【なるたる】古賀のり夫の最期は悲惨でかわいそう？性別や声優は？

『なるたる』に登場するキャラクターは多くのマイノリティや葛藤を抱える少年少女などが登場しますが、最期まで性別がわからないほどミステリアスで魅力的なキャラクターが存在します。

それが今回の『なるたる』記事の主人公「古賀のり夫」です。竜の子を使い、主人公の玉依シイナを助けかわいそうな最期を迎える「古賀のり夫」は『なるたる』がアニメ化された際に声優が男性女性どっちがつくのか注目を集めたキャラクターでもあります。今回はそんな『なるたる』に登場する「古賀のり夫」の「可愛い&かわいそう」と称される魅力についてご紹介していきましょう！

まずは「古賀のり夫」が登場する作品『なるたる』について概要やあらすじ、主な登場人物を確認していきましょう。『なるたる』をまだ未読の方は必見の項目です！

『なるたる』は『ぼくらの』などでも知られる漫画家「鬼頭莫宏」先生の作品です。『ぼくらの』を執筆する前の作品が1998年5月号から連載された『なるたる』で、ご本人が精神的な疾患を抱えている時期の作品でもあります。『なるたる』は講談社の「月刊アフタヌーン」で連載されており、「古賀のり夫」や「貝塚ひろ子」など最期まで報われないキャラクターも多く登場したため『なるたる』は「鬱なSF作品」としてコアな人気があります。

そのコアな人気が博して連載開始から5年後の2003年に『なるたる』はアニメ化企画がなされ、アニメ専門チャンネル「キッズステーション」にて同名の『なるたる』というタイトルで放映されました。

『なるたる』の世界観は現代日本に近しい世界ですが、人知れず「竜」が息づいている世界となっています。そんななかで、小学校6年生になった「玉依シイナ」は毎年恒例の父方の実家である島へ夏休みに遊びにいき、その海の底で不思議な生物「ホシ丸」と出会います。ホシ丸と心を通わせるジュブナイルな作品になるかと思いきや、その和やかな雰囲気は「乙姫」と呼ばれる謎の人物と飛来する「竜」によって少しづつ崩壊していくのでした。

『なるたる』は「竜」の正体や、「竜の子」と心を通わせる少年少女たちの存在、そしてその少年少女たちの生きる矛盾や理不尽に満ちた社会をシニカルに描きつつも、「玉依シイナ」は「佐倉明」や「貝塚ひろ子」たち友人と奇妙な事件に巻き込まれながらやがて「鶴丸丈夫」と「古賀のり夫」というミステリアスな2人のもとで「竜の子」の秘密を知ることになるのです。

『なるたる』の魅力は「可愛い&かわいそう」と評されるような独特の琴線への触れ方をする丁寧な描写にあるとファンは考えています。それは一見唐突に見えるかわいそうな描写が丁寧な伏線によって「そうなってしまった」意味をもつからであり、最終回なども救いがない鬱展開として賛否両論となっていますが、薄暗くそして暗い希望に満ちた作品としても国内外で人気があるのです。

『なるたる』はマイノリティや少年少女など社会的に立場の弱い人々にフォーカスした話の構成が綿々と組まれており、オムニバス形式に近い構成ながらどれも残酷ながら心に残るエピソードが連なっているのも特徴です。また、『なるたる』の主人公「玉依シイナ」が小学校を卒業するまでの漫画でいう7巻の第34話「春」までがアニメ化されており映像化されることでより一等鬱な雰囲気が醸し出されているとも言われています。

ここでは「古賀のり夫」の紹介の前に「古賀のり夫」と直接的あるいは間接的に関わっていくことになる『なるたる』の主要キャラクターをご紹介しましょう！

こちらの少女が『なるたる』の主人公「玉依シイナ」（声優：真田アサミ）です。彼女の視点で基本的には最終話まで『なるたる』の物語は展開し、本人は無自覚ながら『なるたる』のタイトルの所以や世界観の謎を解き明かす鍵になってきます。横に座っているヒトデのような生物が「ホシ丸」（声優：雪野五月）で、「竜の子」という不思議な生物としてシイナと行動を共にすることになります。

