【風立ちぬ】主人公・堀越二郎の人物像を考察！モデルとなった人物や声優は？

スタジオジブリ作品の「風立ちぬ」の主人公は堀越二郎で、声優にエヴァンゲリオンシリーズなどでおなじみの庵野秀明監督が抜擢されて話題になりました。この記事では、「風立ちぬ」の主人公である堀越二郎の人物像や菜穂子との関係、堀越二郎の実在したモデルといったことを紹介します。

ジブリ作品の映画「風立ちぬ」は2013年に公開され、月刊模型雑誌「モデルグラフィックス」に宮崎駿監督が連載した漫画「風立ちぬ」を原作としています。第二次世界大戦初期から活躍した日本の傑作機といわれる零式艦上戦闘機などを設計した堀越二郎が主人公のモデルとなっているほか、小説家の堀辰雄の影響を受けています。そのため公開された映画のポスターには「堀越二郎と堀辰雄に敬意を表して」と書かれています。

飛行機に憧れている少年の堀越二郎は夢を見ました。その夢にはイタリアの航空技術者のカプローニ伯爵が登場し、励まされたことで自分自身も飛行機設計士になることを決意しました。成長した堀越二郎は東京帝国大学で飛行機の設計を学びます。そして、関東大震災のときに乗車していた汽車で本作のヒロインである里見菜穂子と女中の絹を助けました。

映画「風立ちぬ」に登場する堀越二郎のプロフィールについて紹介します。モデルとなった実在の堀越二郎については「風立ちぬの堀越二郎の実在モデル」の項で詳しい説明をするのでチェックしてください。映画に登場する堀越二郎は、生まれた年は不明ですが実在モデルの堀越二郎と同じ飛行機を設計しているため、実在モデルの堀越二郎と差がない可能性があるとされています。

視力はあまりよくなく、丸眼鏡をかけているのが特徴的。喫煙者で、よく吸っている銘柄はチェリー、そして好物は鯖です。もともと飛行機に憧れていた堀越二郎でしたが、飛行機乗りになるためには視力が重要なことを知っていました。そのため飛行機乗りになる夢は諦めていましたが、夢で出会ったカプローニ伯爵の影響で、飛行機設計士の道を目指します。

映画「風立ちぬ」に登場する堀越二郎の性格は、のんびりとしていて掴みどころがありません。それは、裕福な家庭に生まれたことが原因のようで、そののんびり屋の性格のため時間や予定にルーズな面があります。また、夢想家で好きなことに熱中すると周りが見えなくなり、常日頃から飛行機と飛行機の設計プランで頭がいっぱいになっています。そのため周囲をおろそかにしがちで、妹からは薄情者だと思われているようです。

飛行機に夢中でほかのことをおろそかにしがちな堀越二郎ですが、関東大震災のときにけがをした見ず知らずのお絹を背負って避難させるなど、優しい性格をしています。周囲が見えなくなる面があるとはいえ、堀越二郎の本質は真面目で優しいとされているようです。

「風立ちぬ」の堀越二郎は、飛行機設計士としてさまざまな飛行機を設計しています。設計主任として初めて携わった飛行機が「七試艦上戦闘機」です。「七試艦上戦闘機」は飛行試験中に垂直尾翼が折れたことで墜落してしまい、不採用となってしまいました。その後堀越二郎は「九試単座戦闘機」の設計で、当時としては独創的な逆ガル翼を採用。この戦闘機は正式採用されました。

この戦闘機は「九六式艦上戦闘機」として活躍、「零式艦上戦闘機」の前身の戦闘機として日中戦争・太平洋戦争初期に活躍しました。その後堀越二郎は傑作機の「零式艦上戦闘機」を設計し、太平洋戦争序盤はアメリカ軍に大きな衝撃を与えるほどの活躍を見せますが、その後物量・技術力で大きな差があったアメリカ軍の戦闘機相手に不利な立場となっていきます。

