【紅の豚】ポルコは最後人間に戻る？豚になった理由や人間の姿のシーンを考察

1992年に映画が公開され、30年近く経った今でも人気を博しているジブリ作品『紅の豚』。本作の主人公・ポルコが放った名言「飛ばない豚はただの豚だ！」を聞いたことがある方もきっといらっしゃることでしょう。では、ポルコは最後人間に戻るのか、なぜ豚になったのか？ここからは、『紅の豚』のポルコが人間の姿になったシーンや豚になった理由、最後人間に戻るのかを考察していきます。

• 映画タイトル：紅の豚(くれないのぶた)
• 監督：宮崎駿
• 脚本：宮崎駿
• 原作：宮崎駿
• 出演者：森山周一郎、古本新之輔、加藤登紀子、岡村明美、桂三枝、上條恒彦、大塚明夫、関弘子、稲垣雅之、

それではまず、ポルコが登場する『紅の豚』の作品情報からご覧ください。『紅の豚』とは、スタジオジブリで制作された宮崎駿監督作品です。原作は漫画『飛行艇時代』。本作は宮崎駿監督が手掛けた前作の『魔女の宅急便』に続いてアニメ映画の興行成績日本記録を更新した作品で、1992年7月18日に公開されました。

ここでは『紅の豚』のあらすじを簡単にネタバレしていきます。舞台は大戦間期のイタリア。主人公はかつてイタリア航空のエースだったポルコ・ロッソです。彼は今、豚の姿でアドリア海の小島に隠棲していました。アドリア海を飛行艇で荒らす空中海賊退治を請け負う賞金稼ぎとして暮らしていたポルコは、昔馴染みのジーナが営むホテル・アドリアーノを訪れた際に空賊連合が雇った用心棒のカーチスに出会い…

『紅の豚』に登場するポルコ・ロッソは口髭と豚の鼻が特徴的な本作の主人公です。年齢は36歳。ピッコロ一族のバァちゃん達には、豚の姿をしていることから「ポルチェリーノ(ブタちゃん)」と呼ばれています。かつてはイタリア空軍の大尉として活躍しており、退役後は深紅の飛行艇サボイアS.21試作戦闘飛行艇を操って空中海賊を退治していました。

ポルコが人間の姿のシーンは、銃弾を触っているシーンとカーチスとの決闘後にフィオに別れのキスをされたシーンの二つです。銃弾を触っていたシーンは人間の姿に戻る理由がないため意図せず人間に戻ったかもしれませんが、おそらくフィオに別れのキスをされたシーンは人間の姿を見せる意味があったと考えられるため意図的に人間に戻ったと考えられます。

人間に戻ったシーンは二つありましたが、最後に人間の姿になったのか、劇中では明らかにされないまま結末を迎えました。しかし、フィオを賭けたカーチスとの決闘が描かれたラストシーンにて、ポルコが人間に戻ったのではないかと指摘されています。では、ポルコは最後に人間に戻ったのか？ということで、制作陣の考えを紹介していきます。

『紅の豚』に登場するジーナ役を演じた加藤登紀子さんは、ジーナの元を離れるシーンにてポルコが人間に戻ったと考えているようです。インタビューを受けた加藤登紀子さんは、『紅の豚』に寄せられたアンケート集計を聞いて「人間に戻ってしまったので、ジーナの前に帰ってこれなかったんじゃないですか？」と答えています。では、なぜ人間に戻ると帰ってこれなくなるのか？それは永遠の別れを意味しているからです。

ポルコとジーナが互いに男女の愛情を越えた戦友のような感情を持っていたとすれば、ジーナはポルコに対して母性に近いものを抱いていた可能性があります。つまり、加藤登紀子さんは人間に戻ったポルコは男女関係にならないようにホテル・アドリアーノに戻ることはせず、一方でジーナもそんなポルコの考えを察して引き止めることはしなかったのだと考えているようです。

