2021年05月21日公開
2021年05月21日更新
【風立ちぬ】カストルプの正体を考察!タバコやセリフに隠された意味とは?
ジブリ映画「風立ちぬ」に登場するカストルプは、堀越二郎が宿泊するホテルにいたドイツ人であり、二郎と里見菜穂子の交際の立ち合い人を務める一方、その正体はスパイではないかとも噂されています。本文では、映画「風立ちぬ」のカストルプの正体がスパイと言われる理由やタバコ・セリフに隠された意味、カストルプのモデルや性格、「忘れる…」が印象的なカストルプの名言等を紹介します。
目次
風立ちぬのカストルプとは?
ジブリ映画「風立ちぬ」に登場するカストルプとは、主人公・堀越二郎が宿泊する軽井沢のホテルで出会ったドイツ人であり、里見菜穂子との交際の立ち合い人を務めた人物です。以下では、「風立ちぬ」のカストルプのプロフィールをはじめ、カストルプのスパイ説やタバコ・セリフに隠された意味、カストルプの声優やモデル、性格、「忘れる…」で始まる名言などをネタバレ紹介します。
風立ちぬの作品情報
2013年に公開された映画「風立ちぬ」は、宮崎駿監督によるスタジオジブリの長編アニメーション作品です。タイトルとなった「風立ちぬ」とは、原発が爆発した後に起きる木々を揺らすような恐ろしい風を意味し、強く生きなければならないという、宮崎監督のメッセージが込められています。
「風立ちぬ」は、ジブリ映画初の試みとなる、実在の人物を主人公に起用したことや、史実をベースに展開される大人向けの作風は、従来のジブリらしからぬ作品として話題を呼びました。また、「風立ちぬ」は、数多くのジブリ作品を手がけてきた宮崎駿監督の最後の長編アニメーション映画と言われましたが、2017年に製作発表された「君たちはどう生きるか」にて、宮崎監督の長編映画への製作復帰が示唆されました。
風立ちぬの概要
主人公・堀越二郎の航空技師としての半生や、運命の女性との出会いと別れを描いた「風立ちぬ」は、実在の人物・堀越二郎と堀辰雄をモデルに描かれました。主人公の名前にも起用された堀越二郎は、日本を代表する航空技術者で、旧日本海軍の戦闘機・零戦の開発者として知られています。
もう1人のモデル・堀辰雄は、昭和初期に活躍した小説家で、映画「風立ちぬ」の物語は、彼の作品から着想を得たと言われています。また、堀越二郎の運命の女性・里見菜穂子は、堀辰雄の婚約者をモデルとしており、「風立ちぬ」後半のエピソードは、堀辰雄の実体験を基に執筆された小説「風立ちぬ」がベースとなっています。
風立ちぬのあらすじ
出典: https://note.com
飛行機に憧れる少年・堀越二郎は、カプローニ伯爵との夢での対話をきっかけに、航空技術者としての道を志します。東京帝国大学で航空工学を学んだ二郎は三菱に入社、期待の英才として新たな航空機の開発を任されます。一方、私生活では運命の女性・里見菜穂子との出会いと再会を果たし、結核を患った菜穂子との束の間の新婚生活を経て、二郎は後に「零戦」と呼ばれる新たな航空機を開発し、戦争の荒波に翻弄されます。
カストルプのプロフィール
「風立ちぬ」軽井沢編にて登場した、堀越二郎と里見菜穂子の交際の立会人となったドイツ人です。劇中では、二郎や菜穂子の父親とタバコを嗜んだり、ホテルに備わっていたピアノの弾き語りを披露するなど、社交的な一面をのぞかせれています。一方で、母国で勢力を拡大するナチス・ドイツの台頭をよく思っておらず、何者かに追われている節を匂わせるセリフから、謎めいた雰囲気を漂わせています。
風立ちぬのカストルプの正体を考察!タバコやセリフの意味は?
「風立ちぬ」では、ナチス・ドイツの思想に染まっていない外国人として描かれたカストルプでしたが、作画の不自然さや「忘れる…」等のセリフから、その正体は、日本軍の動向を探るスパイではないかと考えられています。以下では、「風立ちぬ」の軽井沢編で登場したドイツ人・カストルプの正体や、スパイと言われる理由、タバコやセリフに隠された意味を考察しました。
考察①正体はスパイ?タバコやセリフの意味は?
