【めぞん一刻】音無惣一郎とはどんな人物？響子との馴れ初めや人物像を考察

高橋留美子さんの代表作「うる星やつら」と「めぞん一刻」は、SFギャクとラブコメという趣の違う作品です。しかしこの2作品は、小学館漫画雑誌の少年向け・青年向けでそれぞれヒットしています。高橋留美子さんは、年齢層に関係なく愛される漫画家の一人であると言えるでしょう。

「うる星やつら」で知られる高橋留美子原作の80年代恋愛漫画の金字塔「めぞん一刻」は、小学館「ビッグコミックスピリッツ」創刊号1980年11月号から1987年の19号まで連載され、単行本は全15巻です。その後、新装版・ワイド版・文庫版が出ており、当時を懐かしむ世代に親しまれているようです。「めぞん一刻」のテレビアニメ版は、1986年から1988年まで放映され、実写版として映画やテレビドラマも制作されています。

「めぞん一刻」の声優には「うる星やつら」繋がりの声優が多く起用され、五代裕作役・二又一成さんと音無響子役・島本須美さんは「うる星やつら」ではサブキャラを担当しています。他には千葉繁さん・神谷明さん・三田ゆう子さん・古川登志夫さんなど豪華すぎるメンバーが脇を固めています。アニメ版「めぞん一刻」が終了した1988年には、アニメ映画「めぞん一刻 完結篇」が公開されています。

架空の街・時計坂にある木造2階建ての古いアパート「一刻館」の常識はずれな住人に馴染めない浪人生・五代は転居をしようと試みるものの、優柔不断な性格が災いして結局は断念してしまうとう負のスパイラルに陥ってしまいます。

悶々とした日々を送っている五代は、管理人として赴任してきた美人で若き未亡人・音無響子に一目惚れをしてしまいます。「一刻館」を舞台に善良であるものの優柔不断な五代と、亡き夫への思慕を秘めた管理人・響子とのスローテンポな恋を独特なユーモアを織り交ぜながら展開していきます。

人生迷走中の五代にとって響子を巡る恋敵は、彼とは真逆のハイスペックでイケメンのテニスコーチ三鷹ですが、最大の恋敵は響子の亡き夫・音無惣一郎だといえるでしょう。響子の愛犬・聡一郎（雄）は響子の亡き夫と同名のため、五代は否応なしに最大の恋敵を身近に感じてしまうことになるのです。

五代の最大の恋敵・音無惣一郎と同名である響子の愛犬・聡一郎は、生前の音無惣一郎が買った焼き鳥に引き寄せられるまま音無家のペットとなった雑種の白犬の野良犬です。主の音無惣一郎より命名された「シロ」と呼ばれるより、なぜが響子から「惣一郎さん」と呼ばれると反応してしまい、音無惣一郎の死後は「惣一郎」という呼び名が定着したようです。

家でぼんやりしていた音無惣一郎は、父が理事をしている響子が通う女子高の地学の非常勤講師となったようです。社会人経験はありそうなので、響子より10歳ほど年上と想定され年齢は30代前後と見られます。故人として回想シーンで登場していた音無惣一郎は、シルエットで描写されており素顔は不明ですが、ひょんなことから五代が音無惣一郎の素顔を見てしまうかもという展開が度々あります。

読者・視聴者も五代と共にハラハラしてしまうのですが、なぜかあと一歩のところで五代は音無惣一郎の素顔が確認できなかったというコメディタッチな展開になっています。物語の終盤で響子との結婚式を迎える直前に五代は、響子と音無惣一郎との結婚写真でやっと素顔が確認することができます。五代は音無惣一郎の素顔を確認しましたが、読者・視聴者には見えない描写で素顔がわからないまま物語は完結しています。

音無惣一郎の死因に関しては全く触れておらず、音無惣一郎の死因よりも愛する人を失った響子の悲しみや虚無感に重点が置かれています。「めぞん一刻」と同時期にヒットしたあだち充原作の漫画「タッチ」でも、和也の交通事故死の詳細にはあまり追及しておらず、「めぞん一刻」の響子のように和也を失った達也と南の悲しみや虚無感に重点が置かれています。

夫婦やカップルなどに「馴れ初めは？」という質問がありますが、響子と音無惣一郎の馴れ初めを端的に表現すると、「先生と生徒として出会った」となるでしょう。音無惣一郎が初めて授業を受け持った時、騒がしいクラスメイトを委員長として響子が注意したのが二人の初めての出会いとなります。

