ラピュタのムスカ大佐は最後どうなった？落ちるシーンや名言・魅力も紹介

アニメ映画「天空の城ラピュタ」のクライマックスといえば、ムスカ大佐に追い詰められた主人公たちが起死回生の”破滅の呪文”を唱えて大逆転する非常にダイナミックでドラマチックな場面です。物語はそのまま主人公たちを映し、大団円でフィナーレを迎えますが、敗北を喫したムスカ大佐について大きな描写はしていません。ムスカ大佐はその後どうなってしまったのでしょうか？その答えはラピュタの画面に小さく隠されていました。

ラピュタで打ち破られたムスカ大佐の落ちるシーンに気付けなかったあなたも、この記事をお読みいただければ次の機会に必ず気付けることでしょう。名作に名脇役、ならぬ名悪役あり。ジブリ屈指の名悪役ラピュタのムスカ大佐の名言や魅力、彼の最後の場面についても細かくご紹介していきます。

「天空の城ラピュタ」は、1986年公開のアニメ映画です。後に「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」など名作を数多く制作することになる、宮崎駿監督のスタジオジブリの記念すべき第1作目となっています。宮崎駿監督の長編アニメ映画としては「風の谷のナウシカ」以来2作目ですが、ラピュタ制作を機にスタジオジブリの立ち上げが決まりました。

アニメ文化が成熟するにつれ大人向けの作品が増えていた当時、宮崎駿監督はアニメの原点に立ち返り、「子供を対象にした冒険活劇を、大人の鑑賞にも耐えうる作品を作る」ことを目指して製作が開始されました。そして宮崎駿監督にとって初の原作のない完全オリジナルアニメ作品であり、その原点は宮崎駿監督が小学生時代に空想していた架空の世界での物語だったと語っています。

政府の特務機関に所属し、軍隊と共にラピュタの探索を取り仕切っています。年齢についての公式設定は公表されていませんが、調査媒体によって28歳・32歳と違いが生まれています。一般的に40代後半～50代にならないと大佐にはなれないので、アラサーで大佐まで昇進しているのは、現代の価値観においては非常にまれなことであるといえます。

ムスカ大佐が持っているのは階級だけではありません。古今東西の故事に通じ、旧約聖書や古代インドのラーマヤーナ、さらにはラピュタ語解読にまで精通しています。ラピュタに関しては言葉だけでなく、その歴史やラピュタの持つ力にまで理解が及んでおり、その知識量はもはやラピュタマニアと言って差し支えないほどです。石板を一目見てラピュタ語の解読に至るなど、頭自体の良さを表現した描写が随所に散りばめられています。

また、「玉座の間」でシータを追い詰めた際には、中距離、恐らく10ｍほど離れた距離からシータのおさげだけを片手撃ちのリボルバーで打ち抜くという離れ業もやってのけています。血気盛んなモウロ将軍を「制服さん」と呼び蔑んでいることから、ムスカ大佐は文官だと考えられますが、射撃の腕は軍人たちと比べても遜色がないと言えます。アラサーで大佐にまで上り詰めた理由がこの辺りにもありそうです。

彼が持っているのは知識だけではありません。ムスカ大佐はシータに「私も古い秘密の名前を持っている」と語っています。その名は「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」。ムスカによると「ウル」はラピュタ語で「王」意味し、ムスカが古代ラピュタ王家の末裔であることを示しているといいます。ラピュタ語解読者、ラピュタ王家の血筋、そして正統の王位継承者であるシータをも利用し、世界征服を企んでいるのでした。

しかし、ムスカは王位継承権を持たないとも言われています。シータが受け継いだ名前は「リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ」で、ムスカ曰く「トエル」はラピュタ語で「真」を表すため、ラピュタ王家の真の王位継承者はシータだといいます。一方ムスカの名前に含まれる「パロ」については本編で触れられていませんが、ギリシャ語で「従属」を表すため、ムスカの家系は言わば分家であり、王位継承権は持たないと言えます。

