風立ちぬの声優キャスト一覧！庵野秀明が堀越二郎を担当した理由は？

宮崎駿監督作品『風立ちぬ』の声優キャスト一覧を紹介していきます。スタジオジブリは声優の仕事に慣れていないタレントを起用することで知られています。しかし、『風立ちぬ』では演技の経験を持たない、映画監督の庵野秀明が主人公の声優に起用されました。この意外なキャスティングは大きな話題となりました。この記事では声優キャスト一覧を紹介すると共に、なぜ庵野秀明監督が起用されたのかも紹介しています。

『風立ちぬ』について簡単に概要を説明しておきます。『風立ちぬ』は1986年のアニメ『天空の城ラピュタ』を始めとし、国民的人気を集めるアニメを制作してきたスタジオジブリ制作の映画です。監督は日本を代表するアニメ監督である宮崎駿が務めました。『風立ちぬ』多くの人から期待をされた新作アニメ映画ですが、その内容は、以前のスタジオジブリ作品とは大きく違うと言われています。

『風立ちぬ』は2013年にスタジオジブリが制作した長編アニメーション映画です。スタジオジブリ制作の長編アニメーション映画としては18作目にあたり、初めて実在の人物を主人公にしています。『風立ちぬ』の主人公は零戦の設計者として有名な堀越二郎がモデルです。ただし、物語はオリジナルの内容になっているため伝記映画というわけではありません。主人公の脚色については、堀越二郎の遺族の承諾を得ているとのことです。

『風立ちぬ』の監督は宮崎駿です。宮崎駿は多くのジブリアニメで監督を務めており、日本を代表するアニメ監督です。アニメについて宮崎駿は「子供が見るもの」という持論を持っており、以前から子供が楽しめるアニメを前提にアニメ制作してきました。『風立ちぬ』は内容が子供向けではないため、映画化を躊躇していたそうですが、プロデユーサーの鈴木敏夫の説得によって映画化を決めています。

『風立ちぬ』の声優キャスト一覧をまとめて紹介します。主人公役に庵野秀明が起用されたことが注目される『風立ちぬ』ですが、出演キャスト一覧を見るとジブリアニメ出演経験者も多く起用されています。ジブリアニメの慣例通り、声優経験の豊富なキャストは起用されていませんが、この一覧ではキャストの代表作や、ジブリアニメとの関わりを中心に紹介していきます。

『風立ちぬ』の主人公・堀越二郎のキャストを務めたのは有名なアニメ監督である庵野秀明です。『風立ちぬ』で起用された時、庵野秀明は声優・役者としては素人でした。庵野秀明は1960年5月22日に山口県で生まれました。幼い頃から絵を描くのが好きだった庵野秀明は高校生の頃には周囲に認められるほど高い画力を有していました。美術部の部長として、文化祭では自主制作した映像作品を披露しています。
 

高校卒業後、浪人を経て、庵野秀明は大阪芸術大学映像計画学科に進学しました。大学では後にアニメ制作をすることになる山賀博之などと知り合います。学生時代にアルバイトとして『超時空要塞マクロス』の制作に参加しました。後に、宮崎駿監督作品である『風の谷のナウシカ』のスタッフ募集を知り、上京して宮崎駿と一緒に仕事をしています。

『風の谷のナウシカ』での庵野秀明の仕事として知られているのが「巨神兵」の登場シーンです。庵野秀明は後に『巨神兵東京に現わる』というスピンオフ作品を自ら監督しています。庵野秀明はアニメーターとしての若手時代に知り合った「宮崎駿のことを師匠と思っている」と発言しています。その後、アニメ制作スタジオ「GAINAX」の立ち上げに携わりました。

「GAINAX」時代の庵野秀明の仕事には『王立宇宙軍 オネアミスの翼』『トップをねらえ!』『ふしぎの海のナディア』そして、熱狂的なファンを多く獲得した『新世紀エヴァンゲリオン』が知られています。また、アニメ作品だけでなく2004年の『キューティーハニー』や、2016年の『シン・ゴジラ』といった実写映画作品も制作しています。

このように庵野秀明はアニメーター・映画監督として多くの話題作を残している一方、演技の経験はありません。アニメ制作者のゲスト出演という例は『風立ちぬ』以外にも多くありますが、主役に演技の素人を起用した宮崎駿のキャスティングは、『風立ちぬ』のキャスト発表時に大きな話題となりました。

