【エヴァンゲリオン】人類補完計画とは？ゼーレと碇ゲンドウの目的の違いを考察

時たまブラックジョークとして語られることもある「人類補完計画」についてみなさんご存知ですか？『新世紀エヴァンゲリオン』の物語の中核に存在し、多くのファンにトラウマを植えつけたことでも有名な「人類補完計画」。今回はその「人類補完計画」について碇ゲンドウやゼーレの掲げる「人類補完計画」の目的や、『新世紀エヴァンゲリオン』と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』とでも少しづつ食い違う違いについて考察していきましょう！

まず「人類補完計画」の話題に移る前におさらいとして『新世紀エヴァンゲリオン』と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』にのおおまかな概要やあらすじについておさらいしていきましょう！

『新世紀エヴァンゲリオン』とはアニメーション会社「GAINAX」の代表作品となっているSF超大作です。

監督は「庵野秀明」監督が主にメガホンをとっており、1995年から放映されたアニメーション26話に加えて、劇場版にあたる『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』（1997）、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』（1997）、『REVIVAL OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)2 / Air / まごころを、君に』（1998）を核として展開しているメディアミックス作品を指します。

これに対して、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』とは2007年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』（EVANGELION:1.0 YOU ARE (NOT) ALONE.）からはじまった以下の劇場版４部作を指します。

• 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』（EVANGELION:1.0 YOU ARE (NOT) ALONE.）（2007）
• 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版：破』（EVANGELION:2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE.）（2009）
• 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』（EVANGELION:3.0 YOU CAN (NOT) REDO.）（2012）
• 『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』（EVANGELION:3.0 +1.0 Thrice Upon A Time）（2021）

『新世紀エヴァンゲリオン』の舞台は西暦2015年の芦ノ湖北岸に位置する「第3新東京市」です。主人公の「碇シンジ」はほぼ疎遠だった父親の「碇ゲンドウ」から突然呼び出され、「第3新東京市」を訪れるも謎の生命体「使徒」に襲撃されてしまいます。

そして、否応がなく父親のゲンドウが総司令を勤める特務機関「NERV（ネルフ）」の所有する汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」のパイロットとして、葛藤と挫折を繰り返しながら世界の命数を握る使徒と「NERV（ネルフ）」の闘いに身を投じていきます。

そのなかで徐々にゲンドウや裏で暗躍する謎の組織「ゼーレ」の思惑が碇シンジやパイロットの青少年たちを無情な運命に叩き込んでいくのです。その物語の中核にある計画が「人類補完計画」です。

主人公たちの運命を変えていく「人類補完計画」とはいったいなんなのでしょうか？はじめてその名前が登場するのはアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の第拾四話「ゼーレ、魂の座」になり、そこから徐々に風呂敷が開けられる形で以下の前提事項が提示されます。この前提事項についてはおおよそ『新世紀エヴァンゲリオン』と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』に違いはないと言えるでしょう。

• 「裏死海文書」に記されている啓示からゼーレが導き出したのが「人類補完計画」である
• 汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」と使徒を闘わせ「エヴァンゲリオン初号機とパイロット」を覚醒させることなど幾つかのトリガー（後述）がある
• ゼーレと碇ゲンドウの間で「人類補完計画」のそれぞれ解釈や目的の違いがある
• 「人類補完計画」によって人々の精神や肉体は融和しニンゲンは完全なる生命体になる

上記に紹介した使徒とは、地球に宇宙から飛来した「白き月」と呼ばれる謎の物体と「アダム」と呼称される最初の１体に連なる謎の生命体と、そして同じく「黒き月」から出た「リリス」を指します。その実態については謎が多いですが、人間と同じく「肉体」と「精神」という概念を持ち、「第3新東京市」の地下深く「ジオフロント」に隔離されたリリスと融合することで「インパクト」と呼ばれる厄災を起こすとされています。

そしてこの使徒に対抗するため、人類を使徒から護るために建造されたのが汎用人型決戦兵器人造人間「エヴァンゲリオン」と「第3新東京市」、ひいては特務機関「NERV（ネルフ）」だとされています。しかしこの超常的な能力と人類を殲滅するような動きに反し、のちのちにこの使徒の動きすらも「裏死海文書」に記されたゼーレと碇ゲンドウのかかげる「人類補完計画」のファクターであることが判明します。

