2021年04月12日公開
2022年11月10日更新
【約束のネバーランド】グプナとは?花の意味やコニーとクローネの死亡シーンを考察
孤児院の子供たちが繰り広げる脱獄劇を描いたダークファンタージー作品「約束のネバーランド」。全編を貫く重要なテーマの一つにグプナという儀式があります。この記事では、グプナやそこで使われる花・ヴィダの意味やそのモデルとなった花の解説、さらにはグプナを語る上で欠かすことのできないコニーやクローネの死亡シーンに至るまで考察していきます。約束のネバーランドを理解するためのキーワード、グプナの全てがわかる内容になっていますので、この機会にぜひご覧ください!
目次
約束のネバーランドとは?
約束のネバーランドの概要
約束のネバーランドは、白井カイウ原作、出水ぽすか作画による漫画作品です。欧州の雰囲気を持つ世界を舞台に、施設で育った孤児たちが過酷な境遇から命がけで抜け出そうとする姿を描いたダークファンタージー作品となっています(略称:約ネバ)。
週刊少年ジャンプにて2016年35号より2020年28号まで連載された約束のネバーランド。単行本の累計発行部数は2020年12月時点で2600万部を突破する大ヒット作品となっています。また、メディアミックス展開も積極的に行われ、テレビアニメをはじめとして小説や実写版映画などが制作されました。
約束のネバーランドのあらすじ
約束のネバーランドの舞台となるのは、孤児院「グレイス=フィールドハウス(GFハウス)」。そこに暮らすエマとノーマン、レイの3人が本作の主人公です。彼女たちはいずれも頭脳明晰で、毎日行われる知能テストでは常に好成績を収めていました。
ある日の事、GFハウスから一人の少女が旅立つことになりました。6歳の少女コニーにようやく里親が見つかったというのです。コニーが去った後、彼女がぬいぐるみを忘れていったのに気付いたエマとノーマン。ぬいぐるみを持ってコニーの後を追いかけます。ところが、間違って入った立ち入り禁止区域で、2人は信じられない光景を目撃することになるのでした。
約束のネバーランドのグプナとは?
儀程(グプナ)とは?
ここからは、いよいよ本題に入っていきます。約束のネバーランドに登場するグプナとは、知性を持つ鬼たちが人を含む獲物を食す前に行う儀式の事をいいます。宗教色が強い儀式で神に糧を捧げます。
エマが初めて鳥を仕留めた時、鬼のソンジュは彼女にグプナについてレクチャーします。エマは、グプナが鬼の伝統的な肉の屠(ほふ)り方であり、獲物は臨終に際して苦痛を感じないことや神への感謝の気持ちが大切であることを学びます。
グプナに使う花はヴィダ
グプナを行う際、鬼は獲物の胸にある花を突き刺します。その花はヴィダという名前の吸血植物です。約束のネバーランドの世界ではどこにでも生えている、ごく普通に見ることのできる花でした。ただし、それは約束のネバーランドという架空の世界での話で、現実世界で見ることはできません。(ヴィダにはモデルとなった実在する花がありますが、それについては後述します)。
ヴィダは血液を吸い上げると赤い花を開く、美しくはありますが不気味な感じのする花です。しかし、ヴィダは鬼たちの間では神への感謝の祈りに使われる神聖な花のようです。エマもこのヴィダという花のおかげで、食物連鎖という自然界の摂理を学ぶことができました。
約束のネバーランドのグプナで花を刺す意味やモデル
グプナで花を刺す理由や意味
あらすじの項での説明の続きになりますが、コニーを追ってきたエマたちが目撃した衝撃のシーン。それは、つい先ほどまでかわいい笑顔を振りまいていたコニーの変わり果てた姿でした。コニーの胸には、ヴィダの花が突き刺さっています。グプナの儀式が取り行われていたようです。
それでは、いったいどのような理由で人間に花を刺すのでしょうか?次に鬼たちがグプナで花を刺す理由や意味について考察していきます。
考察①血抜きが目的?
人間(獲物)の体に花を刺すのは、血抜きをするためとされています。コニーの後を追ったエマたちが目撃した鬼ですが、実は彼らはコニーを食肉として出荷するためにGFハウスを訪れていました。
鬼たちは、まだ生きている人間にヴィダの花を挿して血抜きをすることで、血液による肉の劣化を防止していたのです。獲物が生きている間にヴィダの花を突き刺すことに抵抗を覚えるエマでしたが、防腐処理ということであれば生きている間に行わなければ意味がありません。
考察②花が咲いたら人肉を食べる?
