2019年05月15日公開
2019年05月15日更新
ナウシカの王蟲の魅力と正体とは?ナウシカが助けた子供やモデル・裏設定を考察
風の谷のナウシカの陰の主人公とも言われるのが王蟲です。風の谷のナウシカの世界観を象徴すると言っても過言ではない存在である王蟲ですが、その生態故に作中で多くは語られていないです。今回は風の谷のナウシカに登場する王蟲について、その正体からモデル、鳴き声や子供についてなど、作中で分かりにくい部分から設定はされながら描かれなかった裏設定などについて考察・紹介していきます。
風の谷のナウシカの王蟲の魅力は?
王蟲とは
王蟲を含む蟲と総称される生物は風の谷のナウシカの地域の1つである腐海に住んでいます。この腐海は人間にとっては5分そのまま吸ってしまったら死に至るような有毒なガスが充満している為、人間の手がほとんど入る事はありません。そんな世界で現実世界における昆虫や虫と言われる存在が大きく成長したのが風の谷のナウシカにおける蟲で王蟲もその一種です。
ちなみに作中では基本的に王蟲と漢字で表記されますが読み方は「オウム」ではなく「オーム」と読みます。
王蟲の大きさ
王蟲の最大の特徴といえるのがその体躯です。風の谷のナウシカに登場する蟲は元になったと思われる虫よりも大きくなっている場合が多いですが、王蟲は蟲の中でも最大級の体躯を誇り、大きな個体になると体長は80mにも及びます。まさに蟲の中の王と呼称するに相応しい大きさです。この大きさになるまでには何度か脱皮を繰り返す事で成長します。
怒ると眼の色が赤くなる
出典: https://ciatr.jp
映画中ではあまり見られませんが王蟲の目は普段は青いです。しかし怒るとその青い目を赤くして襲ってきます。映画において王蟲の初登場シーンとなる冒頭のユパを追いかける場面などは王蟲は怒った状態だったという事です。
攻撃力も高い
人間と比較するとその巨体だけに1体いるだけでもかなりにの驚異ですが王蟲は群れを成す生き物である為集団で襲ってくる事もあります。その巨体から繰り出される体当たりだけでも十分な攻撃力を誇っており、さらに口から出す触手にも治療をするような不思議な力を宿しています。当然怒った状態で人の居住地に入り込めばその被害は甚大なものになってしまいます。
テレパシーで人とコミュニケーションを取る
蟲でも最大の体躯を誇る王蟲ですが、実は高い知性も有しています。蟲の中にあって人が知性を感じ取る事ができるのは王蟲だけです。映画内でもナウシカと意思疎通を取ろうとするシーンなどを垣間見る事が出来ます。さらに踏み込むと原作では王蟲は念話、テレパシーで人であるナウシカとコミュニケーションを取るシーンすら存在しています。
しかもこのシーンでの王蟲の言葉をそのまま受け取ると王蟲は王蟲全体で1つの集合意識のような物を持っている事も分かります。他の個体が会ったからナウシカの事を知っていると言った事実を伝えてくるのです。
風の谷のナウシカの王蟲の正体は?
王蟲は人工生物
映画では最後までその正体が不明だった王蟲ですが、原作となる漫画ではさらにその正体について言及するシーンがあります。なんと王蟲は人の手によって作られた生物だというのです。さらに付け加えると王蟲達が住む腐海も、驚きな事にナウシカ達生き残っている人類さえも人によって汚染された世界に耐えられるように改造された改造人間だというのです。
王蟲は腐海がその役割を果たせるように守護者の役割を果たすべく作られました。さらにいうと腐海がその役割を果たした時、王蟲ら蟲も共にその生命が尽きるように作られています。また守護者という役割を持つのは王蟲だけではなく腐海に住む全ての蟲がそうである為、姿形は違っても連帯している姿が見受けられます。
また守護者というその役割上、腐海を出ては生きられないようにもなっている点、万が一外に出て死んだ場合、身体に付着している胞子から新たな腐海が作られるなど、よくよくその設定を見ていくと、腐海を守る為だけに存在しているのが非常に分かりやすい存在になっています。
王蟲の鳴き声はギター?
王蟲のもう1つの特徴と言えるのがその鳴き声です。独特の鳴き声を放つ王蟲ですがこの鳴き声はなんとギターの音である事が分かっています。この事が判明したのは映画が公開されてから20年以上が経過した2011年の事、ミュージシャンである布袋寅泰さんが自身のツイッター上で好きなジブリ映画を聞かれて「ナウシカの王蟲の鳴き声は僕のギターなんですよ」と答えた事で発覚しました。
20年以上経過して判明した王蟲の鳴き声という新事実はファンの間では大きな話題を呼びました。ちなみにこの話は風の谷のナウシカ以降もジブリ映画の音楽を担当し続ける事になる久石譲さんからの依頼だったようで「ギターで泣いてくれ」とオーダーを受けて作られたのが王蟲の鳴き声だそうです。余談ですが王蟲以外の蟲もそれぞれに鳴き声を発しますがそのモデルや元になった音などは現在でも不明のままです。
王蟲のモデルは?