『風立ちぬ』のヒロイン・里見菜穂子のキャストを務めたのは瀧本美織です。瀧本美織は1991年10月16日に鳥取県で生まれました。2003年に「MIORI」という芸名でダンス&ボーカルユニット「SweetS」のメンバーとしてデビューしました。2006年に同グループが解散して以降は歌手活動を休止しました。瀧本美織の名で女優デビューを果たしたのは2010年の映画『彼岸島』です。

同じく2010年のNHK連続テレビ小説『てっぱん』にもヒロインとして抜擢され、知名度を大きく上げました。以降、舞台『ブエノスアイレス午前零時』への出演や、「MIORI」名義で参加したガールズバンド「LAGOON」での活動など、テレビや映画の女優以外にも活動の幅を広げています。

声優として参加することになった『風立ちぬ』ですが、瀧本美織は以前にスタジオジブリ制作高畑勲監督作品である『かぐや姫の物語』のオーディションにも参加していました。『かぐや姫の物語』では落選してまいましたが、『風立ちぬ』では高畑勲の推薦もあってヒロインのキャストに選ばれたといいます。瀧本美織は2015年のテレビアニメ『まじっく快斗1412』などにも声優として出演しています。

『風立ちぬ』で堀越二郎の親友であり、ライバルでもある本庄のキャストを務めたのは西島秀俊です。西島秀俊は1971年3月29日に東京都で生まれました。西島秀俊は1992年のテレビドラマ『はぐれ刑事純情派5』で俳優デビューしました。1999年の映画『ニンゲン合格』や2005年の映画『帰郷』での演技が評価されています。2006年のNHK連続テレビ小説『純情きらり』で太宰治役をコミカルに演じて注目されました。

西島秀俊は本格的な役作りを行うことでも知られており、2010年の映画『サヨナライツカ』では老後と青年時代を演じ分けるため役15kgの体重の増減を実行しました。また、2013年の大河ドラマ『八重の桜』では筋肉質な体を披露して話題となりました。近年の活動には2017年の刑事ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』への出演などがあります。

俳優としての活躍が知られる一方、西島秀俊はナレーターやナビゲーターとして多くのドキュメンタリーなどで声の出演をしています。アニメの声優としては2012年の『夜のとばりの物語 』や、2018年の『ペンギン・ハイウェイ』などがあります。

『風立ちぬ』で堀越二郎の上司であり、仲人も務めた黒川のキャストは西村まさ彦（公開時の芸名は西村雅彦）です。西村まさ彦は1960年12月12日に富山県で生まれました。大学卒業後はカメラマンのアシスタントをしていましたが、後に俳優を志して三谷幸喜主宰の東京サンシャインボーイズに参加しました。その後、三谷幸喜が脚本を担当したテレビドラ『『古畑任三郎』の今泉慎太郎役で大きく知名度を上げます。

三谷幸喜脚本の作品に多く出演しており、1995年のテレビドラマ『王様のレストラン』や2016年の大河ドラマ『真田丸』にも出演していました。『真田丸』で演じた室賀正武は、「黙れ！小童！」というセリフが評判となりました。2017年5月まで本名の「西村雅彦」で活動していましたが、俳優活動30周年を機に「西村まさ彦」に芸名を変更しています。

西村まさ彦は声優として1997年のジブリアニメ『もののけ姫』でも甲六役で出演していました。2005年のドリームワークス制作のアニメ映画『シャーク・テイル』などにも吹き替えキャストとして参加しています。また、ドキュメンタリー番組のナレーターを務めることもあります。

『風立ちぬ』で堀越二郎と知り合うドイツ人のカストルプのキャストを務めたのはスティーブン・アルパートです。スティーブン・アルパートは声優や俳優としての経験が一切ありません。2011年までスタジオジブリ海外事業部の取締役部長を務めていました。カストルプの容姿はスティーブン・アルパートをモデルにしていたことから、声優として起用されました。

『風立ちぬ』のヒロイン・里見菜穂子の父親のキャストを務めたのは風間杜夫です。風間杜夫は1949年4月26日に東京都で生まれました。1957年に児童劇団『東童』に入団すると、子役として多くの映画に出演しました。1974年の大河ドラマ『勝海舟』で初めてテレビドラマに出演しています。1982年の映画『蒲田行進曲』で知名度を上げ、以降、数多くのドラマや映画に出演しています。