『紅の豚』が公開された時のアンケートでは、「最後の結末に疑問を持った」、「最後にポルコが人間に戻るのか知りたい」といった声が寄せられていたようです。それに対して宮崎駿監督は、「人間に戻ることが、それほど大事なことなんでしょうか？」と答えています。どうやら、宮崎駿監督は人間に戻らない方が「彼らしい」と考えているようです。では、なぜポルコが人間に戻らない方が彼らしいと言えるのでしょうか？

まず、大空を飛び回ることを夢見ていた少年時代のポルコは「飛行艇クラブ」を作り、その後第一次世界大戦に突入時、青年になったポルコは空を飛び続けるためにイタリア軍に入隊しました。そして、ポルコは凄腕のパイロットとして多くの敵艇を撃破し「アドリア海のエース」と呼ばれるようになります。

しかし、ポルコはただ空を飛び回りたかっただけで、称賛を浴びるために敵艇を撃破したわけではありませんでした。さらに親友が天高く昇っていくのを見て「ベルリーニ、行くな！！ジーナをどうする気だ！！オレが代わりに行く！」と叫び後を追おうとするも自分の艇が動かなかったため、ポルコはその出来事から「一人で飛んでいろ」と言われたように感じ孤独感を覚えるようになります。

嫌々ながらも数多くの敵艇を撃ち落としてきた挙句、仲間を救うことができずジーナをいつも悲しませている、といった後悔の念に苛むポルコは最後のシーンまで自分を許すことができていません。宮崎駿監督はそんな自分を許せないポルコこそが「彼らしさ」であり、ポルコが人間に戻るというハッピーエンドは望んでいないようです。

宮崎駿監督はインタビュー時にアンケート集計を聞いて「人間に戻ることが、それほど大事なことなんでしょうか？」と答えていますが、この一言には最後にどう受け取るかは視聴者次第だというメッシージが込められていると考えられます。なぜなら、あくまでも『紅の豚』はポルコ・ロッソという一人のパイロットの生き様を描いただけであって、最後に人間に戻るのかどうかはそれほど意味がないからです。

人間の姿のポルコは立ち振る舞いが紳士的なイケメンでした。劇中でも少しだけ人間の姿が映っているのですが、イケメンでワイルドな雰囲気を醸し出していました。ここで気になるのがポルコが豚になった理由です。そこで、ここからはポルコが豚になった理由や宮崎駿監督がポルコを豚にした理由を紹介していきます。

一つ目に挙げられる豚になった理由は、自分で自分に魔法をかけて豚になったという点です。宮崎駿監督へのインタビュー回答が載っている映画『紅の豚』のパンフレットには、ポルコが自分に魔法をかけて豚になった理由が取り上げられています。その豚になった理由というのが、迫り来る新たな戦争を前に再び国家の英雄になることを拒んでいるというものでした。

確かにしたくないことはしないときっぱり断るような自分の意思に正直でいながら怠惰でもあるポルコの性格上、豚になった理由を知ったとしても違和感がありません。さらに、ポルコ自身は人間の姿でなくとも嫌がる様子もなく、仮に国家から軍に戻るように言われたとしても自分は豚だから関係ないとばかりに断るような堂々とした態度を貫いています。

二つ目に挙げられる豚になった理由は、ポルコが人間の時に経験した苦しい思いから逃れるという点です。ポルコはもともとイタリア空軍のエースパイロットとして大活躍したことで「英雄」と謳われていました。しかし、当然英雄として活躍していたのはポルコだけで、彼の仲間たちの多くが戦死してしまいます。

その中にはジーナの一人目の夫やポルコの古くからの友人であるベルリーニもいました。その結果、ポルコは数多くの仲間を失い一人取り残されたことが心残りになっています。それゆえにイタリア空軍を退役後は、しがらみのない仕事として空中海賊退治を請け負う賞金稼ぎとして暮らしていました。

ここまでポルコが豚になった理由を二つ紹介しましたが、そもそも宮崎駿監督はなぜポルコを豚のキャラにしたのでしょうか？実際に宮崎駿監督は鈴木敏夫プロデューサーと視聴者から豚になった理由を問われています。しかし、宮崎駿監督は「すぐ原因と結果を明らかにしようとする！」と取り合わず豚になった理由を教えていないようです。そのため、今もなお豚になった理由が明らかになっていません。

