2018年10月15日公開
2018年10月15日更新
ふしぎ遊戯 玄武開伝をネタバレ解説!玄武七星士の魅力や見所も紹介
少女コミックで1992年に連載をスタートしたふしぎ遊戯の世界観をそのままにした全く新ストーリーとして登場したのが「ふしぎ遊戯 玄武開伝」です。舞台は現実世界では大正12年、書籍の中では前作より200年前となっており、巫女も七星士も「玄武」の星の下に試練をくぐり抜ける物語となっています。今回はその玄武開伝の魅力や見所などをネタバレを含ませながら紹介していきたいと思います。
目次
ふしぎ遊戯 玄武開伝のあらすじや見所を徹底調査!
渡瀬悠宇さんにより描かれている「ふしぎ遊戯」シリーズの1つ、「ふしぎ遊戯 玄武開伝」は現在を描くふしぎ遊戯の時代から約60年前の時代を描いている作品になります。古代中国の四神と呼ばれる神の1つ・玄武を司る巫女として選ばれた少女・奥田多喜子と、その巫女を守るために7つの星より選ばれ生まれた8人の七星士が巻き起こす異世界ファンタジー作品となっています。
ふしぎ遊戯に登場する巫女の中でも一番最初に選ばれ、更には時代や権力という大きな波乱の真ん中に立つ事になる巫女と七星士という事もあり、ふしぎ遊戯シリーズの中でも戦闘シーンが多く感じられるものとなっています。また、他シリーズ同様に巫女である少女が成長していくスタイルは変わらないのですが、他と異なり「戦える巫女」としても注目されています。
ここではそんなふしぎ遊戯 玄武開伝の巫女や玄武七星士について詳しく紹介していきたいと思います。また、人間関係や絆などがとても詳しく描かれている作品でもありますので、ネタバレ無しには紹介できない点も複数あります。そのため、多くのネタバレを含んでの説明となります。
ふしぎ遊戯 シリーズとは?
1992年から「少女コミック」で連載されている「ふしぎ遊戯」ですが、作品の中に登場する四神と呼ばれる空想の生き物や二十八宿など古代中国を舞台として作られている作品となります。
元々は「ふしぎ遊戯」で主人公の少女が友人と共にたまたま開いた「四神天地書」に吸い込まれ、現代とは異なる古代中国に似た異世界へ足を踏み入れる事になります。この時この2人の少女が「朱雀」「青龍」の巫女として選ばれる事になるのですが、四神にはあと2つの獣が存在します。それが「白虎」と「玄武」になります。
この白虎と玄武にも同じように選ばれた巫女がいますが、その巫女はそれぞれ歴史が異なります。白虎は今より90年ほど前に召喚の儀式に成功し、玄武は約200年前に召喚を成功させているとされています。前作・ふしぎ遊戯の中にもその時の七星士が登場する場面や先代の巫女として現実世界に戻る方法を模索する際に短くエピソードが描かれています。
この時の短いエピソードが多くのファンの心を掴み、「玄武開伝」「白虎仙記」として描かれ、ふしぎ遊戯シリーズが誕生したとされています。世界観は前作・ふしぎ遊戯と同じですが時代が異なる事から完全にキャラクターを一新した状態からの新ストーリーとして描かれています。中でも玄武開伝は前作・ふしぎ遊戯にて描かれたエピソードを中心としている為、ふしぎ遊戯シリーズの中でもギャグ要素が少ない作品となっています。
「本の中での200年前に現れて玄武を召喚し国を救ったが、現実世界に戻った後に父親に殺され、父親も後を追って自殺した」
このセリフは前作・ふしぎ遊戯で伝えられている元玄武の巫女の最後とされています。しかしまだ玄武開伝が発売されるかもわからない状態で小さく織り込まれた伏線が、のちに大きな結末を生み出すのだと考えると作者の視野の広さや伏線の生み出し方も素晴らしいものと言えます。
玄武開伝と白虎仙記の共通点
ふしぎ遊戯には様々なストーリーがありますが、その中でもこの「玄武開伝」と「白虎仙記」では共通点と呼べるポイントがあります。それは「巫女と七星士の恋愛は成就しない」というものでした。前作でもこの話には触れられていて、しかし朱雀の巫女である美朱と七星士の鬼宿は世界線を飛び越えて一緒になる事ができました。
その大きな理由は「美朱が司る神」が関わってきます。前作・ふしぎ遊戯の作中でも描かれていますが朱雀には「愛」を司る意味合いも含まれているため、美朱と鬼宿の深い愛の絆を感じ取り美朱の最後の願いであった「鬼宿と離れない」という世界観を超えた願いを叶える事が出来たとされています。