まずはエヴァンゲリオンシリーズにおける人類補完計画の概要について触れてみました。それでは、ここからはより詳しく人類補完計画についてのゼーレと碇ゲンドウの目的の違いなどを確認していきましょう。

「人類補完計画」の根本的な目的は先述の通り、「人類を完全な生命体へと昇華すること」です。これは、人類をはじめとする地球のすべての生命体が実は、原初の使徒の一柱である「リリス」の産んだ人類が「知恵の実」とL.C.L.と呼ばれるリリスの体液から出来ており、同じく「アダム」から「生命の実」を受けて産まれてきた使徒とが存在することに所以しています。

この「生命の実」と「知恵の実」が融け合って個を個たらしめている境界線である「A.T.フィールド」が融解することで、個という概念がなくなり、星そのものがひとつの生命体へと昇華するのです。こうすることによって人類は滅びることのない永遠に生き続ける生物になると考えられています。これが人類補完計画を実行する目的の大筋部分です。

「A.T.フィールド」とは魂を包括する精神を包み込み、個を個たらしめるための境界線のような存在です。「Absolute Terror FIELD」の略で日本語では「絶対恐怖領域」とも呼ばれ、他人との距離を適正に保つための精神的な防壁と言えます。使徒や汎用人型決戦兵器人造人間「エヴァンゲリオン」はこの「A.T.フィールド」がとても強く、一般的な兵器では傷が一切つかないなど強力な拒絶を外界に対して示します。

「人類補完計画」のこの「生命の実」と「知恵の実」は実は『新世紀エヴァンゲリオン』劇中では「裏死海文書」…現実では、旧約聖書の内容に従っています。

この旧約聖書に記された「命の木」と「善悪の知識の木」になっている実がそれぞれ「命の実」と「知恵の実」になります。現実で信仰されているこの失楽園の物語は悪魔の化身である蛇がアダムとイヴという原初の人をそそのかして、食べてはいけないと神様に言われていた「知恵の実」を食べてしまったことで知性と短命の性を得て、人類ははじまったとされています。

エヴァンゲリオンの世界では、この「生命の実」や人類の起源を使徒「リリス」と結びつけ、神に等しい完全なる生命体になるためには命の木に生っていたはずの「生命の実」を獲て一個の完璧なる存在になる必要があるとされているのです。

すべてが融け合った完全なる生命とはどんな存在でしょう？人類補完計画は成功するとどうなるのでしょうか？この答えについては旧劇場版『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』（1997）、『REVIVAL OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)2 / Air / まごころを、君に』（1998）などを確認すると視覚的に理解することが出来ます。

先ほどL.C.L.とリリスのもたらした「生命の実」によって人類は産まれたとご紹介しましたが、A.T.フィールドと呼ばれる個と個を隔てる壁が人類補完計画によって溶けてしまうと、生命のスープとも呼ばれるL.C.L.にすべてが溶けて液状化してしまいます。おぞましいともとれるかもしれません。それとも幸せともいえるのでしょうか。視聴者にとって、この人類補完計画が果たされたことはバッドエンドともメリーバッドエンドとも捉えられています。

人類補完計画をなぜ行いたいか、これはゼーレと碇ゲンドウでは異なっています。ゼーレが人類補完計画に従うのは「裏死海文書」に書かれた啓示の再現と人類の再生という宗教的な事情によるものです。一方で碇ゲンドウの目的は妻にして最愛の人である「碇ユイ」の死を覆して自分が神となり再会することです。この目的にの食い違いから碇ゲンドウはゼーレのシナリオに従うことを秘密裏に逃れ、物語を書き換えようとしていきます。

そのために息子の碇シンジは人類補完計画の鍵として選ばれ、エヴァンゲリオン初号機のパイロットとしてこの数奇な闘いに挑むことになるのです。旧劇場版では、人類補完計画はなされてしまいましたが、ループ説も囁かれている新劇場版でも碇ゲンドウとゼーレの双方は同じく人類補完計画を完成させようとしています。そのなかで旧劇場版と新劇場版では少しづつ違いも出てきています。どうなるのかファンの考察も最高潮になっています。

