キングダムの主人公・信は実在した人物？モデルや史実上での最後を調査

大人気漫画『キングダム』はコミックス50巻、3300万部以上売り上げる一大巨編です。500年も争いが続く春秋戦国時代を舞台に、主人公の少年信（しん）が、親友となる政（せい）と出会い、闘いに身を投じる物語です。キングダムは概ね史実に基づいており、政は後に始皇帝となります。信も大将軍へと昇り詰めると推測されていますが、実在するモデルがいるそうです。その人物像は？その最後は？詳しく紹介していきます。

キングダムの舞台は三国志よりも前、戦乱の春秋戦国時代です。主人公・信（しん）は低い身分に生まれながら、天下の大将軍を夢見る少年でした。信は秦の王位継承者である政（せい）と運命的に出会い、秦の中華統一を目指し共に闘うことになります。数多くの苦難を、政やたくさんの仲間たちと乗り越えて行く、信の熱い生き様が、キングダムには描かれています。

信と政の行く手には、味方となる者、ライバルとして競い合う相手、倒さなければならない敵、様々な出会いがあります。『キングダム』は100人を超える個性の強い登場人物も魅力です。武の才能を磨き強さを極める者、兵を動かし戦に勝つ知略に長けた者、政敵を抑え人を導く人徳を持つ者…キングダムは信を始め各々が、それぞれ持てる全ての力を出し合い闘う、濃厚な人間ドラマでもあります。

信（しん）は戦災孤児の少年。下僕という低い身分ながら、天下の大将軍を夢見ていました。それを叶える為幼い頃から剣術の修業をする姿が『キングダム』の冒頭で描かれています。直情型で、一心に目指す場所へ向かって走るひたむきさが信の特徴です。その心根の強さもあり、戦功から平民の身分を得て、一兵卒から「飛信隊」という自分の隊を持つようにまでなった信は、より一層の活躍をキングダムの中で見せてくれます。

後の始皇帝、政（せい）と、数奇な運命に導かれ出会った信。中華統一を果たし戦乱の世を終わらせるという政の志に共感した信は、自らが大将軍となり、政の為の剣となることを決意します。信は礼儀を知らない所があり、秦国の王である政も呼び捨て、敬語も満足に使えません。史実に照らし合わせると有り得ないようなことですが、それ程強い絆で結ばれて行く、『キングダム』はそんな二人の物語でもあります。

豪気な気性と剣の腕前で主人公・信が成り上がって行く『キングダム』。信は闘う相手が格上であっても、それに比例して自分の実力を底上げ出来る天性の才能の持ち主、と描かれています。元々の実力としては上位の武将が「自分が闘っても倒せない相手をも、信は倒す」と評する程です。頭脳を使うことは苦手ですが、こと武力においては、その才能をいかんなく発揮し、次々と武勲を上げて行きます。

戦災孤児であり、下僕という低い身分であった少年信（しん）ですが、その剣の腕で反乱を鎮圧し、平民の身分を得ます。そして兵卒として初陣を迎えますが、周りは寄せ集めのような兵にも関わらず、魏軍副将を倒すのに貢献します。この功により信は百人将へ昇進。王宮へ秦王である政（せい）に暗殺団が迫った際にもこれを退けます。その後趙との攻防では自隊に「飛信隊」という名を貰い、ますます力をつけて行くこととなります。

三百人将となった信の飛信隊。政敵呂不韋（りょふい）と争いつつ秦を治める政の下、苛烈な働きを続けます。魏の四天王を討って大きな戦功を上げた信は、千人将に任ぜられます。千人将として王である政から直々に功を受けるようになり、信と政、二人の繋がりもより強固になって行きます。その後秦を除く国々が合従軍を組んで侵攻して来た際には、信は奮戦実らず敗れましたが、政自らが出陣したこともあり、辛くも勝ちを収めました。

合従軍との闘いの功で信は三千人将へ昇進。その後魏の要所を攻略し、五千人将へと任ぜられます。またついに政が成人し「加冠の儀」を迎える年となりました。この機に乗じて反乱を仕組んだ呂不韋と決着をつけることとなります。政は呂不韋に大器と認めさせ、信の軍の働きもあり完全勝利を収め、秦国内の平定がようやく叶いました。信と政は中華統一への十五年に向けて動き出し、『キングダム』の物語は佳境を迎えています。