自分が司る神の力を使う事でその願いを叶えた美朱と鬼宿ですがあくまでも「愛」を司っている朱雀だから出来た奇跡とも言えます。そのため、玄武の巫女である多喜子も白虎の巫女も恋い焦がれる七星士と離れる覚悟を背負いながら四神召喚に挑んでいると考えるとまだ10代の少女には厳しすぎる問題だったとも言われています。しかしどちらの結末も後悔を残さない巫女が描かれていた為に、ファンの中でも納得できた人が多いようです。
またもう1つの共通点はこの2人の巫女が四神天地書の作者との繋がりがあるという点です。元玄武の巫女である多喜子は作者の娘という立ち位置になりますが、実は元白虎の巫女も関わりがあります。ここからは「ふしぎ遊戯白虎仙記」のネタバレにもなってしまいますが、元白虎の巫女である大杉鈴乃は多喜子の家にお見舞いに来ていた大杉高雄の娘になります。
多喜子の父・永之介から遺書と四神天地書を受け取っていた高雄の娘が白虎の巫女として四神天地書の世界へと訪れるというのはなんとも因果めいた関係性を思わせます。しかし前作・ふしぎ遊戯では朱雀の巫女である美朱も青龍の巫女である唯も作者との関係性は描かれていませんので、この2人は本当に運命に導かれたのだと考えられます。
ふしぎ遊戯 玄武開伝の玄武七星士の魅力とは?
ふしぎ遊戯の始まりと言える作品・玄武開伝には、これまでのシリーズ同様に巫女を守る七星士が存在します。ここではその玄武の巫女を守る「玄武七星士」についてネタバレを含みながら説明していきます。
女宿(うるき)/李武土 琅輝(リムド=ロウン)
胸の中心に「女」の文字を持つ青年で、この世界に降り立った多喜子が初めて出会った玄武七星士です。高い武術と風を操る能力で賞金首として高い悪名を持っている人物ではあるが、実は玄武が守護する北甲国の第一皇子という立場にあります。しかし父・テムダン王の命令により、生後間もない頃から命を狙われ逃亡生活を送っています。
その出生も相まってか当初は玄武の巫女である多喜子や他の七星士と共に玄武召喚をよく思っていない節があり、動向を拒否したり敵国・倶東国の皇太子である玻慧(はけい)の元で巫女討伐隊として動くなどの行動を見せていました。しかし後に多喜子の真っ直ぐな姿やひたむきさに心を打たれ、玄武七星士としてそして多喜子を愛する男として戦う事を決めます。
女宿とは二十八宿の1つで、北方玄武七宿の第三宿になります。また、星官(古代中国の星座を意味する言葉)ではこの星の下に生まれるのは女性と思われていたと伝えられています。作中ではその点を意識してなのか女宿が能力を使う際には胸に「女」の字が浮かび、その時だけ体が女性に変わります。
虚宿(とみて)/チャムカ=ターン
左肩の甲骨に「虚」の字を持つ青年で、玄武七星士の中でも弓の名手と言われるほど腕前を持っています。元々は可族(はぞく)と呼ばれるモンゴル民族をイメージした村で母親と共に生活していました。父親を目の前で妖魔に殺害されてからは母親を第一に考える点がありました。しかし自分自身の元にある星の意味をきちんと理解しているため、多喜子と共に旅に出る事を決断します。
多喜子に密かな恋心を秘めていたが徐々に心の距離を縮めていく多喜子と女宿の姿を見ていて、静かに見守る事を決めます。また、同じ玄武七星士の1人・斗宿(ひきつ)とは1年前まで同じ村に暮らしていた幼馴染であり義兄弟の契りを交わした仲でもあるのだが、山の妖魔の奇襲を受けその村を離れて以来斗宿とは確執を持ったままになっていました。
玄武が召喚された後は200年もの間多喜子の神座宝が祀られている黒黎神山(こくれいしんさん)を斗宿と共に初語していたため、前作であるふしぎ遊戯でも登場していました。そのため、読者の中ではふしぎ遊戯玄武開伝が登場してすぐにチャムカの死を知ってしまうという公式からのネタバレもあったとの事です。
室宿(はつい)/ザラ-=エルタイ
右足の裏に「室」の文字を持つ少年で、玄武七星士の中でも最年少と言える幼さを持っています。防御壁と呼ばれる鉄カゴから針を連射して攻撃する事が出来る能力なのだが、心優しくそれでいて臆病なところが多いため、すぐに籠に閉じこもってしまう気弱な性格の持ち主です。
多喜子達と出会う前は自分の力で他人を傷つけてしまった事で山へと逃げ、そこでフェンと呼ばれる女性と共に生活していました。薬草などの植物に詳しい少年なので旅の間その知識を活かして仲間の手助けをしていました。
壁宿(なまめ)