グプナで人間の肉に花を突き刺すのは、神に感謝を捧げるという意味があります。そして、神が捧げものの肉を受け取ると、突き刺したヴィダの花が咲くとされています。
つまり、ヴィダの花が咲いたら神が受け取ってくれたことを意味するので、その肉を食べる許可が下りた、すなわち肉を食べることができるというわけなのです。
グプナに使う花のモデル
グプナに使う花・ヴィダ。架空の世界の花で実在はしません。しかし、ヴィダのモデルとなった花は、私たちの周りで普通に見ることのできる花です。そのモデルとなった花は、初夏から秋にかけて赤やピンクなど色とりどりの小さな花弁を付けます。この辺で名前を明かしますと、ヴィダのモデルになった花とはバーベナです。ヴィダのモデル・バーベナであれば、誰でも一度は見たり名前を聞いたりしたことがあるでしょう。
次にヴィダのモデルとなったバーベナの花言葉ですが、花の色によって異なります。赤いバーベナは「団結」、ピンクのバーベナは「家族の和合」だそうです。いずれの花も小さな花弁が集まって咲くことから、団結とか和合といった言葉がついたと言われています。
約束のネバーランドで作画を担当した出水ぽすかさんは、こうした花言葉に心惹かれてバーベナをモデルとしてヴィダを描いたといいます。また、宗教的な意味を持つバーベナには、英語圏では「魔力(enchantment)」や「私のために祈ってください(PrayForMe)」という花言葉が付いているようです。そうした点からも宗教的儀式グプナに使われる花のモデルとしてふさわしいと言ってよいでしょう。
約束のネバーランドでグプナが行われたコニーとクローネの死亡シーン
コニーの死亡シーン
GFハウスに暮らす36人の兄弟姉妹の一人、コニー。6歳の誕生日祝いにハウスのママことイザベルからもらったウサギのぬいぐるみ、リトルバーニーを何より大切にする優しい性格の女の子でした。
漫画「約束のネバーランド」は、このコニーが新たな里親のもとに向かうところから物語が始まります。時は2045年10月12日。仲間やイザベラとの別れを悲しみ取り乱していたコニーは、この時、宝物のリトルバニーを忘れたまま出発してしまいます。それに気づいた主人公エマとノーマンは、リトルバニーを抱えて彼女の後を追いました。
農園を過ぎて立ち入り禁止区域に迷い込んだ2人。そこで見たものは、胸にヴィダの花が突き刺さり無惨な姿で息絶えたコニーでした。あまりの驚きと恐怖に茫然とするエマたち。すると、そこに鬼とイザベルがやってきました。慌てて自動車の下に身を隠すエマとノーマン。この時にイザベルと鬼の交わした会話から、GFハウスに隠された真実を知ることになるのです。
クローネの死亡シーン
約束のネバーランドでは、コニーのほかにもエマたちが農園にいる間に鬼に殺された人間がいました。それは、イザベラの補佐役として本部から派遣されてきた飼育監補佐のクローネです。大柄で怪力の持ち主であるとともに、俊敏な身のこなしでエマたちの動きを制します。
GFハウスにやって来て暫くすると、クローネはイザベラの犯したミスを知ることになります。それはエマたちにGFハウスの秘密を知られたのに本部へ報告していなかったという規則違反でした。ところが当のイザベルは、エマたちが出荷できる年齢になるまで問題を起こさせなければよいと考えていました。そこで、彼女はクローネにエマたちの見張りを指示します。
エマたちを厳しく監視するクローネ。そして、エマたちが脱走を計画していることに気づきます。ところが、クローネはそれをイザベラに告げることなく、あろうことかエマたちに近づき脱走計画に加担しようとします。クローネは、子供たちに接近してイザベルの規則違反の証拠をつかみ、イザベラを失脚させた上で自分が飼育監の座に就こうと考えていたのです。
ところが、すぐにイザベラに気づかれてしまいGFハウスから追放される憂き目にあいます。飼育監の地位に執着するクローネはイザベラの件を本部に密告しますが、本部の考えもイザベラ同様、「エマたちの動きを制御できればよい」でした。結局クローネは鬼により殺され、食肉となって出荷されてしまいます。
鬼は、コニー同様にクローネに対してもグプナの儀式を執り行いました。ヴィダの花を刺されて息絶える前に、クローネは「ああ、空がきれい」と呟きます。かつてソンジュがエマに教えたように、グプナにより屠られた獲物は苦痛を感じないようでした。
約束のネバーランドの鬼たちが伝統的におこなうグプナを考察
考察①グプナの手順
約束のネバーランドで鬼たちがおこなう伝統的な儀式、グプナの手順は次のようになっています。まず、人間が生きている間に、まだ開花していないヴィダを人間の胸に刺します。暫くすると、血を吸い上げたヴィダは花を咲かせます。花が咲いたら即ち神が受け取ったとみなし、肉を食すことが許されます。
グプナは人間のみに行われるわけではなく、狩猟で取った獲物すべてがその対象となります。また、GFハウスでは、グプナが終了すると処理された食用児は専用の瓶に詰めて出荷されていました。
考察②鬼がグプナをおこなう理由
次に、鬼がグプナをおこなう理由について考察してみましょう。まだ幼い少女コニーを殺して出荷する衝撃的なシーンから、グプナに関して眉をひそめる方も少なくないことでしょう。
しかし、鬼にとって本来グプナとは単なる食肉処理の一手順ではなく、貴重な糧を与えてくれたことを神に感謝する神聖な儀式でした。また尊い犠牲となる人間に対して敬意と感謝を表し、その人間に苦痛を与えないためにこの儀式をおこなっていたのです。
考察③食用児たちを管理するようになり命への敬意がなくなった?