『新世紀エヴァンゲリオン』の中核を担っている「人類補完計画」における発動のキーと役割についてこの章ではご紹介していきましょう。

『新世紀エヴァンゲリオン』において「人類補完計画」を完成させるキーは、サードインパクトを引き起こさせるように碇シンジの精神に苦難を与えることも含まれます。人類がもつ「知恵の実」とは善悪の観念や感情を持ち、他人に理解されたいという欲を持っています。その共依存的な感情を煽り、己の手でサードインパクトに至る選択を選ばせるためにゼーレは渚カヲルを遣わすことになるのです。

渚カヲルは実は、使徒「アダム」の魂をサルベージしてつくられたクローン体であり、「第17使徒タブリス」でもあります。渚カヲルはゼーレから碇ゲンドウの目的を阻止するために遣わされ、セントラルドグマの地下にいると教えられていた使徒「アダム」と融合してインパクトを起こすべく動いていました。しかし、碇シンジと友人になり、そしてセントラルドグマの底でゼーレの思惑を察知すると碇シンジの手で殺されることを望むのでした。

エヴァンゲリオン零号機のパイロットでもある綾波レイは実は、使徒「リリス」の魂を器に宿したクローン体となっています。つまり、渚カヲルと対になる存在です。同時に碇シンジの母であり碇ゲンドウの人類補完計画の目的でもある「碇ユイ」と使徒「アダム」の遺伝子を練り合わせた特殊な存在でもあります。綾波レイは碇ゲンドウの人類補完計画のために必要なキーのひとつでもあります。

碇シンジは『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公でもあり、ゼーレと碇ゲンドウの目的の共通項である人類補完計画の最大のキーとなる少年です。エヴァンゲリオン初号機を自在に操り、ロンギヌスの槍を使用して人類補完計画を結実させる直接のトリガーとされており、旧劇場版では実際に人類補完計画を成功させました。

また、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版：破』（EVANGELION:2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE.）（2009）では綾波レイを助けるためにエヴァンゲリオン初号機を覚醒させ、サードインパクトをおこしかけたということが『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』（EVANGELION:3.0 YOU CAN (NOT) REDO.）（2012）で明らかになりました。

エヴァンゲリオン初号機はゼーレと碇ゲンドウの描く人類補完計画の中核にいる存在のひとつです。エヴァンゲリオン初号機は実は使徒「リリス」の直接のコピー体、すなわち「クローン」とも言える存在です。『新世紀エヴァンゲリオン』では第14使徒ゼルエルのコア…「S2機関」を捕食したことで、アダムから産まれた使徒の持つ「生命の実」を得て覚醒し神のような全知全能な存在になりました。

同じく『ヱヴァンゲリヲン新劇場版：破』（EVANGELION:2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE.）（2009）では前述の通り、碇シンジの強い意志によって覚醒しています。

ロンギヌスの槍は人類補完計画を象徴するアーティファクトのひとつです。効能は「アンチA.T.フィールドを発生することでA.T.フィールドを中和すること」であり、言い換えればこれで突き刺された対象はとてもコンパクトな範囲内で人類補完計画の一部の効果であるA.T.フィールドの崩壊を起こしているともいえます。また、セントラルドグマの底で封印されている使徒リリスを釘付けにしているのもこのロンギヌスの槍です。

アニメ版『新世紀エヴァンゲリオン』の最終盤では、碇シンジの精神世界として人類補完計画の行先が描かれていました。起きている事象こそ②の旧劇場版と同じですが、テレビ版最終話「世界の中心でアイを叫んだけもの」では碇シンジがその精神世界のなかで世界を再構築出来ることに気付き己のエゴや周りに抱いている恐怖を自覚し世界を作り変えようとしたところで幕を閉じています。

『REVIVAL OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)2 / Air / まごころを、君に』（1998）では、実際に「なぜ碇シンジがサードインパクトを起こすに至ったか」や「どんなことが人類補完計画によって起こってしまうのか」などが描かれています。それは全ての生命、人類ことリリスから産まれた生命「リリン」が個を失ってL.C.Lの原初の海に還るというショッキングなものでした。

そこから、ループしたのか、あるいは人類補完計画によって碇シンジが見出した新しい世界なのか、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』でも同じように使徒が襲う世界のなかでゼーレと碇ゲンドウのそれぞれの人類補完計画が秘密裏に遂行されていきます。