「壁」の文字を持つ玄武七星士の1人で、初登場の際には右胸に文字が浮かび上がっていましたが、普段は後頭部に浮かび上がるようになっています。元々他の七星士と異なり、「大地の精霊」として星命石と呼ばれる石から生まれたモノになります。その為、石原周囲の人間にから恐れられ拒絶されていた過去があり、唯一庇護してくれたアンルウを慕っています。
そのため、最初は多喜子の呼びかけにも心を閉ざしていました。しかしそれでも玄武七星士として多喜子を守るという使命を理解している事からのちに旅に同行する事となります。当初は全く言葉を発しなかったのですが、多喜子が倶東国の軍に囚われた事をきっかけに少しずつではありますが言葉を話すようになります。
普段は人形型と呼ばれる小さな姿で行動していますが、体のサイズを自在に変化させる事ができる上に、薙刀や馬などの「人間」以外の姿にも形を変える事が出来ます。
斗宿(ひきつ)/エムタト=チェン
隠されている右目に「斗」の文字を持つ青年で、水を文って戦う七星士になります。その目で人や物の記憶を読み取ったり、深層心理までを引き出してしまう視鏡監(しきょうかん)と呼ばれる能力も持っているのだが、この力で心を見られた者は大きなショックを与えられてしまう事から汗族(かんぞく)からも爪弾きにされていました。
虚宿とは幼馴染であり義兄弟の契りを交わした仲でもありますが、可族と共棲していた際に山の妖魔に襲われてしまいその際に実の妹が犠牲となって氷の中に閉じ込められてしまいます。なんとかして妹を助けたいと考え、廃墟と化してしまった村に1人残り、解決方法を模索するシーンなどからとても妹想いの人物である事が描かれています。
また、虚宿の事も義兄弟であり親友と考えているのですが自分や妹を捨てて村を離れたという裏切りの気持ち(事実はその際の記憶を虚宿が失っていた為母と共に可族と行動)が強くあり、確執が生まれていましたが後半では心から大事に思い、自分の背中を任せられる程にまで溝を解消する事が出来ました。またそのおかげもあり、前作・ふしぎ遊戯では虚宿と共に200年多喜子の神座宝を守護していました。
牛宿(いなみ)/タルマ
玄武七星士の中でも最高齢で紅一点と呼べる女性で、下腹部に「牛」の文字を持っています。自分自身の髪を自在に操り、相手の動きを封じてしまうなどの力を持っています。また、大きな煙管を武器として使い、吐き出される煙で相手の動きを止める事も出来ます。
元々は北甲国の遊郭で用心棒として努めていたのだが、その肝の据わり方やふくよかな体つきは妖艶な大人の女性というイメージから紅南国に移転後は女将・シュヌの代理を務める程の腕前を持っています。その後多喜子達と出会い、多喜子の命がけの救出と遊女達の願いを受けて玄武召喚の旅に同行する事になります。
実は少女時代から何十年も特烏蘭の宮殿で官女をしていた事が後にわかりますが、その際に恋人が加担していた現皇帝のテギルに反乱を仕掛け失敗。その際に宮中から逃亡を図りますが市内で行き倒れていたのをシュヌに助けられます。この際にお腹に身籠っていた恋人との子供を流産しています。
危宿(うるみや)/ハーガス&テグ
ふしぎ遊戯の中でも珍しい双子の七星士で、また1つの文字「危」を分け合っているという特殊な存在でもあります。兄であるテグは「危」の部首のみが眉間に表れ、弟であるハーガスにはその残りの部分が眉間に表れます。他の七星士のように特殊な能力を持っていますが、どちらも戦闘能力が高い事から玄武七星士でも最強と言われるほどです。
元々はテムダン王の配下として女宿抹殺の命を受けていたハーガスですが、その裏には唯一の肉親とも言える兄を人質として囚えられ、その開放を条件に従っていた事がわかります。またテグも同様に弟・ハーガスの安全を条件に現皇帝・テギルや「北甲国の宝」を護衛させられていました。
玄武七星士としての能力も使命も目覚めているが多喜子達に協力するつもりは全くと言っていいほど無いらしく、兄であるテグ救出も自分1人でと考えて行動していたが、テグが幽閉されている場所は皇帝の持つ鍵でしか辿り着く事が出来ず、多くの時間をかけてようやく再会する事ができます。しかしその際の起こった落石でハーガスは命をかけてテグを救います。
その事で七星士としての使命はテグが一身に受け継ぐ事となり、能力だけでなくハーガスのこれまでの記憶や思いも引き継いで生きる事となります。また、テグ自身も多喜子達の支援などをきちんと理解しており、今までの弟の非礼を詫び、玄武召喚へ同行する旨を伝えてくれます。
ふしぎ遊戯 玄武開伝のあらすじをネタバレ解説!