「風立ちぬ」の主人公である堀越二郎とヒロインの菜穂子の関係を紹介します。本名は里見菜穂子で、架空の人物ですがモデルは堀越二郎の実在モデルの1人である堀辰雄の婚約者である矢野綾子だとされています。菜穂子は作中では堀越二郎の妻ですが、実在モデルとされる矢野綾子は結婚する前に結核を患って亡くなっています。菜穂子はあくまでもオリジナルキャラですが、結核を患っている点など同じ設定が使われているようです。

ちなみに、映画「風立ちぬ」で菜穂子役を演じた声優はドラマ・映画などを中心に活躍している女優の瀧本美織さんです。

映画「風立ちぬ」の主人公である堀越二郎の実在モデルは、同名の堀越二郎です。映画版の堀越二郎と同じく飛行機設計士として知られていて、とくに零式艦上戦闘機の設計者として有名です。第二次世界大戦へと突入していく時代、海軍は国内の航空機開発メーカーに高い性能要求を求めます。あまりの高さに堀越二郎は「格闘性能、航続力、速度の内で優先すべきものを1つ挙げてほしい」と要求しました。

すべてを満たせと言う海軍ですが、その中でもとくに格闘性能を重視するようにと言われて生まれたのが零式艦上戦闘機です。その格闘性能は太平洋戦争初期は圧倒的で、数多くのアメリカ軍相手に優位に立ちます。しかし、格闘性能に偏っていた零式艦上戦闘機はとくに防御力に難があり、次第に追い込まれていくようになってしまいます。

映画「風立ちぬ」の主人公である堀越二郎の実在モデルは、堀越二郎のほかに作家の堀辰雄がいます。小説家の堀辰雄の代表作は1937年「風立ちぬ」や1940年「菜穂子」といったものが挙げられます。映画「風立ちぬ」では菜穂子がメインヒロインになっていますが、堀辰雄の小説「風立ちぬ」ではヒロインの名前は節子でした。しかし、本作ではもう一つの代表作「菜穂子」から名前を取ったとされています。

ちなみに映画「風立ちぬ」の作中には、堀辰雄の小説「風立ちぬ」や「菜穂子」のセリフやシーンが引用されています。

映画「風立ちぬ」では主人公の声優が庵野秀明監督が抜擢されたことで話題になりました。庵野秀明は「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズや「シン・ゴジラ」などの監督として知られています。庵野秀明は高校卒業後、大阪芸術大学映像計画学科に進学、同じ科には漫画家の島本和彦および士郎正宗といったメンバーがいたそうです。そんな庵野秀明は卒業後に上京します。

そこで劇場アニメ「風の谷のナウシカ」、「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」などに参加し、「トップをねらえ!」では監督として作品に携わりました。

本職が声優ではない庵野秀明が主人公堀越二郎の声優に抜擢された理由を紹介します。宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーが堀越二郎を「内気なのではなく、頭が良すぎて口数が少ない男」と分析し、候補として挙げた人に適任者がいなく、「素人」にやらせた方がいいという意見が出たそうです。このときに庵野秀明の名前が挙がり声優に抜擢されました。

このときに宮崎駿監督は庵野秀明を声優に抜擢した理由を「庵野が現代で一番傷つきながら生きてる感じを持っていて、それが声に出ていると思ったから」と発言しています。

映画「風立ちぬ」で主人公の堀越二郎とお絹さんの出会いは、関東大震災での混乱時です。このシーンで堀越二郎は当時20歳のお絹さんと13歳の菜穂子と出会い、避難に協力したあとに別れています。

関東大震災から2年たったときに、堀越二郎のもとに菜穂子とお絹さんに貸したシャツや計算尺、そして手紙が届きます。このとき、堀越二郎はあのときの人だと回想しますが、菜穂子のことは頭に思い浮かばずお絹さんのことだけ思い出します。このことから、堀越二郎にとって同年代のお絹さんの方が印象に残っていて、菜穂子は初対面のときにあまり印象に残ってなかったのではないかとされています。