そして、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』（EVANGELION:3.0 YOU CAN (NOT) REDO.）（2012）では「エヴァ第13号機」と呼ばれるふたり乗りの機体で碇シンジと渚カヲルがセントラルドグマへ向かい、そこで「フォースインパクト」を発生させます。しかしながら、碇シンジの意志もあってそのインパクトは中途半端な状態で中断され、コアのような形に多くのものが置きかわりつつも登場人物たちの多くは生き残りました。

この章では碇ゲンドウと人類補完計画の目的が違うとされている秘密結社「ゼーレ」とはいったいどんな組織なのか改めておさらいしましょう。

「ゼーレ（SEELE）」とは特務機関「NERV（ネルフ）」に対して極秘裏に計画の遂行を促している秘密結社です。特務機関「NERV」の前身である研究機関「ゲヒルン (GEHIRN)」の頃から「裏死海文書」に記された啓示と使徒や「生命の実」「知恵の実」について研究を進め、特務機関「NERV（ネルフ）」のメインスーパーコンピュータシステム「MAGI」の製造にも裏で関わっているとされています。

余談ながら、「ゼーレ（SEELE）」はドイツ語で「魂、精神」などを表し、「ゲヒルン (GEHIRN)」は同じく「脳」を意味します。かなり宗教色の強い組織でもあり、それゆえに多くの謎をファンに投げかけてきた『新世紀エヴァンゲリオン』の肝となる設定をになった機関です。

「ゼーレ」はエヴァンゲリオン劇中で登場する際には必ずモノリスのような直方体に数字などの要素が印字された物体か、12名ほどの人物がホログラムで表される非常にインパクトの強い組織でした。印字のモチーフも『ヨハネ黙示録』第5章6節に記されている「７つの角と７つの目をもつ羊」が採用されており、超越者のような立場での発言からより人外感を醸し出しています。

「ゼーレ」の構成員が劇中に実在するニンゲンで遠隔通話などを行なっているだけなのか、はたまた全く別の存在なのかについては答えがはっきりと記されていません。しかしながら、モノリスのような姿や劇中で登場するセリフの内容を精査すると「もしかしたら魂だけで肉体がないのかもしれない」「精神のみの存在なのかもしれない」ととれてしまう場面もあります。

こちらは旧劇場版で後述の「L.C.L」化を起こし肉体がなくなったあとのゼーレ構成員のカットです。こちらでは他の登場人物たち同様に肉体が溶け落ちたものの、義体のように大部分が機械になっているのが一瞬ですが映り込みます。このことから文字通り「肉体は機械に置換済みの魂（SEELE）のみの存在だった」ともとれるのです。

また、『新世紀エヴァンゲリオン』アニメシリーズ第弐拾壱話「涙」では赤木リツコによってこのようなことも証言されています。

これは劇中でリリスの魂を移してつくったという綾波レイやエヴァンゲリオンの正体についての言及セリフですが、このことから『新世紀エヴァンゲリオン』の劇中では「全く別個の存在に魂だけをサルベージして代入することが出来る」と考察できます。そのことから、先の考察①のようにモノリスや義体化して長い間生きることが可能になっている器に魂を代入している存在である可能性は高そうです。

その構図はまさに「生命の実を与えられた生命体」…すなわち「ニンゲン」の究極の形といってもいいでしょう。

また注目すべき点としてはアニメや旧劇場版と新劇場版のゼーレの違いにもあります。なんとゼーレの構成員とされていた12名のうち、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』では7つのモノリスへと存在が変わっているのです。もちろんそれ以外にもアニメシリーズと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』では差分がたくさんあるため、「ループ説」や「並行世界説」など様々ささやかれていますが、この減った理由を考察する上で旧劇場版の存在は欠かせません。

旧劇場版にあたる『REVIVAL OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)2 / Air / まごころを、君に』（1998）では、実際に人類補完計画がなされてL.C.L化するゼーレの構成員たちも先程の紹介通り映っています。

その上で、ゼーレが魂をすでにL.C.L.化出来ない人工物のなかに封じ込めていた場合、世界が碇シンジによって書き換えられて再構築された先でこれがそのまま『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で登場している、という説があるのです。まだ真相はすべて語られていないものの、ファンの間では「人類補完計画の経過を観測をするために残った」という説などが日々考察されています。