ここまでふしぎ遊戯 玄武開伝に登場するキャラクターに触れてきましたが、そうなると気になるのが本作のあらすじとなります。前作・ふしぎ遊戯とはどのように違うのかなどをここではネタバレも織り交ぜながら解説していきたいと思います。
玄武の巫女は四神天地之書の作者の娘
この設定は前作でも小さく描かれている設定になっています。元々中国で経典として書かれていた四神天地之書は当たり前のように日本語ではなく中国語で書かれていました。その日本語訳を買って出たのが玄武の巫女・奥田多喜子の父である奥が永之介です。彼は仕事を第一に考えるところがあり、多喜子の母であり永之介の妻にあたる美江が結核に倒れても仕事を優先していました。
ようやく支那(現在の中国)から帰ってきたと思ってもこの四神天地之書の翻訳作業に忙しいと余命いくばくもない美江の看病などそっちのけだったために、多喜子との間にも深まっていた溝が更に深くなっていきました。そんな時美江が他界してしまい多喜子は悲しみの底へと落ちます。しかしそんな状態でも永之介は関心を持とうとせずにいたところ、幼い頃から想いを抱いていた大杉高雄が見舞いに訪れます。
多喜子はこの時に自分の想いを高雄に伝えますが、高雄には既に妻子があるため想いを受け入れてもらえるわけはありません。そんな様々な悲しみが多喜子の中に積もり積もってしまい、とうとう永之介と口論になります。ここで永之介から「お前が息子だったら・・・」という多喜子にとって最も残酷な一言が告げられてしまい、多喜子は怒りから永之介が一心不乱に書き続けた四神天地之書の完成書を破り捨てようとします。
その時多喜子の体は銀色の閃光に包まれ、その場には本だけが残されていました。最初こそは永之介も高雄も多喜子が本を捨てて家を飛び出してしまったと考えましたが、永之介がおもむろに開いた四神天地之書には自分が書いたはずの内容はなく、今まさに新しく紡がれていく話と「玄武の巫女」と書かれている娘・多喜子の名前を目撃する事になるのです。
始まりは雪深い山の奥
一方本の中に吸い込まれた多喜子が目を開けるとそこは今までいた馴染みある母の実家ではなく、一面の銀世界だったのです。そこは四神天地之書が繋げた異世界にある四正国の1つである「北甲国」の雪山で、周りには家と呼べるものはありません。寒さから震える体をなんとか叱咤させながら進む多喜子の目の前に現れたのは大きな石の柱に縛られた女性でした。その女性は多喜子を見るなり「用がねぇなら早く逃げな」と伝えてきます。
その時多喜子と女性の前に現れたのはこの山に棲む妖魔でした。多喜子はこのまま縛られている女性を放っておけないと近くにあった棒で戦おうとします。その姿を見ていた女性は感心したような面持ちで多喜子を見つめ、その意気込みに呆れたように笑うと周りの風を操り、自分の鎖を解くだけでなく多喜子までもを助けてくれました。そこで妖魔を倒した女性・女宿(うるき)のリムドはそのまま多喜子を置き去りに山を降りようとします。
しかし多喜子の目の前で熱を出し倒れてしまった事で、多喜子はリムドを背負いながらどこにあるかもわからない街を目指す事にします。ですが着物姿で雪山をうろついているため、多喜子も寒さから意識を失いかけます。その時不思議な少年が多喜子の前に姿を現します。その少年はまっすぐに街がある方角を指差し、多喜子に向かって「来たな、玄武の巫女」と伝え消えていきます。
多喜子は何がなんだかわからない状態で、不思議な少年が教えてくれた道を真っ直ぐに進んでいき無事街へ辿り着く事ができました。その街の宿へ向かい、なんとかしてリムドの熱を下げようと必死になる多喜子は、昔ながらの添い寝という形で熱を下げようとします。そして目を覚ました時には共に寝ていたはずの女性が男性へと変貌していたのです。
