【キングダム】郭開は李牧を排除し趙を滅亡させた？史実から人物像を考察

漫画キングダムに登場するふくよかな体と非常に怖い悪人顔をした趙の大臣郭開。この郭開という人物は史実で実在した人物であり、あの漫画キングダムで趙の三大天の1人で知られる李牧を追放し、廉頗すらも排除して趙を滅亡させる原因を作った佞臣として語り継がれています。本記事ではそんな佞臣郭開の史実にスポットを当て、その人物像をご紹介していきます。ではまず初めに郭開が登場する漫画キングダムについてご紹介します。

郭開が登場するキングダムとは日本の漫画家である原泰久が手掛ける日本の漫画作品です。漫画キングダムは漫画雑誌「週刊ヤングジャン」に2006年から2019年10月現在にかけて連載中の歴史作品であり、合計55巻もの単行本が発売されています。そんな漫画キングダムはこれまでアニメ化やゲーム化、実写映画化など多数の派生作品が制作されており、累計発行部数3800万部を超える大ヒットを記録しています。

キングダムは中国の歴史で実在した時代の1つ、春秋戦国時代の末期を舞台にしており、天下の大将軍を目指す信と後の始皇帝である嬴政の2人が主人公となっています。信は秦のトップである嬴政に仕え、天下の大将軍になるという夢を叶えるために数々の戦争へ参陣します。その中で信は多数の仲間と出会い、日々成長していきます。本作は少年漫画の王道ともいえる表現が多々描かれており、老若男女問わず多くの支持を集めています。

漫画キングダムに登場する本記事の主役郭開は趙国の筆頭大臣を務めている政治家であり、漫画キングダムの第34巻で初登場を飾りました。郭開は権力を掴むためなら仲間でも容赦なく排除してしまう非常に腹黒い性格をした人物であり、漫画キングダムの作中で趙の三大天の1人李牧を排除して趙国の実権を握りました。また漫画キングダムと同じく郭開は史実でも腹黒い性格をした人物であり、趙を滅ぼす原因を作ってしまいます。

郭開は史実で趙の名将である廉頗を趙国から排除し、知勇兼備の名将である李牧も亡き者にしました。そして優れた政治家や将軍を排除した郭開は王から篤い信頼を得ます。しかし郭開自身ただ欲にまみれた俗物であり、趙国はすぐに滅亡してしまいます。これにより郭開は2019年10月現在まで趙国を滅ぼした佞臣として伝えられています。

漫画キングダムの作中において趙の三大天の筆頭を務める李牧は史実で趙国の大将軍を務めていた人物であり、秦に奪われた韓と魏の領土を奪還したり、秦の将軍である桓キを破るなどの功績を挙げています。秦国は紀元前229年に趙国を大軍を率いて攻めるのですが、そんな李牧に大苦戦を強いられます。そこで秦国は郭開に賄賂を贈って懐柔し、李牧を亡き者にしようと画策します。

お金と権力が大好きな郭開はすぐに趙国の王である幽繆王に李牧が裏切ろうとしていると告げ口をし、李牧を排除しようとします。幽繆王はあまり優秀な王ではなく、郭開の讒言に従って李牧を捕まえて謀殺してしまいます。秦を苦戦させた趙の名将である李牧は最終的にお金で釣られた郭開によって殺されることになったのです。これを見ると、郭開がいかに愚かで欲深い人物であったことが分かります。

趙を滅亡させた原因である郭開ですが、実際趙国の屈指の名将李牧をどう思っていたのでしょうか。残念ながら史実で郭開が李牧のことをどう思っていたかは記録に残っていません。実際郭開が李牧を死に追いやったのは、秦国から賄賂を貰ったからであり、特に恨みがあった訳ではありません。しかし郭開の腹黒い性格を考えると、李牧のことを特に何も思ってはいなかったとはいえないでしょう。

上述でもご紹介した通り郭開は非常に権力やお金が大好物な欲深くて腹黒い人物であり、李牧や廉頗などの歴史的名将とは正反対に位置する存在です。また郭開より李牧や廉頗の方が趙国で重用されていました。趙国の実権を握りたい郭開にとって、李牧や廉頗といった存在は邪魔でしかないはずです。なので史実ではお金で殺害したことになっているものの、郭開は裏で李牧のことを忌み嫌っていたのではないでしょうか。

趙の国王である幽繆王は李牧がいつかその高い名声で軍隊を掌握して裏切るのではないかといった気持ちを抱いていたと李牧の史実に記載されています。なので幽繆王はすぐに郭開の讒言を信じてしまって李牧を謀殺してしまいます。その後幽繆王は郭開を信任するようになっていきます。どうやら幽繆王は甘言に惑わされやすい性格だったらしく、自分自身を常に絶賛する郭開を良く思って重用するようになったといわれています。