風間杜夫は声優としての経験もあります。2005年のテレビアニメ『闘牌伝説アカギ 〜闇に舞い降りた天才〜』ではレビュラーキャストである浦部を担当。海外ドラマ『Xファイル』シリーズでは主人公のフォックス・ウィリアム・モルダーの吹き替えキャストを担当しました。

『風立ちぬ』で堀越二郎の母のキャストを務めたのは竹下景子です。竹下景子は1953年9月15日に愛知県で生まれました。学生時代に演劇部に所属していた竹下景子は高校一年の時に『中学生群像』でデビューしています。『男はつらいよ』や『北の国から』といって国民的映像作品に出演し、高い知名度を誇ります。近年の出演作には2018年の映画『一人の息子』などがあります。

竹下景子は『風立ちぬ』以前にもジブリアニメに出演した経験があります。2010年の『借りぐらしのアリエッティ』では貞子役。2011年の『コクリコ坂から』では小松崎花役でした。ジブリ作品以外では2004年のアニメ『アストロボーイ・鉄腕アトム』などに出演しています。

『風立ちぬ』で堀越二郎の妹・堀越加代のキャストを務めたのは志田未来です。志田未来は1993年5月10日に神奈川県で生まれました。1999年に子供劇団に所属し、2000年のテレビドラマ『永遠の1/2』でデビューしています。2005年の『女王の教室』で主要キャストを務めて知名度を上げました。2006年に初主演を務めたドラマ『14才の母』は大きな反響を呼びます。近年は2018年の映画『ラプラスの魔女』などに出演しています。

志田未来は2010年のジブリアニメ『借りぐらしのアリエッティ』で主役のアリエッティ役で声優初挑戦を果たしました。2015年の映画『トゥモローランド』では洋画吹き替えにも挑戦しています。また、いくつかのドキュメンタリー番組で、ナレーションを務めた経験があります。

『風立ちぬ』で堀越二郎の上司である服部のキャストを務めたのは國村隼です。國村隼は1955年11月16日に大阪府で生まれました。1981年に井筒和幸監督の映画『ガキ帝国』でデビューしました。1989年にはリドリー・スコット監督の『ブラック・レイン』に出演しています。2016年の庵野秀明監督映画『シン・ゴジラ』では財前正夫統合幕僚長役で出演しました。

俳優として豊富なキャリアを持つ國村隼ですが、アニメの声優や洋画の吹き替えで目立った活動はありません。ただし、ラジオドラマやナレーションといった声の仕事は豊富にこなしています。

『風立ちぬ』で黒川の夫人のキャストを務めたのは大竹しのぶです。大竹しのぶは1957年7月17日に東京都で生まれました。1973年のテレビドラマ『ボクは女学生』の一般公募に応募し、女優デビューします。1999年の映画『鉄道員 ぽっぽや』や、蜷川幸雄演出の舞台での活動を代表作とし、大竹しのぶの演技力は高く評価されています。2011年には紫綬褒章を受賞しました。

大竹しのぶは2010年のジブリアニメ『借りぐらしのアリエッティ』にもホミリーのキャストで出演しています。また、『借りぐらしのアリエッティ』の監督であった米林宏昌による2017年の新作アニメ『メアリと魔女の花』にもシャーロットのキャストとして出演していました。

『風立ちぬ』で堀越二郎と同じ志を持つカプローニのキャストを務めたのは野村萬斎です。野村萬斎は1966年4月5日に東京都で生まれました。狂言方和泉流の能楽師の家に生まれた野村萬斎は、1970年に初舞台を踏んでいます。2001年の映画『陰陽師』の主役・安倍晴明のキャストを務めたことで広く知られるようになりました。庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』ではゴジラのモーションアクターを務めて話題となりました。

野村萬斎の『風立ちぬ』以外の声優としての経験には、2015年の3DCGアニメ『GAMBA ガンバと仲間たち』のノロイ役があります。『GAMBA ガンバと仲間たち』には声優としての経験が多いキャストが集まる中、野村萬斎は宿敵ノロイを演じたため注目されました。

『風立ちぬ』での庵野秀明の起用は大きな反響を呼びました。しかし、庵野秀明の演技については賛否両論です。声優経験の無い庵野秀明がなぜ起用されたのか、多くの人に疑問に思われています。

