲーム化もされており、ファミリーコンピューターからPlayStasion2までと、幅広い世代の機種から様々なジャンルの作品が発売。近年では2018年にソーシャルゲームとして、 iOS、Android™ アプリにて配信が決定されています。

主人公である不良の浦飯幽助は、ある日車に轢かれそうな子供を庇い、自分が撥ねられてしまいました。しかし霊界の使いである、ぼたんに、それは霊界の手違いであった為「試練をこなすことで生き返ることができる」と、告げられます。

試練を乗り越え生き返った幽助は、霊界探偵として、現世で悪行を働く妖怪を取りしまる戦いの中で仲間と出会い、その絆と共に、より巨大な陰謀と悪に立ち向かっていく、というのが『幽遊白書』のあらすじです

20年以上前に完結した作品ではありますが、『幽遊白書』は今なお名作として語り継がれており、完結後に生まれた若い世代の中でも、『HUNTER×HUNTER』から冨樫先生のファンになり、更に『幽遊白書』に触れることで、その魅力に取りつかれる方が大勢います。

その源は冨樫先生の練りこまれたストーリーと、やはり個性的、魅力的なキャラクター達でしょう。今回はその中でも、『幽遊白書』の顔とも呼べる主人公。浦飯幽助の強さに迫ります。

浦飯幽助は、『幽遊白書』の連載開始時14歳、皿屋敷中学2年生という設定です。未成年でありながら、喫煙、飲酒、パチンコを嗜み、万引き、カツアゲ等々の犯罪行為も行い、更に喧嘩っ早く、粗野で乱暴、短気で無鉄砲と、誰が見ても不良以外の何物でもない人物です。あまりの不良さにアニメでは放送しきれなかった部分もあります。

そんな不良の中の不良である幽助ですが、根は腐っておらず、弱い者はつい守ってしまう性格です。その性格から、ボールを追って道に飛び出し、車に轢かれそうになっている子供を庇って、代わりに事故死してしまうのです。しかし、それは霊界(作中にて死んだ者が行く場所)にとってもあまりに予定外でした。霊界は案内人であるぼたんを派遣し、幽助に生き返るための試練を与えることにしたのです。

試練とは霊界獣と呼ばれる獣の卵を孵化させること。幽霊状態の幽助は様々な霊との出会いを通じ、見事生き返るための権利を勝ち取りました。生き返った幽助は相変わらず自由気ままにな生活を送っていましたが、霊界よりの使者として改めてぼたんが来訪。幽助に霊界探偵としての使命を与えたのです。

『幽遊白書』の世界では、死んだ者が行く霊界、人間の住む人間界、そして妖怪の住む魔界があり、その魔界より人間界に入り込んできた魔物が、人を襲うなどの悪行を働くことがありました。霊界より命を受け、その妖怪を退治、取り締まるのが霊界探偵です。『幽遊白書』中には幽助の他に、元霊界探偵であった人物が2名登場しました。

霊界探偵となった幽助に与えられた霊能力、その最大の攻撃が霊丸(れいがん)です。右手で銃の形を作り、心で引き金を引くことで、自身の霊力を弾丸に変えて打ち出す必殺技であり、最初から最後まで幽助が一番多用した武器となります。霊丸の強さは、幽助の全力パンチのおおよそ3倍の威力。1日に1発までしか発射できませんでしたが、修行を経て威力も上がり、全力で4発以上、ストーリー終盤ではほぼ無限に放てるようになりました。

『幽遊白書』のストーリー中、霊光波動拳と呼ばれる武術を伝える幻海師範が、後継者を決める選考会を開きます。その中に妖怪が入り込み、霊光波動拳の奥義を盗もうとしていることが分かりました。それを止めるために選考会に参加した幽助は、死闘の末後継者に選ばれます。

厳しい修行を積んだ幽助は、霊丸の強さも上がり、新しい必殺技として、拳に霊力を集める霊光弾、それを拡散して放つショットガンを身に着けました。霊丸程の多用はしませんでしたが、敵を同時攻撃する特徴が役に立ったこともあります。

霊丸を主力の必殺技とする幽助ですが、段数制限もあるために普段は肉弾戦で戦います。不良時代から負け知らずであった喧嘩殺法で、型にはまらない動きが特徴的です。桑原など数多くの不良を沈めてきた必殺技の殺人パンチ、超高速ボディーブローの連打の内臓殺しは作中頻繁に登場し、奥の手としてヘッドバットを使用したこともありました。それと霊丸を組み合わせることが幽助の必勝スタイルといえるでしょう。