話を詳しく聞くと、リムドはこの土地に古くから伝わる言い伝えの「玄武の巫女」を守護する七星士の1人で「女」の星を宿しているとの事でした。そのため、風を操る特殊な力を使うと胸元に女という文字が浮かび上がり、その時だけ体が女に変わってしまうとの事でした。そんな話をしながら部屋を出た瞬間、リムドにかけられていた賞金を目当てに訪れたチャムカと言う青年の奇襲を受けます。
リムドはなんとか多喜子をかばいながら宿の外へと飛び出しますが、そこには警吏(警察官)が待ち構えており、その一斉攻撃を受けてしまいます。絶体絶命と思われている場面で多喜子の体から銀色の光が放たれます。それは多喜子に宿る玄武の巫女の力でした。リムドはその光で周りの目がくらんでいる間に側近のソルエンによって助けられその場を後にします。
騒ぎが落ち着いた時にはその場には多喜子しか残されておらず、混乱している多喜子を最初にリムドを襲ってきた青年・チャムカが捕らえたのです。
虚宿の七星士であるチャムカとの出会い
リムドを取り逃がしてしまったチャムカは一緒に行動していた多喜子がリムドの女だと勘違いします。そのため、多喜子と共に行動する事でリムドをおびき出せると考えますが、多喜子はその意見を全否定します。しかしなかなか信じてくれないチャムカによって多喜子はリムドが長年暮らしている可族の村に足を踏み入れる事になります。そこでは気さくで明るいチャムカの母・ボラーテと出会います。
ボラーテは夢物語と言われている玄武の伝説を信仰的に信じている女性でした。そしてこの事を多喜子に伝え、息子・チャムカがその巫女を守る七星士の1人・虚宿である事を教えてくれます。多喜子は内心「リムドと同じ・・・」と考えますが、言われているチャムカの方は体に文字が浮かんでいるだけで玄武の伝説も巫女や七星士の事も信じていませんでした。しかしチャムカにはリムドと同じように氷を操る特殊な力があります。
ボラーテはその事を伝えながらチャムカから聞かされた多喜子の力を「玄武の巫女」の力と確信して、村総出で盛大に歓迎します。そんな時倶東軍が村を襲います。影からその状態を見ていた多喜子とチャムカは兵の中にリムドを見つけます。驚いている多喜子に兵が放った矢が襲います。その矢から多喜子を守ったのはボラーテでした。矢を受け倒れる母を見て、チャムカは怒りから氷の力を使いリムドを始めとする倶東軍の兵に攻撃します。
なんとかしてその場を収める事に成功した多喜子とチャムカは傷を追ったボラーテの手当をしていました。そんな多喜子の中で現実世界では母を失い、父にも高雄にも拒絶され自分には居場所となるところがないと考えていました。しかしこの世界では見ず知らずの自分を必要としてくれる人がいて、その人達を助けるためには玄武の巫女になるしかないと感じます。そしてその覚悟を決めた瞬間消えたはずのリムドが目の前に現れます。
「玄武の巫女になると、玄武の七星士ともども殺されるからやめておけ」という忠告を受けますが、多喜子の決意は固いものです。そして翌朝、傷も言えてきたボラーテに多喜子は玄武召喚の旅に出る事を伝えます。すると七星士の1人であるチャムカも連れて行けと言われます。最初こそ傷ついた母を置いておけないと反対しますが、七星士として覚悟を決めた巫女を守れと叱咤されます。そして無事に帰っておいでと送り出されます。
この世界を知らない「玄武の巫女」多喜子とその守護を星とする七星士の虚宿・チャムカは他の七星士を探す旅に出ます。そして今後女宿の星を持つリムドとの関係やこの国に渦巻く大きな波乱へと身を動じる事になります。
ふしぎ遊戯 玄武開伝が完結!結末をネタバレ!
