2021年06月26日公開
2021年06月26日更新
【サイコパス】槙島聖護が引用した本一覧!作中に登場したタイトルをまとめて紹介
『PSYCHO-PASS』(サイコパス)に登場する槙島(まきしま)聖護(しょうご)は、知能が高く本を多く読むキャラクターです。彼は数々の名言を残し、時に私たちの世界に実在する本を引用します。槙島聖護が引用した本の一覧と、彼の名言や名セリフ、魅力や活躍をまとめます。『PSYCHO-PASS』(サイコパス)の槙島聖護が引用した本を中心に、一覧にしてご紹介します。
槙島聖護とは?
槙島(まきしま)聖護(しょうご)は、『PSYCHO-PASS』(サイコパス)のアニメ1期の黒幕です。卓越した知性や教養が窺える長セリフや名言が有名です。彼は私たちの現実世界にもあるタイトルの本を手に登場したり、その内容を引用したりします。読書家な槙島聖護が引用した本について、一覧にまとめます。
サイコパス(PSYCHO-PASS)の作品情報
サイコパスの概要
『PSYCHO-PASS』(2012年)は、『踊る大捜査線』の本広克行監督企画のアニメです。『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵(うろぶち)玄(げん)が主に脚本を、『家庭教師ヒットマンREBORN!』の天野明がキャラクター原案を手がけ、2015年に劇場版も公開されました。脚本家や登場人物等を変えつつ、アニメは3期まで、映画も他4作公開されました。
サイコパスのあらすじ
西暦2112年の日本では、シビュラシステムが人間の心理状態・性格等を分析し全てを管理します。「犯罪係数」が高いと通告された「潜在犯」は、無実でも隔離収容されますが、適性があれば警察組織「公安局」の「執行官」になれます。彼らを指揮する「監視官」に着任した常守(つねもり)朱(あかね)は、執行官・狡噛(こうがみ)慎也と捜査を進め、彼が追う数多の犯罪の黒幕・槙島聖護に辿り着きます。
槙島聖護のプロフィール
槙島聖護は身長180cm、体重65kg、O型の男性です。年齢や誕生日、経歴等は不明です。銀髪で瞳は金色に近いです。シラット等の格闘技に通じ、剃刀を持ち歩きます。人々に犯罪を教唆・幇助(ほうじょ)し、助言や物資・技術等を与え、シビュラに反抗しました。
槙島聖護は免罪体質?
槙島聖護は「免罪体質」で、シビュラシステムで犯罪係数を測定できません。凶行や危険な思考の最中でも、「潜在犯」とも認識されません。公安局の銃器「ドミネーター」はシビュラの端末で、測定した犯罪係数によって麻酔銃・殺人銃・分子分解銃と変化するため、目の前で人を殺した槙島聖護に向けてもロックが掛かったまま作動しませんでした。
免罪体質者は約200万人に1人と非常に珍しく、その中でも槙島は特異と言われます。シビュラは人間の心理状態を「色相」で表し、精神が健全であれば澄んでいて、ストレスや悲観思考で濁っていくと公示します。槙島は最良とされるクリアホワイトの色相を持ち、「一度も曇ったことがない」と語りました。
槙島聖護が引用した本一覧
Johnny Mnemonic
槙島聖護が引用した本を、一覧にご紹介します。アニメ第3話「飼育の作法」で、金原が槙島(又はその仲間)から受け取ったメモリーファイルの名前が「Johnny Mnemonic」でした。その中のプログラムを利用して金原はドローンの安全装置を解除し、遠隔操作して同僚たちを害します。
「Johnny Mnemonic」(記憶屋ジョニィ)は、ウィリアム・ギブスンの短編集『クローム襲撃』に収録されたSF小説(1981年発表)で、近未来のディストピア(反理想郷)を描きます。脳に記憶装置を埋め込み、機密情報の運び屋をしていた男が、装置の安全許容量を超える重大な情報を読み込んでしまい、時間内に取り出さなければ死ぬ上、殺し屋に追われます。