『幽遊白書』終盤、強敵仙水忍の絶大な強さの前に敗れ、命を落とした幽助ですが、魔族として目覚め、復活します。その元となった魔族が雷禅であり、幽助の先祖です。人食い鬼として人間界、魔界を強大な力で荒らしまわっていた雷禅ですが、人間界において1人の女性に惹かれ、その女性と子を成しました。再会するまで人間は食べない、という誓いにより700年もの間断食。物語終盤、幽助の目の前で餓死をすることになります。

命を落としたその瞬間、幽助の中のもう一つの心臓、魔族の核が動き出しました。遠い遠い先祖である雷禅の血が隔世遺伝(2世代上前の遺伝子が発言する事)し、魔族としての浦飯幽助が生まれたのです、これを『幽遊白書』では魔族大隔世と呼んでいます。

魔族として目覚めた幽助は、仙水忍と互角に戦う力を得ていましたが、その後、更に雷禅による乗っ取りでさらに変貌、髪が地面に着く程伸び、紋様が体に浮かび上がり、そしてなにより仙水忍を圧倒する強さを見せ、強大な霊丸を放ちました。

幽助は雷禅への怒りで否定しましたが、あれは幽助の潜在能力であるといえるでしょう。その後の魔界トーナメント戦にて3大妖怪の一人、黄泉に敗れはしたものの、大健闘していることから、その成長次第で雷禅に届くのではないでしょうか？

『幽遊白書』には、美人や可愛い女性が多数登場しますが、初めから最後まで正ヒロインとしての立場を譲らないキャラクターが、雪村螢子です。才色兼備で優しい性格をしており、登場した時は長い髪でしたが、幽霊から戻る直前、火事により帰るべき体を失う所だった幽助を救い出す時に、その髪を少し失って短髪になってしまいました。実家は定食屋を経営しており、幽助も行きつけにしています。

そんな雪村螢子というキャラクターは、幽助の幼馴染にして腐れ縁の関係です。幼い頃からその性格、出自で周囲から疎まれ気味であった幽助の側に寄り添い、彼の心の支えとなっていました。幽助は素直な性格ではないため、彼女にちょっかいを出しては、幽助いわく螢子の必殺技であるビンタを受ける、というのが彼らのコミュニケーションのパターンです。

仙水戦後、魔界へ再び向かうことを決意した幽助は「戻ってきたら結婚しよう」と螢子にプロポーズをします。螢子の父親によると、喧嘩をした後はいつも幽助からプロポーズをしていたようですが、彼女は常に曖昧に流していました。今回も突き放す形でプロポーズを断った彼女、しかしその想いはすでに受け入れていたようで、彼を待つことを心に決めていました。

『幽遊白書』クライマックスにおいて、霊界側のクーデターにより、人間界に虐殺兵器が放たれようとしてしまいます。コエンマから、その発射を止める依頼を受けた幽助は、兵器を停止するスイッチの3択を迫られますが、神の威光を謳うクーデター軍に対して「あっちが神なら、こっちは女神だ」と言い放ち、螢子の好きな色である青を押しました。

後々仲間達には笑われてしまいますが、自分の命と人類、引いては螢子の命を左右する選択でのこの台詞から、幽助の螢子への深い愛情を感じます。

幽助の母親である、浦飯温子。幽助の性格、喧嘩強さは彼女から受け継いだものです。ズボラで破天荒な彼女の行動には幽助でさえ振り回されてしまいます。金バッチから金を巻き上げたり、マンションを巻き上げたり、と裏社会に通じているようです。しかし、幽助が事故死した時は泣き崩れ、遺影の前から動けなくなってしまうように、息子への深い愛情も作中では描かれています。

父親とは離婚しており、母子2人暮らしの生活を送っています。しかし父親である男とはたまに会っているようで、ただ別れただけとも違う複雑な関係のようです。また、雷禅と幽助は世代の差が非常にありますが、魔族である彼らの価値観は人のそれとも違うのか、お互い親子に近い感情を持っているようにも見えます。

幽助と同じ皿屋敷中学2年生、桑原和真。彼も不良のキャラクターです。自称、幽助のライバルですが、いつも喧嘩を挑んでは完膚なきまでに叩きのめされていました。昔から強い霊感を持っており、幻海師範の霊光波動拳継承者を決める選考会に参加したことから、幽助の霊界探偵業に深くかかわる事になり、チームのムードメーカーとなっていきます。