2003年から連載されていた「ふしぎ遊戯 玄開伝」ですが、惜しまれながらも2013年に最終回を迎えました。全部で12巻という読みやすい巻数でありながら、玄武の巫女を中心に巻き起こる人間関係が綺麗に描かれています。そんな波乱の中でも美しく完結した玄武開伝の結末をネタバレをたっぷりと織り交ぜながら紹介していきます。
全ての七星士が揃い玄武召喚が可能となる直前、リムドは玄武を召喚した後に多喜子が玄武に食われてしまう事を知ります。その事でリムドの中では「多喜子が乙女」でなくなれば玄武召喚は成功せず、自分と共にいられるのではないかと思い始めます。しかし多喜子はそれを受け入れませんでした。自分自身が母・美江と同じ結核に侵されている事、そんな自分にもまだやれる事が残っているという真実が今の多喜子を突き動かしていました。
リムドはなんとかして玄武召喚をせずにこの地で行われている戦を止めようと考えますが、倶東国が攻めてくるという中で永久凍土となってしまうと危惧されている北甲国に雹が降り始めます。それを見た多喜子は玄武召喚の決意を固めます。
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そして訪れた玄武召喚の日、多喜子の体から銀色の光が放たれ今まさに玄武が召喚されるという時に紫義(しぎ)が虚宿・チャムカに奇襲を仕掛けます。玄武召喚には全ての七星士が揃っている事が絶対条件になります。そのため、1人でもかけてしまうと玄武召喚ができなくなる事を紫義は知っていたのです。その後から多くの倶東国の兵が攻め込みますが、息も絶え絶えとなっているチャムカを守っていたのは斗宿・エムタトでした。
彼自身もその背に無数の矢を受けているにも関わらず、多喜子が玄武を召喚するその時までチャムカを守ります。そして無事玄武の召喚に成功したその瞬間、チャムカは息を引き取りました。その親友に向かって「よく頑張ったな」と微笑みながら伝えたエムタトもまた命を失います。様々な悲しみが渦巻く中、多喜子は玄武に願いを伝えます。
1つ目の願いは「北甲国に春を」というものでした。長い間分厚い雲に覆われ、このままでは人の住めない絶対凍土になると言われている北甲国に暖かな春を願った多喜子の願いは玄武はきちんと聞き入れてくれました。そのおかげで暖かな太陽の光が北甲国を包みます。
しかしその願いを叶えた段階で多喜子の体は悲鳴をあげていました。それでもまだ残されている願いがあると2つ目の願いを玄武に願います。それは「すべての人の傷を癒せ」というものでした。その願いは北甲国だけではなく、倶東国の人にも適応され、今までの戦で傷ついた多くの人が傷を癒やします。残念な事にこの願いが受理される前に命を落としたチャムカとエムタトは目覚める事はないですが、それでも多喜子は納得したようです。
多くの人の命を救った多喜子でしたがもはや体力も限界に達していた時、今まで物語の文字を追い続けていた父・永之介が獣に食われてしまうくらいならと自分自身の胸を刺します。この事で玄武への最後の願いを伝える事はできません。「血」という深い絆を媒体としている永之介と多喜子は命すらリンクさせて、多喜子の命も僅かとなってしまいます。これが前作・ふしぎ遊戯で描かれていた「作者は娘を殺して自殺した」になります。
苦痛を伴っている状態であるにも関わらず多喜子は微笑みながら「素晴らしい人生をありがとう」と父に呟き、最後にはリムドの腕の中で「ゴンドラの唄」を歌いながら静かにその幕を閉じます。そして多喜子が亡くなってから数日後、リムドは太一君がいる太極山へと呼び出されます。
着いてみるとそこには精神だけとなったチャムカとエムタトがいました。再会を喜ぶ3人ですが、そこで太一君から玄武召喚の際に多喜子が身につけていた首飾りを渡すようにリムドに伝えます。リムドは素直にその首飾りを渡すと、精神となった2人に神座宝となっている首飾りを守護するように伝えます。そこで前作・ふしぎ遊戯の玄武の神座宝を守る2人に繋がります。
そして国へ戻ったリムドも皇帝として民を第一に考え、100年もの間平和を収め天命を全うしました。その間妻として認めた女性は多喜子1人で生涯后を迎える事なく終わった事から、北甲国の民は自分達の平和を第一に考えてくれた多喜子やリムドのために、多喜子が使わなかった最後の願いがもしも叶うのであれば、いつかどこかで2人が幸せになれるようにと願いを込めました。
それから場面は移り、平和な時代が訪れている町並みに変わります。そこで2人の男女が出会います。それは想い合っていながらも別れる事となってしまった「多喜子」と「リムド」が転生した姿でした。2人は北甲国の民の願いどおり幸せになる事ができたというのがこの「ふしぎ遊戯 玄武開伝」の結末になります。
ふしぎ遊戯 玄武開伝の見所を紹介!