歴史書『史記』に、秦の天下統一に貢献した将軍について記述があります。その名を「李信（りしん）」。秦王政（せい）の信頼厚く、燕・楚・代・斉など敵対する国をを滅ぼす闘いに於いて、数々の手柄を上げたという実在の人物です。若い将軍ながら、歴戦の将軍達と遜色無く、時には彼らを凌ぐ程の功を上げた李信。彼こそ『キングダム』の主人公・信のモデルとなった、実在の将軍です。

主人公・信が李信をモデルとしていることは公式に知られています。『キングダム』第1話で主人公・信は「李信」と呼ばれています。公式ガイドブック「キングダム英傑列伝」にも、主人公・信のモデルは李信と明記されています。連載中のキングダムの中でまだ信は「李」という姓がありません。今後政から賜るのでしょうか？もしくは趙国の大きな敵、李牧（りぼく）の名前と関係が？これからの展開に注目です。

史実にもあるように春秋戦国時代は、大王政（せい）が治める秦の他、燕・楚・趙（後に代）・斉・魏・韓・魏など次々と国が興り、国々の間で争いが絶えませんでした。領土を奪い合い、時には和睦を結ぶことを繰り返し、常に不安定な情勢が500年以上も続きました。その間数々の武将や軍師が現れては消えて行きました。まさに『キングダム』の中で主人公・信（しん）が生きる通りの時代です。

『史記』には李信（りしん）の生没年の記述はありません。出身地もわかりません。『キングダム』の主人公・信（しん）のように戦災孤児であったかどうかも不明です。秦王政（せい）とどう出会い、どのような経緯で仕えることになったのでしょうか？そしてどのように将軍へと登り詰めたのでしょうか？キングダムには実在のモデルがいない登場人物もいますし、内容の全てが史実通りとは言えません。

それでも信の活躍は止まらないと言えるでしょう。連載中の『キングダム』で信は五千人の兵を率いる将となっており、大将軍までもあと少しの地位へと出世しています。原作者もインタビューなどで「実在した登場人物は、最後は史実通りに終わらせる」と発言されています。主人公・信の更なる躍進が期待出来るのは、モデルとなった李信が、史実に名を残す功績を残した実在の将軍だからです。

主人公・信（しん）は連載中の『キングダム』で今まさに因縁深き趙国との戦争に挑んでいます。これは史実にも記述があり、実在した大将軍王翦（おうせん）と共に信も出征しています。『史記』では李信を「将軍」と記しており、李信が存分の働きをしたことが覗えます。この闘いで趙軍は敗れ、逃れた王族が代という国を興します。キングダムにおいても、信が趙と闘う中で覚醒し、「将軍」となるに相応しい強さを見せることでしょう。

李信の働きもあり趙が滅ぶと、秦は燕を攻めの標的とします。武力で劣る燕は秦王政（せい）の暗殺計画を立て、刺客を送り込みます。暗殺は未遂に終わり、これを切っ掛けに秦は燕に総攻撃を仕掛けます。秦軍は首都を落とし王と太子を敗走させ、この時李信は燕軍を追撃し、太子を打ち取るという大きな手柄を上げます。『キングダム』作中でも燕の政暗殺未遂は起こるでしょうか？それを阻止しするのは、信に違いありません。

秦王政の下幾多の戦果を上げた李信ですが、史実には大きな敗戦も記録されています。実在した将軍である李信の史実に準拠し、『キングダム』でも主人公・信の失策が描かれるのでしょうか？ファンにとっては読み進めるのが辛いシーンかも知れません。その後再び活躍の機会を得た李信は、燕・代・斉との闘いでは成果を上げることとなります。楚との闘いでの失敗は、将軍李信にとって唯一の汚点と言えるでしょう。

楚を攻める際、どれだけの兵が必要かと秦王政（せい）に問われた李信（りしん）と王翦（おうせん）。経験豊かな王翦が「60万」必要と答えたのに対し、若き李信は「20万」と答えます。政は王翦は耄碌したと捉え、李信の果敢な答えを気に入り、李信に侵攻を命じます。李信は兵を半分ずつ二つの部隊に分け、それぞれが楚の要所で勝利を収めます。大勝利を確信して合流した李信軍ですが、これは楚国軍の策略でした。