この章では人類補完計画に関わってくるエヴァンゲリオンの用語についてもう少し詳しくご紹介していきましょう！

先程ご紹介した「L.C.L.」は『新世紀エヴァンゲリオン』の非常に重要な要素のひとつになっています。「L.C.L.」は前述の通り使徒「リリス」の体液だと説明しましたが、この「L.C.L.」は劇中では汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンの各シリーズを操縦する際にパイロットが乗り込む「エントリープラグ」の中を満たしていることでも知られています。

エヴァンゲリオンの核である母親の魂とL.C.L.を媒介にしてエヴァンゲリオンにパイロットの魂を融和させてコントロールすることがわかっており、アニメシリーズの中盤まではそれ以上のことはわかっていませんでした。しかし、旧劇場版含め物語が終盤へと進み「人類補完計画」の全容が見えてくると、ニンゲンという種をが実は「リリス」のL.C.L.が溶け出して海となり、そこから発生していたことが明らかになるのです。

そして、人類補完計画を実行することでそれぞれのA.T.フィールドが融和された先で人間は原初であるL.C.L.…オレンジ色の「生命のスープ」に還ってしまうとされています。また、新劇場版では少し様子が違い、L.C.L.化とはまた別の現象、ないしは演出の変更で俗に「コア化」と呼ばれる現象も見られています。新劇場版ではL.C.L.化する代わりにコア化している…とみることができるでしょう。

特務機関「NERV（ネルフ）」は、前述でご説明した通り「ゼーレ」に裏から手を引かれる形で表向きは「使徒から人類を護る特務機関」として、裏側では「人類補完計画を達成するための実務機関」として存在しています。しかし職員の大半が「人類補完計画」については知らされておらず、旧劇場版では実際に人類補完計画が達成された際に逃げ惑い恐怖する職員たちが確認されています。

また、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版：破』（EVANGELION:2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE.）（2009）で使徒によって多大な被害を被り、ニアサードインパクトを経験した特務機関「NERV」はアニメシリーズとは違い内部分裂を起こすことになります。

そこから14年後の設定になる『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』（EVANGELION:3.0 YOU CAN (NOT) REDO.）（2012）では、「WILLE（ヴィレ）」と呼ばれる反抗組織が結成され、ゼーレの野望をどうやら察知しているらしい様子が伺えました。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』では特務機関「NERV」ロゴもコンピューターバグを起こしたかのような様子に変化しています。

こちらの方は現代社会と劇中の「人類補完計画」を見比べてブラックジョークのように幸福論をツイートされています。こうやってみると「人類補完計画」は現代日本人が欲している心の拠り所に近いという見方もあるようです。

こちらの方もそっと「人類補完計画」をブラックジョークとして推奨しています。言っていることはとても優しくピースフルでありながら、映像化されそこに至るまでにさまざまな登場人物が壊れていったり死んでいくさまをみると鬱になるという非常に皮肉な構造になっているのです。

こちらはループ説を考慮した上でアスカとシンジの言動を考察し、感動している方の反応です。碇シンジがトリガーとなって「人類補完計画」によって世界が再編された先で、本来ならば溶け合うはずだったアスカとシンジの距離感や未来に別の可能性が灯つつあるのはとても回収されればアツい展開だといえるでしょう。

こちらの方は「人類補完計画」によって閉じたはずの『新世紀エヴァンゲリオン』の物語と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』がどうやって繋がるのかについて疑問点をあげてくださっています。まだまだファンのなかでも考察がされている「人類補完計画」の真の結果がどのように着地し語られるのかは『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』に期待しましょう！

エヴァンゲリオンの世界の中枢に存在する「人類補完計画」についての考察はいかがでしたか？碇シンジとゼーレの思惑の違いや『新世紀エヴァンゲリオン』と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の違いなどまだまだこの記事だけでは網羅しきれない謎がエヴァンゲリオンの世界には満ちているのがご覧いただけるでしょう。

2021年1月23日に公開予定の『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』（EVANGELION:3.0 +1.0 Thrice Upon A Time）など、まだまだ「人類補完計画」に至る考察を楽しむことが出来る作品が控えていますので、今のうちに今までの『新世紀エヴァンゲリオン』や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』にまつわる作品群をチェックしなおしても楽しいでしょう！