ギブスンは新たな技術による人間社会の変化を描いた預言者とも呼ばれます。槙島聖護の仲間のハッカー、チェ・グソンがこのファイル名を考えて送ったという考察もあります。15話「硫黄降る街」で、槙島はグソンに「凄腕のハッカーがギブスン好きというのは、出来すぎだね」と言います。
1984年
4話「誰も知らないあなたの仮面」で、御堂がSNS上のアバターに執着し、その本来の操作(所持)者を殺害します。隣室で、彼の犯行を助けた槙島聖護が『1984年』を読んでいます。1949年にジョージ・オーウェルが書いたSF小説で、第三次世界大戦後、三つの超大国が世界を分割し、徹底的に思想・言語等を統制するディストピアが舞台です。
この本の主人公は歴史記録を改竄(ざん)する仕事をしつつ、過去や記憶に興味を覚え、禁を破ってメモを残します。彼は市民に判断力を持たせず支配したい党の企みや、利のために戦争を続ける三国体制に気づきます。思想警察に捕まり、尋問と拷問で洗脳され、真実を追求したことを「思想犯罪」と悔い、党を愛し処刑をも受け入れます。
御堂は自分の中の理想とは違う言動をしたと怒り、アバターを作った操作者たちを断罪し、自身が成り代わります。『1984年』の行き過ぎた言論統制や、大きな矛盾を認識できない狂信にも似た行動です。また本の中の町中に双方向テレビがある監視体制も、街頭や折々でシビュラが人々のサイコパス(数値化した精神状態)をスキャンする社会を連想させます。
槙島はシビュラ自体に批判的ですが、一つのシステムが支配する社会にも懐疑的でした。体制に規定されない確固たる人間性を賛美する彼は、自由や真実の追究者という面もあります。三国とも一党独裁国家の『1984年』も、一つの体制による支配を疑問視する本です。
さらば、映画よ
5話「誰も知らないあなたの顔」で、公安局に追われ撃たれた御堂を、槙島聖護は見捨てます。複数のアバターに成りすます御堂は、どんな者にもなれるが個性がなく「空っぽ」だと、観察を終え興味を失いました。去り際に、槙島は御堂に寺山修司を読んだことはあるかと訊ね、戯曲『さらば、映画よ』を勧めて、以下のセリフを言います。
「皆誰かの代理人なんだそうだ。代理人たちがさらにアバターを使って、コミュニケーションを代理させている。」
寺山修司は劇作家で、戯曲とは舞台の脚本です。『さらば、映画よ』は、1960年代の初期傑作集『戯曲 毛皮のマリー・血は立ったまま眠っている』に収録されます。同性愛者2人の会話劇で、美容師に髪を切ってもらうように世の中は「代理人」ばかりで、私も私自身の「代理人」だ、と社会での役割や自我の在り方等を考えます。
誰かの「代理人」でなくなり役割を失ったら、「私」という自我は残るのか?という不安が漂う『さらば、映画よ』を、演じていたアバターと自身の社会的地位、命をも失う寸前の御堂に、「読むと良い」と槙島は告げます。しかもこれらのセリフを、御堂が執着していたアバターを乗っ取って成り代わり、伝えます。
ファースト・フォリオ
6話「狂王子の帰還」で、身分を偽り桜霜学園で教師をする槙島は、美術部の王陵璃華子と対話する際、『ファースト・フォリオ』(正式には『ウィリアム・シェイクスピアの喜劇、史劇、悲劇』)という本を読んでいます。シェイクスピアの戯曲をまとめた最初の作品集で、『十二夜』等を含む全36篇です。
シェイクスピアの死から7年後の1623年に出版され、私たちの世界では56部しか残っていないとも言われる希少本です。その初版本は、約10億5000万円と、文学作品中の史上最高額で落札されました。さらに時を経た2112年の鎖国した日本で、槙島はこの本を読んでいます。
女吸血鬼カーミラ