また、モウロ将軍に対して度々異議や挑発的な発言をしています。「将軍」は主に少将・中将・大将など将官に用いる呼称で、佐官である大佐の上官に当たります。軍隊において上官への反発は重く罰せられる罪であり、軍法会議にかけられ懲戒処分は免れません。それを恐れないムスカ大佐の態度、恐らくは軍部の人間ではなく政府の特務機関の人間であること、そして王家の人間であるという秘密が彼に自信を与えているのでしょう。

このように非常に高圧的で知略家で、しかも世界征服を目論むという古き良き悪役道を貫くムスカ大佐ですが、数あるジブリキャラクターの中でもとりわけ人気者でもあります。様々な要素が彼の人気に結びついていますが、その中から2つについて考察してみます。まず何と言っても名言の多さが挙げられます。台詞全てが名言かされるといっても過言ではありません。こちらは下記にて詳しくご紹介していきます。

そして2つ目は、その完璧な悪役像とは裏腹に間抜けな一面を持っていることです。冒頭からいきなりシータに瓶で頭を殴られて気絶したり、再び捕らえたシータに流行りの服を勧めたり、そして最後は城壁と共に落ちるシーンでは小さくながら無様な姿を晒したりと、枚挙に暇がありません。このような点がムスカ大佐への嫌悪感を取り除き、それどころか観る人に親しみすら感じさせるキャラクターになっていったのです。

シータとパズーが滅びの呪文を唱え、崩れ去る天空の城ラピュタ。実は城壁が落ちていくシーンの中に、ムスカ大佐の最後の姿が描かれています。ここではクライマックスのあらすじからご紹介し、小さく描かれたムスカ大佐最後の姿を探してみましょう。

物語のクライマックス、ラピュタ王家の末裔で飛行石を持つシータと主人公パズーを追い詰めたムスカ大佐が、命を差し出すか飛行石を差し出すかのを考えるための時間として3分間をふたりに与えます。その時間が過ぎ、答えを聞こうとするムスカを相手に、パズーは武器を捨てシータと手を取り、シータが祖母から受け継いだ滅びの呪文「バルス」を共に唱えるのでした。

ふたりの手の中の飛行石は強烈な光を発し、その光は色付き眼鏡をかけたムスカ大佐の目から視力を奪い去りました。それと同時に城壁が崩れ始め、大量のロボット兵と共に空中に投げ出されていきました。シータとパズーは木の根に引っ掛かっていて無事でした。上昇するラピュタからグライダーで脱出し、フラップターで逃げ出していたドーラ一家と再会。最後にふたりはドーラ一家から離れ、グライダーで飛び去るのでした。

さて、ムスカ大佐が落ちるシーンはどこにあったのでしょうか？答えは次の画像をご覧ください。城壁やロボット兵が落ちるシーンにまぎれて、画面中央より少し右寄り、ひときわ大きな瓦礫とともに、トレードマークの赤いスーツに身を包んだムスカ大佐が落ちていくが見えます。これがムスカ大佐が見せる最後の姿となっています。

前述のとおり、城壁が崩れ落ちるシーンで、ムスカ大佐は空中に投げ出されました。投げ出されたムスカ大佐はその後どうなってしまうのでしょうか？ラピュタが「竜の巣」と呼ばれる巨大な積乱雲の中に隠されていたことから考察してみます。

一般的な積乱雲の高度は日本やヨーロッパを含む中緯度地域で5,000m~16,000mなので、ラピュタの高度はだいたい1万m前後と仮定できます。体重を75kgと仮定して計算すると、落下開始から10秒足らずで終端速度である時速200kmに達し、そこから約175秒後に地表に激突します。海上に落下しても、この速度ではコンクリートに激突した時と同じくらいの衝撃となり、残念ながらムスカ大佐が生存する可能性はゼロと言えそうです。

余談ですが、実際にパラシュート無しで降下・生存した最高高度がちょうど10,000m上空でした。爆破された飛行機の残骸と共に落下し、山の木々の上に軟着陸したおかげで、大けがこそしましたが生還を果たしています。これはギネス記録にも認定されていますが、ムスカ大佐も城塞の残骸と共に軟着陸するなど幸運が重なっていたとしたら、もしかしたら生還していたかもしれません。