ただ、豚の意味からそれを考察することができます。まず初めにイタリア語では「豚」とは、「軽蔑」や「侮辱」といった意味を成しているのですが、これは空を飛び回るために嫌々ながらもイタリア空軍の軍人として他国と争い、その結果多くの仲間を失った挙句自分一人だけが生き残ったという自責の念と、自分で自分を魔法で豚にしたといったポルコの心境と行動が関係していると考えられます。

おそらく行動を振り返った結果、自分を「軽蔑」していたポルコが魔法を使ったことで、それを意味する豚になったのではないでしょうか？ポルコが自責の念と罪滅ぼしによって豚になったという考えを前提にすれば、ポルコが豚の姿から人間の姿になるも、結局元に戻ってしまうといったシーンがたびたび描かれる理由が分かってきます。

『紅の豚』に登場するポルコが豚になった理由として、「自分で自分に魔法をかけた」「苦しい思いから逃れたかった」といった二つの要素を挙げましたが、果たしてポルコが人間に戻る方法はあるのでしょうか？そこで、ここからはポルコが人間に戻る方法を解説していきます。

豚になった理由を知る限り、ポルコは自分の意思で人間の姿に戻ろうとしていないことが分かります。では、もしポルコが人間の姿に戻ろうとした場合、どんな方法で戻ることができるのでしょうか？そもそも、ポルコが豚になった最大要因はポルコ自身の罪意識でした。あくまでも予想ですが、おそらくその可能性は高いでしょう。そのため、ポルコが人間の姿に戻る場合はまずポルコ自身の罪意識を無くす必要があります。

先に触れた通りポルコが人間の姿に戻ったシーンの一つとして、フィオのキスで人間の戻った時の様子を取り挙げました。フィオはポルコがイタリア軍の囮になろうとした際、一緒に行きたいと伝えたものの断れてしまったため、別れ際にポルコにキスをしています。

そのシーンにて非常に驚いているポルコの姿が描かれているのですが、その後にカーチスが「オメエその顔！待てよ！おいっ！顔見せろって！」と言っています。このシーンではポルコの顔が描写されていないため、本当に人間の姿に戻っているのか明確ではないものの、人間に戻った可能性は非常に高いと言えるでしょう。おそらく、視聴者に人間の姿となったポルコを想像させるためにあえてこのようなシーンにしたのではないでしょうか？

ここまで『紅の豚』のポルコが豚になった理由と人間に戻る方法といった情報を中心に解説してきましたが、やはりポルコが人間に戻る可能性を生み出す存在として忘れてはならないのが本作のヒロインであるジーナとフィオの存在です。ここからはジーナとフィオについて、キャラや人物像、ポルコとの関係を解説していきます。

『紅の豚』に登場するジーナは、ホテル・アドリアーノを経営する女性実業家です。「アドリア海の飛行艇乗りは、みんなジーナに一度は恋をする」と言われるほどの絶世の美女で、これまでに三度飛行艇乗りと結婚し全員と死別しています。ポルコの昔馴染みでもあり、ホテル・アドリーノ内にあるレストランの壁の片隅には若くて人間だった頃のポルコと一緒に写った写真が飾られていました。

『紅の豚』に登場するフィオは、ピッコロのおやじの孫娘です。年齢は17歳。飛行機設計技師であり、アメリカでの修行経験があるピッコロのおやじからお墨付きをもらうほどの才能の持ち主でした。ポルコもそんなフィオの腕を高く評価しているため、愛機の再設計を任せています。また足が震えながらも空賊連合を相手に説教をするほどの度胸の持ち主です。

航空飛行艇と三度結婚し未亡人となったジーナとまだ恋愛経験が浅い17歳のフィオナの二人は、それぞれポルコとの関係性において大きな違いがあると考えられます。

結局、最後には二人ともポルコと結ばれていませんが、ジーナがポルコのことを以前から密かに愛していたのに対して、フィオが勢いに任せてポルコにキスをしていることから、ポルコへと積極的にアプローチしているかどうかに差異を感じます。ただ、ポルコはジーナの思いを知っているものの、最後まで行動を起こすことはありませんでした。