7話「紫蘭の花言葉」で、槙島は泉宮寺と、璃華子について話します。その際に槙島は『女吸血鬼カーミラ』を読んでいたと、小説『PSYCHO-PASS サイコパス 上』で書かれました。『カーミラ』はジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュが1872年に著した怪奇小説で、少女が就寝中に感じる痛みや不調に悩みながら、謎めいた美少女に惹かれ、その正体が吸血鬼だと発覚し退治された後も想い続けるという内容です。
学園で璃華子は才色兼備の人気者で、殺めて保存できるよう加工し「作品」とする少女も、自分に心酔する女生徒から選びます。彼女たちを誘い出す璃華子の言動や、夢見るように近寄った犠牲者たちの様子にはレズビアニズムが漂い、『カーミラ』で女性吸血鬼に口説かれ魅了された少女と構図が似ています。
タイタス・アンドロニカス
上記の6話のシーンで『ファースト・フォリオ』を読む槙島は、口頭では同じくシェイクスピアが書いた『タイタス・アンドロニカス』(1590年前後)を引用します。彼の初期の悲劇で、最も残虐で暴力的な異作とされます。ローマの武将タイタスが敵国の女王タモーラの息子を害して恨まれ、互いに一族を巻き込み、陰惨な復讐を繰り返します。
2人が話題としたのは、タイタスの娘ラヴィニアでした。彼女はタモーラの息子たちに辱められ、舌と両手を切り取られます。彼女の名誉を守るため、とタイタスは自ら愛娘を絞殺します。この時ラヴィニアは幸せだったか、と話題を振った後、槙島は璃華子に「作品」とした少女について問いました。
もし君が彼女を実の娘のように愛していたと言うのなら
君はあの子の為に流した涙で盲目になってしまうのかな
戯曲で、ラヴィニアの惨い姿を見たタイタスは心が砕け、さらに息子たちを失った際、もう一滴も流す涙はない、涙で盲目になれば復讐ができないと狂乱します。これらを踏まえ、璃華子は(涙で盲目になるのは)困る、もっと新しい「絵」を仕上げなければ、と答えます。
璃華子の父は画家で、シビュラを受容し過ぎて何にも無反応の病身となりました。父の尊厳を奪われたと怒り、父の芸術を継承しようと犯行を重ねた璃華子を槙島は見限り、泉宮寺の「人間狩り」の獲物にします。怯えて逃げ惑う璃華子の姿と、ラヴィニアを脅すタモーラたちのセリフを朗読する槙島の声が重なります。璃華子が殺されると、槙島は戯曲の終盤でタモーラへ向けられたセリフをも引用します。
「この女の生涯は野獣に似て、哀れみに欠けていた。
死んだ今は野鳥程度の哀れみが似つかわしい。」
璃華子は、清く無傷な女のみに価値を見いだす男性や大人への反発や、また残酷な作風で有名ながら人格者だった父の衰萎への複雑な思いも抱えていました。彼女の死に際に、槙島は父娘の悲劇が描かれた残酷な芸術作品を朗読しました。
情念論
11話「聖者の晩餐(さん)」で朱は槙島を発見しますが、友人の舩(ふな)原ゆきを人質に取られます。ドミネーターが槙島を執行対象外(犯罪係数が低い)としてロックが掛かり、動揺する朱に槙島は散弾銃を投げます。加害者になっても友を救う覚悟、シビュラに任せず自ら悪を定義する信念があるなら、実弾が出る方を撃て、と嗾(けしか)けます。その際、彼は『情念論』を引用しました。
デカルトは、決断ができない人間は、欲望が大きすぎるか悟性が足りないのだといった
ルネ・デカルトは合理主義や近代哲学の祖で、人間の精神、知覚・感覚・感動を研究した『情念論』を1649年に著しました。悟性は主に思考能力を指します。『PSYCHO-PASS』の脚本家の一人の深見真によると、槙島は朱の欲望の大きさを指摘したそうです。自分の手は汚さずに友人も助けたいと、両方の望みは叶い難い状況でした。
あらかじめ裏切られた革命