結局幽繆王が郭開を信任したことで趙の滅亡を加速させてしまうことになります。郭開の仕業で李牧と廉頗を失った趙国には優れた名将がいなくなってしまい、秦軍は侵攻して瞬く間に邯鄲を攻略してしまいます。その中で郭開は行方不明となってしまい、幽繆王は流刑の身となってしまいました。これを見ると分かる通り、趙が滅亡したのは幽繆王が李牧や廉頗ではなく、佞臣である郭開を信任したことが原因となっています。

廉頗は史実において、趙国の悼襄王に遠ざけられたことが原因で魏に亡命してしまいます。その後趙国の幽繆王は秦国の強大化を恐れて廉頗の帰参を許すことにします。しかし廉頗を嫌う郭開は使者を買収して嘘の証言をさせ、幽繆王に廉頗の帰参を諦めさせてしまいます。その後廉頗を失った趙国は紀元前229年に秦軍に責められ、趙の名将李牧は司馬尚将軍と共に秦軍を撃退し続けます。

たった2人の将軍に苦戦を強いられた秦軍は郭開を買収して李牧を殺害させ、身の危険を感じた司馬尚将軍は趙国から逃亡してしまいます。郭開が秦軍と内通して李牧と司馬尚を排除した結果、趙国には誰一人名将と呼べる人材がいなくなってしまいます。その後秦軍は攻撃を開始し、一瞬で趙は滅亡してしまいました。もし郭開がまともな人物で、李牧と廉頗が趙国におれば秦軍は趙国を落とすことはできなかったでしょう。

趙滅亡の原因を作った佞臣郭開は史実において廉頗と対立していたそうであり、その仲は犬猿の仲であったといわれています。廉頗は趙を代表する老練な将軍だったのですが、長平の戦いの後趙の国王となった悼襄王によって将軍職を剥奪されてしまいました。廉頗はこれに不満を覚え、魏に亡命してしまいます。しかし廉頗は亡命した魏で重用されることなく、趙国にいた時と全く変わらない日々を送ることになりました。

一方趙国では秦軍による天下統一に恐怖を抱き、名将廉頗に戻ってきてもらい、秦国と戦って貰おうとします。しかしこの時名将の廉頗は年老いており、趙国の王である悼襄王は不安を抱きます。そこで趙国は廉頗がまだ現役か確かめるために使者を派遣することにします。廉頗はその使者に元気な姿を見せて趙国でもう一度戦う決意をするのですが、対立していた郭開がそこで一計を案じて廉頗を陥れようとします。

廉頗はまだ自分が戦えることを証明するために、使者の前で大量の食事をとって元気であることを伝えました。しかし郭開にとってこれほど面白くない話は無く、郭開は廉頗に送った使者を買収してしまいます。そして買収された使者は趙の悼襄王に廉頗は食事をたくさんとるものの、3回トイレに行ったという嘘の証言を話します。この説には3回失禁したという話もあるのですが、どっちにしろこれは郭開の謀略でした。

悼襄王は郭開に買収された使者の話を信じてしまい、廉頗が使い物にならない老人であると判断します。そして悼襄王は廉頗を趙へ戻すことはありませんでした。郭開の謀略で趙に戻ることを許されなかった廉頗はその後、楚国へ亡命してしまいます。しかし廉頗は楚国でも功績を挙げることが出来ず、寿春でそのまま亡くなってしまいます。もし廉頗が趙に戻っておれば、趙国は秦国に苦しめられることは無かったでしょう。

中国の歴史を描いた「戦国策」には韓倉という郭開そっくりの人物が登場します。どうやらこの韓倉という人物が郭開であると考えられているようです。郭開は廉頗を排除した後、李牧を排除するまで登場しません。しかし韓倉は名前だけ少し歴史に登場します。趙では司空馬という人物が宰相となるのですが、幽繆王に重用されなかったことで趙から逃亡してしまいます。その時司空馬はある興味深い予言を残しているのです。

司空馬は趙を去る時、韓倉を幽繆王が信任して趙が滅びると予言します。そして幽繆王は郭開を信任して廉頗に続き名将李牧すらも失うことになり、趙国は滅びてしまいます。幽繆王が郭開を信任して趙が滅んだことを考えると、司空馬が予言した韓倉という人物は郭開と同一人物であるといえるでしょう。