響子と音無惣一郎との回想シーンでは、恋愛関係に至るまでの明確な馴れ初めエピソードは描かれていません。非常勤講師の音無惣一郎に好意を寄せている女子高生・響子は大胆な行動は取れないものの、自分なりのやり方で音無惣一郎にアタックしている初々しい描写があります。

一般的に年齢差があると結婚に反対されがちなものです。特に人生経験が浅い響子と音無惣一郎のような年齢差カップルは猛反対されるのは仕方がないものの、響子と音無惣一郎は親の猛反対を押し切って1979年に結婚しています。

1959年生まれの響子は1979年の結婚時は20歳となっていたので、高校を卒業したと同時の結婚ではなかったようです。高校卒業後に結婚という表現が正しいのかもしれません。先生と生徒の関係であった頃の音無惣一郎は、響子に対して大人として誠実な対応をとっていたのではないでしょうか。幸せな結婚生活は半年後の1980年の春、音無惣一郎の死であっけなく幕を閉じてしまいます。

現在、国宝級のベテラン声優が数多く名を連ねる青二プロダクションに所属している田中秀幸さんは、声優と俳優活動を含めて芸歴が長く、芸歴スタート時の年齢はラジオドラマの主役に合格した5歳からだそうです。まるっきり素人だった少年・田中秀幸さんは、児童劇団所属のプロ予備軍の子役を押しのけ400人の中から大抜擢されます。

以降、役者をやりたいと意識し始めた田中秀幸さんは、桐朋学園芸術短期大学では演劇を専攻しています。劇団青年座に所属していた頃の1974年に、「科学忍者隊ガッチャマン」のゲストキャラ・ヘムラー役で声優デビューはしています。翌年1975年の「ドカベン」での山田太郎役で初主演以降、田中秀幸さんは幅広いキャラを演じる実力派声優としてキャリアを築いてきます。

「キャプテン翼」「CITY HUNTER」「キン肉マン」「タッチ」「ハイスクール!奇面組」「魁!!男塾」「SLAM DUNK」など少年漫画を原作としたアニメの主要キャラを演じており、特に「週刊少年ジャンプ」のアニメ作品とは関わりが深いようです。田中秀幸さんは国民的アニメ「サザエさん」で、マスオ役を2019年8月25日放送回より前任の増岡弘さんから引き継いでおり、マスオ役は田中秀幸さんの代表キャラとなることでしょう。

洋画の吹替えでは「007」シリーズのピアース・ブロスナンや、アカデミー賞俳優のケヴィン・スペイシーが出演している「L.A.コンフィデンシャル」「セブン」「ユージュアル・サスペクツ」など渋いハリウッドスターを担当しています。

「めぞん一刻」連載当時は「名探偵コナン」はやっていませんでしたが、今こうして見てみると黒く塗りつぶされている音無惣一郎がコナンでお馴染みの犯人に見えてしまい妙な笑いを誘います。

高橋留美子さんの漫画に登場するキャラは個性的過ぎるキャラばかりで、平凡な音無惣一郎は目立たないかもしれません。しかし、個性的過ぎるキャラの中で穏やかな音無惣一郎は、癒しを感じさせるものがあり逆に注目度が高いかもしれません。好きなキャラランキングで上位に食い込むことはなさそうですが、中間前後ぐらいにはランキングされているかもしれません。

「バーロー」とぶっきらぼうな口癖の「名探偵コナン」の江戸川コナンこと工藤新一の父・優作役は音無惣一郎役の田中秀幸さんで、母・有希子役は音無響子役の島本須美さんとなっています。ちなみに一代目・毛利小五郎役は、響子に猛アタックするイケメンテニスコーチの三鷹役の神谷明さんです。「めぞん一刻」繋がりでまとめてみました。

「めぞん一刻」漫画・アニメ全般を通して、音無惣一郎に関する情報は最小限にしか描かれていません。音無惣一郎は響子の母校の非常勤講師で、年齢は30代という非常に少ない情報しかなく、最後まで読者・視聴者は音無惣一郎の素顔を拝むことができませんでした。

音無惣一郎は親類縁者からうだつが上がらない人物評だったようですが、遺品に懐中時計や丸縁のメガネがあったことから素顔は穏やかで包容力ある人物だったのではないでしょうか。サイドストーリーとして響子と音無惣一郎との馴れ初めエピソードや、素顔や年齢を知りたいと熱望しているファンもいることでしょう。