14話「甘い毒」で槙島は、装着者自身の犯罪係数が測定されないヘルメットを配って暴動を計画し、『あらかじめ裏切られた革命』(1996年)を読んでいます。実在のジャーナリスト・岩上安身(やすみ)が、ソ連からロシアへ変革する激動の実態を取材し、共産主義の崩壊等をノンフィクションで描き、理想を掲げる為政者や革命者たちの利権への欲望を指摘した本です。
この本の中で、『1984年』も言及されます。槙島は暴動を囮に、シビュラの正体を暴こうとしています。現体制の核たるシビュラの本拠地に乗り込み、サイコパス重視の社会をひっくり返して人々に自由意思で行動させたい槙島は、裏のある現政権(シビュラ)に反旗を翻す、裏(我欲)のある革命者とも言えます。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか
15話で、ヘルメットによる暴動の最中、槙島は腹心のチェ・グソンに、シビュラに支配された奇妙な社会は「昔読んだ小説のパロディみたいだ」と語ります。グソンがギブスン(『Johnny Mnemonic』の作者)を例に挙げると、槙島は以下のように言いました。
「フィリップ・K・ディックかな」
「ジョージ・オーウェルが描く社会ほど支配的でなく、ギブスンが描くほどワイルドでもない」
オーウェルは『1984年』の作者です。ディックはSF作家で、独裁的な企業や政府を多く描きました。グソンがディックで最初に読むなら、と問うと槙島は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1968年)を勧めました。アンドロイドが感情を持つ未来で、逃亡した彼らを破壊する賞金稼ぎが、そのあまりの人間らしさに、人工知能と人間に違いはあるのかと悩む小説です。映画『ブレードランナー』の原作です。
パンセ
16話「裁きの門」で、槙島は狡噛と初対面します。槙島が螺旋(らせん)階段を降りてきて互いの名前を言い当て、槙島はブレーズ・パスカルの『パンセ』(1670年)を、狡噛はホセ・オルテガ・イ・ガセットの『大衆の反逆』(1929年)を引用して、正義と力についての議論を短縮し、戦闘に入ります。
正義は議論の種になるが、力は非常にはっきりしている。そのため人は正義に力を与えることができなかった。
『パンセ』は「人間は考える葦である」等の名言で有名な、パスカルの遺稿です。上の槙島の引用箇所の前で、正しさと強さは一緒におかなければ、と説きます。不正な強さは非難されるが、弱い正しさは打ち倒され、人は強いものを正しいとした、と洞察します。正しいものを強くできないから、強いものが正しくあるべきだ、とも換言されます。
シビュラを不正に感じる槙島は、力でシビュラや狡噛に勝ち、己の強さを「正しさ」として示そうとしたか、または正しさの議論はなかなか決着がつかないから、明確な強さを競おうと提案したようです。哲学者オルテガは、『大衆の反逆』で下のように書きました。
しかし私は、誰かがパスカルを引用したら用心すべきだということをかなり前に学んでいる。
オルテガは、政治運動家たちがパスカルの論旨を都合よく利用し、大衆を扇動することを警戒しました。彼は「エリート」を自認する者たちを、欲と権利しか追求せず義務は意識もしない「近代の野蛮人」と批判し、体制に暴力で逆らう軽挙な大衆を危険視しました。
『大衆の反逆』の上の引用箇所を、「俺は誰かが~」とほぼそのまま返答し、狡噛は槙島を警戒します。槙島は「そうくると思った」と笑い、もし狡噛がパスカルを引用したら自分も同じ(オルテガの)言葉を返していた、と言います。
ガリヴァー旅行記
17話「鉄の腸(はらわた)」で槙島は、シビュラの正体は免罪体質者等の人間たちの生体脳とコンピュータの集合体だと知ります。サイコパスを計測できず管理できない者たちを、犯罪者であっても取り込み、システムの拡張と「高度」な統治を目指してきたと語り、シビュラは槙島に「支配者」の一員に加わるよう求めます。