もともとアニメーターである庵野秀明は『風立ちぬ』で飛行機を描く手伝いがしたいと考えていました。しかし、ジブリ側からは声優としての出演を打診され、庵野秀明も予想外の依頼に戸惑ったそうです。一端オーディションを受けて確認をするという話になりましたが、オーディション後に宮崎駿が再度出演を依頼して庵野秀明は承諾したそうです。

庵野秀明と宮崎駿のことを師匠だっと言っています。そして、宮崎駿も『風の谷のナウシカ』の頃から庵野秀明の技量を買って可愛がっていました。しかし、庵野秀明が監督し、絶大な人気を得ることになった『新世紀エヴァンゲリオン』について、宮崎駿は酷評しています。そのため、二人は不仲であるという説もありました。

その一方、宮崎駿は庵野秀明を心配していたと言われます。宮崎駿が『もののけ姫』を制作した頃、庵野秀明はエヴァンゲリオンの劇場版の制作に苦しんでいました。精神的にも追い詰められていた庵野秀明に電話した宮崎駿は助言を与えていました。ふたりは互いに実力を認める日本アニメ界を代表する才能だとアニメファンからは捉えられています。

以上のような新しいものを作るための苦しみや、良い物を作ろうとするクリエイターの本能は、『風立ちぬ』の堀越二郎が飛行機に向ける情熱と同じだと言われています。堀越二郎は宮崎駿でもあり、アニメーターとしての宮崎駿のことを一番理解できる才能を持った人物こそが庵野秀明だと考えれています。『風立ちぬ』で素人の庵野秀明が起用されたのは以上のような理由があると考える人もいました。

『風立ちぬ』の声優、とりわけ主人公の堀越二郎のキャストを務めた庵野秀明の演技についてはさまざまな意見が寄せられています。庵野秀明はプロの声優や役者ではないため、演技の訓練はしていません。また、本人も「素人が役作りをしても無駄」と考えて普段のまま収録に望んだと発言しています。宮崎駿は笑顔で収録の様子を見ていたとのことですが、映画を見た人の感想には厳しい意見も多くありました。

『風立ちぬ』の堀越二郎の声優を庵野秀明が務めたことについて、好評な声の一覧の中には以下のようなものがあります。「始めは気になったけど、物語が進むうちに気にならなくなった」という感想は少なくありません。

庵野秀明の朴訥とした話し方が堀越二郎のキャラクターに合っているという意見もあります。また、アニメ監督としての庵野秀明のイメージと、飛行機に人生を捧げた堀越二郎のイメージが合っているとも評価されています。

『風立ちぬ』の堀越二郎の声優を庵野秀明が務めたことについて、不評の声一覧の中には以下のようなものがあります。「棒読み過ぎて耐えられない」という感想が多くあります。

以前からスタジオジブリのアニメにはタレントが起用されていましたが、『風立ちぬ』で起用された庵野秀明の演技については「許しがたい」と痛烈に批判する意見もありました。

『風立ちぬ』の声優キャスト一覧をまとめました。『風立ちぬ』には大胆なキャストが起用されたことで、賛否両論の感想が寄せられることになりました。感想一覧を見ていると、「どうしても庵野秀明の声が気になる」という声もあれば「注目すべきは声優の演技力ではない」という意見もありました。『風立ちぬ』を見た感想の多くは庵野秀明の演技を無視できないようです。

『風立ちぬ』は「戦争が嫌いだけど飛行機は好き」という堀越二郎の中にある矛盾への解答が描かれた作品とも言われます。このテーマは「アニメは大人が見るものじゃないと言いながらも、多くのヒット作を作り続ける宮崎駿」や、「自身が制作した、エヴァンゲリオンのファンを拒絶する発言をした庵野秀明」の姿と重なると言われます。

『風立ちぬ』で庵野秀明が起用されたのは単なる話題作りや、アニメ制作の仲間だからというわけではない、と考える人が多くいます。宮崎駿アニメ一覧の中で『風立ちぬ』が一番好きという人もいます。宮崎駿や庵野秀明の過去の作品一覧や発言一覧を知ることで、『風立ちぬ』で庵野秀明が起用された理由も納得できるかもしれません。興味が沸いた方はぜひ『風立ちぬ』をじっくりとご覧ください。