ムスカ大佐役を演じたのは、今や押しも押されぬ大俳優となった寺田農（ミノリと読みます）です。俳優として、大河ドラマをはじめ「銭形平次シリーズ」「水戸黄門」「必殺仕事人シリーズ」「土曜ワイド劇場」「はぐれ刑事純情派」など時代劇やサスペンスドラマに多数出演し、舞台へも出演するなど、50年以上に渡って活発な活動を展開しています。ラピュタ公開当時46歳で、実際の「大佐」と同年代でした。

ムスカ大佐の人気の秘密については既に考察した通りですが、シナリオと台本だけでは30年以上に渡る人気を誇るキャラクターにはならなかったでしょう。落ちるシーンの直前で目を潰される演技が最たるものです。シナリオから生きたキャラクターを生み出すのが声優であり、台本を名言に変えるのも声優、つまり寺田農がムスカ大佐を演じたからこそ、時代を超えて愛されるキャラクターとなりえたのです。

スタジオジブリの他の作品同様、「天空の城ラピュタ」も世界中で愛されています。英語版の吹き替え声優はなんとマーク・ハミル氏。映画「スターウォーズシリーズ」で主役のルークを演じた名優です。DVDなどをお持ちの方は、ぜひ一度言語設定を英語にして、マーク・ハミル氏の演技を聴いてみてください。

シータを捕らえたものの、ラピュタについて一向に吐かせようとしないムスカ大佐に対し、モウロ将軍が「絞り上げればすぐに口を割る」と強硬策を打ち出します。そんな将軍に対し釘を刺したのがこちらの発言です。続けてドーラ一家に軍の通信電波を傍受されたことにも触れ将軍を論破しにかかりますが、このような会話は規律に厳しい軍隊では完全にご法度。しかし政府の特務機関の人間であるムスカ大佐には関係ないのです。

飛行船から脱走したシータを再び捕らえ、飛行石を起動させラピュタへ導く呪文を思い出すようあの手この手を使ってシータに語り掛けます。その中の一つがこれ。パズーに思いを馳せ必死に沈黙を守る少女の心を開くにはあまりにも安直な発想ですが、ムスカ大佐も考えあぐねての一言だったのでしょう。その必死さと間抜けさが絶妙な、思わず笑ってしまう名言となってしまいました。

続けて「その体が金属なのか粘土なのか、それすら我々の科学力ではわからない」と語っている割には、それがロボット兵であると断言し、さらに破壊力にまで言及しているあたり、持っているラピュタ関連の情報量の多さがうかがい知れます。

基地で保管していたロボット兵が起動し攻撃をし始め、その圧倒的な破壊力に基地はパニック状態に陥ってしまいます。その混乱に乗じ、ムスカ大佐は電話線を切断し乗っ取り、司令部に「私が臨時に指揮を執る」と告げます。その電話の第一声がこの一言です。電話の第一声としてはいささか不自然にも感じますが、それが現場の混乱を現しているようにも聞けますし、ムスカ大佐のチャーミングな一面にも見える一言となっています。

ラピュタを起動させ大量のロボット兵を投下したムスカ大佐は、指揮官を失い集中砲火を浴びる飛行船から人が転落していく様を観ながらこう発言しました。ムスカ大佐の本性を表す重要な言葉でもあり、単純に言葉自体のインパクトも大きいことから、後述の名言⑥と並んでムスカ大佐の代名詞的な台詞となっています。最後の城塞と共に落ちるシーンでは、ムスカ自身がゴミのように落下するという皮肉もついてきます。

ムスカ大佐の最後のセリフでもあるこの台詞、飛行石の強烈な光によって視力を奪われたムスカ大佐が崩れた城壁と共に落ちるシーンの直前に発しています。トレードマークの色付き眼鏡では防げないほどの強烈な光線を目に食らったからか、その叫びはほとんど断末魔のようで、そのインパクトからムスカ大佐の代名詞のようにもなっています。

いかがでしたでしょうか？今までムスカ大佐が落ちるシーンに気付けなかった方も、次からは見つけられるでしょう。そしてムスカファンがひとりでも増えてもらえたら幸いです。そしてこの先もずっと、世代を超えて愛される作品であってほしいものです。本格的な台風シーズンの到来、嵐の日は家でゆっくりと「天空の城ラピュタ」を鑑賞してみてはいかがでしょうか。