槙島はジョナサン・スウィフトの風刺小説『ガリヴァー旅行記』(1726年、完全版は1735年)を下記のように引用して、シビュラを「まるでバルニバービの医者だな」と蔑みました。バルニバービは第3篇で描かれる、実用性のない過剰な科学の研究と実験で地上を荒廃させる架空の国です。
バルニバービのある医者が、対立した政治家を融和させる方法を思いつく。二人の脳を 半分に切断して、再びつなぎ合わせるという手術だ。これが成功すると、「節度のある、 調和のとれた思考」が可能になるという
人間それぞれの独自の魂に価値を見る槙島は、数多の脳が一つのシステムに収まるシビュラや、上記の個の意思を潰すような手術を、醜く感じたようです。『ガリヴァー旅行記』は子どもに人気で、小人と巨人が出る最初の2篇が有名ですが、全4篇を通してイギリス社会への強い批判が表れ、最高の政治学入門書の一つと言われます。
新約聖書
21話の「血の褒賞」で槙島は、日本の食料の99%を担う改良麦を壊滅させるバイオテロを企みます。その際、読んでいたキリスト教の正典『新約聖書』の中の『マタイによる福音書』の13章の一部を、朗読しています。
イエスは別の例えを持ちだして言われた。
天の国は次のように例えられる。
ある人はよい種を畑にまいた。
人々が眠っている間に敵が来て、麦の中に毒麦をまいていった。
寓話「毒麦のたとえ」です。よい種を播く人は、神の教えを伝えるイエスや世の善人たち、敵は悪魔、毒麦は悪人の暗喩とされます。毒麦は成長した方が見分け易くなるから、誤って麦まで抜かぬよう、後で選り分けて収穫しよう、と続きます。この「収穫」は、世の終わりに天使が舞い降りて悪人を裁くことの暗喩です。
『新約聖書』はイエス・キリストの教えに従った者たちの27書を指し、4つの『福音書』は弟子それぞれの視点でのイエスの生涯、死と復活の記録です。マタイは、十二使徒(イエスの12人の高位の弟子)の1人です。
槙島聖護の名言や名セリフ集
槙島聖護の名言①「信じられないかもしれないが…」
本の引用ではなく、槙島自身の名言の内、有名な3つを一覧にまとめます。『PSYCHO-PASS』には、新規シーンを追加した新編集版(2014年)があります。その第1話に、狡噛と初対峙する直前の槙島の独白があります。槙島は、誰かが人類を愚かと言う時、その者も人類に含まれると論じました。人間を知りたかったら、人間が何を見ているのかに注目しなければ、と語って以下の名言を続けます。
君達は何を見ている?僕は君達を見ている。信じられないかもしれないが、僕は君達のことが好きだ。昔からよく言うだろう?愛の反対は憎悪ではなく無関心だ。興味が無いのならわざわざ殺したり、痛めつけたりはしないんだ。
槙島聖護の名言②「僕は人の魂の輝きが見たい…」
11話で人質に剃刀を向ける槙島は、動揺する朱に、シビュラの是非や人の意思、善悪について語ります。シビュラの判定には人の意思が介在しないと批判し、何を基準に善悪を選別するのかと朱に問い、散弾銃を投げて以下のセリフを言います。
「僕は人の魂の輝きが見たい。それが本当に尊いものだと確かめたい。だが己の意思を問うこともせず、ただシビュラの神託のままに生きる人間たちに、はたして価値はあるんだろうか?」
神託とは、神のお告げです。シビュラは、ギリシャ神話の神アポロンの神託を告げる巫女たちの名称です。シビュラシステムも上位の視座から、様々な適性やサイコパスを通達します。シビュラを神のように妄信し、自身での決断や思考を怠ける人々を、槙島は軽蔑します。