ナチス・ドイツを良く思わない少数派のドイツ人として描かれたカストルプでしたが、一部では、その正体はスパイではないかと思われるシーンがあります。愛煙家であるカストルプは、ドイツ製のタバコを吸っていましたが、二郎との対面シーンではドイツ製のタバコを切らしてしまい、二郎から日本製のタバコを譲られました。
また、カストルプの喫煙シーンには、後日、二郎と菜穂子の父親と吸うシーンも描かれましたが、そこにあったタバコのパッケージは、カストルプのドイツ製のタバコのパッケージと似ています。この場面は、カストルプのドイツ製のタバコを切らしたセリフと矛盾する一方、3人が吸ったタバコは、ドイツからの補給品とも考えられ、そのような考察からカストルプのスパイ説が浮上しました。
また、カストルプが日本に来た目的も、表向きは母国でのナチス・ドイツの圧力から逃れるためと説明しつつも、真の目的は、スパイ活動を通じて、日本の近況を母国・ドイツに報告するためとも考えられます。「風立ちぬ」軽井沢編以降のカストルプの同行は一切描かれていないため、真相は不明となりましたが、謎めいた存在感が、カストルプ=スパイ説を濃厚にしているでしょう。
考察②カストルプとカプローニが抱く狂気
「風立ちぬ」に登場する2人の外国人・カストルプとカプロー二にはある共通点があり、二郎に語りかける時に瞳の虹彩が放射状に描かれる特徴があります。この演出は、外国人に多く見られる碧眼を表現したものと推測されます。一方、2人のセリフには「忘れる」という意味深な言葉も使われており、二郎のその後の人生を見れば、「忘れる」にはカストルプとカプローニが抱く狂気が潜んでいるでしょう。
二郎が飛行機に憧れを抱くきっかけとなったカプローニについて、宮崎駿監督は、「二郎のメフィストフェレス」と評しています。メフィストフェレスとは、ドイツ人作家・ゲーテの「ファウスト」に登場する悪魔で、知識欲にかられたファウスト博士に、メフィストフェレスは悪魔のささやきで博士を誘惑します。
これらを「風立ちぬ」に当てはめると、カプローニは「日本や戦争のことなんか忘れて、美しい飛行機をつくることだけを考えろ」と、カストルプは「恋愛によって世界から目をそらせ」と、二郎に甘い誘惑を与えます。二郎にもたらした、カプロー二とカストルプという悪魔のささやきは、やがて日本を敗戦という破滅の道に追い込み、二郎のその後の人生にも暗い影を落としました。
考察③これまでのジブリ作品との違い
「風立ちぬ」の終盤は、自身が手掛けた飛行機により、多くの命が失われてしまったことに罪悪感を抱く二郎と、設計技師としての彼の人生を肯定するカプローニとの対話で締めくくられました。表面上は、感動的なラストでしたが、このシーンは過去のジブリ作品ではありえない結末となっています。
過去のジブリ作品では、悪いことをした者には相応の罰が下され、中には命を奪われる悪役もいました。しかし、「風立ちぬ」では、現実から目を背けさせ、二郎に飛行機作りに打ち込むように誘導した、カプローニやカストルには、何かしらの断罪やしっぺ返しは下されることはありませんでした。このように、従来のジブリ作品にはない新たな展開も、「風立ちぬ」が大人向けの作風と言われる要因となったでしょう。
風立ちぬのカストルプの声優とモデル
堀越二郎のその後の運命を変えるきっかけをもたらしたカストルプにはモデルがおり、スタジオジブリや宮崎駿監督と関係の深いことから、カストルプの声優にも起用され話題を呼びました。以下では、「風立ちぬ」のカストルプの声優や造形・名前のモデルや、カストルプのスパイ説のモデルと言われる、実在のスパイについて紹介します。
カストルプの声優はスティーブン・アルパート
カストルプの声優・スティーブン・アルパートさんは、元スタジオジブリ海外事業部の取締役部長だった男性で、「風立ちぬ」のカストルプのモデルにもなりました。スタジオジブリとは、ウォルトディズニーカンパニーに勤務していた頃に、ジブリの親会社・徳間書店との間でジブリ作品の海外配給・ビデオ販売の事業提携に携わっていた時期がありました。
その後、スタジオジブリに入社し、海外事業部門に勤務するかたわら、海外へ渡航した宮崎駿監督の同行者としてサポートを担いました。宮崎駿監督の最後の長編アニメーション映画となった「風たちぬ」のカストルプには、監督のアルパートさんへの深い思い入れが込められているでしょう。
カストルプのモデル
「風立ちぬ」のカストルプのモデルについて、キャラデザは声優を務めたスティーブン・アルパートさん、名前のモデルは、ドイツ人作家トーマス・マンの小説「魔の山」の主人公・ハンス・カストルプとされています。また、一部では、カストルプのスパイとしてのモデルとして、リヒャルト・ゾルゲの名も浮上しています。
リヒャルト・ゾルゲは、第二次世界大戦中に実在した旧ソ連のスパイであり、1933年~1941年にかけて、ゾルゲ諜報団を率いて、日本で諜報活動を行なっていました。スパイ活動の目的は、当時敵対国にあった日本・ドイツとの戦争の可能性などを探っていましたが、1942年に日本で身柄を拘束・起訴されました。その後、死刑判決を受けたゾルゲは、1994年11月7日、ロシア革命記念日に刑が執行されました。