感動を呼んだ結末の玄武開伝ですが、この結末が生まれるまでの見所もたくさんあります。ここではその見所部分についてネタバレも含めて深く掘り下げて紹介していきたいと思います。
兄弟の絆~ハーガスとテグ~
結末の大きなカギを握っていたのが玄武七星士最後の星「危」を持つ双子のハーガスとテグです。元々両親と共に静かに暮らしていた2人ですが、父を山の妖魔に母を難産で亡くしています。そこから2人だけで生きてきましたが、七星士の力すら無効化してしまう能力をテムダン王は見逃しませんでした。
そして弟の命を保証する代わりに囚われの身となったテグをなんとか助け出したい一心でハーガスはテムダン王の配下になります。しかしのちに皇帝になるテギルの裏切りにより生死の境を彷徨い、ハーガスは両目の視力を失います。しかしそんな状態でも兄・テグを助け出したいと動きます。
最後の最後でようやく再会できた2人ですが2人の上空に落ちてきた落石から次は自分の番だと兄を助けたハーガスは命を落とします。テグは悲しみを感じながらも2つに分かれていた「危宿」の宿命を一身に受けながら長く自分を思い続けてくれた愛しい弟の記憶や思いを引き継ぎ、七星士として生きる道を選ぶのです。
父と息子に隠された想い~テムダンとリムド~
作中では対立していたテムダン王とリムド。実はリムドが生まれる前にテムダン王は体が腐るという病に見舞われます。その際に星読みにより「玄武の巫女が現れて四神天地之書を開く時、王の息子が王を殺す」という予言をされます。この事からリムドは生まれてすぐに父であるテムダン王に命を狙われ逃亡生活を余儀なくされます。
しかしその裏では実はテムダン王の玉座を狙っていたテギルの陰謀が隠されていました。また、テムダン王へ進言した星読みの言葉もテギルによる嘘である事がのちに判明します。その真実を知ったリムドはそこからその予言を受ける前の父の聡明さや現在もテギルによって狂わされた北甲国を内側から壊すために密かに倶東国と繋がっていた事を知ります。
そこから少しずつではありますが和解していく流れになるはずでしたが、残念な事にテムダン王はテギルの手のものにその命を奪われます。しかし王として即位したリムドはそこで初めてテムダン王の偉大さを知り、恨みから尊敬へとその思いが変わっていきました。
最後に見せた父と娘の絆~永之介と多喜子~
ふしぎ遊戯玄武開伝の結末はなんとなくではありますが、ふしぎ遊戯シリーズを読んでいる人には想像がついたと思います。その理由が前作・ふしぎ遊戯にて「作者は娘を殺して自殺した」という言葉が残されていたからです。そのため、多くのファンが「なぜ多喜子が父に殺されたのか」という結末をいろいろな視点から想像しながら見ていたのと考えられます。
しかし描かれた結末は以外にも父娘の絆を深める内容となっていました。その理由が父・永之介が何のために四神天地書を完成させようとしていたのかを多喜子が知ったからです。永之介はこの四神天地書がどんな願いも叶えてくれると教えられ、妻・美江の病を治せると信じていたからです。そのため、看病もせずただただ一心不乱に完成させようとしていたのです。
また、永之介も四神天地書に書かれていく多喜子の思いを知り、自分がどれほど娘に寂しい思いをさせてしまったかを悔い始めます。しかしその時には多喜子も美江と同じ結核に侵され、3つの願いを叶えれば神獣に食われる未来しかありませんでした。永之介はそれだけはどうしても我慢できなかったのです。
「娘を獣に食われるくらいなら」と自分と多喜子を繋ぐ深い「血」と言う絆を媒体に自分自身と多喜子の体や精神までもをリンクさせます。そして自分自身で胸を刺し自殺をはかります。その致命傷は多喜子にも及び、3つ目の願いを叶える事なく愛するリムドの腕の中で息を引き取ります。
神獣への生贄ではなく、1人の女の子としてその生命を終わらせてやりたいという父の願いも多喜子にはきちんと伝わっていたからこそ、苦しい死の間際でも父に対して「素敵な人生をありがとう」という言葉を残す事ができたと考えられます。
出典: http://mblg.tv
そして永之介の方では自分の遺書として、共に結末を見届けていた高雄に四神天地書の封印と自分が自殺した理由(娘を殺して自殺した)を伝えてくれと言い残し命を引き取ります。確かに「父親が娘を殺した心中」という結末は変わりませんでしたが、「父親が娘を守った心中」とも取れるものとなっていました。
ふしぎ遊戯 玄武開伝を読んだ感想は?