そのため、将来的に結婚する菜穂子ではなく、堀越二郎にとっては初恋の相手がお絹さんだったのではないかと言われています。

「風立ちぬ」の主人公、堀越二郎の名言を紹介します。最初に紹介する「Le vent se lève…」は直訳すると「風が立つ。生きようと試みなければならない」です。この名言は、列車の連結部に乗っている堀越二郎の帽子が飛ばされ、それを幼い菜穂子ががつかんでくれたときの回想シーンで登場します。このセリフはポート・ヴァレリーの「海辺の墓地」の一節。

この名言は堀越二郎の名言というだけではなく、映画「風立ちぬ」の大きなテーマになっている名言だとされています。

続いて紹介する名言は「もちろん。100年だって…」です。これは堀越二郎がプロポーズをして、菜穂子が「病気が治るまで待ってほしい」と返したときの名言です。いつまでも菜穂子のことを待つ、そういう二郎の菜穂子への思いが詰まった名言として人気があります。

ここからは映画「風立ちぬ」の堀越二郎がひどいと言われた理由や死亡説について紹介します。堀越二郎がひどいと言われている理由の一つに、声優の庵野秀明を挙げる方が少なくありません。声優に抜擢した理由の部分で紹介しましたが、宮崎駿監督たちは素人を起用した方がいいと考えた時に庵野秀明を抜擢しようと考えたとされています。その素人のような演技が、映画で浮いていてひどいという感想が少なくありません。

また、結核を患っている菜穂子の近くで煙草を吸うシーンがひどいという意見があります。これについては、時代背景のほかに、煙草を吸っている間でも近くにいたいという菜穂子の思いがあったのではないかとされています。また、夢想家で妹の約束をすっぽかすなどひどいと言われるようなシーンがありますが、それもまた堀越二郎の個性だという意見もあるようです。

映画「風立ちぬ」で堀越二郎が堀越二郎が特高に追われた理由を紹介します。特高とは特別高等警察の略で、戦時下の日本において治安維持を目的として設置された機関で、主に反政府的な人物や国家転覆をもくろむスパイを取り締まっていました。堀越二郎が特高に追われた理由は、軽井沢で外国人のカストルプとの接触したことが原因です。

カストルプは特高がスパイとして目をつけていた人物で、そのカストルプと接触した堀越二郎もまた国家転覆をたくらむスパイだと考えられました。ちなみに、カストルプは実在する当時のロシアのスパイであるリヒャルト・ゾルゲがモデルだとされています。

映画「風立ちぬ」で堀越二郎が死んだとされる理由について紹介します。堀越二郎は映画のラストシーンで、幼少期に夢の中で出会ったカプローニとともに現実かどうかわからない空間にいます。そして菜穂子が「生きて」と堀越二郎に呼びかけました。このことから、死亡説が挙がりました。また、このときの菜穂子のセリフは本当は「来て」ではないかとされています。

堀越二郎とカプローニがいる空間は天国と地獄のはざまで、菜穂子は堀越二郎に「天国に来て」という意味で言ったのではないかというものです。2人が開発した戦闘機は2人の夢が詰まった乗り物ですが、それは人殺しの道具でもあります。そしてこのシーンは戦争の道具を作った2人が裁かれるシーンだという説があります。

映画「風立ちぬ」の堀越二郎役の声優である庵野秀明に対して棒読みだという批判があります。その一方で、庵野秀明の演技こそ正解だというファンの方がいます。

映画「風立ちぬ」のラストシーンで、それがバットエンドだったのか、それともグッドエンドだったのかという議論があり、ファンによって立場が別々のようです。

映画「風立ちぬ」の菜穂子と堀越二郎の関係を見て、理想的な夫婦、最高の関係だという感想を抱く方がたくさんいました。

映画「風立ちぬ」の堀越二郎について紹介しました。実在した堀越二郎と堀辰雄がモデルとなっている映画の堀越二郎、ひどいという感想もありますがとてもいいキャラだったという感想もあります。堀越二郎に注目をして、映画「風立ちぬ」を視聴してみてください。