風立ちぬのカストルプの性格や名言
「風立ちぬ」の舞台は、第二次世界大戦の開戦やナチス・ドイツの台頭など激動の時代を舞台としています。一方、ナチス・ドイツの思想を快く思わないカストルプは、このままでは日本やドイツは戦争に負けるなど、現実的な考えを持っています。以下では、「風立ちぬ」のカストルプの性格や、「忘れるに…」から始まる、片言の日本語によるカストルプの名言を紹介します。
カストルプの性格
「風立ちぬ」での動向やタバコのパッケージから、ファンの中にはカストルプの正体をスパイだと考察する方もいます。しかし、カストルプの言動に注目すると、カストルプは、母国でのナチス・ドイツの台頭やそれら政党の思想を快く思っていないことや、独裁者による政治が横行し始めたドイツへの忠誠心は低いと推測されます。
カストルプは、世界的に孤立していくドイツや日本の情勢を冷静に分析しており、このままでは両国とも戦争に負けてしまうと、鋭い洞察力や先見の明を発揮しています。一方で、二郎との対話からは、周囲に流されるのではなく、今、この瞬間を大事にすることで、人生を楽しんでいるようにも見えます。
カストルプの名言「忘れるに…」
片言の日本語を理解するカストルプと言えば、「忘れるに…」から始まる以下のセリフが印象的です。日頃から日本や世界情勢に関する情報を収集しているカストルプは、目先の利益にばかり囚われて、過去の過ちを忘れる日本の敗北を予感していました。自分にとって都合の悪いことはすぐに忘れる日本やドイツは、いずれ破裂する、両国の欠点を痛烈に指摘したカストルプの名言です。
「忘れるに、いいところです。チャイナと戦争してる、忘れる。満州国作った、忘れる。国際連盟抜けた、忘れる。世界を敵にする、忘れる。日本破裂する、ドイツも破裂する」
風立ちぬのカストルプに関する感想や評価
「風立ちぬ」では、堀越二郎と里見菜穂子の交際の立ち合い人を務め、二郎のその後の運命を大きく変えたカストルプでしたが、軽井沢編以降の彼の動向は描かれておらず、その正体について多くの考察が飛び交っています。以下では、独特の雰囲気や片言の日本語が印象的であり、その正体がスパイだと噂される、「風立ちぬ」のカストルプに関する感想や評価を紹介します。
感想1:カストルプのスパイ説が濃厚
カストルプは恐らくスパイ。実在のスパイ、ゾルゲがモデルと思われる。国際情勢に詳しく、ドイツの煙草が切れたと言いつつ後日同じ煙草を吸っている事からも支給を受けている事がわかる。彼と接触した事で二郎は特高に追われる #風立ちぬ pic.twitter.com/4zWlfbaNxt
— TAKUMI™ (@takumitoxin) February 20, 2015
「風立ちぬ」では、数少ない登場シーンとなりましたが、「忘れる…」が印象的なセリフや、作画の不自然さから、カストルプの正体について多くの考察が飛び交い、特にカストルプのスパイ説は濃厚とも言われています。軽井沢のホテル以降のカストルプの動向は不明とされていますが、一部では、カストルプとの接触が、二郎が特高に目を付けられるきっかけになったとも推測されています。
感想2:「風立ちぬ」の好きなキャラクター
この人好きなんよね。#風立ちぬ#カストルプ pic.twitter.com/bnB8X9Ewgn
— 出来 良磨(Ryoma Deki) (@LegoRyoura1) April 12, 2019
戦時中の日本に滞在する外国人という設定や、タバコのパッケージ等からその正体がスパイとも噂されるカストルプですが、戦時色の濃い世情に流されず、今という瞬間を大事にする生き方は、多くのファンの注目を集めました。また、「風立ちぬ」では、軽井沢のホテルに宿泊する外国人キャラクターであり、自分の考えをしっかり持っている点や、余裕のある雰囲気も、カストルプの魅力を引き立てています。
感想3:カストルプの名シーン
カストルプが食べているのはクレソンのサラダです。#風立ちぬ pic.twitter.com/I1J9QnTG9t
— キャッスル (@castle_gtm) April 12, 2019
カストルプと言えば、新聞を片手に、ボウル一杯に盛ったクレソンを食べる姿が目を引き、「風立ちぬ」の名シーンにも数えられました。映画の公開当初は、カストルプの食べるサラダに関する考察も見られましたが、後に公式情報からの発表により、クレソンと判明します。また、新聞を読む場面は、スパイ活動の一環として情報収集を行なっているシーンとも言われており、カストルプ=スパイ説の根拠として挙げられています。
風立ちぬのカストルプまとめ
「風立ちぬ」のカストルプのプロフィール、その正体がスパイと言われる理由や、タバコ・セリフに隠された意味、カストルプの声優やモデル、性格、「忘れるに…」から始まる名言等を紹介しました。カストルプが日本に滞在した目的は、母国の政治思想から逃れるためと考えられる一方、スパイ活動のために訪れたとも考察され、二郎と別れたその後の消息が不明な点も、カストルプのスパイ説を強めているでしょう。