また『シビュラの託宣』という偽書(本物に似せ、著者や時代等を偽った書物)が実在するので、槙島はシビュラが完璧でも公正でもなく、単なるスーパーコンピュータの集合体でもないと、既に察していた可能性があります。
槙島聖護の名言③「紙の本を買いなよ…」
15話で『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を勧められたグソンが、(電子書籍を)ダウンロードしますと言うと、槙島は「紙の本を買いなよ」と熱弁します。紙の本でなくてはできない、自己の調整や瞑想にも似た手法を開示し、持論を語ります。
紙の本を買いなよ。電子書籍は味気ない。
本はね、ただ文字を読むんじゃない。自分の感覚を調整するためのツールでもある。
この名言をひねった「紙の本を読みなよ」というフェアが、紀伊國屋の新宿本店やハヤカワ文庫で現実に催されました。槙島が引用し、または作中で言及された本を一覧に紹介したり、該当小説に槙島たちの絵を印刷した帯を付けたりしました。
この15話のシーンで、槙島は紅茶に浸したマドレーヌを食べています。これは長編小説『失われた時を求めて』(プルースト著)で、主人公が紅茶に入ったマドレーヌの味で幼少期を思い出す場面をなぞっているようです。
槙島聖護のかっこいい魅力
かっこいい魅力①冷酷な性格
出典: https://frequ.jp
槙島聖護の魅力を大きく3つ、一覧にご紹介します。彼は関心のない相手は無表情で攻撃し、その死にも顔色を変えません。11話では散弾銃を当てられなかった朱に、「僕を失望させた」「罰」だと冷淡に言い、目の前で迷いなく彼女の友人を切り裂きます。
また御堂も璃華子も、観察して底が見えたと思ったら、公安局から逃がしもせず死に追いやります。一時は関心を寄せた相手を、自分のタイミングで冷酷に見捨てます。社会規範に反する己の衝動を認めてくれる、唯一で相互の理解者と錯覚し槙島を深く信頼した者でも、一方的な観察が完了したら、助力を止め危地に放ります。
かっこいい魅力②過去
11話で槙島は、子どもの頃から自分のサイコパスがいつも「真っ白」(健全とされるクリアな色相)で不思議だった、と語ります。シビュラに「善人」と肯定される理由が不明だから、悪事を通してでも人間を探究したようです。何をしても「無罪」となる身で、国の管理システムに高評価を受けても驕らず、物事の本質への思索を続けました。
1期の3年前、特殊加工された死体が展示される「標本事件」が起きました。犯人は桜霜学園の教師・藤間幸三郎で、免罪体質者です。槙島は藤間の犯罪を助け、『悪徳の栄え』(マルキ・ド・サド著)を貸しました。17話で同タイトルの本を返却され、別人の姿だが藤間だと槙島は気づきます。藤間は脳だけの状態でシビュラの一部になっており、槙島をも勧誘します。槙島は「機械の部品に成り果て」ることを嫌悪します。
「僕は人生というゲームを心底愛している。だからどこまでもプレーヤーとして参加し続けたい」
槙島は上のセリフで、「人類を超越」し世界を「審判」しようという誘いを断わり、藤間の脳を破壊します。人々の人生や生死に介入する槙島は、自分も同じ人間の立場で命を賭けているようです。
小説『PSYCHO-PASS ASYLUM 1』の「無窮花(ムグンファ)」では、妹を連れて日本に亡命したグソンを、槙島が助けます。グソンを庇って亡くなった妹を、自分も最期は笑いたいと肯定した槙島に、グソンは救いを感じます。また、「月と雪が交わって生まれたような美しい男」と槙島を表現しています。
かっこいい魅力③狡噛慎也との関係
標本事件で執行官・佐々山が殉職し、ピンボケした銀髪の青年の写真に「マキシマ」と書いて遺します。これが黒幕だと直感した狡噛は、色相が濁り潜在犯となっても執行官として捜査を続けます。黒幕などいないと周囲に言われても「マキシマ」について考え、1期の数々の事件を裏で操る槙島の存在への確信を深めていきます。