なぜ最後まで行動を起こさなかったのかは不明ですが、もしかすると自分自身が幸せになってはならないと考えているのかもしれません。一方、フィオは年齢が17歳でまだ若く、36歳のポルコとの年齢差を考えるとフィオの好意に答えなかったのはやむを得ないところがあると言えるでしょう。同じヒロインであるジーナとフィオとではキャラクターが対照的でもあります。

ポルコとジーナは、人でもなく夫婦でもなく、それ以上といっても良いような深い関係性を築いていました。また二人は暗黙の内にお互いを大事に思っており、生死を共にした戦友のような感情を持っていたのかもしれません。最後はジーナの元を立ち去るポルコでしたが、ジーナは「この人はいくら言ったって戻ってくるはずがないんだもの」というわけでそれを止めようとしていません。まさに成熟した大人の関係だと言えるでしょう。

ポルコに対して恋愛感情を越えた戦友のような感情を持っているとジーナですが、もう一人のヒロインであるフィオはポルコに対して純粋な恋愛感情を抱いています。それはポルコがジーナの艇にフィオを乗せて「カタギの世界に戻してやってくれ」と頼んだ際、フィオが動く艇から身を乗り出してポルコに最後のキスをしているシーンから窺い知ることができます。

フィオはポルコに向かって「ほらっ蛙になった王子さまが、お姫さまのキスで人間に戻るって話あるじゃない！」と言ってポルコにキスしようとしていますが、このセリフと最後のキスは、まさに「魔法を説くお姫さまのキス」を想起させます。これらのシーンを踏まえてみると、フィオの場合は年齢相応の恋する女の子だと言えるでしょう。

『紅の豚』の主人公・ポルコが豚になった理由に関する声があがっています。どうやら、この方はポルコが豚になった理由について、戦争で一人生き残ってしまった罪悪感が呪いのようにかかっているからだと考えているようです。やはり、そこから人間の姿に戻るきっかけが導き出されています。

また、感想で「私たちは戦争を『知らない』世代じゃないと思う」と言われているのですが、宮崎駿監督が「すぐ原因と結果を明らかにしようとする！」と言うように、原因と結果ではなく戦争を経験したポルコがどのように感じて生きているのかといった点に注目することも大事なのかもしれません。

『紅の豚』に登場する主人公・ポルコの豚の姿に関する声があがっています。こちらでは、人間が豚の姿に変わるのは『紅の豚』と『千と千尋の神隠し』の共通点だと言われているのですが、ご存じの通りこの2作品は宮崎駿監督が手掛けたジブリシリーズです。宮崎駿監督は『紅の豚』のポルコと『千と千尋の神隠し』の千尋の両親にある何らかの共通点を元に、豚のキャラに設定した可能性があるのかもしれません。

『紅の豚』の主人公・ポルコが人間に戻ったシーンに関する声があがっています。こちらでは、ポルコが人間の姿に戻った理由について考察している際に、弟が言った「たぶん孤独を感じたんよ」という言葉に関心したと言われています。

確かにポルコが孤独を感じた時に人間の姿になるというのはあり得る話なのかもしれません。孤独を感じているからこそたびたび本来の姿である人間になるも、同時に罪悪感も感じているからこそ再び人間に戻るといった流れを繰り返している可能性があります。

『紅の豚』の主人公・ポルコは最後人間に戻るのかということで、豚になった理由や人間の姿のシーンを考察してきましたがいかがでしたか？ポルコが人間の姿に戻るシーンは、ポルコがカーチスとの決闘後にフィオに別れのキスをされた時のシーンとポルコが銃弾を触っていた時のシーンの二つがあります。

そして、戦争で仲間を救えなかったこと、多くの敵艇を撃ち落としたことといった点に罪悪感を覚えているからこそ、ポルコは豚になることを選択したのだと考えられます。やはり、もしポルコが人間の姿に戻る場合は罪悪感を無くす必要があるのでしょう。これを機に『紅の豚』をご覧になった際はぜひ、当記事の豚になった理由や最後に人間に戻るのかといった内容を踏まえた上で、ポルコが人間に戻ったシーンに注目してみてください。