幽繆王は郭開を信任して趙を滅ぼすのですが、いったいなぜ名将李牧ではなく佞臣である郭開を信任してしまったのでしょうか。上述でご紹介した通り、幽繆王は史実で李牧が権力を持って反逆することに恐怖を抱いていました。実際李牧にはその気が無かったのですが、幽繆王は完全に李牧を信じることが出来ませんでした。この不安の気持ちから幽繆王は李牧ではなく郭開を信任して趙を滅亡させたといわれています。

またそれとは別で幽繆王が甘言に乗りやすい性格だったという説も存在します。これは幽繆王が郭開の甘言に騙されてしまい、自分を褒めたたえる郭開を信任したという考察になっています。さらに幽繆王が諫言を日々嫌っていたことから甘言に免疫がなく、郭開を信じてしまったという説も浮上しています。しかし結局のところ郭開が信任された理由について明らかになっておらず、本当の所は全く不明となっています。

郭開の最期は史実に記載されておらず、李牧を排除してから歴史の表舞台には登場していません。しかし秦国と内通していたことを見ると、郭開は生き延びて秦国で政治家になったのではないかと考察出来ます。それか郭開は趙国の混乱の中で敗死し、無残な最期を遂げたかです。趙国は最後秦国に侵略され、首都である邯鄲が陥落して趙国は滅亡してしまうことになります。

その中で郭開は秦国の兵士か盗賊に殺害されてしまったのではないでしょうか。しかし郭開自身が秦国と内通していたので、そう簡単に死亡しないでしょう。なので最も可能性が高いのが始皇帝に処刑されたという説です。秦の始皇帝にとって郭開は君主を裏切った佞臣です。そんな災いを起こす可能性がある郭開を生かすはずがありません。なので実際は不明なものの、郭開は深い欲望の結果自分の身体すらも滅ぼしたと考えられます。

廉頗は漫画キングダムにおいて元趙国三大天の1人に数えられていた将軍です。漫画キングダムに描かれた廉頗は顔中に傷を付けた豪快な老将であり、正面からでは誰一人として勝てないと評されるほどの強さを秘めています。史実での廉頗も非常に優れた老将であり、長平の戦いに敗れた趙を大軍で攻めた燕を破る功績を残しています。この功績により、廉頗は一時期、臣下の中で最高位の相国に就き、信平君に封じられていました。

紀元前245年、趙国では悼襄王が即位することになり、廉頗が将軍職を罷免させられてしまいます。これに激怒した廉頗は自身の後任である楽乗を攻撃して魏へと亡命してしまいました。秦は名将廉頗を失った隙を突いて趙へと侵攻を開始し、危機に陥った悼襄王は廉頗を趙へ復帰させようとします。しかし郭開が使者を買収して廉頗復帰を妨害し、廉頗は趙国に戻ることが出来なくなってしまいます。

廉頗の復帰が郭開に妨害されたことで名将を完全に失った趙国はどんどんと衰退の一途を辿ることになります。一方廉頗は史実において魏で信任されることが無く、楚国へ亡命することになります。楚国に亡命した廉頗は全く功績を挙げることが出来ず、そのまま楚国の寿春で死去してしまいます。もしかすると廉頗は郭開に復帰を妨害されたことで生きる気力を失くしてしまい、失意のまま死亡したのではないでしょうか。

郭開に関する感想では李牧の処刑は郭開が全て悪いといった感想が寄せられていました。郭開は秦から賄賂を貰い、秦軍相手に善戦していた李牧を排除して殺害されてしまいます。これは趙国の王である幽繆王の指示であるものの、原因を作ったのは他の誰でもない郭開なのです。

郭開に関する感想では漫画キングダムの郭開が史実とぴったりの顔をしているといった感想も寄せられていました。漫画キングダムに登場した郭開は史実を忠実に再現したような悪人面で描かれています。おそらくこの悪人面の通り郭開は今後趙国を滅ぼす恐ろしい行動に出ることでしょう。

郭開に関する感想では漫画キングダムで郭開が李牧の敗因を作るのではといった感想も見受けられました。史実において李牧は郭開の謀略で前線から遠ざけられることになり、処刑されてしまいます。もし漫画キングダムが史実通りに展開されるのであれば、李牧は史実と同じく郭開が原因となって死亡することでしょう。

本記事では漫画キングダムに登場する郭開の史実をまとめてご紹介しました。郭開は廉頗と李牧を裏で排除し、趙国を滅亡させる原因を作った佞臣でした。漫画キングダムは史実に基づいて物語が描かれています。なのでおそらく今後この郭開が趙国で台頭していき、李牧を謀殺して趙国を滅亡させてしまうと考察出来ます。