ところが、時代を経るにつれてグプナの意味も変化してしまいます。すべての鬼が人の命に敬意を払っていたのは、狩りで人間を捕えていた時代の事。ある時、人間と鬼の世界を統括する者との間で約束が交わされます。
それにより鬼は農園で人間の食用児を管理し、食卓に安定供給することが可能となりました。その結果、食用児が大量生産・消費されるようになり、命に対する敬意は薄れていきました。グプナ本来の意味も忘れ去られていったのです。
本来は貴重な食料を獲得する狩りも一部の富裕層の娯楽となり下がり、本来のグプナの儀式は信仰の伝統を重んじるごく一部の鬼の間でおこなわれるに過ぎなくなりました。
約束のネバーランドのグプナに関する感想や評価
ここまで約束のネバーランドのグプナ特集をお届けしてきましたが、最後にグプナに関する感想や評価をTwitterより紹介します。
→ 「食べられたくない、生きたい
— まりも🦉準備中🌹約ネバにハマってます (@marimo_angela) January 15, 2021
でも私達だって食べてきた
この先も食べなければ生きていけない」
狩りと儀程(グプナ)のシーン印象的だったなぁ
神への敬意なしには成立しないヴィダ🌹
これって本当に苦しくないんだろうか…コニー痛くなかったかなぁ😭
生きたまま刺すの痛そう#約束のネバーランド
最初にお届けするグプナに関する感想や評価は、約束のネバーランドにはまっており、お子さんと一緒にアニメを見ているという方のツイートからです。
鳥を弓で狩るシーンを見た子供が「鳥さん可哀想、鳥食べるの嫌だ」と言い出したそうです。それに対して、食べなければ生きていけない、食べられていく動物に対して敬意を持つことが必要だと説いたようです。生きる為に命をいただいていることを子供に教える良い機会になったと本作の意義を述べていました。
グプナのシーンはエマの成長を描いた大事な場面。時間を使って描写して、かつ原作絵の特長である各キャラの繊細な表情もきちんとアニメになっていてとても丁寧。来週からアクションが増えるかだろうからそっちも楽しみ😄#約ネバ
— しんたに (@tnsn729) January 14, 2021
次にに紹介するグプナに関する感想や評価は、アニメ版約束のネバーランドに強い感銘を受けたという方のツイートからです。
エマの成長を描く上で欠かすことのできない、グプナのシーン。この大切な場面を丁寧に描写し、原作画の特徴でもある各キャラの持つ繊細な表情もしっかり描かれていたのに感激したそうです。今後の展開も楽しみだと文章を結んでいました。
【約ネバ 2期】
— こんちえ㍍㍍おごそかな槍僧侶 (@konnchie) January 21, 2021
すごい地味なこと書きますが
儀程<グプナ>の説明がとても大事な要素入ってるなと思っている。
劇中で、信仰のためある動物を食べない位の敬虔な信徒である「ソンジュ」が
食べられる動物を狩った時、神に肉食の赦しを乞う儀式を、主人公に教えるシーン。
最後に紹介するグプナに関する感想や評価は、アニメ2期での儀程・グプナの解説にとても大事な要素を見出したという方のツイートからです。
信仰を守り特定の動物を食さない敬虔な信徒であるソンジュが、エマにグプナについて教えるシーンを例に挙げています。神に獲物の肉を食す許しを乞うという、ともすれば現代人の忘れている生きとし生ける者への尊崇の念。これを思い起こさせるソンジュの言葉と行為に感銘を受けたのでしょうか?
約束のネバーランドのグプナまとめ
ここまで約束のネバーランド・グプナとは?と題して、グプナという儀式の意味やそこで使われる花のモデル、さらにはグプナを語る上で欠かすことのできないコニーやクローネの死亡シーンを解説してきました。いかがでしたでしょうか?
約束のネバーランドに登場する鬼たちが、狩った獲物を食する前に行う伝統的で宗教的な儀式・グプナ。そこには、狩猟に頼る生活から畜産による大量生産・大量消費に移行する過程で、生きとし生けるものに対する尊崇の念を忘れてしまった、現代人にも通じるテーマが語られているという感想を持つ人も多いようです。
この記事を読んだ皆さんも、約束のネバーランドで作者が訴えたかったことに思いを馳せてみませんか?人間社会のあり様を今一度考えてみるきっかけとなるかも知れません。