衝撃の結末により様々な感動を生んだ「ふしぎ遊戯 玄武開伝」ですが、この作品には多くの感想が書かれています。ここではその感想を集めて紹介していきたいと思います。まずはTwitterで書かれていた感想になります。
封神もいいけど、ふしぎ遊戯玄武開伝の最終章をさっき読んでたんだけど、その章だけでボロ泣きだったからふしぎ遊戯もみんな読んでくれ。オタク教育の教科書の一つだよ。泣き過ぎて現在心がとてもナイーブだからソフトタッチで頼む。
— うめ染 (@heart_uri) January 12, 2018
やはり多くの人が涙したというツイートが多いです。そして何より前作・ふしぎ遊戯からのファンが多いため、どうしても多喜子の結末を知りながら見なければならないというのも感動の結末を生んでいる理由になっています。
ふしぎ遊戯玄武開伝最終巻読んだ!!
— まな♭ (@pika0m0) August 16, 2013
泣いたよー(´;ω;`)七星士好きだー(´;ω;`)
私朱雀&青龍からのファンだからね♡
白虎編いつか出るといいな♡
続いては漫画のレビューサイトで調べてきた感想になります。こちらはTwitterなどとは異なり、ガッツリとネタバレを含んだ感想が多かったように感じます。また、結末を知らない新規ファンの声なども聞く事ができるため、これから読む人や読み返したいと考える人の刺激になると思われます。
皇帝となったリムドは、国のみんなのために
平和で幸せな国になるよう奔走する日々の中、突如攻め入る倶東軍。
敵も味方もできる限り傷つくことなく収束されようとするリムド。
そこに恐れていた玄武の永久凍土の浸食が始まり、
それを止め人々を守るため、多喜子は玄武召喚の決意を。
愛する人を大切に想いながらも、ただ一人の愛する人だけでなく
みんなの命を平等に守りたいと強い信念の多喜子とリムドが
切ないけどほんとうにステキな物語だった。
朱雀編よりキャラクターは少し薄いけれど、
物語はより深みと重みを増し凛とした愛に包まれたお話で
よりふしぎ遊戯の世界が大好きに。
互いに只一人の相手に捧げた愛とその生涯。
巡りゆく春の中でまた巡り合う。
最初に紡がれし玄武の巫女、壮大な愛の物語。
ネタバレ感想の中にはキャラクターへの愛あるコメントもあれば、後半に行くに連れてピッチを上げていったふしぎ遊戯玄武開伝に「もっとゆっくりとしたテンポでそれぞれのエピソードを!」と言っているものまでありました。確かにギャグではなく人との関わり合いや絆をメインとした内容ではありますので、前作と同じくらいのボリュームで描かれても不思議ではない作品です。
ふしぎ遊戯 玄武開伝のネタバレまとめ!
ネタバレを含めてまとめてみた「ふしぎ遊戯玄武開伝」の説明はいかがだったでしょうか?主人公でありヒロインである多喜子の結末を知りながらも、そこまでの流れがどういったものかを綺麗に描かれている作品だと言われています。
また、前作・ふしぎ遊戯でもネタバレと言える伏線が描かれていたために、どの七星士が命を落とすのか、多喜子の結末がどうなのかなども簡単に想像する事ができました。その事もあり、読み手は作品世界に集中して読んでいったのだと考えられます。
「伏線って言うよりもネタバレじゃん」「結末を知ってたら面白くないよ」などの声も前作が販売されていた当初は聞こえた感想ではありましたが、この伏線が合ったからこそ「ふしぎ遊戯 玄武開伝」という作品は大きな感動を呼ぶ結末を生み出したのではないかと考えられています。また、ネタバレによる前情報を持った状態で作品を楽しむのも1つの手です。
前作のふしぎ遊戯が幸せな最後を描いていたために、この玄武開伝でも「現実世界に戻らなかったから死んだ事にされていた」と考えて読むファンも多かったとの事です。ハッピーエンドではありますがどうしても悲しみが残ってしまう結末になるので、ネタバレで心を落ち着かせて読むといいかもしれません。
また、2018年の4月に販売された「ふしぎ遊戯白虎仙記」の小さな伏線もやはりこの玄武開伝には含まれている状態で、その点を理解しながら再度前作・ふしぎ遊戯を読み返してみるのも面白いかもしれません。前作・ふしぎ遊戯を読んで「ふしぎ遊戯玄武開伝」を読むのもいいですが、逆もまたファンの心を揺さぶる流れになるはずです。