こちらの少女はシイナの親友でありクラスメイトでもある「貝塚ひろ子」（声優：野川さくら）です。頭が良く明るい子でしたが父親の受験に対する凝り固まった思想から抑圧され、やがてクラスメイトとの間に入った亀裂から悲劇に巻き込まれていく少女でもあります。彼女にまつわるエピソードは『なるたる』劇中1、2を争うかわいそうなエピソードとしてファンの心を抉っています。

こちらの少女は「佐倉明」（声優：能登麻美子）というシイナがホシ丸に出会ったことで縁が出来、友達になった竜の子のもうひとりのリンク者です。「エン・ソフ」と呼ばれる竜の子とリンクしており、屈折とした感情を持ちながらシイナと触れることで外の世界へと歩き出していきます。

こちらの短髪の青年が「鶴丸丈夫」（声優：宮下栄治）です。便利屋のような職業を生業にする青年で同時に子どもを残すことに生きる意味を持つなど独特な執着をし様々な女性と関係を持っています。古賀のり夫とはほぼ常に行動を共にしており、古賀のり夫は自身を辛い境遇から連れ出してくれた鶴丸に対して恋心に近い感情をもっています。

古賀のり夫は『なるたる』に登場する中学２年生の少年であり、実の家族とは家出で決別後、竜の子に似た模型を制作して個展を開くなどしつつ生計を立てています。古賀のり夫は自身を受け入れてくれた鶴丸と共に行動しており飾らない言動を取りながらも最期まで鶴丸に尽くそうとするなど誠実な人物です。古賀のり夫のその容姿は女の子のような可愛いものであり、ファンも登場当初は「女性なのでは？」と困惑するほどでした。

そんな古賀のり夫もまた「竜の子」とのリンク者でもあり、彼の願望や内面を写し取るように「竜の子」はのり夫の持ち得なかった「子を産む機能」を皮肉るような「ヴァギナデンタータ」という名を冠しています。

古賀のり夫のリンクしている竜の子は「ヴァギナデンタータ」という名前をしています。かなり大型の竜の子で、鶴丸には「オグル」（フランス語の「鬼」）と呼ばれていました。その容姿は胴が薄く手足は長く布のようになっておりまるでヴェールのようにも見えます。アニメ版『なるたる』や新装版『なるたる』では体色は黄色で描かれていました。

古賀のり夫の死とともにまるで意思を継ぐように竜化し、その薄かった胴は牙を持って花開いて赤子を戴いた姿に変化しました。しかし、竜の子とリンクした古賀のり夫がそのまま息絶えたことで「ヴァギナデンタータ」もまた消滅してしまいます。

「ヴァギナデンタータ」とはラテン語で「歯の生えた膣」という意味であり、「去勢不安」や「女性との不純な性行を諌める」要素として語られる誘惑した男を殺したり去勢してしまう神話体系上の女性のことを指します。有名な例だとハワイ神話の夜と死の女神「ヒネ・ヌイ・テ・ポ」や中国の「羅刹女」などが挙げられます。

古賀のり夫の半生もまた「女性のような可愛い身なり」と「男性であるがゆえの子どもを産む女性にはなれないという事実」に葛藤し苦しめられるものであったためこういった名がついているのではないかと考察されます。その上で、鶴丸への愛情を自覚しつつ届かないと知っても貫き通した末の最期にヴァギナデンタータが子を抱いた姿で竜化する展開は性別を超越したことの象徴ともいえるのかもしれません。

古賀のり夫は漫画版10巻50話の「蝕む光」で鶴丸が関係を持った女性の依頼によってやってきたヤクザのひとり「豚食い」に襲われナイフでその腹を裂かれながら殺されてしまうという凄惨な最期を迎えます。「ヴァギナデンタータ」を呼び戻して対処すれば自分は助かるという場面において、同じく窮地に立たされたシイナと鶴丸を救いたいという決意と願望は並大抵のものではなく、残酷なシーンながら感動すら呼び起こすものになっていました。

ここにきて、「ヴァギナデンタータ」を意味どおりの陵辱者へのカウンターとして使うのではなく、愛する者との子どもを水面下に宿しながら誰からの手も退けるという独占欲に近い本音が具現化されているのは普段クールで落ち着いた古賀のり夫だからこそ衝撃と感動を与えたのです。