合流した李信達の元に、三日三晩李信達を追跡して来た項燕（こうえん）率いる楚国軍が奇襲を掛けて来ます。ここまで勝ち進んで来た李信は項燕の罠に陥っていたのでした。李信軍は二ヵ所の塁壁を破られ7人の武将を失い、20万の兵のほとんどを失うという大敗を喫します。この敗戦で楚の討伐の役は王翦と交代させられ、翌年王翦が60万の兵をもって楚を攻め王を捕虜とし、楚を滅亡させました。

楚攻めの大きな失態にも関わらず、李信はその後も、秦の天下統一に貢献しています。史実では秦王政は、失敗をした部下を容赦無く断罪した記録があります。『キングダム』での人徳者である政とはイメージが合わないかも知れません。李信が政王に咎められなかった理由はわかりません。キングダムの信と政のような強い結び付きがあったのでしょうか？いずれにせよ大敗を経た後も、李信は燕・代・斉を滅ぼす大功を上げています。

信（しん）のモデルとされる李信（りしん）は実在した将軍でしたが、その最後は史実に残されていません。『史記』では秦王政（せい）が中華を統一し、始皇帝となった後、信を始めとする名のある将軍達の記述がほとんど無くなります。秦が北方モンゴルを攻めた際に、李信のよきライバルだった蒙恬（もうてん）の名前があるだけです。何故何も書き残されていないのかはわかっていません。

歴史上初めて中華統一を成し遂げた政。始皇帝となった政は初めての統一国家としての、秦の治世に取り組みます。しかしそれは長くは続きません。始皇帝は在位10年程で病死してしまいます。そしてその僅か4年後、秦という国家も滅亡してしまいます。始皇帝は史実に残る数々の施策を残しましたが、念願であって天下統一を果たしてからの人生は、余りにも短いものでした。

秦が滅亡する場面でも、李信の描写は史実にありません。その時既に存命ではなかったのでしょうか？中華統一の闘いを終えてから14年、その間秦は南方へも出征していますので、その闘いの中で命を落としたのでしょうか？一方で始皇帝の治世、大規模な粛清があったとの説もあります。始皇帝の側近達が歴戦の将軍達を恐れて行ったと言われています。李信もその対象となったのでしょうか？

『史記』には李信（りしん）の結婚相手や子どもについて書かれていません。しかし李信の子孫について書き残している歴史書があります。春秋戦国時代よりずっと後、宋の時代にまとめられたと言われており、他の古い史料の裏付けがありません。唐の皇帝一族のルーツを美化しているのでは…との説もあります。しかし『キングダム』で信（しん）が結婚するのは誰か、子どもは出来るのか、明かされていない中では興味深い史料です。

李信には息子がおり名は「李超（りちょう）」。秦の後再び中華を統一した、漢の大将軍となりました。その後の子孫「李広（りこう）」は、漢の名将で「飛将軍」の異名を持っていました。時は流れ五胡十六国時代に西涼の王となった「李暠（りこう）」。更に唐の初代皇帝「李淵（りえん）」へと続きます。また「詩仙」と称されたあの唐代の詩人「李白（りはく）」も子孫と言われていますが…？真偽は定かではありません。

『キングダム』ではヒロインとも言える女性が二人おり、ファンの間でもどちらかが信と結婚するのではと予想されています。河了貂（かりょうてん）は信と政が出会って間も無おい頃から行動を共にし、兵法に強く飛信隊の軍師として活躍しています。羌瘣（きょうかい）は伝説の刺客一族に育てられ、三千人将に任ぜられる程武に長けています。今の所まだどちらにも決定打がありませんので、今後の展開が注目されています。

信（しん）のモデルとなった李信（りしん）は実在の将軍でした。まさにキングダムの信のように、後の始皇帝の剣となり天下統一に貢献したことが史実に残っています。キングダムで政が始皇帝となる時、きっと傍らには大将軍となった信の姿があることでしょう。一方李信の最後は史実に残っておらず、謎に包まれています。キングダムでは、信の最後に何が待ち受けるのでしょうか？実写映画化も決定したキングダムから目が離せません。