槙島の行動を分析する内に、狡噛は槙島の思考を追い始めます。犯行の展開や人間の心理、シビュラに関する2人の考察やセリフが似通っていきます。璃華子に創造性がないと指摘した狡噛に槙島は興味を持ち、その関心と期待は、狡噛が危機を生き抜き槙島の真意に迫る度に、また直接会話と戦闘ができたことで、一層高まります。
21話で、バイオテロ計画を見抜いて追いつき、実弾が出る銃を撃ってきた狡噛に、「期待した通り」だと槙島は笑います。狡噛が仲間や立場も全て捨て、「本物の殺意」を自分の意思と「正義」で選んだ、と。1期の最終(22)話「完璧な世界」で、槙島は狡噛に「孤独」を指摘され、珍しく叫んでこの社会では皆孤独だと言い返し、孤独を恐れず武器にした狡噛を評価します。
2人の殺し合いを中断させ割り込んだ朱に、槙島は「僕たちを侮辱するのはやめて欲しい」と言います。槙島は狡噛に麦畑で追われ、「君以外の誰かに殺される光景はどうしても思い浮かばない」と独白します。最後に狡噛に銃口を向けられ、満足したような表情で槙島は問います。
きみはこのあと、僕の代わりを見つけられるのか?
狡噛は「いいや、…もう二度とごめんだね」と答えて槙島を撃ち、寂寞とした表情を見せます。その時朱が、狡噛と槙島は出会う前から「ああなる運命だった」というモノローグを語り、以下のセリフで結びます。
彼らは誰よりお互いを理解し、相手のことだけを見つめていた
また新編集版の10話「メトセラの遊戯」の部分に、楽しめる競争相手を求める槙島の独白があります。自分の「位置と強さ」を確かめたいと語り、「手伝ってくれるんだろ?」と狡噛に期待します。小説『PSYCHO-PASS サイコパス (下)』では、撃たれる直前に微笑んで振り向き、狡噛に「生まれ変わったら、もう一度やろう」と言います。
槙島聖護の活躍
槙島聖護の活躍①1期
槙島聖護は1期で、様々な犯罪を幇助し暗躍します。14話「甘い毒」では凶器を持った3人の強盗を瞬時に倒し、16話では日々猛鍛錬を積む狡噛と戦って勝ちました。自分を陽動とした作戦で、グソンにシビュラの正体を解明させています。17話でシビュラへの勧誘を断った際、素手でサイボーグの義体を破壊し、墜落させたヘリから逃げました。
終盤では、日本の食料供給を崩壊させるバイオテロを計画し、管理センターを1人で占拠しました。21話で、ベテランの刑事で左手が強力な義手の征陸(まさおか)と、対等に戦います。拘束されるも、近くで負傷し動けない征陸の息子・宜野座(ぎのざ)へダイナマイトを投げ、彼を助けに走った征陸から逃げ遂せました。
21話の終盤から22話の序盤の、本物の銃とナイフを持った狡噛との接戦も有名です。格闘技や剃刀等を駆使して戦います。突如目の前に降ってきたスタングレネード(閃光と爆音が出る手榴弾)を、即後ろへ飛び退きながら蹴り上げています。
槙島聖護の活躍②劇場版
『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』(2015年)で、槙島を殺した狡噛は日本を出て、海外で内戦に苦しむ住民のため反政府組織の軍事顧問をしています。軍隊や傭兵と闘う中、狡噛はかつてその思考を探り過ぎたために、槙島の幻を見ます。幻聴か亡霊か不明ですが、2人は会話もします。
拷問され意識が朦朧とした狡噛に、槙島の幻は問います。内戦収束も近い今、軍閥の発起を目論むルタガンダ(傭兵団長)はどうせ自滅するのに、なぜ狡噛が命を賭けて止めるのかと。幻は狡噛の思考を整理し、怒らせるようなセリフを言って、狡噛を奮起させます。狡噛が「黙ってろ」と銃で撃つほど、発言も動作も姿も「槙島」として精彩な幻でした。