風の谷のナウシカでは陰の主役と言われる程に存在感を放った王蟲。まずはじめに宮崎駿監督はそのモデルについて言及した事がありません。その為、王蟲のモデルについては様々な考察が行われています。その中でも有力な説と言われるのが「モスラの幼虫」説です。この説におけるモスラの幼虫とは1961年にモスラが初登場した際のモスラの幼虫を指しています。
この時のモスラは特撮によって撮影されており、その実10mにもなる着ぐるみを8人の人が中に入って動かしたそうで、この時の不思議な動きが王蟲の身体を伸縮させて動くあの独特な動きに繋がったのではないかと考察されています。このモスラの映画公開時、宮崎駿監督は20代で他の作品から影響を受ける事も十分にあったのではないかとも言われています。
作品の中の動きなど見た目的な要素に加えて宮崎駿監督自身の変遷も含めて考えられたこの考察は王蟲のモデル考察の中ではかなり有力な説として支持されています。ただこの王蟲のモデル「モスラの幼生」説はあくまでもファンによる考察で公式に王蟲のモデルについて何か発言等があった事はなくモデルの意味合いでの王蟲の正体は不明なままです。
腐海の蟲
腐海とは
王蟲ら蟲が住む腐海ですが「海」という字を含んではいますがその正体はどちらかといえば森です。海と表現されるのはこの森を構成する動植物が森を覆い隠す程の障気という猛毒を放つ為です。この森の中では人類はもちろん従来の生態系で生きてきたあらゆる生物が死んでしまいます。映画風の谷のナウシカの中では過去の文明が滅亡し汚染された不毛の大地に生まれた新しい世界とも言われています。
腐海の蟲
風の谷のナウシカで登場する腐海には王蟲以外にも王蟲と同じく役割を持った蟲達が存在しています。
蟲①ウシアブ
ウシアブは翅蟲(はむし)の一種で赤紫色の身体に左右に2枚ずつ、計4枚の翅を使って空を飛ぶ事ができる蟲です。顔の横一列に並んだ複眼が特徴的です。また危険を感じると仲間を呼ぶ性質を持っており、まるで現実のハチのように集団で敵対者に襲いかかります。映画風の谷のナウシカではナウシカが虫笛を使って森に帰らせたのがウシアブです。
蟲②大王ヤンマ
ヤンマという名称から分かるようにトンボに近い姿をしている蟲が大王ヤンマです。青緑色の身体に大きな4枚の翅を持ち、トンボとは言っても体長は人間と同じくらいありる程に大きく、こちらも基本的には群れで行動しています。腐海の危機を察知した場合、自ら闘うのではなく、周囲の他の蟲さえも呼び集めてしまう性質を持っており、「腐海の見張り番」とも呼ばれています。
蟲③ヘビケラ
蛇のように長い身体を持ち、ながら4枚の翅を持ち空を飛ぶ事もできるのがヘビケラです。蟲の中でも特に大きな体を持ち体長は数10mにも達すると言われています。頭部の大きな牙は蟲の中でも高い攻撃力を見せ、さらにその飛ぶ速度も風の谷のナウシカに登場する航空機、バカガラスよりも速いです。ちなみに幼生の頃はミノネズミと呼ばれておりまだ空を飛べない状態から大きくなります。
ナウシカが助けた子供の王蟲のその後
ナウシカが子供の王蟲を飼っている理由
映画でも描かれているように風の谷のナウシカのヒロイン、ナウシカは子供の頃に王蟲の子供を飼っていた経験があります。しかしこれは父ジルにバレてしまいナウシカの必死のかばいも虚しく取り上げられてしまいます。その王蟲の子供がどうなったかまでは描かれていませんがなぜここまでナウシカが必死にかばったのかというのが原作には描かれています。
なんと既に亡くなってしまっているナウシカの母には蟲使いのDNAが流れていたというのです。子供の頃から蟲の心を知れる素養があるからこそ、大人になった映画でのナウシカは姫ねえさまと呼ばれるカリスマ性を有しながら人々が恐れる王蟲とさえ仲良くなり腐海の研究を続け、ついには腐海の秘密にも気づける程の才覚をみせるのです。
ナウシカが助けた子供の王蟲再会?