霊能力が目覚めて以降、幽助の霊丸と対になるように、霊気を剣の形に変える能力に目覚めました。応用として、その剣を伸ばしたり、広げたりすることができ、更に物語後半、物質の強度にかかわらず次元ごと対象を両断する必殺技、次元刀を会得。人間界と魔界を繋ぐ道を閉ざす結界すら切り裂くその力は、3界全てにおいてとても珍しい能力であったようです。

物語登場時点では、飛影と共に霊界から3つの宝を盗み出した盗賊の1人でした。彼の正体は魔界の妖狐でしたが、人間界の母親を助けるため、自分の命を宝物に捧げようとします。幽助はその願いに心を打たれ、命を少し分ける決断をすることで、彼の命を救いました。その出来事がきっかけとなり、蔵馬は魔族でありながら幽助に協力する道を選びます。

そのルックスとミステリアスな雰囲気、アニメ版の声優が緒方恵美さんであることから、『幽遊白書』の中で女性人気の高いキャラクターです。戦闘方法もバラを鞭としたり植物を操ったり、非常に美しい戦いを行います。必殺技は魔界の植物を呼び出し、敵を攻撃させる事ですが、妖狐の姿に戻っていないときは、自分の命を引き換えにしてしまうため、最後の奥の手です。

幽助と共に戦う仲間の中で、唯一本気で殺し合いを行ったのが、邪眼師・飛影です。蔵馬と共に霊界から宝物を盗み出した後、3つの宝物を全て自分のものとするために、螢子を人質として幽助に戦いを挑みます。残酷、非道の行いをした飛影ですが、罪を軽くする為に渋々幽助達に付き合ううち、彼らのその関係を心地よく思ってしまったようです。

隠された雪女の国で、生まれてはいけない男、忌子として生を受けた飛影は、自分の力だけを頼りに生きてきました。隠された物、遠くの物を見つけるための邪眼は、生まれ持った物では無く、自分の故郷と、生き別れになった妹を見つける為に、重い代償を背負って手に入れた物です。

飛影は連載中に行われた人気投票で、全て1位となる『幽遊白書』という作品で、最大の人気を誇るキャラクターです。冷酷な表情の中に秘めた素顔と、必殺技である蛇王炎殺黒龍波の強さ、格好良さが人気の秘訣でしょう。

『幽遊白書』の冨樫義博先生が、現在週刊少年ジャンプで連載している作品が『HUNTER×HUNTER』です。先生の体調不良も相まって、連載が急に止まってしまう、ネームでの掲載等、かなり不安定な連載となってしまっていますが、先生らしい非常に練りこまれた設定、ストーリー、キャラクターから読者を虜にしています。

不良キャラクターである『幽遊白書』の浦飯幽助、純粋無垢な『HUNTER×HUNTER』のゴン＝フリークス、と対極にあるような2人ですが、根底にある「人を惹きつける力」は両者共に共通しており、それ故に彼らの周りには魅力的な仲間が集まってきます。

『HUNTER×HUNTER』世界では念能力と呼ばれる力が存在しますが、その系統を幽助に当てはめるとするなら、霊丸とその戦闘スタイルから放出系よりの強化系、といった所でしょうか。ちなみにゴンも師匠であるビスケから同じような評価を受けています。

『HUNTER×HUNTER』のキメラアント編にて、リーゼントに学ランを思わせる服装の不良系キャラクター、ナックル＝バインが登場。冨樫先生の描く不良キャラということで、ファンの間では、幽助や桑原が思い出されると話題になりました。更にゴンの父親であるジン＝フリークスの姿が明かされるにつれ、その顔つきや、戦いを楽しむ性格等、幽助を見ているようにしか見えない、と盛り上がっています。

ここまで紹介してきたように、浦飯幽助というキャラクターは、最後まで不良の側面を壊さず描かれてきました。しかし単純な強さ、格好良さよりも、その破天荒な性格や、仲間のために命を懸ける姿に、『幽遊白書』を読んだ人はどうしても魅了されてしまうのです。

ここまで浦飯幽助というキャラクターの姿を御紹介してきました。何度も言いますが、この『幽遊白書』という作品は20年以上も前に連載されていた作品です。単純な不良では無く、絆と想いを大切に、しかしそれでも強敵との戦闘を楽しむその姿と、彼を慕う魅力的な仲間たちの関係。

この作品がここまで読者を魅了するのは、この生き生きとしたキャラクター達を好きになってしまうからでしょう。古い作品であるから、と今までこの作品に触れなかった方も、一度読めばきっと『幽遊白書』と浦飯幽助の虜になります。