3部作の映画『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』の『Case.3 恩讐の彼方に__』(2019年)にも、槙島の幻が登場します。狡噛は2015年の劇場版の頃より冷静に幻と会話し、槙島を撃ったことを顧みます。幻は「悪霊は君自身なんじゃないか」と言って、狡噛が過去に囚われていると示唆します。これも感情の整理の契機となったのか、狡噛は改めてシビュラを危険視し、日本への帰国を考えます。
槙島聖護のアニメ声優
櫻井孝宏のプロフィール
声優・櫻井孝宏は1974年6月13日生まれのA型で、同業の鈴村健一が設立したインテンションに所属します。1996年にデビューし、2012年に声優アワード・海外ファン賞、2017年にアニメグランプリ最優秀男性声優賞を受賞しました。2016年に『虐殺器官』のジョン・ポール役で、2018年に『GODZILLA 星を喰うもの』のメトフィエス役で、東京国際映画祭に出席しています。
櫻井孝宏の主な出演作品
『デジモンアドベンチャー』のテントモン、『コードギアス 反逆のルルーシュ』の枢木(くるるぎ)スザク、『D.Gray-man』の神田ユウ、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の松雪集(ゆきあつ)、『おそ松さん』の松野おそ松、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』の岸辺露伴、『鬼滅の刃』の冨岡義勇等が、主な出演作と役名です。
櫻井孝宏は、『PSYCHO-PASS』のアニメ2期以降も、雛河翔という執行官の声を担当しています。声優が同じだと話題になり、視聴者たちが槙島と雛河の関係を様々に考察しました。
槙島聖護に関する感想や評価
槙島聖護はマジであの1クールで完成されすぎててもう一生好き 悪役として秀逸すぎるんだよも〜〜〜〜
— 伊織 (@xasheell1930) June 10, 2021
槙島聖護は、とてもファンの多いキャラクターです。様々なスペックが高く、特に名言の数々が一覧にまとめられるほど人気です。彼を超える悪役はいない、との意見までありました。
槙島聖護も「紙の本を買いなよ。電子書籍は味気ない」と言ってますが、私は「紙の本」という言い方が結構好きなんですよね。「情報媒体としての選択肢がそれしか無いから」ではなく、積極的に「選択肢がある中から敢えて『紙の』本を選んで読んでいる」という主体性が感じられるので。
— 蛇川ニョロリ (@49sick89hack) June 12, 2021
現実世界でも電子書籍の普及が進みました。紙の本を好む人々にとっては、彼のこの名言や、本への理解度やページを捲る感触で精神を調律するという手法論が印象深いようです。
槙島聖護が『ディックが〜』と言えばディックの本を読み、槙島聖護が『シェイクスピアは〜』と言えばシェイクスピアの名言を頭に入れ、槙島聖護が『まるでバルニバービの医者だな』と言えば、圧倒的に知能が足りない!と自ら勉強を始め、わたしは《槙島聖護》によって《教養》を身につけてきたんだよな
— 真希 (@maki_s1222) April 20, 2020
彼の引用に惹かれ、書店や出版社のフェア等の一覧を見て、該当の本を読んだ人もいました。単語だけでは書名や作者名が思い浮かび難い引用もあり、知識を増やす契機となったようです。
槙島聖護の本まとめ
『PSYCHO-PASS』の槙島聖護が引用した本の一覧を中心にご紹介しました。槙島は紙の本にこだわる読書家で、数々の名言を残し、冷酷な黒幕・「最悪」のテロリストとして活動しました。主要人物・狡噛との関係性も深く、彼の見る幻として槙島は劇場版にも登場します。槙島聖護は、知性派揃いの作中で最も多く本を引用しました。