上記の回想シーンを見るとさらなる疑問が浮かびます。映画の中で風の谷にトルメキアの船が墜落、その船の残骸に残っていた蟲をナウシカが森まで届ける展開があります。そしてナウシカが虫を届けた後ジーッとナウシカを見つめる王蟲が登場するのです。このシーンと上記の回想シーンを合わせるともしやこの王蟲はナウシカが飼っていた子供の王蟲だったのではないかと考えられるのです。
しかし残念ながらこの疑問の答えはNOでこの王蟲はナウシカが飼っていた子供の王蟲とは別個体だとする考察がほとんどです。それが分かる理由は単純で取り上げた父ジルが身をもって王蟲の危険性を知っているからです。そしてナウシカもまた父ジルがどうするかを理解していたからこそ父がそうすると言ったわけでも素振りを見せたわけでもないのにも関わらず「殺さないで!」と止めたのです。
なら何故子供の頃からナウシカを知るわけではない王蟲がナウシカをジーっと見つめたかという話ですがこれは王蟲が集合意識を持っているからです。1匹の王蟲がした経験は他の王蟲の経験でもあるのです。だからあの王蟲の正体はナウシカが飼っていたのとは別個体ですがその記憶を持っている個体でもあるのです。
ナウシカと王蟲の関係
上記のような記憶を全部の王蟲が持っているからこそナウシカは王蟲にとっても特別な存在です。なにせナウシカは人間で唯一王蟲ら蟲達を好意的な目で見ていますし、愛情すら感じている節さえあります。だからこそ王蟲もまたナウシカには愛情に近い感情を抱いており、それが映画のラストシーンに繋がっているのではないでしょうか。
王蟲の殻は剣や戦闘機に使用
基本的には王蟲の事を恐れているナウシカ以外の人間ですが、その有用性もまた理解しています。脱皮を繰り返す王蟲の殻は高い強度と弾性を持ち、それでいて軽いという性質を持ち合わせているので戦闘機や武具などに利用しています。ナウシカの持つ剣も元は王蟲の殻から出来ているのです。
風の谷のナウシカの王蟲の裏設定を考察
考察①腐海は大気を浄化するために作られた
腐海が人工的に作られた物というのは上記でも触れましたが人間にとって毒でしかない腐海を何故作り出したのでしょうか?実は腐海とは汚染された大気を浄化する為のいわば浄化装置の役割を果たしているのです。元々、風の谷のナウシカの世界は現在のような世界になる「火の七日間」以前には高度な文明を持っていました。しかし高度故に戦争や紛争が絶えず大気が汚染されていったのです。
これらは漫画版の最終巻にあたる7巻で描かれている事実です。漫画版ではナウシカはこれらの世界の真実を全て知り、それに対して行動を起こす形で幕を閉じています。
考察②火の七日間は地球滅亡を防ぐための策
ここまで紹介してきたように「王蟲」も「腐海」もナウシカ達「人間」も人工の存在です。でも風の谷のナウシカにはもう1つ大きな存在があります。それが巨神兵です。もちろんこの巨神兵も人工の存在です。ただこの巨神兵は破壊兵器ではなく文字通り「神」として創造されました。役割としては「調停と裁定の神」です。人類では歯止めの掛けられない闘争が起きた際に間に入る存在とされています。
そんな存在を人工的にでも用意しなければいけない程に当時の人間達、そして地球は危ない状態だったのです。そこで人間達は滅びる寸前である地球を再生させる為にある手段にでます。この巨神兵を使い人類を一旦滅亡寸前にまで追いやり、大気汚染を無くした上で争いを好まない新たな人類を誕生させようという壮大な計画です。その計画の始まりこそが「火の七日間」の正体なのです。
そしてこの壮大すぎる計画の2段階目、「大気汚染を取り除く」段階の最中にあるのが風の谷のナウシカの中で描かれる年代なのです。
ナウシカの王蟲の魅力と正体のまとめ
風の谷のナウシカは以降に続くジブリ作品にも負けず劣らず多くの魅力を持ち今尚人気のある作品ですがその魅力の一端を担っているのが陰の主役とも言われる王蟲です。正体や鳴き声、モデルなどそのインパクトとは裏腹に映画を見るだけでは分からない謎の部分が多い生物だけに鳴き声の例のように公開から何十年も経過してから新たな事実が発覚する事もある程に王蟲は謎に満ちた存在としてファンに愛されています。
風の谷のナウシカはもちろんジブリ映画はどうしても1度見ただけでは分からない部分、映画を見るだけでは何度見ても分からない部分が多いです。風の谷のナウシカに関していえばその大きなウェイトを締めているのが王蟲の存在だとも言えます。ぜひ王蟲の鳴き声やモデルになったと言われる伸縮して動く動き方、その正体などに注目しながら風の谷のナウシカを今一度視聴してみてはいかがでしょうか?