そして劇中でシイナすらも喪い失意の鶴丸が見たのは首を切断され竜の模型に継ぎ接ぎに飾られた古賀のり夫の姿でした。その凄惨な最期はかわいそうと称されるとともに、古賀のり夫が性別のコンプレックスを超えて鶴丸への愛情を貫き通し、欲しくても手に入れることの出来なかった「子ども」が竜として生まれるという竜と願望と記憶の関連性と世界観を象徴するような最期としてファンの心を鷲掴みにすることになるのです。

言動や可愛い見た目が中性的で性別がわかりづらい古賀のり夫ですが、その性別は「男」です。鶴丸が「未来（子ども）を残せる強い女性」を求めることを知った上で鶴丸に対して愛情を持っており、古賀のり夫本人もそれが水面下のコンプレックスとして存在しています。

同性愛者であるというマイノリティを抱えながらも、同じく一見すると歪んだ生命倫理と死生観をもつ鶴丸を心の底では愛し「子どもが欲しい」と願うのは皮肉な描写でありながら心に刺さる『なるたる』きってのエピソードとして描かれているのです。

コミックス版『なるたる』からアニメ版『なるたる』になるとさらに古賀のり夫の女性っぽさが増して可愛いとファンの間でも話題です。その上で、ファンの間では声優の性別もまた気になるところだったようです。

次の章で解説しますが、アニメ版『なるたる』では優しい声色が特徴の赤石広樹さんが古賀のり夫の声優を担当しており、ファンの間では「可愛い」との評価につながりました。

アニメ『なるたる』で「古賀のり夫」役を担当した赤石広樹さんは現在フリーの声優さんです。もともとは声優事務所「賢プロダクション」に所属していました。

『なるたる』で「古賀のり夫」役以外ですと、『ドキドキ♡伝説 魔法陣グルグル』（2000）の「サーチアイ」役や『IZUMO -猛き剣の閃記-』（2015）の「ミナカタ」などの役を赤石広樹さんは担当しています。

この章では最後に『なるたる』の古賀のり夫についての感想をSNSからご紹介しましょう！一部『なるたる』のネタバレ画像が含まれますので未見の方はご注意ください。

『なるたる』における古賀のり夫の最期については賛否両論がありますが、テーマ性として非常に大きい意味を持っているが故に鬱だという感想はいくつも見られています。マイノリティであることを逆手に取られた最期はかわいそうであると同時に皮肉が効いていて『なるたる』ファンの心を掴んで離さない演出になっているのです。

マイノリティや生きることの意味も描かれている『なるたる』において古賀のり夫は象徴的なキャラクターであったという感想もあります。だからこそ最期がかわいそうで、そしてそんな生き方が可愛いのだというのは皮肉が効いています。アニメ版の『なるたる』のオープニングタッチからの落差もまたファンに驚きをあたえ魅了するポイントになっているようです。

古賀のり夫の最期はその方法がかわいそうで、同じく『なるたる』を象徴するエピソードを展開する貝塚ひろ子はその境遇がかわいそうという緻密な書き分けがあったようです。ファンからもこの2人のキャラクターの最期は衝撃的でかわいそうだという声が多々あがります。

その一方で『なるたる』の古賀のり夫の最期はかわいそうな鬱シーンではなく感動的な名シーンであったという感想も多く散見されています。特に古賀のり夫の竜の子が竜化する演出はとても印象的にファンの心に残っているのです。

古賀のり夫はアニメ版『なるたる』で声優が男性の赤石広樹さんでしたが、ファンの間では男性と女性どっちの声優さんを起用するのかは興味があったようです。また、二期があれば古賀のり夫の声優は女性の方がいいという感想があがるなどファンの間では古賀のり夫の脳内の声優イメージは中性的であるようです。

『なるたる』に登場するミステリアスなキャラクター「古賀のり夫」の紹介はいかがでしたか？アニメの担当声優さんや古賀のり夫の最期に隠された真意などを知った上でより一層「かわいそう&可愛い」の同居する『なるたる』ワールドを味わってみると面白いかもしれません。